青年放浪記   作:mZu

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第71話

満月の夜、あの溜まっていた賽銭もきれ始めた博麗神社では何もしていない一人の少女がいた。その少女はゆっくりとしているようで今日も茶を飲んでこれから寝ようとしていた。その中で急に現れた女性にも少女は何も感じていないようだった。

 

「霊夢、今日は何もしないのね。」

その女性はゆったりとした紫色のドレスを着用して胸元が大きく開いていた。そこ以外の露出はまるでないが。空中で半身だけを出して霊夢を読んでいた妖怪は青年が白玉楼で出会ったことのある紫という人物だった。

 

「紫、今は何も起きていないじゃない。それでどこにいけば良いというのよ。」

霊夢は寝ようとしていたからか、微妙に不機嫌にしていた。紫はそれは気にしていないらしく何とも思っていなさそうだった。霊夢には紫は苦手な部類であり、何がしたいのかはよく分からなかった。

 

「起きているわよ。時が進んでいないのよ、貴方達が一切動かないから私から来たのよ。」

紫からすれば異変を解決をしようとしない霊夢に呆れてわざわざ様子を見に来たのだろうがあまりその必要はなかった、と言うよりかは逆効果だった。霊夢は既に布団を敷いて寝る準備を始めている。紫はその事を少しも慌てるような事はなく冷静にしていた。

 

「紫にはよく騙されているのよ。本当だろうが嘘だろうが貴方のいう事は聞かないわ。」

昔から騙され続けている霊夢にはやはり紫というのは胡散臭い存在であった。そのような事を考えると霊夢の判断が正しいとも言えるかもしれない。だからと言って博麗の巫女として異変を解決しようとしないのは紫には気になるらしい。

 

「別に良いのよ。その結果として信仰がなくなるだけなのよ。その事は大分痛手なんじゃない。」

紫には博麗神社の金銭面など状況は全て把握していた。まともに調理も出来ず食材も手に入らないので何も食べないという時もないわけではなかった。その事を紫は知っていたので霊夢は断ることが出来なかった。幾ら騙されようとも紫に付いていくしかないようだ。霊夢は敷こうとしていた布団をたたんでその場に置いておくといつも持っているお祓い棒を持って紫の元へと向かった。その表情は疑いの目で気を抜くこともないような鋭い視線を紫に向けていた。

 

「分かったわ。仕方がないから貴方についていくわ。でも異変らしいとしか言わないから貴方の事はまだ疑っているのは忘れない事ね。」

霊夢は紫に鋭くきつく言っていた。その様子には流石に紫も苦笑いを浮かべていた。しかし霊夢はそれなりの信頼を持っているようで少しだけ笑っていた。周りから見れば不思議な関係だがこの二人の間では昔からの馴染みとも言える関係だった。

 

「分かっているわ。私は少し用を済ませてから霊夢についていくわ。スキマで見ているから任せたわ。」

紫にとっては異変などどうでも良いようなものであった。ただ、異変を解決する人間が何も動かないから妖怪が声をかけて異変を解決させようとしていた。紫が来たことで初めて異変というものに気づいた霊夢は何処かへと異変を起こした犯人を探そうと空を飛んで上から探そうとしていた。その先には何があるのかそして誰が待ち受けているのかは今居る人では何も分からなかった。そしてこの異変は嫌なものであり、そして面倒なものであるのも後で気づくこととなる。

 

「早めに来なさいよ。私は何も知らないんだから。」

霊夢は不機嫌になりながらもゆっくりと飛び上がっていた。紫は赤いリボンで結んだスキマに半身を潜めて何処かへ行ってしまった。

 

 

同時刻、その静寂の物語る冥界にある屋敷では主の甘えごとを聞くこととなっていた。その館の主人である西行寺幽々子はその半身で何処かへ行き、そして誰かと言い争いのようなそうでもないような事をしているのを見ながらいつもの事のようにしていた。

 

青い帽子に白い布をつけてその間からピンク色の短めの髪を出している。淡い青色の着物でゆったりとしているようだった。妖夢によって出された湯呑みに入った香りの良い茶を飲んでその深みのある旨味を感じながら飲んでいた。渋みは少なめらしく物足らないと言った感じである、あまりお気に召さないらしい。その茶を出した本人は庭で剣術をしている。幽々子には関係のない事なので別に見ている事はない。襖を開ければ見れない事はないが開けていない辺りそのようだ。

 

