空に一線の切れ目がある。
その意味では何処かと繋がるように出来ているはずだが、二人は少しだけ止まっていた。その理由はその先が暗かったからである。
「入ってもいいかしら。」
咲夜は不安そうにしていた。青年としては特に何もしていないからか死んでいるかのように動かなかった。
「ちょっと、寝てるの?」
咲夜は軽く一回だけ叩いた。青年はどうやら何も出来ないので眠っていたらしい。もしもここで咲夜が落としたらどうなっていたか分かったものではない。
「おはよう。それで入らないのか。」
青年は状況だけは分かっていたらしい。寝起きにもかかわらずそれなりに会話が成り立っていた。
「それでは入りましょう。」
咲夜は青年を狭間の中に入れた。青年は尻餅をついてその場に座り込んでいた。その中はとても暗かった。しかし、明るかった。周りは黒を塗りつぶしたような壁に遠くで包まれていた。そして歩けるようになっていた石段は完全に宙に浮いていた。
「登っていい階段なのかしら。」
咲夜は天界とでも考えたのだろう。この階段の先には何があるのか恐れがある。青年はそんな様子を見て笑っていた。
「それでも従者なのか。行ってもみないとわからないだろう。」
青年は石段に胡座をかいて休憩していた。従者だからなんだ、言いたそうにしているが言わないのはまた別の意味がありそうである。
ここに来てから少しだけ身体が重たかった。まるで力が吸い取られているようだった。青年は軽くそんな事を考えていた。懐から香霖から譲り受けていた煙草を一本だけ取り出す。
「そんな事は言わないで。怖じ気付いているみたいじゃない。」
咲夜としてはお嬢様を青年に侮辱されているかのようだと感じた。私がしっかりしないといけないと感じた咲夜は一人だけ立ち上がっていた。青年はそんな姿を見て同じく立ち上がる。何かするわけでもないが石段を登り始めた。
「それでこの先に魔理沙がいると思うが、もう先へと進んでいそうだな。」
青年はリズム良くそしてその先の長い階段を楽しそうに登っていた。咲夜にはどうしてそのようにしているかが分かっていないので奇妙なものを見る視線をしていた。
「貴方はとても楽しそうね。羨ましいわ。」
咲夜はそんな青年を見ながら中傷気味に言い始める。青年は何も思っていないのか何か反論はしなかった。
「仕方がない。人ってこう言う時はそう言うものだろう。」
青年は咲夜への返答としてそのように返す。
一歩もひかないような二人を他の人はどのように見るのだろうか、実際にいないとそれは分からない。
「それにしても上の方が少し騒がしくないかしら。」
咲夜はその場に立ち止まって上の方を見ていた。青年も同じようにしていた。
「少し急いでみるか。」
怠そうに話す青年だがその目は輝いていた。何か面白そうなものを見つけた子供のようだった。
「気を付けて進みなさいよ。落ちたらどうなるか分かったものではないわ。」
咲夜は今度は下を向いていた。青年は上も下を向いていなかった。前を向いてひたすら石段を登っていた。
その先に何が居るのか、先に行った魔理沙はどこまで進んでいるのか青年には色々と気になっていた。その事が頭の中をいっぱいにしているらしく軽い足取りで登っている。
「分かっている。それにしても長くないか。」
青年はボソリと呟いた。石段の一段の高さは三寸にも満たなかった。それが何重にも折り重なって上へと登っていた。既に何周しているのか分かったものではないが青年は楽しそうにしていた。
「永遠に続いているかのようね。」
咲夜は青年とは反対で半ば諦めているかのようだった。それも仕方がないと青年は少しだけ後ろを向いて咲夜の様子を確認してから前へと進んだ。どうやら止まるような気は無いらしい。
「永遠はない。終わりまで歩めないだけだ。」
青年は妙に辛気臭い事をいう。まるで咲夜を遠ざけるような発言に本人はその場で立ち止まった。確かに永遠は存在しない。何処かに終わりはあるのがその場所まで辿り着く前に諦めてしまっただけ。妙な言い方ではあるが納得してしまった咲夜がいた。
「怖気付いているとでも言いたいのかしら。」
咲夜は鋭い視線を後ろから青年に当てていた。青年はどこ吹く風かのように何も気にしていなかった。まるで何もなかったかのようで咲夜は今言ってみても無駄だと感じた。
「いいや、お前はそんな事はないだろう。」
青年はさらっ、と答える。そうすると青年は急に走り出した。咲夜は時を止めてから近づいて青年の横についた。
青年はもう見慣れているのか横に急に立たれても何とも思っていなさそうだった。そして二人は馬鹿のように登っていく。