青年放浪記   作:mZu

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第64話

青年は致し方がなく魔道書の近くに座った。レミリアもその近くで床に座る。

 

「妹様は楽しそうにしていたか?」

青年はやはりフランドールの事を気にしていた。レミリアにはその事は何となく分かっていた。レミリアはその予想が当たったことに嫌になりつつも青年の質問には答えるつもりだ。

 

「私の事も聞いてくれると言う約束はしてよね。フランドールは楽しそうにしていたわ。」

どちらが上であるかは見たら分かるが実際はなぜか違っていた。主人であるレミリアは居候である青年の話など聞く必要などなかった。それでも条件を提示している必要があるのが何とも滑稽とも言えるものであった。

 

「そうか。主人が閉じ込めていなければこのような事にはならなかっただろう。」

レミリアには運命が変わっていたことが視えていた。フランドールはこのまま紅魔館の中で楽しく暮らしていたのだ。それを軽々しく破って薄い茶色の髪をしている酒飲みのよく分からない人物と楽しそうに話しているのである。その横には目の前にいる青年がいた。そして今日連れてきた伊吹萃香と同一人物であった。レミリアには最早敵う所がなくなっていた。青年は何か考えているのか何処を見ているかよく分からないようなところを見ていた。レミリアには興味を示していないのは本人が一番知っている。

 

「閉じ込めたのは悪いと思っているわ。それで満足なのかしら。」

 

「別に。貴方が何をしようがそれは勝手だ。俺がその時にいたのなら話は変わるかもしれないがな。」

青年は遂に魔道書を手に取り始めた。どれだけ魔法の勉強をしたいのだろうか、レミリアはその手の動きを見ていた。青年としては手早く終わらせたかったのか魔道書に目を通し始める。他事をし始めた青年に話しかけるしかないレミリアとしてはその温度差を感じていた。

 

「もう変えているのよ。それで私の話は終わらせるわ。別に済んだわけではないけどそれで良いの。」

 

「そうか。」

青年は鼻を鳴らすような返事をして再度魔道書に目を通し始めた。青年は知らなかった。

 

これがどれだけ危険な事であるか。そしてそれがどれだけレミリアの意識を青年へと向けたのか。レミリアは不意に後ろを向くと青年に向けてグングニルを投げてみる。当たる事はなかったが避けているわけでもなかった。槍が外れたわけでもなかった。二階からわざとらしく本を閉じる音を出していた青年にやっとレミリアは気づいた。

 

「鏡というものを知っているか。自分を写すための道具だがそれを反転させてみた。中々面白いものだろう。」

青年は二階の手すりでバランス良く座っていた。どのようにしているかさえよく分からない。レミリアはもう一度グングニルを投げてみた。何の手応えもなくまたも透けていったので何処に居るかさえ分からなかった。レミリアは軽く辺りを見渡すが青年の姿は全くといっていいほど見えなかった。下にいる人は鏡を応用した魔法で写っているだけ。なら何らかの光を放ち此処に投影させるものが必要だとレミリアは考えていた。その予想は外れる。

 

「どこに居るのよ。」

パチュリーは簡単に見つかる。その場所は机が焼き焦げたのか形を保っていた。その先に見えている。机といえば椅子を入れるところでは隠れられる場所である。レミリアはそう考えた後すぐにその場所へと向かった。息の音脈打つ鼓動さえも聞こそうなほどに近づいてレミリアはグングニルで突きながら中を見ていた。しかし其処には誰もいなかった。ましてや誰にも見つかるようなことはないような場所だった。隠れてなどいなかった。

 

「隠れんぼは終わりにするのか。」

青年は机の上で座っていた。それさえも幻想と思えたのでレミリアはグングニルを短く持って素早く横払いを行う。その素早さこそは一級品なのであるがそれがとばかりに青年を透けてしまった。もうレミリアには何をしたら良いのか分からなかった。いつ、何処で、どのように襲ってくるのか分からなかった。もはやレミリアに逃げ場が無いと言っても過言ではなかった。それだけ此処には隠れる場所がある。本棚の裏なのかそれとも上なのか。はたまた更に上にいるのか。幻影を追いかけているかのような尻尾の掴めなさにレミリアは探すのをやめるしかなかった。

 

「もう辞めましょう。」

 

「いや、何もしていないのだから何も終わらせるつもりはない。」

レミリアは既に其処にある青年の幻は斬っているのでそれ以外を探し始めていた。

 

「居たのね、貴方の遊びにも付き合うのは大変なのよ。」

 

「勝手に遊んでい他のはレミリアの方だ。俺は確実にここに居た。それなのに見つける事が出来ないのか。」

レミリアは度肝を抜かれることになる。その場に青年は居て自分がその幻想に遊ばれていると言う真実がどうにも頭がおかしくなりそうだった。その事実を確かめるために盲目に近づいた。恐る事もなくまた足がすくむような事もなく、その青年まで近づいた。

 

「貴方、ずっとそこに居たの。」

「そうだ。」

青年は至って普通であるかのように答えていた。レミリアにはそのカラクリは知ったことではないが何でもないかのように平然としている青年に対して子供騙しに引っかかったように感じた。どうでも良いような罠にかかって結果的に戻ってくると言うよく分からない状態となっていた。

 

「私も主人としての威厳を示したいのに何で咲夜みたいな超人が此処に入るのかしら。」

レミリアは調子を悪くしてしまったのかその場でへばっていた。青年には興味がないので気にするつもりはなかったが綺麗事では済みそうではないので何となく答えてみることにした。

 

「咲夜はメイドだ。主人が位を上げない限りは何もしないだろう。しかし、妹はその内狙いに来るだろう。その事も兼ねて説明しておく。素直に譲れ、紅魔館も大きく変わるだろう。」

青年には隠す事を知らなかった。レミリアの心をズタズタに踏みにじっているのだがその事には気づかなかった。レミリアもこうなるのはよく分かっているのだろう。特に顔色は変えようとはせずにそのままの状態で話していた。

 

「そのようね。もう少しは隠して述べて欲しかったけどそれで良いわ。これからは幻想郷を大きく変えていく事になるから覚悟しなさい。」

レミリアには見えているのだろう。青年はどのように幻想郷に関与しているのか既に運命という形で見えているのだろう。青年はその言葉を聞いてよく意味が理解出来ないのか不思議そうな表情をしていた。レミリアはその間抜けな青年を見ていて少し笑えてきたのだろう。どうしてこんな奴に嫉妬していたのか、を。

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