「すいませんね、ちょっと野暮用があったのよ。」

その場所から現れた八雲紫は金色の髪で少しウエーブをかけた長い髪を揺らしながらゆっくりと座布団に座った。幽々子は特に関心がないのか何も言おうとはしていなかった。その様子はさながらあまり歓迎していないようだった。

 

「野暮用ね、何があったのかしら。」

紫の表情が少し変わって不安そうにし始めた頃にようやく口を開き始めた。その気持ちはきっと目の前には向いていないようで何処に集中しているか本人でさえも分かってはいなかった。その目のまま紫と対面していた。

 

「霊夢に異変だと言うことを教えてあげただけよ。それ以外は何もしてはいないわ。」

紫としても友人のその変わり具合にはどうにもついていけないが幽々子も何か考えている事があるのだろうと今は放っておくことにした。何か変化があれば幽々子も少しは明るくなるのだろうと軽く考えていた。

 

「所でこれはどういう点が異変なのかしら?」

幽々子はそう言ってから湯呑みに入っていた茶に口をつけてチビチビと飲んでいた。熱いからではなく最近どうにも気が入らないのである。こう茶を飲む事でさえ何か無機質なものに思えてきてしまう。紫にはその変わり方に一定の法則がある事を見つけたのでニヤニヤする気持ちを抑えて説明を始める。

 

「表面的には時が進まない異変なのよ。それは妖怪側がそのように考えているだけで人間側としては何も変化は感じられないみたい。中国では前の皇帝の話を書き換える事があったらしいけどそれはその目で見てきた人には何も通じないのがいい例よね。」

要は人間は書き換えられた歴史しか知らないが妖怪は書き換えられる前の本当の歴史を知っているという事である。その相違が今回の異変の一番の問題点とも言える。誰がそのような事を行なったのか。そして何の目的があったのか。

 

「そういう事ね。私達は感じているけど妖夢には通じないような事柄というわけね。それで紫は私に何を頼みたいの?」

幽々子は何とも話しにくい、微睡んだ目をしていて不気味というべきか奇妙なと言うべきかよく分からないような感じだった。それでも紫は話を進めていく。そうするしかないからだ。

 

「貴方にも異変解決をしてほしいということよ。一組で行くよりかは遥かに成功率が高いと思うのよ。」

紫としては成功率を上げるためらしいが、それなら他の人にも頼めばいいと思っていた。それにあまりにも興味のなさそう表情をしているので紫には乗り気ではないと思われている。幽々子は別にやるにはやるが気が乗らないだけである。

 

「なら、行きましょうか。白玉楼に居続けるのも最近はやる事が無くて暇だと思い始めていたのよ。」

幽々子は茶を飲んで湯呑みを空にしてから襖を開けた。その頃、紫はスキマを使ってまた何処かへ消えてしまっていた。その場所は本人にしか分からないがきっと霊夢の所だろうと幽々子は薄々感じていた。

 

「妖夢、支度は済んだかしら?」

襖を少しだけ開けている幽々子に妖夢は振っていた剣を素早く納めてすぐに答えた。その速さは流石は従者と呼べる完璧なものだった。

 

「はい、いつでも行けますよ。」

妖夢は幽々子の元へと近づいてくると思っていたが縁側の所で何かをしていたので幽々子はこっそりと見ていた。

 

「準備が早いのね。」

其処には幽々子の為の飲み物と軽食の為のおむすびが二つ置いてあった。それを何かに包んで背中に担いでいた。妖夢はその姿で幽々子が来るのを待っていた。幽々子は急いで下駄を履くとトコトコと冥界と現世を繋ぐところまで来て降りていった。此処は本来通ってはいけないのだが結局の所、誰も直そうともせず特に困っている事もないので幽々子も妖夢も誰かに頼む事や自分で直そうとはしないまま放置されていた。

 

「幽々子様、彼処にある竹林に向かってみましょう。彼処が怪しいです。」

妖夢は幽々子に指をさしながら提案していた。幽々子としてはあまりやる気は出ていなかったが早速怪しいところがあるので行くしかないという結論となっていた。妖夢としては単純に幽々子に貢献出来たと感じて嬉しそうにしていた。

 

「では、そちらへ行きましょうか。」

飛行はせずに垂直落下を繰り返す二人に弾が襲いかかる。その弾は下でやっていた弾幕勝負の流れ弾であり二人には関係なかったのだが妖夢は幽々子を守る為にと血走った。幽々子は止めようとするがその制止は妖夢の耳には聞こえなかった。幽々子も混じり三つ巴の泥沼の戦闘を繰り広げる。その結果として何が待ち受けるのは異変の犯人こそが知っている。

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