青年放浪記   作:mZu

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第33話

キノコに顔のある木、青年にとってはだいぶ見慣れた光景でも中々人を寄せ付けないようになってきていた。

 

物騒としている辺り、だいぶ近くなっていると青年は感じた。咲夜は青年にビッタリと引っ付きながらこの寒さに凍えそうになる。

 

「やっぱり寒いか。その天候だし仕方がないか。」

青年は後ろに視線を送りながら咲夜の様子を見ていた。それでも歩みを止めないあたりはどうだろうか。

 

「いいえ、まだ我慢は出来るわ。貴方も体調を崩さないようにしなさいよ。」

咲夜は青年の事を心配した。運ぶのは咲夜なのでそうなるのも仕方がないように思える。青年は何を思ったのか剣を抜いた。そしてろうそくぐらいの火を念じていた。柄をグッと握って一生懸命に何かをしていた。咲夜はその様子を眺めてそこまでしなくても良いのにと感じた。

 

「どうだ、暖かいか。火力は弱いだろうがな。」

咲夜にはあまり変わったようには感じなかった。それはもう既に温まっていたからなのかもしれない。そのように優しくしてもらえるのは美鈴のこの人ぐらいしか居ない。

 

昔はあまり感じることがなかったが今ではだいぶ暖かいものに感じる。

 

「ええ、十分よ。寒さは軽減されているわ。」

咲夜は何を思ってそう言っているのだろうか、なんて青年は思っていた。自分は何も変わらなかったのである。

 

それでもあまり興味はないようで其処で会話が途切れた。故意的にした訳ではなく、目的地に着いたからだ。

 

「此処に知り合いがいるから少し話を聞いてみよう。」

青年は黒い屋根の小さな家の方へと向かっていた。青年は人間として欠けている部分があるように思える。咲夜はなんとなくそう思えた。

 

「そのつもりなのね。」

「人が増えればそれだけ有利になるから。」

青年はゆっくりとした足取りでその家の扉を叩いた。そこから家主が現れる。

 

その人は金色の髪で肩に当たらないぐらいの長さで切り揃えられていた。肩に白いケープを羽織っており、青色が強調された服装をしている。

 

「久しぶり。しばらく会わなくてすまなかった。」

青年は簡素にそして無表情に答えた。アリスもその様子には何も思わなかったらしい。それよりかは後ろの人が気になった。

 

「今から何処か行くの。」

アリスは後ろを見ながら話を進める。青年は一瞬会話が途切れたがすぐに始めた。

 

「冬を終わらせようと思っている。それで仲間が欲しいから付いてきてくれないか。」

青年はアリスを勧誘する。誰でも良い訳ではないが、ほとんどだれでも良いような気はしている。

 

「やっぱりまだ冬なのね。寒さや暑さは感じないから天候を見るしかないのよ。」

アリスは不可解な事を口走る。青年はその発言に疑問を持った。

 

「本当は春で桜も散り始める頃だが、まだ春にすらなっていない。厳密に言えば今は春だ。」

そのはずだ、と青年は自信がなさそうに答えた。

 

「へぇ。本当は晩春になるのね。少しだけなら協力するわ。それと少し人形と戯れてほしいんだけど良いかしら。」

アリスは人形の操作魔法は一流だった。他の魔法は使ったところを見た事はないので青年は知らない。しかし、人形と戯れるなんてそんなことが可能なのだろうか。

 

「別に良いがどうしたら良い。」

青年は静かに答えた。アリスと青年の間に微妙に違うように感じた咲夜だがどうなるか興味があるので何も言わなかった。

 

「私の人形と貴方の剣で対決という事よ。少し過多気味に人形を操るわ。」

アリスはゆっくりとした口調で実験の一環とばかりに話を進める。青年はそのように考えておらず驚嘆していた。

 

「いつからそうなったんだ。」

青年は少しだけ頭を使っていた。自分との感じ方に微妙に差があった事を何となく感じた。

 

「それでどうするの?」

アリスは挑発的に話を進める。青年は逃げられなかった。だが、考えるまでもなかった。

「受けるからやらせてもらおう。」

はっきりと青年は答えた。そこで踵を返すと家の前の木がない広めのところに立った。アリスはその後に続き、距離を開けて青年と対峙した。

 

「こうなるのは初めてよね。これまで何をしていたのかは知らないけれど手は抜かないでちょうだい。」

アリスは真剣な眼差しで言葉を続ける。青年はそうかと軽く言ってそれで終わった。アリスの周りには十体の人形を手の指で操っていた。一体を指一本で操るその技量は流石と言わざるを得ない。青年は刀を抜いて何かを念じていた。

 

「それなら本気でいかせてもらう。」

青年は下段で剣を構えるてはおらず、ただただ剣が手にぶら下がっていた。

 

それで勝負する気なのかと思っていたが、そんな人だったな、とアリスは思った。

 

アリスの周りの十体の人形の内、五体が青年の元へ向かっていた。青年はその様子を生きているかどうかよくわからないような目をして見つめていた。その理由はよく分かる。人形の一撃を避けた青年はそこから剣を上に向けた。その斬撃は宙を斬った。そのあとでポトリと命を失った人形が地面に滑り落ちた。アリスは三体を引かせて状況を把握した。もう一体は既に青年によって掴まれていた。

 

「貴方何処で何をしていたの。」

アリスは此処までの行動を見て一瞬で察した。何か魔法を習っているのではないかと。

 

「紅魔館で釣りをしたりベットメイクしたりしていた。」

青年は何かを思っていたのかわざとパチュリーの名前は出さなかった。お互いに何となく考えている事は亜通じ合っているのだろう。

 

