淡い緑色の細長い植物が多く生えている。今までが木で覆われていたので急に視界が晴れたこの竹林まで歩いてついた。青年はこの変わり具合には流石に戸惑っているらしく少しだけ考えていたが無駄の様に思えて何もしなくなった。その先には何があるのかもよく分かってなどいなかった。
「竹というものよね?急に環境が変わったじゃない。」
レミリアにも同じ様に見えているらしく流石にこの環境は見慣れていないらしい。何か移動してきてそのまま侵食したかの様になっているので青年としてはあまりにも変貌した土地に普通では思いつかない理論をこじつけてみた。
「誰か居るのだろう。まるで空から落ちた天空都市の様だな。」
青年はそんなふうに考えないとどうしても難しいらしい。その竹の生えているところの土と木の生えている土ではどうにも質が違う様にも思えた。何となく青年は膝を地面につけて両手で両方の土を握ってみた。どうにも竹の方が柔らかいのでやはり違うのだろう。青年はゆっくりと立ち上がると香霖堂で貰った煙草にやっと火を付け始めた。レミリアは急に嫌な臭いがしたので不意に顔を見た青年だと分かると直ぐに前を向いて何でもないかの様にしていた。
「天空都市なんて幻想的ね。そんな御伽噺が現実に起こるなんて奇想天外な話よね。」
青年から言わせると何が言いたいのかさっぱりなのであるがそれは仕方がないと思われる。確かに結界にでも守られていたかの様に何も話は聞いていなかった。つまりは竹が幻想郷にあったということが初めて知った事なのである。しかも何かを隠すように竹が生えていた。森よりかは遥かに明るいが視界は森以上に通らなかった。
「何か危険な気もするがそれでも行くしかないだろう。その中に何らかの建物を隠している気がする。」
青年にはそんな勘が働いていた。とにかく進むしかないと思っている青年にレミリアは付いていくのを嫌がった。理由は何となく分からんでもない。やはり竹と竹の間の奥に緑色の物があり、まるで壁が目の前にあるかの様だ。これでは確実に迷うのだろう。青年はそれで怖がっているのだろうと思っていた。青年はレミリアの方を見てニコッ、と珍しく笑うとレミリアを安心させようとしていた。しかし、すぐに竹林の中に入り、うぬを言わせぬ態度で歩き始めるので仕方がなく中へと入ることになる。それでも仕方がないのだろうか、レミリアは青年の袖を掴んでスタスタと行く青年に合わせて歩いていた。
「しかし、地面が上がっていたり下がっていたり一定ではないらしい。」
青年はぼそりと呟くとレミリアは急に話した事よりもその事に気がついていないので何を言いたいのかよく分かっていなかった。要は迷ったと言うことである。大きさは様々だが竹というのは成長が早くて全くもって目標にはならない。明日になればまた大きさや風景というのは大きく変わっているのだろう。その事を考えながら青年は一旦立ち止まった。
「少し考えたい事がある。」
青年はその場の近くにあった座るには手頃な石に腰掛けると頬杖をついてその場に居た。レミリアには全くよく分からなかった。この竹林の中に入り込んだ理由もなぜ此処で考える事があるのかも、レミリアは今の青年の行動は謎でしかなかった。
「何を考えたいのよ?私に少しは話してみなさいよ。」
レミリアは我慢が出来なくなったのだろう。少しでも自分の中で理解できる形で知っておこうと青年に聞いてみた。青年は急に話しかけたので少しだけ頭を上げていた。もはやよく分からないというのが青年にとっては理解し難いものである。
「近くに人が居る。それだけは言っておくがそれ以上は言うつもりもない。」
青年は淡々と答えていた。レミリアにはもう既に見えていたのだろう。そちらの方を向いていた。方向からして自分たちが歩いてきた道の方向だった。それが何を意味しているのかと言われると曲者か、妖怪か、いずれにしろ此処で悠長に構えている必要は特にないはずだった。レミリアには益々行動の意味がわからなくなってしまったがある意味、その行動で良かったとも言える。
