青年放浪記   作:mZu

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第36話

箒に乗り三人と対峙している黒いとんがり帽子を被った金色の軽いウェーブがかかった魔法使いは思った以上に苦戦を強いられていた。

 

相手は何もしてこないので特に何かあるわけではないのだが、音楽を常に奏でていた。その音が鬱だったり躁の音だったりするので魔理沙は精神的に疲れてきたのだった。

 

其処に幻想の音が聞こえてきて余計に強調されている。鬱の音により身体を落ち着き沈んで、躁の音により気分が紅潮する。それを繰り返しされ程魔理沙は遂に石段の上に座り始めていた。

 

「はい、どんどんと行こう。」

薄い青色の髪が特徴的なふんわりとした方である。薄いピンク色の服装をしており上がシャツの上にベスト、下がフレアスカートである。

 

とても元気そうでこの中ではとても活発な子なのであろう。魔理沙はまたか、と嫌そうな顔を浮かべていた。これを聞くのは何度目になるのだろうか、魔理沙はそんな事を考えていてうんざりとしていた。

 

「メルラン、私がその後に続くわ。」

髪はほとんどストレート金髪でショートボブである。白いシャツの上から黒のベストを羽織っており、黒の巻きスカートをしている。上と下で同じような赤いボタンで止められている。とても落ち着いているが暗い印象を受ける。メルランとは大きく造反している。

 

「ルナサお姉ちゃんたち、私は休憩しているね。」

今度は白いベストに赤いベストを羽織って赤のキュロットを履いている。髪は癖のある薄茶色で内巻きである。この三人に魔理沙は手をこまねいていた。そこに救世主が現れた。

 

「楽しそうな曲だな。」

青年は魔理沙の近くまで近寄る。何があったか聞こうとしたが、ここではあまりにも演奏の音が大きく、会話にならなかった。だろうと青年は判断した。

 

「待て、早くいけ。このまま其処に居たら疲れちまう。」

魔理沙は早く行かせようと青年を急かすが、本人が動かなかった。青年の横を前に会った事もあるメイドが居る。どうして、と聞きたいがあまりにも疲弊している上にこの騒音の中では何も出来なかった。

 

青年はこの躁の演奏を聴きながら頭を使って考えていた。

 

「それでどうしてこのような状況になった?」

青年は魔理沙の近くまで歩み寄ると耳元で言葉が聞けるようにした。内緒話かのように見えるかもしれないがこうでもしないと聞き取れないのである。

 

「私がちょっとちょっかい出しただけなんだけど。如何してかこうなっちまった。」

魔理沙はちょっとだけ笑ってヘラヘラとしていた。青年は少しだけ考えてから咲夜を呼んだ。咲夜は肩を叩かれて耳打ちで何をさせるか青年から聞かされていた。咲夜はゆっくりとナイフを用意した。それから投げた。メルランの演奏は急に止まったので、三人は一気に咲夜と青年の元へと寄ってくる。

 

「嫌な事をしてすまなかった。俺達をここで逃してはくれないか。」

青年は三人とのコンタクトを取ろうと手を大きく振ってこちらにくるようにしていた。別に演奏をしている以外は何の害もないただの演奏家だった。

 

「それは良いよ。良いよね?」

ルナサ姉さん、リリカと他の二人の名前を呼んでいた。この人がここの中で一番リーダーらしい。それで姉さんと呼んでいたのが青年には気になっていたが何も言わない事にした。

 

「別に害を出さないと言うなら。」

ルナサと呼ばれていた人は冷たい息でも吐くかのように言葉を話す。青年には元気がなさそうに見えた。それで何がしたかったのか青年は何となく気になった。

 

「良かった。君たちに危害を加えたいわけでもなかったらしいから許してほしい。」

青年は最初に手を出していた魔理沙を指していた。魔理沙は胸を高ぶらせていて、そして緊張していた。

 

「それでとても良い演奏だけどどこに行くか教えてほしい。」

青年は差し当たり好印象を与えようとしていた。せめて好青年くらいでとどめておくつもりではある。そんな青年を見て三人は何か相談を始めた。

 

「許してもらえて良かったな。」

青年は魔理沙を少しだけからかい始めていた。咲夜はそんな様子を見ながら、演奏家たちを見つめていた。そちらが変な動きを見せたら此方も仕返しするといった臨戦態勢を取っていた。青年は何も気づいておらず、三人組で各々の時間を過ごしていた。

 

