青年は夢を見ていた。昨日の魔道書を勉強している二人を上から見ているところだった。アリスは自分に懇切丁寧に教えている。自分はそんな努力を水の泡にするような態度で話を聞いていた。もしかしてこんなだったのかもしれない。
「が、はぁー、はぁ。」
青年は飛ぶかのようにバッ、と起きた。その様子に二人は声を出して驚いた。
「お目覚めのようね。」
アリスはどこに座っているのかと言えば本の上だった。机があったアリスの家とは違う事を感じ取った青年は周りを見るしかなかった。
「ここは私の家だ。アリスんとこにはベットはないのでな。」
青年は魔理沙の言葉を聞いてホッとしたかのように横になった。
「頭が痛い。」
寝ていなかった弊害が現れたのか青年はまた起き上がり、頭を抱えた。
大分時間が経った。
青年は落ち着いた様子でベットに横になっていた。深い眠りについているのか、寝息を立てている。アリスはその姿を見ながらも、昨日の事を思い出していた。人間がまさか彼処までするのだろうか。あの魔法に対する異常な執着心は魔法使いならば誰もが通る道である。
ただし、その常軌を逸脱していた青年の行動をどうでも良いと投げ捨てる事は出来そうになかった。
「どうしたんだ?アリス。」
魔理沙は本棚から本を取り出して立ちながら読んでいる。アリスは座ったまま魔理沙の方を見つめる。座ればいいと思うが、自分もまともに座っていないので何も言わなかった。
「いえ、八卦炉で出したあの火力。普通の人間とは思えないわ。」
アリスは深く考察しているのか、疑問が浮かんでいた。魔理沙はその事はアリスに任せると気にも留めていなかった。
「確かにあの火力は普通じゃないぜ。だからと言ってアリスが気にする事でもないんじゃないか。」
魔理沙は至ってまともな事を話している。アリスは俯いていた。このまま目覚めさせても良いのだろうか。危ない才能のようにも思えた。
「気になるのよ。これからが。」
アリスはよく考えてから言葉を紡いでいく。魔理沙は話が終わったと思っていたので何の話か一瞬だけど反応が遅れた。
「何が気になるんだ?」
青年は半身を起こして微睡みの中にいた。アリスは急な目覚めに驚き、顔を向ける。魔理沙は別に何か思っているわけでもなさそうだ。
「特に何もないわ。面白い書物を見つけたのよ。」
アリスは誤魔化していた。魔理沙が少し遅れて反応する。
「そ、そうだぜ。」
青年は自分でない事にしたのか、興味をなくしたふりをした。
「俺も読めるようになりたいものだな。」
「そうね、まずはその為の解読から始めないといけないわ。」
アリスは基本的な事を伝えた。何か誤魔化しているのは青年は気付いているが、どの事についてなのかはわからない。此処に来てから数日しか経っていない青年には謎のある点が多くある。何処を隠されても見抜けない自信はある。
「魔理沙、もう一回八卦炉を貸してもらえないだろうか。」
青年は寝起きなのにもかかわらず、魔法を試したいと間接的に伝えた。魔理沙は渋々ながら、八卦炉を渡す。青年は外に出て煙草の入っている箱を開けて一本だけ口に咥える。
「調節しないとな。そういうのも必要だろう。」
青年はそう言う。魔理沙は確かにその通りなので何も言わなかった。青年は右手で八卦炉を握りしめて弱い火を念じた。そうだな、暖炉ぐらいかそのぐらいだと強い火になる。手持ち花火だな。そのぐらいが良い。青年は強く強く念じると八卦炉からパチパチと火花が出始めた。
「線香花火か。」
青年は煙草を近づけて火を付けると一服し始めた。ゆっくりと息を吸って煙草を左手の二本で優しく持ち灰を払う。そして魔理沙の元へと向かった。
「貸してくれてありがとう。早速だがこの刀にその八卦炉のような効果を出す方法は何かないだろうか。」
青年は何を求めてか、魔理沙に問う。魔理沙は少し困った顔をするが、案外すぐに教えてくれた。
「香霖のところなら何か出来るかもしれない。」
香霖というのは多くの事を出来るのだな、と青年は感心した。余計に興味が湧いたというのかどうしてみようか、と迷いが生じた。
「ならば少し話を聞いてみようか。何処にいるんだ?」
「香霖か?昨日会った奴だよ。」
「あの雑貨屋の店主の事だったか。ならば話を通すやすいな。」
魔理沙は箒にまたがり始める。意外と話が早くまとまっており、逆に青年の方が準備していないという感じだった。
「アリスも来るか?」
魔理沙は後ろに居た人に声をかける。
「ええ、品が増えているか見に行くのも悪くないわ。」
「よし、話はまとまったな。」
青年は箒にまたがり、アリスはその横を歩いて近づいてきた。青年は火の付いた煙草を咥えている。アリスに煙をかけないように背中を向けた。