簡単に言ってこれは難解な話だ。青年はその事に頭を悩ませていた。
魔法陣、線の引き間違いや何かの狂いで何が出てくるかさえ分からなくなるそんなデリケートなものを青年は書いていた。パチュリーに無理難題だけれど、と言われて試験的なもので書くこととなっていた。
青年はゆっくりと床に線を描きながら簡単な物を作り出していた。土を素材にしてそれを固めてちょっとした人型のものを作るらしい。どうせそこまで長くないでしょうから、と青年に半ば強引にやらせていた。青年は心配と期待が入り混じって胸が高ぶるのを感じながらゆっくりと床に円を書いていた。
その大きさ、太さはちゃんと合っているはず。青年はゆっくりとその中に円を描き始めていた。その感覚を誤るととんでもない失敗をするので慎重になっていた。その震えが少し出てきたのでパッと垂直に上げて一旦息を整える。
青年は一旦そこで辞めて全体を見てからもう一度少し前から始めてもう勢いで書き始めていた。青年は線を描くのを辞めてから一番大きい円とその中にある円を線で結んだ。その角度や太さ、長さに気をつけながらゆっくりと書いていた。初めて文字を書き始める人のそれを見ているかのような青年にパチュリーは子供のように見えて微笑ましく思っていた。青年としてはあまりその様な気にしている暇などなく失敗をしないように慎重に、かつ大胆に素早く書き始めていた。何となくコツを掴んでできたのだろう。青年は見本を見ながらスッ、と線を書いていく。
その作業効率の速さに横で見ているパチュリーも興味深く観察していた。パチュリーにもその様な頃があったのかは知らないが懐かしい気分になるのはよく分かる。最後に真ん中に置かれている土に魔力を届けるために真ん中に向けて四本の線を土に当たるようにしていた。
「どうだろうか。」
近くにいたパチュリーに出来具合を確認している青年は右手で額の汗を拭ってゆっくりと呼吸をしていた。此処まで息をする事さえ忘れるほど目の前の事に集中していたのだろう。少し疲れたような表情を見せる青年はそのまま後ろに倒れた。
「まぁまぁじゃない。初めてよね。線の太さも均一に近いわ。これなら形にはなるんじゃない。」
パチュリーは嬉しそうに話していた。まるで自分の事かのようにしているのでそれを見ている青年と嬉しそうな顔をし始める。青年はもう一回集中してその魔法陣に触れた。そして創造したいものを思い浮かべて青年はそっとそして強く祈った。
魔法陣として描かれている白い線が光り始めて土の所まで行き届いた。それから土まで光り出して高さにしてカップにも満たないような高さに盛られた土が動き始めた。土は中に巻き上げられて少しずつ人型を示し始めていた。青年はちらっとその様子を見ていたが初めてにしては綺麗に成功していたので自分が一番興奮していた。
「出来たか。」
青年はゆっくりと口を開いて何かを噛みしめるかのように話し始めた。パチュリーは何も話さずにの顛末を見ていた。青年はパチュリーのその姿を見てまだ油断できない事を知り青年は更なる力を注ぎ込んでいた。既に光っていた白い線と人型の土の塊が更に光り出した。それからは床に降りてくるのを待っていた。
土も少なかったのでやはりコップくらいの大きさにはならなかった。青年は左膝をつけて自分で作り出した土で出来たゴーレムを眺めていた。造型は少し歪となっているが出来としては良いところとなっている。少し歩きにくそうに魔法陣の中を歩き始めるゴーレムを青年とパチュリーは見ていた。
「これで済んだのか。」
青年は今度こそ、と思っていたが自分よりも目の前の事に食いついているパチュリーは自分の持っている紙に何かメモをしていた。青年は人の事なので見るつもりはなかったがパチュリーを此処までさせるのはそれはとても嬉しい事なのでちらっと見ていた。
青年と同じく殴り書きで本人にしか読めない字を書いていた。いや、本人すら読み取れないような文字となっていた。青年はそれだけを確認すると自分でも感じた事を書き始めていた。形が歪である事、動きが円形になっている事、一回だけ離したからだと思っている青年はその考察を含めて一枚の紙をまとめていた。気付いた事やゴーレムの出来具合を書き連ねて後でパチュリーに見てもらうつもりらしい。
「いい出来ね。驚いたわ。貴方も大分素質はあるんじゃない。」
パチュリーは半ば自分のことのようにしていた。それが青年にはとても嬉しかった。このように誰かと成功を共有できるのは嬉しいものであった。
「良かった。パチュリーのおかげだな。」
青年はとても嬉しそうにしているパチュリーを見ていて青年にも何か思い当たる節があるのか楽しそうにしていた。青年には屈託のない笑顔を浮かべていた。パチュリーもいい人材なのでこれからも書かせてみようと思った。
「それは言い過ぎよ。私は見ていただけなんだから。」
「それが良かった。魔法というのは自分でやらないといけなかったからそれだけでも嬉しい。」
パチュリーには青年の成長を本人の努力の賜物だと思っていた。そうでもない限りはこんなに成功するような事はないだろう。それから青年は気付いていないのだろうが確実に魔力が強くなっている。だからこそそれなりの形をしたゴーレムとなっていた。パチュリーは言い方が失礼だが今日は出来ないと思っていた。それはこれが初日だからではない。練習も何もしていながらでもない。魔力の強さである程度補正できるが青年には補正が何もないに等しかった。それでも此処まで形になっていた。そう考えるしかないと言うわけである。
「私にできる事なら何でも言いなさい。貴方の成長を見ていたいわ。」
青年は早速紙にまとめていた自分が感じた事を渡した。パチュリーは新品の机で上機嫌に青年の感じ方を答えられる限り答えていた。