雨の降る日は終わり、人里にもカラッとした天気が続いた。
何も祝う事はない、そのはずなのに誰もが何らかの宴会を開いていた。その顔は楽しそうでなく強制的にやらされているようなやつれた顔を浮かべていた。人里だけではなく幻想郷の何処かで三日おきに宴会が行われ、地獄にいるかのような顔を見せる人々には大体の人が苦しめられた。そして高まりつつある妖気と何も起こらない事象が重なり、さして平和な日々を送る。誰が犯人とも言えないような現状では誰もが解決の糸口を探せなかった。それどころか宴会に参加している人が互いを怪しく感じて余計に手が出せないというわけである。
「この異変、次の宴会までに終わらせるわよ。」
そのやつれた顔とは裏腹にそのやる気に満ちた顔を浮かべていた。
魔道書は宙に浮いている。そして青年も一人で浮いていた。その奇妙な行為も慣れれば出来るのだろうかと感じるがそこまで練習したとも言える。
青年としては周りの環境など知った事ではなかった。宴会があるらしいということしか知らない青年は今日も午後はパチュリーと魔法図書館で魔法を習っていた。案の定、何もしてくれないし必要以上に教えてはくれないが青年は素直に全てを受け取り思考を繰り返して自分に合った方法を見つけて一つの魔法の一種として完成させた。
その腕はそれなりの本が書けそうなものである。その魔法道具と併用したものはパチュリーでさえも分からないと言える青年だけの魔法となっていた。軽く言えば天才、重たく言えば厄災とパチュリーは感じていた。一種の爆弾と化した青年は今日も上の騒ぎなど気にせずに一字一句見逃さぬように魔道書を読み漁る。しかし、気にせず遊びに来る人もいるようだ。
「お兄さん、トランプしよ。」
フランドールは遊びたいのだろうか青年の体を揺らした。その力はだいぶ制御されているようで青年も痛くなく軽く気づくぐらいだった。ん?と言った感じである。青年は魔道書を開きながらフランドールの顔を優しく見ていた。
「妹様、今日はトランプを所望ですか?また四人でやりましょうか。」
青年は魔道書を軽く左手で刀を抜きながら投げる。その場にとどまった魔道書を見るとそのまま納めた。それだけで宙を浮いている。
「パチュリー、小悪魔も呼んでくれないか。」
はいはい、とその状況を見てすぐに察したのかパチュリーは小悪魔を呼ぶ。青年はその間にトランプを混ぜていた。元々レミリアの持ち物なのだが青年とフランドールで半ば強引に奪ってこの場所に置いていた。フランドールとレミリアの間はまだ埋められておらずしばらくはこの場所へと赴いてくるのだろう。
「妹様、今日は何がしたい。」
青年は机にトランプを置いた。なんでも出来るように混ぜているだけだった。フランドールは少し考えていた。そんな頃、小悪魔は黒い小さな羽をぱたつかせて床に着地した。
パチュリーはその席から立ち上がると机からソファーへと変えた。要は錬金術の類いらしいが青年には到底無理だと感じている。最初は青年も驚きはしたが今更そのような事はない。ただ、その錬金術には興味があり等価交換である事は覚えている。青年の知識としてはそのくらいだ。
「うーんとね。七並べかな。二人一組のやつ。」
「よし、グループ決めるか。どうしたい、パチュリー?」
青年はトランプを持ってもう一度軽くシャッフルした後に四人分に分ける。ジョーカーは入れたり入れなかったりするが今は入れていないので13枚ずつになっている。
「フランに決めさせてあげて。」
短絡的に答えるので青年はフランドールに話を振る。少女は軽く悩んでいたがはっ、と思いついたのか案外早めに返答は返ってきた。
「お兄さんと一緒にやりたい。その後は小悪魔。」
フランドールに主導権を握らせているのは他の三人の配慮というのかこちらの方が優位に立っているので対等にならない限りはこのようなルールでやっている。要は手を抜いた勝負をしろと言われているが青年は余程のことがない限りは手を抜かない。
「俺とやるか。早速始めよう。」
青年は適当に分けた札を取ると四人はトランプを始めた。その後、青年とパチュリーが組んだ時だけ勝てないというのはお決まりなのである。そんなこんなでこの四人は幻想郷で起きている異変など何も感じないのである。