「お前たち、此処で何をしている?」
青のメッシュの入った白髪に六角柱に板を挟んで三角錐を合わせた様な帽子、そして袖が白いが全体が一枚のものとなっている青い服、そして半月をあしらったデザインがいくつもの連なったスカートの袖をしている。レミリアは立っていたので青年に顔を合わせたが反応しなかったので話を始める。
「何やら時が進まない異変が起きているのよ。それでその犯人を探しているというわけ。貴方も同じ目的なら一緒に行きましょう。」
レミリアは多分器が大きいのだろう、青年は煙草に煙を口に含んでからゆっくりと細く紫煙を出していた。まるで干渉する気は無いようにしているのでレミリアとしては一人で対応するつもりなのだろう。青年は腰掛けた石からは立ち上がる様子がないのでそのように余計に感じた。
「異変?何か起こっているのか。済まないが私は行けそうになさそうだ。それにしても何か嫌な気配を感じてきてみたが何がしているのかさっぱり分からん。だが、此処では素直に帰ってもらおう、此処に入るのは許すつもりはない。」
その人は急に戦闘態勢を取り始める。レミリアは何をするのかは見えていた。その人はどうにか此処から追い出しておきたいらしいが、その理由次第では帰るつもりのレミリアは何となく話を聞いてみることにしてみる。
「此処に入るのは許すつもりはないらしいけれど、それは貴方の勝手な理由ではないわよね。」
レミリアはその人の話の説明として不十分であるところをつく。帰りたいと軽く思っているレミリアにはそうなるのが普通なのである。簡単な理由で帰るのは癪に触るので理由だけは一応耳に入れておきたいらしい。
「私は君たちを守りたいからこのようにしているのであって。抵抗するなら力ずくで帰らせよう。」
その人は戦闘態勢を解くことはなく、さらに強化したように感じる。レミリアは特に理由を話さないその人に苛立ちを覚えた訳ではないが対抗しておこうと考え始めた。何か私たちを小馬鹿にした様に感じた。吸血鬼としての誇りは最低限持っているからこそ理由はどうであれ、その様にされれば気になるのは確かである。
「私はレミリア・スカーレット。貴方は?」
「上白沢慧音だ。人里で妖怪から守る自警隊をしている。」
慧音には多分このコンビが気になるのだろう、とレミリアは感じた。妖怪から人間を守る側の慧音にとって妖怪と仲良くしている人間はやはり敵と等しかった。その事は今は確証がないので直接言うつもりはないがどうにも黒と思っている慧音には引き剥がす事しか考えになかった。思考が予測の時点で飛躍した結果、慧音はレミリアには右拳のストレート見舞う。レミリアは軽々しく取れると思ったが現実はそう上手くはいかなかった。人間とは思えないほどの強力な一撃にすぐさま右手を引っ込めた。その強さはそこら辺の妖怪よりかは強かった。
「自警隊が使える力ではないように思えないけれど。もしかして妖怪なのかしら?」
レミリアは左手の爪で横薙ぎで距離をとる。慧音は次の追撃はやめてその場に止まっておくことを選択した。レミリアには何か人里の自警隊なので人間だと思っていたがそうでもないのを感じると妖怪なのか、と思い始めていた。
「半分はそれに近い。私は半人半獣だ。」
「それでも人間を守るのよね。半分だけの混血は何方からも嫌われるものよ。」
レミリアは吠えた様に感じたが動きは見せなかった。青年はそんな様子を見て威嚇だろうと思っていた。あまり無駄な戦闘は起こしたくないらしいので慧音には早急に帰ってもらいたいらしい。気持ちが分かるがそれでは逆効果ではないか、思っていた。
「あぁ、君のような乱暴な妖怪からあのような人間を救うためにな。」
勘違いしているな、と思っていた青年だが興味深いのでその場では止めようとはしなかった。色々と人の思いは知る機会というのは本気になっているその瞬間しかありえないからこそレミリアが引き出してくれるんじゃないかと思っている。青年は石に腰掛けながらのんびりとした時間を過ごしていた。その姿はさながら一服しているだけのように思える、目の前の事を考慮しないとするなら。