「それで糸が見えるの。」

アリスは侮辱の視線が混じったような目をしていた。真剣な眼差しがそこで濁っているように感じた。青年はアリスの姿を少しだけよく見ていた。其処は美鈴に鍛えられたところと言えよう。

 

「糸なんてあるのか。魔法の類ではなかったのか。」

青年はきょとんとした期待しているのを裏切られたような顔をした。俗に顔芸で相手を騙そうとしていた。

 

「魔力を通じらせる糸があるのよ。」

アリスは丁寧とは言えないが相手に説明した。そして二体の人形を弧を描くようにおそわせる。

 

「そうか。」

青年は押し黙って人形の後ろを剣で斬る。二体の人形が地に墜落した。青年は徐々に戦力を減らしている。その事はアリスには分かっていたが、人形を青年に近づけないと攻撃出来ないが、その反面でまた人形が減らされるジレンマにかられていた。青年はそういうマインドにさせている。

 

「貴方にはあまり人形は通じなそうね。」

アリスは残っていた五体を地面に落とした。片手に一体となったアリスは肉弾戦に持ち込もうとしていた。

 

魔法を鍛えたのでそちらは疎かにしているはず。そんな安易な考え方をしていた。青年にとっては三人と相手するようなもので厄介なものであった。

 

青年は全てを切り裂くような物を思い浮かべていた。何もないところで切り裂かれるような脅威。

 

「そうだろうな。何となく攻略法が分かってきた。」

アリスは本来肉弾戦はしなかった。

 

当たり前であろう、魔法使いは別に体力や筋力を必要としない。魔力の貯蔵量を高めておけば魔法で移動も物を持ち上げることも可能となる。

 

それでも体で勝負しようとするのは人間としての名残があるように思える。アリスは人形を左右に回り込ませた。其処で後ろか前かの何方かの選択にさせたつもりだった。それでも青年はあまりにも愚かな選択をしていた。その場から動かなかった青年。アリスにとっては三面から攻撃を仕掛けることが出来るのでこれ以上の好機はなかった。青年は何故か馬鹿にしているかのように笑っていた。青年は迫り来る三人を一振りで制した。全ての動きを止めて人形を地面に落とさせた。アリスの気が其処まで回らなかったのである。自分の身を守る事を優先した結果、人形を操る事を忘れた。

 

そして首筋に冷たいものが当たっている。

 

「安心しろ、峰打ちだ。」

アリスは力を抜いてその場で倒れた。青年は左手でアリスの腰に回して体を支えた。咲夜は微妙な自分の中での熱さを感じた。

 

「魔法というのは便利だが、相手にすると厄介なのだな。」

青年はアリスが落ち着いてから話を始める。青年は既に剣を納めている。そして散らばった人形を集めていた。ついでに雪が付いているものを手で払って綺麗にしてからアリスに渡していた。

 

「そうね、自分で教えた魔法で勝負を決めてくるとは思わなかったわ。」

アリスは素直に青年の魔法を褒めていた。青年は嬉しそうにしていた。認めてもらえるのは確かにそのような気をさせるのだろう。

 

「まだまだ序の口だが、相手を吹き飛ばせるくらいにはなりたいものだ。」

 

「それにはまだ早いんじゃない。」

アリスは教え子の成長を感じつつまだまだいけると思っていた。青年も出来るところまでは行こうと考えていた。

 

「それでこれも実験なんだけど、長距離の操作魔法をしてみたいの。貴方たちにはその方法で協力させてもらうわ。」

アリスは青年に一体の人形を渡した。見たところ金髪で青い服を着ているアリスをそのまま小さくしたような感じだった。青年はチラチラとその人形の服装な顔を見ていた。そしてスカートの裾を掴む。

 

「何してるのよ?」

アリスは青年の行動を言葉で止めた。青年は驚いたようですぐにアリスの顔を見た。

 

「いや、何。中身が気になった。」

青年は悪びれもせずに答えた。ある意味では素直とも言える。

 

「今からは気をつけなさいよ。」

アリスは少しだけ恥ずかしそうにしながら青年を注意する。青年は不思議そうにしていたが伝わっているようである。

 

「気をつけるようにする。しかし、このアリスの人形は可愛らしくできるんだな。」

青年は人形をじっと見つめて率直な意見を述べた。

 

まさに何も意識していなかったようでその後も細かく良いところを言っていた。

 

「兎に角、早めに行きなさい。それで上にあるあの境界のようなものが気になるのだけれど。」

アリスは怒っているような嬉しそうな恥ずかしそうな声を出していた。人形をじっと見ていた青年はそっと視線を外してアリスを見る。

 

「上か?何か心当たりはあるのか?」

青年は何かを感じ取ったように上を見つめていた。咲夜は下を向いてアリスのことを警戒していた。アリスもその視線に気づいて見つめていた。

 

「少し前からあるのよ。魔理沙には伝えたんだけどね。」

アリスは懐かしい名前を出した。どのくらい会っていないのかはよく分かっている。が、それでこの図々しさなので青年はあまり何も感じていないらしい。

 

「魔理沙か?なら向かってみる価値はありそうだ。」

青年はゆっくりと視線を戻すと後ろを向いた。そこには気分の悪そうな咲夜がいる。青年は少しだけ心配になったが首をかしげるだけで留めておく。

 

「咲夜、頼めるか。」

青年は咲夜の変わり果てたその様子に疑問形で協力してくれるように言ってみる。咲夜は首を縦に振るだけでそれ以上は語ろうとしなかった。

 

「それでは、また会おう。」

青年はアリスの方を向いて手を振ると、アリスも返してくれた。それから咲夜に引っ張られて猫のようにされている青年を見て優しそうに微笑んだアリスを嫌そうに見ていた咲夜がいたと思われる。

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