「どうも有難う。此処からは演奏をやめるよ。」
石段は終わり真っ平らで平坦な道になった。真ん中に階段の時と同じような石段が並び、周りには白い小さな石で敷き詰められていた。
此処まで整備をしているのか綺麗に磨かれた石で落ち葉一つない。ただし、白い石が敷き詰められた場所よりも外では緑色の木々が生い茂っている。
青年はこの紅魔館のような洋風の庭園と見比べていた。偶に灯籠があるくらいで他には何もないような質素な美のある庭に青年は立ち止まっていた。
「此処からが白玉楼になるのか。」
そんな頃にはプリズムリバー三姉妹は青年の周りに居た。青年はその感じを嬉しく思いながらその場で立ち止まっていた。
「そうだ。此処からが白玉楼となっている。」
ルナサが此処まできても暗い表情は崩していなかった。
真面目な事はもう既に伝わっていたがそれでも目の色を変えないのは職人というのかなんと言うのかといつまた状態であった。
「此処の掃除をしている人は大変そうだな。此処でも建物らしい物が見えていないか。どれだけ広いのだろうか。」
青年は三人に話を聞いていた。メルランは青年の前にふわふわ漂いながら楽しそうにしていた。
あれだけ演奏を真面目に聞いてもらえたことがなかったのだろうか三人とも会った時よりも嬉しそうにはしている。
「私もわかんない。此処に来るのは何回だったかな?あまり来てないからね。」
メルランでも分からないと答えていた。青年は他のルナサとリリカにも聞いてみたが同じような答えしか返ってこなかった。仕方がなく前へ進むことにした。
「まずは白玉楼の人に会うか。どこへ向かえばいいか分かるか?」
青年は少し楽しそうに聞いていた。少しだけ桜というものに興味があるらしい。白玉楼というのも同じようであるらしい。メルランがそんな青年を見ながらくすくすと笑っていた。
「おもしろいひとー。」
メルランがそう言い始めるとリリカもルナサもそれなりに笑っていた。青年も制止させようとしているがそれでも楽しそうにしていた。
ここまで来て何をしているのかと咲夜が、何をするんだ、と魔理沙が思った。
六人で歩く。
その先には大きな桜が咲いていた。
見上がるような高さで幹があっても何分かはかかりそうな太さをしている。
ほとんど満開でピンク色の薄い鮮やかな色が青年の心を楽しませた。その下には何やら屋敷が見えるが此処からでは何も見えなかった。そのぐらいの距離で一人で対峙する剣士がいた。
銀色・白色の髪をボブカットで黒いリボンを付けてまとめるようにも見えた。眼の色は暗めの青緑色で人間に比べて肌は白くまるで死人かのようだった。白いシャツに青緑色のベストを来ている。下半身は短めの動きやすいスカートを履いていて白靴下に黒い靴を履いている。
胸元には黒い蝶ネクタイを付けている。まだ未熟そうな見た目をしている少女が此処にいる六人を止めた。
「あなた方は幽々子様の開催された桜見の会の招待客でしょうか。」
その少女は多分白玉楼の関係者だろうと青年は思った。そして今日は満開間近なので桜見の会を開催するらしい。
青年は何となく行きたいと感じていた。しかし呼ばれていないのに混じるのも気が引ける。青年はその何方にしようか迷っていた。
「おう、そうだぜ。」
魔理沙はその少女に向かって言った。青年としては上手くかわして中に入りたいがそのような事は許されるのだろうと悩んでいた。プリスリバー三姉妹は何もしなくても入れるはずだ。
咲夜はこの時どうするんだろうか?主人を連れてもう一回来ますとか言いそうだった。
「私も招待を受けた客です。」
咲夜は魔理沙の方へと行き青年の予想とは大きく外れた。青年はその様子を見られたのか少女に怪しまれる。
「貴方は?」
「俺もそうだ。」
慌てて返した青年に少女は疑いの目を向けていた。それもそうなるだろうと青年は感じていた。
プリズムリバー三姉妹は特に何も言わずにそのまま中へと入っていった。少女はその六人を見ていて何を思ったのか剣を抜く。青年はその所を察知して踵を返す。
少女はバランスを崩して青年の前に倒れた。その間に青年は後ろに親指を立てて合図を出した。
早く白玉楼に行け、と。青年は合図を出し終えてから歩く五人の足音を聞きながら剣を鞘の中へ納めた。その間少女が立つのを待っていた。
「怪我はないか?」
青年は少女に優しく声をかけた。そして青年は転んだ拍子に手を離したのであろう刀を拾った。その力に青年は謎に思いながら少女に渡した。少女は剣を貰い受けて立ち上がった。
「ええ、有難うございます。誠にお見苦しい所を見られてしまいました。」
少女は青年に感謝の意を述べた。とても恥ずかしそうにしていたのが青年にも伝わってくる。少女は手から離した剣を背中に背負っている鞘の上の方に収めた。腰のあたりについているが其処には既に刀が納められている。
「いや、気にするな。それにしても此処では桜が咲いているのだな。とても綺麗な桜だ。誰かが手入れしているのか?」
青年は少女に聞いてみた。確かにあの大きさは並のものではない。此処からは白玉楼があるのかどうか分からないような場所だが桜はしっかりとそこに存在を示していた。
それだけ見ると長年手入れをし続けているのが嫌でも分かった。
「不束ながら私がやらさせております。褒めていただき有難うございます。」
少女は立ち上がりながら青年に感謝を述べる。別に何か青年がしたわけでもないのが青年は心を痛めていた。
それでも少女の真っ直ぐに感謝を述べる姿は何とも品がある。それで余計にそう思えるのかもしれないと青年は感じた。
「そんなにかしこまらなくてもいい。此方まで疲れる。折角の行楽の席が少しは崩してみろ。」
青年は適当に場を繋ぐ。この教育を受けているのがひしひしと伝わるこの少女に青年は嫌な気分を感じていた。あまりかしこまられるのは好きではないらしい。
「いえ、そのような事は出来ません。ご来賓の方に失礼があってはいけないので。」
少女は頭を下げて青年に言っていた。その誠意はちゃんと伝わっているが、それが青年に伝わっているかと言えばそうでも無かったが別に怒ることも出来ないので青年は言えない怒りを抱く事となった。
「その心構えがあるのなら別に構わない。」
青年はそこで踵を返すと白玉楼の方へと向かった。確かに生真面目だが堅すぎる印象を受けた少女はその場で更なる客を待ちわびていた。青年はその背中を見ながら白玉楼へと向かうことにした。