青年放浪記   作:mZu

48 / 257
第48話

青年は自然と落ち着いていた。昨日よりは大分体が楽になったのだろう。手を上に伸ばして固まっていた身体をほぐした。

 

「おはよう。」

青年は誰かいるのを感じて声だけ出しておく。

 

「おはよう、随分と長い睡眠ね。」

パチュリーはゆっくりとした口調で話していた。青年にはどういう意味が分かってはいなかったが時間を長くしたからこうなっているのだと感じた。青年は兎に角微睡みから抜け出そうとその場で立ち上がる。ぼやけた視界がはっきりとして来る頃には此処がどこなのかを知った。

 

「随分と綺麗になっているな。」

ここは魔法図書館だった。昨日青年とフランドールは・スカーレットが遊んでいた場所。

 

あの時は本棚が倒れていたはずだな、と青年は曖昧な記憶の中を探り出して思い出していた。パチュリーは出来るだけ話そうとはしなかった。何かを知っていると青年は思った。

 

「妹様はどこに行ったんだ?」

パチュリーは首を横に振るだけで何も答えようとしなかった。何か話したくはないのだろうと青年はあまり考えないようにしていた。身体が重たくどうしようもないので仕方がなく上へと行こうとした。

 

「少し風に当たってくる。」

青年は静かに息を吐くかのように言葉を出すとフラフラと外へと出て行った。パチュリーはそれを止めた。何か怖いものでも見たのか、多少怯えている。青年には何か分からなかった。

 

「待ちなさい、少しは身体を休めたらどうなの?」

パチュリーの忠告を青年は素直に聞ける気はしなかった。理由は明白だろう。その気にはならなかった。

 

「いや、風に当たってくるだけだが。何か問題でもあるのか。」

青年は至極当たり前のことを聞く。確かに青年の言い分は正しいと思われる。散歩を行く事を拒まれる理由はないはずだ。それにここは紅魔館であり敷地内に出るだけである。それに其処からどうするつもりもない。パチュリーの忠告を素直には聞けなかった。

 

「問題は、ないわ。それでも待ちなさい。」

パチュリーは魔道書を取り出していた。青年は柄を握っていた。今にも対峙しそうな雰囲気は漂うが青年にはあまりその気はないらしい。

 

パチュリーも諦めて魔道書を出すのをやめて机の上に置いた。青年も柄を握るのは辞めてソファーに座る。外に行く気にもならなくなったらしい。

 

「パチュリー、行かないかわりにフランドールについて教えてくれ。」

青年はパチュリーに昨日戦ったフランドールについて聞き出そうとしていた。パチュリーもそれなら、とばかりに話が進む。

 

「まず、レミリア・スカーレットの妹で何でも破壊する能力を持っているわ。」

パチュリーは其処で青年の反応を見ていた。青年はソファーの上で膝を抱えて座っていた。パチュリーは青年の様子を見ながら慎重に話を進めていた。

 

「そして気に触れているからあまり関わらないがいいわ。力の制御を知らないから簡単にクシャとされるわ。」

青年はパチュリーの話を受け流すかのように聞いていた。それか耳まで届いていないような暗い目している。パチュリーは何となく分かってきたのだろう。この青年があまり行動を起こさないのを。

 

「それで何処にいる。その妹は?」

此処で青年は口を開いた。その言葉は今までの言葉を聞いていないかのような身勝手な言葉だった。

 

「地下牢に居るわ。私が一昨日のうちに幽閉しておいたわ。」

パチュリーは当たり前かのようにしていた。青年にはあまりにも信じられない行動のようだったらしい。青年は膝を下ろすとパチュリーに向かって言う。

 

「それは気が触れるだろうさ。幽閉しているんだろう。」

青年のその威圧は何処から発せられるのかどうにも分からなかった。それ以上は聞いてはいけないようにも感じたのでパチュリーは聞かないようにした。明らかに人が変わっている。パチュリーはその事だけはよく分かった。

 

「そうね。そうなるのも仕方がないんじゃない。危険なのよ。あれを野放しにしたらどうなるのか。」

 

「それは教えられなかった奴らの問題だろ。単純に遊びたいだけじゃねぇか。」

青年の怒りはごもっともだとパチュリーは感じた。

 

「姉なら遊びに付き合えるだろ。それも出来ないのか?」

青年は言いたい事を口走っていく。パチュリーは確かに言い分も間違っていない事を知りながらそれ以上は刃向かえない現実を見ていた。レミリアは確実に妹を危険視して幽閉するようにパチュリーに言っている。パチュリーとしては今まではレミリアの協力者としてフランドールを幽閉をしていた。それは力の加減を知らないフランドールに幾度となくこの図書館を破壊されている。その度に修復しては壊されてを繰り返していていた。

 

「フランドールは泣いているだろうな!誰にも相手にされないなんて。」

パチュリーはレミリアの方が間違えているのではないのかと考えていた。青年の方が正しいように感じる。パチュリーは遂に目覚めたらしい。

「貴方が正しいわ。レミリアの元へと向かいましょう。」

 

 

「と言うわけなの。レミィどうにかならない。」

パチュリーは此処までの経緯を主人に話していた。主人は認めたくない事実だろうが受け止めざるを得ない事だと自覚していた。青年の言い分は主人からももうどうしようもないほどかなっていた。

 

「どうにもならないでしょうね。これは私たちが今まで逃げ続けたツケというものよ。パチェ、何かいい方法はない?」

まず、ないだろうと思っていた。言いたくはないが現状メイド長である十六夜咲夜によって紅魔館が動いているようなものだった。まずはその存在を消さないと主人は本当の意味でその様にはならなかった。

 

いくら古くからの友人で何でも言える仲だとしても言っていないことは幾らでもある。パチュリーにとってはレミリアの痛いところをつくのは辞めていた。

 

「まず貴方がカリスマ性がないからよ。主人としてメイドに実権を握られて貴方はただの飾りなのよ。その証拠に紅霧異変以後の紅魔館はメイド長の代わりを美鈴と青年がしてけれど、貴方の代わりは誰もしなかった。もう貴方がいても無駄よ。妹に任せた方がまだ良いわ。」

言いたい事を言ったパチュリーは泣きそうなレミリアを救う様なことは何もしなかった。それどころか逃げ道を防いでいる。此処でメイド長の元へと向かえばそれこそパチュリーの言う通りなのである。それだけ避けないといけないとレミリアは思っていた。

 

「うぇ、パチェのばかぁ。其処まで言ったことなかったじゃない。」

パチュリーはその様に泣いたところでやはり助かるつもりはなかった。今は古くからの友人ではなく紅魔館の主人として話してほしかった。パチュリーはレミリアには事実だけを伝える必要があると感じた。もしかすると青年は此処に来る運命があったのかもしれない。

 

「無いわよ。出来るだけその様な事は言わない様にしたわ。友達として顔を立てるのが当たり前よ。でも今日から辞めるわ。もう主人として何のカリスマの欠片もないもの。友人としてしばらくは話さないつもりよ。」

その言葉はレミリアには強く胸に響いたのであろう。レミリアは目に涙を溜めながら泣かないようにしていた。パチュリーはそれでも青年の言ったところを主軸にレミリアを責め立てる。

 

「でも、これは私にも言える事なの。幽閉が一番手のかからない事だと思っていた私たちが愚かだったのよ。」

「パチェ。」

涙ぐんだ顔をしているレミリア、パチュリーは敢えて何もしなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。