「貴方がこの異変の犯人ね。」
赤い巫女服を着ている。そして腋は見せておらず防寒着に着替えていた。来て早々この態度である。流石に青年もそちらを向く。
「誰?妖夢は何しているのかしら。」
幽々子は野蛮な人だと感じて敏感に反応した。楽しい会話をしていたのである。その意味では邪魔されたので幽々子が怒りたい気分が理解出来る。青年は頭を抑えて溜息をついた。
「私は博麗霊夢。貴方の野望を終わらせにきたわ。」
霊夢はお祓い棒と札を持って既に臨戦態勢だった。幽々子はしまっておいた扇子を再び出して口元を隠す。あれは敵に対して向けているものらしい。
「それで幻霊。あんたは何してるの。楽しく会話しているの?」
霊夢は何故こうも怒るのかは理由が青年は理解出来なかった。来て早々、犯人扱いされて楽しく会話をしていた人が仲間となればそれはそれは虫の居所が悪くなる。青年は縁側から立ち上がって距離を取り始めていた。
「山本さん。そんな事はある?」
幽々子はやはり怖くなってしまった。青年は背を向けてその場を後にしようとした。其処に追い打ちをかけるように幽々子は弾を撃つ。青年はその弾を受けて顔から地面に突っ込んだ。相当な威力であり、青年は受け身は取ったが最小限とはいかなかった。
「こんな風にするつもりはなかったんです。其処だけは信じてほしいですがここまでしたからには敵と見なします。」
それでいいか?青年は顔を幽々子に向けていた。幽々子は余裕そうな表情を浮かべていた。正面隠していない扇子の横からそのように見えた。
「人間が一人増えても変わらないわ。」
幽々子は優雅にそして冷淡な目をして飛び上がった。霊夢もそれについていく。
「弾幕で決着をつけましょう。女性が武術で雌雄を決するのは私には合わないわ。」
幽々子はお淑やかにしていた。そのままにしていれば何人の男が後ろをついてくるのか分からなかった。
それぐらいの力を持ち合わせていたが霊夢には正直そのような気はしていなかった。青年はそのままでは負けるだろうと思った。
「そう。ならお望み通り弾幕ごっこをしましょう。」
霊夢は何故か札を持って幽々子と対峙していた。幽々子は背後に大きな扇子を作り出す。
其処から鮮やかな赤色の蝶が羽を広げて向かってきていた。その鮮やかで優雅な幽々子に似合っている弾幕を霊夢は掻い潜りながら札を投げていた。単純に霊夢の札は確実に幽々子を狙っていた。しかしそがな当たらないとなると幽々子はその弾も相殺させている事となる。
「ルナサ、メルラン、リリカ。魔理沙と咲夜を探して霊夢の援護をしてくれるように言ってくれ。」
青年はその弾幕ごっこに見ほれていた三人を呼んでからそのように伝えた。それからルナサがどの辺りを探すか妹に指示を出していた。
此処で一人の青年がこの弾幕の勝負に入るのは無粋だろう。青年は霊夢と幽々子の弾幕の勝負を見ていることにした。
幽々子は蝶のようなゆっくりとした不規則に動き回る弾幕を張ってその蝶が周りを飛び回り霊夢の行動範囲はかなり絞られたかのように感じた。しかしそれは幽々子も同じであった。
霊夢の札は直線に素早く飛んでいくものと相手を追いかけてゆっくりと飛ぶ二種類があった。幽々子はこの弾をよく見ながら軽快に避けていく。
紙一重、それが一番似合う言葉であった。
幽々子は霊夢の札を肌身で感じ取るように横に抜けていく。幽々子はここで突然大きな弾を撃ち始める。霊夢は急に弾幕が止んだ事を見て攻勢へと体勢を変える。それは幽々子には見通されていた。
真っ直ぐに飛ばされた緑や赤の蝶が霊夢の横を通る。霊夢は此処ではよく分かっていなかった。左下を潜り抜けて札を投げつける。直線で素早い弾だ。幽々子はピンク色の髪を揺らしながら艶やかに避けた。
そして同じ蝶を飛ばす。霊夢も気づいているはずだ。幽々子のしておきたいことが何であるかを。
その蝶は急に破裂した。小さく細かい楕円状の弾へと変貌した蝶は霊夢の横を進む。その弾が左右からそして上下から霊夢の元へと忍び込む。霊夢は札を投げるのをやめて弾幕をかわすことに専念した。それが不味かった。
霊夢は最後まで弾を見ていなかった。破裂した蝶は全てがそうしているわけではないという事を。
霊夢の行動する先々にその蝶は潜んでいた。大量に放たれる蝶。そして破裂する蝶から放たれる楕円状の弾。避けても変わらない鮮やかな赤や緑の景色。霊夢には許容範囲を超えそうになっていた。
「無粋ですね。」
扇子で大きく仰がれた。それでも大きな隙を生み出すことに成功して霊夢は体勢を立て直す。
「邪魔なのは分かっている。だが、一人であるとは言っていない。」
青年はこの場に入ることは嫌った。だが、仲間が負けそうなら汚い手でも使ってやる、そんな意気込みをしていた。
それに誰が魔理沙が咲夜を探しているといっていったか。誰もそのような事は言っていない。
「あら、山本さんも私の邪魔をするの。」
幽々子は多分せめて中立を保ってくれるだろうと思っていた。
そんな青年は幽々子に向かって魔法を使って霊夢の代わりに追撃をする。もちろん一人で立ち向かえないのはよく分かっていた。
だからこそプリズムリバー三姉妹に咲夜と魔理沙を探しに行かせている。青年も探そうとはしていた。だが、ここで霊夢が死なないように時間を稼ぐのも良いだろうと考えていた。
「邪魔はしくなかった。ただし春をもらう量は考えて欲しかった。食料がちゃんと育たなくなる。」
青年はいつになく鋭かった。やはり紅魔館で食べた美鈴や咲夜の食事が美味しかったのだろう。食に関してかなりの関心を持っていることはここに居ない咲夜が知っていた。
「今更は無理よ。一回で終わるならそれで良いじゃない。」
この戦闘中でもおっとりとした口調で話していた。カリスマ性は皆無とは言わないがあまり無かったように思える。
それは紅魔館の主人も同じか。青年は失礼な事を考えていた。あまりそのような場面を見ていないのも原因の一つではある。
「その一回が長すぎた。それによって桜も散った頃に吹雪が吹いている。それでも自分の欲求に生きるのか。」
青年は地面に立って勝負をしている二人に向かって訴えていた。それが届いているかどうかは知らないが霊夢は完全に復帰している。そして後の二人も集まり始めた。
「来たぜ、霊夢。」
「私も微力ながら援護させて貰います。」
魔理沙と咲夜が霊夢の隣に立つ。幽々子一人で四人の相手は中々手を焼く事だろう。
それならもう一人この騒ぎを聞きつけてきた人がいるはずだ。その人を待っていた。
「厄介ね。所詮は遊びだもの。楽しみましょ。」
その表情は冷酷であった。生きている心地もしないほど青年は身震いした。それだけの恐怖を植え付けられた。