青年放浪記   作:mZu

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第77話

淡緑の生えるその林にはウサギが住んでいた。そのウサギは先ほどのようなものから目の前のものまでいる。

 

その姿とはヨレヨレの耳をしていてかなり長い濃いピンク色の髪は腰よりも下の方まで伸びていた。紺のブレザーを着て白いシャツを下に着込んでいて薄いピンクのスカートを履いている。まるで女子高生かのような姿をしているがきっとそれよりは長い時間を過ごしているのだろう。

 

青年はそんな事を思いながらふらふらとしていた。気を抜いているというよりかは力を抜いていていかなる動きにも対応しようという分かりにくい戦闘体勢である。その姿は後ろで見ていたレミリアでさえも分かってはいなかった。酔っているかのようなふらふらとした動きに目の前にいる人は右手を銃の形に構えたまま青年を狙い続けていた。

 

その動きにも反応しない、まるで何もないかのような状態に二人はなりつつあった。レミリアはもし攻撃が来たら援護しようと考えていた。目の前にいるウサギにとっては何をしたらいいのか思考が軽々しく消えていくのを感じていた。その消えていく様が自己険悪へと変わるのは早々にやって来る。

 

青年は右手で転がしていた煙草を指で跳ねて口に咥えやすいように持ち替えると味を確かめるように唇で噛んでからゆっくりと歩き出した。目の前に人が居ようが何も気にしていないかのようでそのまま素通りをしようとしていた。

 

「貴方達は月の使者ですか?」

すぐに戦闘態勢に入ったヨレヨレの耳をした女子高生のような格好の鈴仙 優曇華院 イナバは右手を銃のような形状を示していた。青年はそんな様子を鼻をひくつかせながらその様子を眺めていた。

 

敵意はなく、何がしたいのかさえ読み取れないような青年に鈴仙は半身で警戒射撃を行う。青年の足元を狙って怯えるのを期待したがそのような結果にはならなかった。

 

「月の使者なんているのか。ちょっとした妄言か。」

 

「よく知らないわ。月に都市でもあるのでしょうね?」

青年は鈴仙の言葉を冗談のようにしていた。後ろにいる淡い青髮の少女に話しかけていた。鈴仙にとって今の月は何も知らない、その過去にはきっと何かあったのだろうがそれを知るには掘り起こす必要があった。

 

「今度は当てますよ。」

鈴仙としては威嚇というものを超えていた。警戒しているという訳ではなくここに来て欲しくない、そのようなものが目に宿っていた。恐れや拒絶といった感情を込めていた鈴仙は相手の行動などいざ知らず撃ち始めた。照準の合わない銃は当たらない、それは本当にそうらしい。数撃てば当たるという訳でもないらしい。青年は微動だにする事なくその場に立ち続けていた。

 

「ところでこの先に何か建物はあるのか。」

青年は鈴仙の銃弾の雨が止んだ頃にゆっくりとそして静かに呟くような言い方に此方に敵意が向いていないという事を知れた。

 

「教えません。」

 

「そうか。」

青年は少し落胆していた。鈴仙は昔月で兵士をしていた経験がある。その経験によればこの人にはまるで殺意がない、ただし目の前に来て且つ敵意があれば徹底的にご自慢の剣で斬り殺す。それだけであると思えた。そして鈴仙は人の狂気を操ることが出来るので人を見ることに集中すればその人の波長を見ることができた。今はすごくゆったりとした大きく幅の広い波を描いていた。何をしても許されそうなのである。しかし時折ガクッと、小さくなる時がある。その時は戦闘態勢をしていて全てが無に還る。

 

「何方にせよ、此処は通させてもらう。」

青年はゆっくりと歩き出した。この人には狂気に近づけてはいけない。その事実だけが目の前を支配した。鈴仙には青年を止める手段は何もなかった。まるで敵意のなく誰もいないかのように闊歩する様が己が道を行く、正に自分らしさでしか人生を歩もうとしないのが青年の魅力とも言える。

 

「お通りください。姫様に敵意がないのでしたら宜しいです。」

鈴仙に反抗する勇気はなかった。それ以前に青年に抑え付けられていては何かをする気力も湧かなかった。この人に敵う人が現れるのだろうか、鈴仙の歩んできた狭い世界ではその判断を付けるようなことは出来なかった。

 

「済まないわね、ここは通らせてもらうわよ。」

青年の後ろにいた少女は鈴仙に向かって一礼してからその置いていかれた分を取り返すように少し小走りでついていった。鈴仙は青年から抑え付けられていたものから解放されその場で膝を折って泣き崩れてしまった。

 

「すいません。師匠、姫様。私はまた逃げてしまいました。もうこんなことは嫌なのに。」

鈴仙は自分の感情の高ぶりを感じながら生きているという事を感じていた。此処まで気持ちよく生きている事を実感出来るのは久々とも言える。そして力が抜けて地面にパタリと倒れていく自分がいた。

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