青年放浪記   作:mZu

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第56話

人里では誰もが落ち着いていなかった。悩んでいた人々が精神的におかしくなりもう楽しみようになっていた。嫌々行われていた宴会も段々と楽しむ人が増えてきた。

 

その分人里としての本来の目的でさえも全てを忘れて人々は楽しんでいた。誰もがその世の中をどうでも良くなるようなほど落ちぶれた人里で三人は諦めていなかった。

 

「して、これをどう考えるんだ?」

青年は皮脂の上で下の川のせせらぎを静かに聞いていた。このような音が好きな青年には今の人里というのは不協和音に等しいものである。

 

「これか?何ともならないんじゃないか?」

魔理沙は八卦炉を持ちながら手の中でくるくる適当に転がしていた。魔理沙にとってはこのようなお祭り騒ぎがとても大好きなのだが流石に飽きてきたらしい。その内人々の中にいる気さえすると青年は思っていた。

 

「もう誰も見当たらないじゃない。こうなったら宴会全てを潰そうかしら。」

霊夢はお祓い棒を右手に持ちながら左の手の平を軽くポンポンと叩いていた。少しだけ苛立っているのか言動が荒々しいが青年も魔理沙も気にしていなかった。ところで三人は当てもなく此処でたむろっているわけでもなかった。この橋は人里の真ん中に位置しており三人で見張っていた。人が集まるところに犯人が現れ始める、と言う霊夢の予想に魔理沙は無条件で乗っかり、青年は何もしないよりかはとその話に乗ることにした。

 

「真夏にもなると流石にもうそろそろ出てくると思ったが。何も起こらないとは呪われていないか。」

 

「それは言わないの。私も面倒なんだから。」

青年はふと上を見ていた。それに魔理沙だけは気付いたがその上にギラギラとした太陽しかなかった。少し雲があるぐらいだが別に見たくなるような面白いものでもなかった。魔理沙は青年が何故上を見上げたのかは聞かずにその場で見ていることにした。

 

「霊夢、上に誰かいるのか?」

青年は何かを見つけたのだろうか、と魔理沙は思ってくるくる回していた八卦炉をしまった。

 

「誰もいないと思うわ。多分気のせいじゃない。」

霊夢としては何となく面倒だったのかそっけない返事を青年にしていた。青年はそうか、とだけ言ってからすぐに人里を見渡せるようにしていた。魔理沙はどうおもったのだろうか?何か不穏な気を青年から感じ取ったのかもしれない。そんな三人の元へ其処へひょこひょこと現れたのは大きめな横に長めの二本の角を持っていて明るめな茶色をしている結び目は腰辺りにあると思うが子供のように小さく前後にふらふらしているので酔っ払っている。青年はその姿をいち早く察知していた。

 

「貴方が異変の犯人か?」

うぬも言わせぬ言いようにその人は固まってしまった。その理由としては言うまでもない。それはいきなり異変の犯人かと聞かれて疑問に思い始めるのが至って普通かと思われる。何を言っているんだ、と言う表情を浮かべているその人に青年は膝を曲げて視線を合わせていた。青年の前にいる人は少したじろいでいた。青年は球と直方体と三角錐のブロックのような物を吊り下げており青年は多少なり何を意味しているのかを考えていた。

 

白のノースリーブに紫のロングスカートを着用している。左手に何らかの瓢を持ち蓋がしてあるため其処に飲み水が入っていると思われる。青年は真紅の瞳を見つめながら答えるのを待っていた。

 

「いや、私はそのような者ではない。他を当たってくれ。」

青年はそう言われているが何も気にしていないらしい。おそらく何らかの確証があるのだろうがそれをまだ出す気はなさそうだ。

 

「では、その酒臭さは宴会はさぞ楽しかったのだろう。子供なら飲む物でもないはずだが。」

青年はその人の全体を見ながら話していた。何をされても良いように注意しながら話を聞いていく。

 

「これは私が鬼だからだ。一番強い種族だ。」

鬼と言った瞬間に後ろで聞いていた二人は頭を傾げる。この幻想郷ではかなり珍しいらしくこの2人でも知らないものであるらしい。青年は少し距離をとって後ろを見てそれを確認した。霊夢と魔理沙は少し小馬鹿にしたような表情を浮かべている。

 

「鬼か、それで酒臭いなら鬼に失礼ではないか。」

青年は何となく知っているのだろう。それなりの確信を持って話を進めていた。青年のその勝ち誇ったような表情を見て何とも言えなくなってきたのかもう諦めたようだ。

 

「私が宴会続きの異変を起こした。春雪異変の弊害で春の期間が少なくなってしまったから人々を集めて宴会を行わせた。」

さらっと答えるので青年は少しだけ不安に思えてきた。平然としている様子がどうにも気にかかるのか珍しく右手を顎に添えている青年は何か深く物事を考えているように思えた。後ろで見ている二人が特に何も言えないようになっているのは多分そう言うことなのだろう。

 

「それは気軽く誰かに来て貰えばいいだろう。このような強引な方法を取らなくてもそれなりに人が集まるはずだ。」

青年にとっては未知の種族である鬼というものは自分勝手なものだと思っていた。

 

「良いや、本当は鬼を集めたかったんだ。出来るだけ沢山来てもらえたら何処かで静かにやっている。」

その小さくなっていくその人の声に青年は静かに耳を澄ませていた。何かあるわけででもないがこの人の言い分は何となく興味があった。同情などと言ったものではないが春雪異変を素早く解決していれば起ることのなかった異変とも言える。青年は此処にいる三人が防ぐことの出来なかったものとして深く考えていた。

 

「仲間が欲しかったのか。別に鬼とやらなくとも妖怪同士で開いていれば良いだろう。それでは駄目な理由が何かあるのか?」

 

「あるさ。鬼というのは一番上に君臨していた。故に対等に酒を飲みたいと考えている私にとっては飲みにくいものなんだよ。」

 

「なるほど。例え、春の短くなる異変が起きていなくても起きていた事なのか。」

 

「許可を取れるかどうかは知らないが多少なり気晴らしになる方法がないわけでもない。」

 

「どうするつもりだ。」

 

「紅魔館に行ってみると良い。其処でフランドールと勝負したいとでも言っておけ。それなりに戦ってくれそうだ。」

青年としては何処を見ているのかは分からなかった。その人に一応紅魔館までの道のりを説明して歩いてくるように言っておいた。それは急な来客になるので相手も準備していない可能性があると言う節の説明をしておいた。

 

「そうか、探して行ってみることにしよう。とても楽しそうだ。」

 

「楽しみにしておけ。凶悪だから少し前まで幽閉されていた。」

青年は立ち上がるとその人は三人の横を通って人里の中へと消えていった。青年は興味深そうな顔をしていたのを二人は知っている。

 

「さて、早めに向かってみよう。」

青年の顔には屈託もない笑顔を浮かべていた。霊夢はその表情を見て嫌な気分になり、魔理沙は妙に胸がゾクゾクする気分となった。青年には悪気などなく素直なだけなのでそんな二人を見て気を紛らわせるように話をするしかなかった。

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