二人はその後永琳の個室の中に入って青年はあらゆる色の粉を見ていた。
触る事はなく、息を吹きかけることのないように注意して見ていた。
此処には様々な効能の薬があり青年は上手い事この知識を使ってあげる事ができないだろうか、と考えていた。
「して、これだけの数があるがどう言ったものがあるのかは覚えているのか?」
この部屋では作業のしやすさを考えてなのか黒装飾の机が置いてあり回転する椅子が置いてあった。背もたれはなく前のめりで青年は話を聞いて、永琳に近づいていた。
「もちろんよ、ただ貴方の考えているような人に有益を生み出すものは何もないわ。」
永琳は白い粉を薄めの紙の上に広げた。どのような道具なのかは知らないが薬品を乗せるのには重宝するものだろうと思っていた。
「これはどのような効果を出すものなんだ?」
青年は出来るだけ空気を当てないように右横にいる永琳の方を向いていた。興味があるのかないのかは知らないが鋭い視線を送っている。
永琳からすればこのような人は見る機会が少ないらしく多少なり驚いていたようにも見えた。
「それは体の機能を低下させる即効性があるけど、持続性は全くないわ。」
永琳は何の屈託もなく平然と答えた。他にも青年ののような素人には分らない薬の種類が多くあるが全て人に害を与えるものしかなかった。
眠り薬や麻痺薬、目を失明させるものや腹痛を起こすもの、通常では毒薬として説明される類の薬しかなかった。
「この逆の作用を起こす薬は作る事ができるのか?」
青年は永琳の話を全て聞いた上でその溜まった感情を一言にまとめた。
青年からすれば素人の為に何かの作用で上手く目をよくする薬でも作る事ができるだろう、と安易な考えだった。
永琳はその事を感じつつ、多少なり呆れかけていたがその事でさえも許容した。
「出来ない事もないわ。少しだけ時間がかかるでしょうけど。」
「そうなのか。楽しみにしている。が、何か沢山の人に知ってもらえたら良いのだが。」
青年は椅子を反転させて机に膝を置きながら気の抜けた声を出した。
それが落胆なのか、失望なのかは判断しかねるが永琳にはきっと透かされていると思われる。それでも気にしないように青年は気を引き締めた。
「そのような事はするつもりはないわよ。いつ見つかるのか分らないもの。貴方ぐらいしか入れる事はできないわ。」
永琳は青年の感情を更に増幅させるかのように言葉を使う。其処には面倒なり、何らかの理由が隠されているのだろうと思うのは青年の気のせいなのか、それともまた別の事なのか。
「幻想郷ではそのような事はまるで関係ない。見てみたいんだ。」
青年は気楽に答える。まるで何にも干渉されないような力を持ちながら、自分はどんどん干渉させていく矛盾した人であると思えた。
「それは貴方が好きにしなさい。今のところ薬ぐらいは作ってみるわ。」
素直でもない永琳を青年は更に椅子を回転させて部屋の外へと向かった。
用が終わったからかその場ですぐに出て行こうとする青年を永琳は一言で止めた。
「どうした?」
「いえ、何もないわよ。ただ貴方が言うように上手く行くとは限らないわよ。」
「それなら俺は永琳を見下す事になる。」
さらっと青年は答えた。永琳は不敵な笑みをこぼしてその背中を見ていた。】