この寂れた神社では偶に賽銭が溜まっていた。理由はここで宴会が行われるためにここ来た人が幾らか入れてくれるというわけである。博麗神社の巫女としてはこの異変は美味しいものなのだが今回はそう上手くいかないのがある。
霊夢にはここで起こる妖気が高まりつつある事を感じ取っていた。しかし誰も何も起こさないので霊夢は異変として解決するにも何も出来なかった。異変を起こした犯人の意図が読み取れない以上は何も出来ない。ましてや、宴会を止める事でしかこの異変は終わらないが収入源がなくなるので取りやめに出来ないところもある。どちらにせよ、霊夢には利益と損害が重なるのである。
「しかし、此処も賑やかになったものだな。」
魔理沙は皮肉にも聞こえなそうな褒め言葉で此処に来た。霊夢は細い目をして魔理沙を歓迎した。平和な一日を過ごそうとしていたところでの突然の客は霊夢にとっては嫌なことではあるが魔理沙なので日常の一部とも言える。
「ええ、そうよ。賽銭が溜まってとても暖かいわよ。」
境内の掃き掃除を始める霊夢とは裏腹に魔理沙は勝手に茶を作っていた。それだけ行き慣れているとも言える仲である。
「最近、宴会多いじゃない。やっぱり異変なのよね。でも犯人が何をしたいのかさっぱりだわ。」
「そうだな、しかし楽しいからいいじゃねぇか。」
魔理沙は茶を啜る前に楽しそうに答えた。確かに宴会が行われている、という点では何ら問題はない。しかし妖気が高まっている点では何らかの異変が起こっているのには変わらない。それで何が起こっているのかと言えば何も怒っているわけではないので何も出来ない、という訳である。一層のこと、宴会をめちゃくちゃする他ない。
「ただ楽しいだけなら良いわ。他人の勝手だもの。頻度が多くて人が辛そうにしているのを見逃してはおけないのよ。」
霊夢は掃き掃除を途中で終わらせて、と言うよりかは半ばやる気が無くて辞めた。霊夢は魔理沙の横に座る。日も高く少しだけ暑い日であった。
「確かに。霊夢の言いたいことは分かる。だが、何も出来ない。なら楽しんだもん勝ちだぜ。」
魔理沙はいつも通りにお気楽に過ごしていた。そうなる人はどれぐらい居るかと言われるとそうそういないような気はする。それだけ頭が悪いのかと言えばそうではなく元々の性格とも言える。霊夢のように冷静で淡白というならば魔理沙はなんでも興味がある口より先に体が動いていたタイプの人だと思われる。
「行きましょ。早めに解決してみせるわ。」
霊夢が飛び立つと立てかけてあった箒にまたがって急いで追いつく魔理沙が空に浮かんでいた。】
人が疲れ果て地べたに眠る。何があったかと言えば何もないのだろうが、ただ疲れている人がそのまま眠ってしまっている。その大名行列がその辺りに広がっていた。
連日何処かしらで行われる行事で大人たちは参ってしまったのかとんでもない惨状を見せる人里で銀髪の大人しめな柄の入った紺のシャツにスキニータイプのジーンズでラフな格好をしている女性と紺の着物を未だに着ている青年がいた。
「大量の人が地べたに寝転んでいる。」
青年は人里に入ってまず目に入った事を率直に述べ始めた。青年の目にもこれが異常である事はすぐに分かった。夢を見て現実に絶望したような人がちらほら見える中で何も感じていないのか青年は一言述べただけで足を止めるような事はなかった。
「ええ。連日の宴会できっと体が疲れているんだわ。」
その適当と言えるのかやる気の感じられない気の抜けた返事なのだがそれでもそれなりに答えるというのは元々のポテンシャンルと言えるのか。青年は以前と変わっている女性をそれもありか、とあまりに気にかけなかった。
「それなら行かなければいい。」
そうなるだろう、地べたに寝転がるな程行かなければいい。青年は率直な意見を述べる。それが出来るならそれで解決するのであるが。
「今、幻想郷では宴会が何処かで開かれている。それが強制的に集められたような感覚を覚えてやらされているわ。」
「よく分からん。」
青年からすればそうなるのだろう。群れを好まず個を貫く青年には宴会など行かなければいい。接待程度で酒を飲み交わすくらいで良い。女性が思っていることなど青年には理解し難い事柄だ。
「何らかの異変である事は間違いないわ。でも尻尾は掴めていないの。」
「姿は表しておらず、何もしていないという事か。」
青年は少しだけ興味を持った。ほんの少しだけだが面白がっている。
「ええ。目的も分からないのでは話にならないわ。」
女性はお手上げ状態だが本来ならメイドの仕事がある。青年はその事を聞いてみる。
「して、紅魔館のメイド長。仕事はあまりしていないのか?」
青年としては何も知らないがこうなる理由はそれなりにある女性は青年の発言に静かに怒りを込み上げるがこういう人間だと鉾を収めることにした。
「それはお嬢様にあまり私に指図をするなと言われてメイドとして給仕ぐらいしかしていないわ。」