「白玉楼だよ。そこでもうすぐ桜が咲くらしいから、演奏を頼まれたから三人に向かっているよ。」

先ほど青年に話していた人がが青年に対してそのように言った。

 

「そこまで案内できないだろうか。桜が見てみたい。」

青年は三人に白玉楼まで案内してくれるように頼んだ。

 

「良いよ、私はメルランって言うんだ。君は?」

メルランと名乗った薄いピンク色で統一した服装をしている少女は青年に話しかける。

 

「山本だ。素朴な名前だが忘れないでほしい。」

青年は偽名を名乗る。その事に後ろの二人は少しだけ驚いたようでそのことは察知された。だが、メルランが聞いてくることはなく何もなかった。

 

「私はルナサ。プリズムリバー三姉妹の長女よ。」

暗い顔をしてどんよりとしていた長女がルナサと名乗る。となると最後に残ったのはリリカとなるが青年は三人全員に話を振る。

 

青年としてはここで仲良くなる事はとても後で生きてくると思っていた。この人たちの音楽は

 

「私はリリカ。その中では末っ子だよ。」

赤いベストを羽織っている少女は一番近くに青年まで近付いていた。そして握手をせがむ。青年はすぐに手を出してあげた。青年は嬉しそうにしていたが周りからは疎まれているのは青年が感じ取っていた。

 

「それでは、リリカに案内してもらおうか。」

青年はそう言うと、リリカは直ぐに前へと進んだ。別に石段に足をつけていないので飛べるらしい。

 

青年は羨ましそうにその姿を見ていた。そしてリリカについてくる青年の右横に咲夜が歩幅を揃えて歩いた。

 

青年の左後ろに疲れながら魔理沙は箒を担いでついてきていた。石段の外の左側にルナサが、右側にメルランがついてくる。いつのまにか大所帯となっているが青年は気にしなかった。

 

青年はルナサにヴァイオリンの演奏を頼んだ。ルナサは嬉しそうにはしなかったが指名されたので演奏家として要望に応えたいのかルナサは飛行した状態でヴァイオリンを演奏し始める。暗い楽曲だったが青年は演奏を終えるまで何も口出しはする事なくその様子を見ていた。

 

鬱の音らしく落ち着いていて昂りを抑えてくれる優しい音がしていた。青年は脱力して良い気分になっていた。

 

「有難う。とても落ち着く曲だから眠たくなるな。」

青年は本当にそうなりそうだった。鬱という風ではなくてやる気がなくなるらしい。青年はそのついでにメルランにも演奏を頼んだ。メルランは上機嫌にトランペットで演奏を始める。

 

軽快な音で落ち着いていた心を高ぶらせてくれる。青年は手拍子をしてさらに盛り上げる。その頃にはほとんど無意識だったのか声を出していた。メルランはそんな青年を見て更に演奏を続けた。気持ちが高ぶっているせいなのか歩く速度が徐々に早くなった。

 

楽しそうにしているがどこかで止めないといけないと思いながら止めることが出来ずに最後まで演奏を聞いていた。

 

「身体が軽くなっている。人に元気を与える曲が好きなのか。」

青年は上機嫌にしていた。姉が静かな曲なら、その次が激しい曲が好きらしい。青年は二人の演奏に満足していた。

 

「私も、私も。」

最後にリリカがキーボードで演奏を始める。ここまで二人が心に響いてくる曲を弾いていたので青年はとても楽しみにしていた。メルランの曲を聴いて為に余計にそうしているのかもそれない。リリカの演奏が始まったが段々と遅くなる青年の足取りにリリカは途中で演奏を辞めてしまった。

 

「どうしちゃったの。」

リリカは不安そうに聴いてきた。順番が悪かったとしか青年は言えそうになかった。そこ手間助け舟を出したのはメルランだった。

 

「幻想の音だもん。心が籠らないなら音楽は伝わらないわ。」

「そうだな、やはり難しいものだ。」

青年は首を頷いてメルランに肯定する。リリカは仕方がなさそうにしていた。

 

「三人で演奏しよう。そうしたら青年にも良さが伝わる。」

そこでルナサが三人で演奏することを提案して場が丸く収まった。その後も長い間演奏が続いていた。青年は拍手や手拍子や声を出してこの場を盛り上げていた。

 

魔理沙は躁と鬱の音に苦しめられながら石段を登っていた。咲夜は三人の演奏を聴いているのかどうか分からないが、確実にプリズムリバー三姉妹の動向を見ていた。

 

この一本道しかない石段で青年が案内を頼んだ理由や演奏を頼んだ理由さえ本人に聞かないといけなかった。

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