陽の差し込む庭では竹によって柔らかな光に包まれていた。
朝食を食べ終わり鈴仙と共に食器を片付けて赤いジャージの青年は時間を弄ばせていた。
此処には何もなかったと言うのは失礼ではあるが余りにも隔離されきった空間に青年は飽き飽きとしていた。
急に起き上がった青年に声を上げて足を止めたのは赤と青のツートンカラーで服とスカートで逆になっていると言うものであった。
スカートには何らかの星座があしらわれており博識者のようも見える八意 永琳。この永遠亭を実質治めている人であるのは知っていたが昨日の話から医学にも精通している事を知った。
これも何かの縁だと感じて聞いてみる事にした。
「永琳、貴方は弓術だけではなく医学にも精通しているのか?」
青年は急に聞いてすまなかったとその場で頭を下げていたがその行動を取る真意は既に永琳には読めなかった。永琳が目を丸くしていて珍しいと青年は思っていた。
「ええ、他にも精通しているものはあるけれど。急にその話をしたのはどうしてかしら?」
要は何処で医学について知ったのかを聞きたいのだろう、と青年は思った。
「昨日、鈴仙と話している途中で師匠の医学を学びたいと言っていた。」
青年は右腕で頬杖につき始めていた。どうにも暇をしているらしくどうにも居心地が悪くなって来たようだ。
何か変化を欲しているのだろうと永琳は思った。が、青年の思っているその様な事に使える薬は作っていない。人を貶める代物なら種類は多くある。
「それであの子、私に医学を教えてほしいと言って来たのね。」
永琳としては少し困った事になっているらしく、青年はその辺りを見て少しだけ口を尖らせる。
申し訳ない事をした、そんな所だろう。面倒であるのは確からしく腹の虫の居所が少々悪いらしい。
「早速行動に起こしたのか?しかし永琳の作る薬はどのようなものだろうか。」
月の頭脳として持て囃されたかつての永琳は作れと言われれば材料さえあれば大体のものは作れる。それだけでその地位まで上り詰めたとも言える。
「あまり期待しない方がいいわ。」
永琳は素早く答えてその場を後にしようとする。青年にはきっと何か証拠があったに違いない、すぐに引き止めた。
「不老不死の理由はその事か?」
「ええ。姫様に作って欲しいと頼まれたのよ。あちらの方が地位は高いので二つ返事でしか答えることが出来なかった。その後、地上へと落とされた姫を月に連れ戻すためにここに訪れたのだけれど、私も残る事にしたわ。」
「上下関係があるが故の間違いという事か。それは永琳のせいではないだろう。況してや、そう気を落とすようなほど最近の事でもなかろう。」
青年は永琳の言葉を聞いた上で答えた。
永琳にはどのように伝わったのかは知る機会はないが悪いふうには捉えているつもりはないらしい。
三つ編みの髪を揺らして青年にこちらへ来るように求めた。青年は咥えようとしていた煙草をしまってから立ち上がり永琳の後ろを歩いた。
「折角だから私の薬を見せてみましょうか。」
「興味が湧いたら質問を多くするかもしれない。」
青年はにっこりとした顔は浮かべなかったが少しだけ嬉しそうな顔をしていたのは事実である。
永琳からしてもそのような事はあまりないらしく物珍しそうにしていた。
「それは好きにして構わないわ。」
永琳はそう答えただけで何か考えがあるわけでもなかった。きっと考える事が思い浮かばなかったのだろう。