紅い屋敷にはそれなりの気品と度胸が必要だった。それは此処に吸血鬼が住んでいるというだけではなかった。また誰かがマナーに厳しいとうわけでもなかった。何があるかと言えば青年の勝手な想像だ。
「咲夜、ピーマンは入れないでとあれほど。」
今日は趣向を変えて回鍋肉と呼ばれる肉料理らしい。他にも点心やデザートがあるが青年は最低限しか食べなかった。レミリアは嫌い食べ物は食べないらしい。身内の中でそのようなことはしている分には良いだろうが青年がいるこの場では変に浮くというものである。
「お嬢様、お食べください。」
咲夜は異常に怖いというものである。此処では城主よりもメイド長の方が立場であるという意味では此処で言葉を発するのが度胸がいると言うものである。
他には皿に盛られたライスと杏仁豆腐という珍しく質素なものである。何があったのかと聞きたくもなるが青年は敢えて聞こうとはしなかった。興味がない訳でもないが食べられたらなんでも口に入れるのがこの青年である。そこら辺にある毒キノコも食べられると言えば食べてしまうだろう。
「やーだー。」
レミリアは主人としての気品も感じられない姿を露わに見せつけている。青年はちょくちょくそのような場面にあっているので今更何とも思うことはなく小皿に分けられている回鍋肉をフォークで食べているわけである。その傍でメイドと主人が言い争いをしている。此処には三人しかおらず遅めの食事となっていた。美鈴や小悪魔は先に食べていたらしい。
咲夜は元々人前では食べないのでこの時間だろうが主人は何の目的があってこのようになっているかはよくわかっていない。青年が聞かないのが悪いのではないかと思う。
「デザート抜きますよ。」
咲夜は教育係も務めているらしくバランス良く食べさせようとしている。子供舌なら食べさせなければいいと青年は思っていた。何を持ってそこまで食べさせるのかは分かっていない。
回鍋肉を空にしてライスを無言で食べている青年には理解出来るものではなかった。
「食べる。食べるからー。」
主従関係が逆転したこの場では常識は通じないらしい。青年はくだらない事を頭の隅で考えながらライスを口の中に入れた。青年は一言も発していないので全体的に食べ終えるのは早かった。
「杏仁豆腐はレミリアにやる。」
青年は自分の食べた食器を持って厨房へと向かった。青年は迷う事なく館の中を進むと食器を片付けてからまた早足で図書館へと向かった。そこには螺旋階段があるが青年は手すりから飛び降りる。毎回やっているが何処で発動出来るかの度胸試しというものである。
偶に床まで落ちる。
青年はゆっくりとした速度を維持しながら図書館まで歩いてから一階まで降りた。
「今日の飛行はどうだったかしら?」
パチュリーは青年の今日何処まで行ったか気になるらしい。青年はいつも通りソファーに座ると青年はパチュリーとの会話を始める。青年は嬉しそうにしていた。
「今日は博麗神社まで行ってから魔法の森まで行ってきた。取り敢えず飛行は着地に一回失敗したのと無理して飛距離を伸ばしたのが反省点と言ったところ。色々と言いたい事はあるだろうがあまり気にするな。」
青年はそれだけ言った。パチュリーとしては上々の出来なのだろう。そう、とだけ答えて本に視線を戻した。パチュリーはどうやら嬉しそうにしていた。あまり人の事は気にしないが青年は別であるらしい。
「良かったですね。これで皆さんに何とかついていけそうですね。」
小悪魔は青年の成長を嬉しそうにしていた。青年は急に現れたように感じたがそもそもよくパチュリーの横にいるのでさして驚く事でもないと思った。青年は少し考えてから頼み事をする。
「自然魔法についてパチュリーに教えてもらったものと紙とペンを頼みたい。」
「はい、分かりました。」
フヨフヨと宙を浮く小悪魔をチラッと見てから自分の頭の中の世界へと入り込んだ青年はどうでもいい事を考えていた。単純にパタパタしている黒い羽が妙に気になるのだ。それが何だ、と思うかもしれないが青年にはどうにも押さえられないらしい。
「お持ちしましたよ。」
青年は目を閉じている間に小悪魔は頼まれた用事を済ませていた。青年はその小悪魔を見て後ろを向いてくれるように頼んだ。青年は素直だ。気になったらとことん調べるのが青年の性なのだ。
「ヒャ、おやめください。」
「すまなかった。」
青年は急な事をして済まないと答えた。小悪魔としては急に触られた事を怒っているのだろう。それでもソソるものがある。青年は何の表情も変えずに魔道書を開いている姿をみた小悪魔は何となく思ったのだろう。
「触る時は申し付けがあればいつでも良いですよ。」
小悪魔は艶のある声で話した。完全に誘惑していてその感じはサキュバスであった。青年は顔をそちらを向けた。
「今は魔道書の復習に集中したい。」
青年は急に興味を失ったらしく小悪魔には冷たく接していた。青年がそのような性格であるのは重々承知している。
それでも小悪魔としては不満だったのだろう。それがサキュバスとして抑えていた方でもある。誰でも良いので生気を失わせるのはそのような悪魔は良くしているのである。パチュリーによりその部分は抑えられた召使として召喚されたが今日はどうにも抑えきれなかった。
「そうですか。なら、お邪魔しますね。」
小悪魔は乳房を当てて青年を誘惑する。青年はペンを右手に持って魔道書を読んでいて気づいたことを書き記していく。パチュリーは聞かれた事しか答えない。なので最近では此処に来ても話すことが無かったりする。
「ねぇ、私の羽を触った時どう思いましたか?」
サキュバスとして何とかして向かせてやりたかったが青年の防御は果てしもなく堅い。青年は紙に見つけた疑問を書き記すと魔道書のページを進めた。まるで居ないかなように小悪魔はつまらないと感じたのか耳元で囁く。
「パチュリー様は今は調べ物をしているのですごく集中しています。貴方はどうされます。」
「魔道書を読むことにする。」
青年はもう小悪魔に見向きもしなかった。それが何を示しているのかは話す必要もなかった。青年にこれ以上何をしても何の反応も起こさない。一人の時間を好む青年はこのような時間はその世界に入る。小悪魔は聞くタイミングを間違えていた。いや、逆だと思うが青年の頑なな態度がそうさせる。
「パチュリー、分からないところがあるのだが、聞いても良いか?」
青年は小悪魔がどこかに行ってしまってから話しかける。パチュリは眼鏡をかけて本を読んでいたので妙に拡大されたパチュリーの目が青年を覗き込んでいた。
「貴方、後で後悔するわよ。」
青年は疑問が浮かぶ。それは単純に言えば小悪魔との会話は何も聞いていなかった青年はその場で無意識に答えていただけだった。小悪魔の羽に触ってツルツルとしているというイメージと違ったので青年は単純に興味を失ってから魔道書の方に集中した。
「何の事だ?」
青年はパチュリーでさえも呆れさせるほどの素っ頓狂な返事をする。青年はさらに疑問が重なるだけで青年は口を開けていた。
「ひゃー!」
大きい悲鳴がこの図書室に響き渡った。
「この声は小悪魔よね。何があったかしら。」
「俺が見てくる。」
青年はソファーから立ち上がるとパチュリーを調べ物をするように伝えてから二階に上がる階段を上っていく。