「残念ね、私は此処に連れてこられているだけよ。貴方が考えているのとは逆になるのよ。」
青年はそのレミリアの言葉に無理に煙を吸ってしまい、むせてしまった。確かに帰りたがっていたよな、と思いながら青年は再度煙草を吸っていた。青年としてはよくそういう事はしているのでレミリアにどのように言われてもそこそこの事なら許すつもりである。この際、どうと言ってもらって構わないらしい。レミリアは何とか帰って欲しかった。夜の帝王が微妙に強い人物と戦うとこの時間帯は想像し難い事が起こる。そこら辺の手加減が難しいのである。
「それも虚言のように聞こえるが真相はあの青年に聞いてみれば分かる事よ。まるで関係なさそうにしているがな。」
「そうなのよね。私もそこに気にしているのよ。」
まさか二人から馬鹿にされるとは思っていなかったが青年は其処は許容の範囲内である仕組み気にせずに煙草を吸い続けていたが遂に無くなったらしい。煙草のギリギリまで吸うと自分の手に当てて弱くなった火を消していた。熱いわけではないが手に匂いがつく。しかし下で消すわけにはいかなかった。それだけ此処は竹が生えていた。と言うよりかは草が生えており火をつけてしまう可能性があったのでやめておいた。此処で火事なのどすればどこまで燃え広がるか分かったものではない、細心の注意は払っているつもりである。
「そのような事はいい。早くあの人間と離れなさい。」
慧音はもう気にしなくなったらしい。レミリアの方を一身に見つめているとレミリアも同じようにしていた。理由は簡単である。どうやって手加減をするべきか、それとも敢えて傷を負わせて早急に帰らせるか。何方にしろ嫌いな方法なのでやりたくはなかった。慧音は右足を踏み込んで左足で回し蹴りを行う。そのキレは並の人間なら止める事など敵わないのだろう。レミリアは右腕でその先を予測して受け止めていた。そして爪を立てて掴むと手を目一杯に伸ばして慧音のバランスを崩した。その力は吸血鬼らしく慧音は転んで尻餅をついた。
「あの人は私には必要な人物なの。離すのは難しい話だわ。」
「難しい、だと?それは吸血鬼として近くに血が吸える人がいるからか。」
慧音はすぐさま起き上がるとまた戦闘態勢をしていた。レミリアはその意思は見せずに腕組みして帝王としての余裕を示していた。その様子には流石に慧音を身を構え始めた。更にやるつもりらしい。レミリアはその執拗に妖怪を排除しようとしている様を何か理由があるように思えた。しかし今は聞く事はできないのだろう。レミリアはそんな事を咲夜に面影と照らし合わせていた。
「私はその点は少食なのよ。紅茶に二滴ぐらいの血があればそれで十分なの。」
青年はそんな事は知らなかったが、本当に少食なのだな、青年は思っていた。要は吸血鬼と言えば吸われた人が干からびるまで吸い続けるのかと思っていたがそのような勝手なイメージはレミリアには何か合わないと言う事であるらしい。青年はある意味知らない事をたくさん聞けそうなので二人の会話を楽しみにしていた。
「そうか、そうでないと近くに置いておく意味はあまりないのか。ますます怪しいな。」
慧音は大きな声で叫ぶとレミリアの元へと向かっていた。左拳がレミリアの目を掠った。レミリアはその場で反転して慧音の腕を掴むとその勢いを使って投げ飛ばした。もちろん慧音は無事では済まなかった。受身は取れたもののほとんど何もしなかったに等しかったのか見応えしながらその場にいた。レミリアはこれ以上の反抗はしないだろうと思い、青年の元へと向かったが青年が歩いてきていた。その音のなさはやはり奇妙と言うのか、不気味というのか何とも不思議な青年である。
「大丈夫か?有難うな、吸血鬼から俺を守ってくれて。」
青年は背中を打ち付けて悶絶している慧音の近くに座った。青年はその場で胡座をするとゆっくりと口を動かして話を始めた。慧音はその場でゆっくりとしていた。
