妖夢を背負いながら白玉楼への石で出来た綺麗な階段を登る。その足取りは妖夢が重いというわけではないがやはり足取りは重たかった。剣を重ね合わせていたということもあるが一番の原因は青年に興味が無いということだ、少女を背負っているというのに。
階段のその上にはとても静かで静寂をその門が示していた。青年は久し振りに門をくぐるとゆったりとした歩調で青年は庭へと踏み入れた。
その奥には優雅に手を振る女性がいる。彼女も一応幽霊であるらしいが最近まで普通の女性だと思っていた。あまり反応は出さなかったが普通や常識の通じない幻想郷では何も驚く事ではない。何も考えずに縁側に妖夢を寝かせると青年は本館の居間のところまで連れた。襖を開けて風通しを良くして身体を休めてもらう。此処でも四季というものはあるらしく今は少しだけ暑い。しかし下と比べれば何とでもないくらい、少し肌寒いくらいだ。
「さて、少し体が疲れた。」
青年は女性の前でいきなりうなだれた格好を見せ始める。それだけ慣れているというのが一番言える事なのだがそれにしても何とも言えないほど仲睦まじく感じる。
「お疲れ、山本さん。妖夢の相手ありがとうね。」
女性は扇子で顔も隠す事はなくゆったりとした着物の着方で涼しくしていた。心地好さそうな感じがする女性を青年は横にいながら目を瞑って腕組みをしていた。何故か青年は此処の住人にもないにもかかわらずまるで此処が住処ととも言えそうな程落ち着いていた。
「いや、俺が頼んだ事だ。幽々子が何か言うこともない。」
青年は腕を組んだ状態で首を左右に動かして自分で動かしてからゆっくりと話し始めた。その様が何処かの王かのような感じに幽々子はクスクスと面白そうにしていた。青年はその事は何も知らずに、と言うのか気にせずにそのままにしていた。
「そうね、今日もゆっくりしていきなさい。此処では何もする事はないでしょうけど。」
幽々子は自身の右横に置いてあったのであろう湯呑みを持って青年に渡した。青年は目でそれを見るともらう気はなさそうだった。此処で何故貰わなかったのかと言われると別に茶を欲していなかったのだろう。
「貰ってくれないの?」
幽々子は少し不安そうに聞いていた。とても珍しい、と青年は思ったが何も言わない辺り確信犯だと言っても過言ではなかった。幽々子は少しだけ茶を啜ると元の位置に戻していた。青年は幽々子に足を向けないように寝転がると腰に携えていた木刀を縁側に立てかけてから頭の下で腕を組んでいた。要は既に仮眠をとる態勢をしていた。幽々子は少し悲しそうな顔をしていたが目を開けようとしなかった青年は何も思う事はなく、誰にも見られていないかのようにしていた。
「今は欲しくない。」
青年はそれでも会話はできるようであった。惰眠をするには十分とも言える環境であるため、青年にとっては何でもないような休憩のひと時とも言えるのだろう。
「そぉ。」
幽々子はため息でも履いているかのような反応を見せ始める。青年は既に寝息を立てていた。もはや何をしに来たのかさえ目的も読めない幽々子はその場で何もしようとはしなかった。その時間を長く過ごすほど幽々子の湯呑みに入っている茶の量は減っていく。喉が渇いたからではなく心が渇いているからだ。