女性はかなり苛立っていた。レミリアは何を言っているのか、と青年は思ったが自分の蒔いた種である事は何も知らない。
「掃除ぐらいはしてほしい。紅魔館の住人の品位が一目で分かってしまう。」
青年はぽつりと呟いた。それは水たまりに一滴の雫が落ちたあの音かのような静かな声だった。ただし伝わるのは嘆きや悲しみと女性は思った。
「俺だけ迷惑がかかるならそれでも良いだろう。だが、美鈴やパチュリーましてや自分まで品位を落として欲しい訳ではない。」
青年は思ったのだろう、顔を整えておくことがどれだけ良いことなのか。青年は確かに広間に入った時のあの汚れ具合を気にしているのだろう。紅いカーペットの所々に白いものが落ちているという不快な雰囲気を青年は少なからず気にしていたのだろう。
「それに一人でやる必要もないだろう。何人かカーペットの掃除を任せればいい。六人いれば簡単に終わるだろう。そこまでは頭が回らないか。」
青年は嘆いたのだろう。それがどれだけ周りに迷惑をかけているのかそもそも青年が言えた立場ではないがつまりはそういう事である。
「ええ、そうね。私一人で生きているわけではないもの。美鈴の事も考えてあげないと。」
青年は横で見ながら何も感じていなさそうだった。他人の事には必要以上に干渉しない。あまりにも無関心な青年だがそれなりの理由はある。
「今日は何を買うだったか?」
青年は今までの話を全て無にするかのように関係ない事を話し始める。女性は何とも思わないようで話を進める。
「実は何もないのよ。貴方と話したかっただけ。それだけの理由で呼び出したわ。」
女性は妙な感じを覚える笑みをしていた。言うなら何か安心したような不安が取り除かれたような表情をしている。それが何かあるのかと青年は感じたが別に今はそのような顔は嫌いではなかった。
「何もないか。ついでに人に話しかけて意見を聞こう。そうすれば異変の解決にはなるだろう。」
青年はどこを見ているかさえ分からないところを見ていると女性は感じた。一体何を目的としているのかさえ女性には判断がつかなかった。
「そうね。少し見回ってみましょうか。」
女性は腕組みをし始めて人里の道を歩き始めた。誰もが疲れ切って気力もなく店をしている商人。する気もなく寝転がる職人。誰もがやる気もなく何もしていない人里が麻痺した感覚は青年はやはり奇妙に思えた。その中で歩く二人に反応したので話しかけてみる。
「少し聞きたいことがある。時間は良いか?」
青年は膝を曲げてだらしなく薄い茶色の着物を着た人に視線を合わせる。その雰囲気は優しそうで何か話したら何とかするような気がしている。
「宴会続きで体が疲れているんだ。本当にどうしたら良いかわからない。」
その人はゆっくりと首を動かして青年を見ていた。その眼は虚ろでどこを見ているのかよく分からず青年としては非常に困った。
「どうして参加をしたんだ?」
「いつのまにか参加していた。何か一箇所に集められたみたいだ。」
「何も身に覚えがないのか。厄介だ。」
青年は後ろを見ていて女性に意見を求める。女性としても特に何も感じる事はなく話すことに困ったといった感じだ。
「して、人里にいる人は大体がそんな感じなのか。」
「あぁ、巫女さんが解決しようとしているらしいが何も変わっちゃいねぇ。何してんだ。」
巫女と言えば博麗霊夢のことだろうと青年は思った。異変を解決させようと奔走しているとは思ってもいなかった青年は頭を抱えて悩むような雰囲気を出す。
「そういうものでもない。そもそも不明確なそのような証言を集めて解決出来るだろうか。誰かに連れ去られているとは感じていたりはしないか?」
「あん たの言うことには間違いねぇ。確かに誰かに連れ去られていねぇ。気づいたら宴会の場所にいる。なぜか分からないが俺は参加をしている。」
青年は頭を悩ませていた。そんな事が可能となる人物が居るのだろうか。時止め?ならこの人は参加などしないだろう。となるとそのように催眠を受けているのか?青年には予想が付かなかった。
「咲夜、流石に催眠という方法しかないが心当たりあるか?人を操るみたいな能力を持っている人とか。」
バッ、と青年は後ろを向いて女性に聞いた。その速さはまるで疑っているかのようだが流石にそのような事はないと信じたい。
「時間停止で場所を移動させる事はできないわ。私は物には干渉できない。操るというなら運命を変える能力を持つお嬢様ならあり得そうだけど。」
「それはない。そんな事をしそうとは思わない。」
「えっ、あ、そうよね。そうするとその線で探してみましょうか。」
青年の横から突かれた矛を女性は寸前で避けて更に言葉を続ける。確かにそのようなことに使わないであろうレミリアは何処からかの噂でクシャミをするだけだろう。
「他の人から話を聞いてみる。話してくれてありがとう。」
青年は其処から立ち去ると青年は蛇のように体を使って起き上がった。腕組みで歩く青年に雰囲気の似合わない女性が後に続く。