「何とも不甲斐ない格好になってしまった。申し訳ない。」
慧音は言葉の通りに体を縮こませているが青年は何も気にしていない様子だった。レミリアにはそうだろうな、と思っていたがあまり口には出さなよう事にした。
「気にする事は此奴は俺より弱いから安心しろ。」
レミリアはその青年の発言は絶対否定しないといけないと思っていた。理由はとても簡単である。しかし言うまでもない。
「それは言わなくていい。」
レミリアは青年の頭を目掛けてチョップする。その手加減されているが人間と妖怪の力の差を感じる事となっていた。慧音には何とも面白い関係であると言うことは伝わったらしくフフッ、と小さく笑っていた。青年はそれを聞いて安心したような表情をして、レミリアは何とも言いにくい表情をしていた。レミリアとしては侮辱されて笑われているわけだから考えてみれば当然とも言える。しかし怒ろうとはしないあたり主人としては合格とも言える。
「どうやら私の誤解のようだな。しかし時が進まない異変の解決と言っていたが何か手がかりは持っているのか?」
慧音は聞いてみる。何か掴んでいるから此処までやってこれたのだろうと思っていた。青年としては適当に歩いてきているだけなので何もなかった。レミリアからしても青年を誘ったのは確かだがそれ以降はついてきただけなので何も手がかりというものはなかった。二人とも困っている状態で何も答えようとしないので慧音としてはこの二人は本当に何をしに来ていたのだろうか、と思っていた。
「何もない。」
青年は軽々しく答えるが慧音にはその発言と態度には大きく疑問を抱く結果となっていた。その理由としては人里からは遠く離れた場所にわざわざ来る必要はないことと、何より森には妖怪が住み着くため人間が食べられるに来るなんて言う命を捨てる行為をするのかどうかと考えていた。慧音には前者のように考えではあるが青年が本当にどのように考えているのかは怪しい所だった。青年にとっては特に意味はなかったらしいが間違っている事は言っているつもりはないので別に何か悪いのか、と思っている。レミリアとしてから見れば咲夜を連れてこればこうはならなかったと思っていた。
「本当に何をしに来たのか分かったものではないな。よし、私が知っている情報だが時が進まないようにしているところを教えよう。この先にある永遠亭と言うところが怪しいと思っている。この竹林の真ん中にあるからまっすぐ行けば着くが地形に詳しくないと簡単に迷うからそこだけは気を付けてくれ。」
慧音はそう優しく教えてくれたがレミリアには引っかかる点があり、不審そうに慧音を見ていた。青年は特に考えていないらしくGOサインが出たらさっさと行くつもりらしいが焦点が合っていないので考えている事は分かったものではない。
「なら、貴方も来なさい。その方が分かりやすいでしょう。」
青年の後ろにいたレミリアは慧音の近くに寄ると手を貸して上半身を起こしてあげた。その理由は優しさからではなく疑念から生まれる確証を得る為の犠牲を貰うための行為なのでレミリアも慧音も油断ない視線を互いに送り合っていた。青年はその間に挟まれて何とも居心地の悪そうにしていたがその場から動こうともその姿勢は特に変えようともするつもりはないらしく器用に右腕で頬杖していた。
「それは辞めておこう、行きたくない理由がある。少なからず分かってくれよう。」
慧音は起き上がらせた半身を青年に向けていた、その奥にいるレミリアにも。青年としては別に分からないわけでもなかった。それに別に気にするようなことでもない。
「真っ直ぐ行けばいいんだな?」
青年は急に立ち上がると誰からの了承も得ることなくその場を離れた。慧音はもちろんレミリアでさえも青年の行動の意図は読めなかった。二人はその場に取り残されたがレミリアは青年の元へと急ぎ、慧音はその場で呆然としていた。伝わったのか伝わっていないのかは別としてもう少し一悶着あると思っていたがそうでもなかったのでその場に取り残されたままなのであった。