青年は整えられた西洋庭園を抜けて妖精のいない紅魔館の中へと足を踏み入れた。
赤く染まった床にはチリなど落ちておらず新品のような触り心地をしていそうだった。青年は大分目が覚めてきたのかフラフラとしていた身体をしっかりと立てて歩き始めた。
それでも猫背であるのには変わりなくまだ寝起きという感じを覚えるだろう。青年はしばらく運命に導かれるままに足を進めた後に睨みつけるかのような形相で扉を見ていた。
三階の右奥、主人の部屋の前で青年はゆっくりと扉を開けた。
「何用だ?」
突如大きく開いた扉に主人は顔を引きつらせた。ノックもせずに入室の許可を得ずに入ってきたので不審者として扱われても可笑しくはない。
そしてこのふてぶてしい態度が更にその印象を加速させる。
「此方の言いたいことよ?今回は許すわ。寛大な私に感謝しなさい。」
レミリアは青年のいつも通りの行為を許す事にした。毎回やられており最初こそは頭にくることもあったかもしれないが次第に慣れていったのでなにも言わない事にした。それよりかは何も出来そうになかった。
「して、咲夜が呼んでいたが何かあったのか。」
青年はいつも通りの調子で我関せずと言わんばかりの態度を取り始める。レミリアも流石に一言物申したほうがいいのではないか、と思い始めた。
「貴方は誰の前でもブレないわね。今回呼んだ理由は見て欲しいものがあるからよ。」
レミリアは机上に置かれた一枚の紙を青年に差し出した。青年を目で文を追っていた。
其処には永夜異変と名付けられた時の進まない異変の解決した者が八雲 紫となっていた。そのパートナーとして博麗 霊夢となっており協力者がその名を連ねる。
基本的に見たことのある名前だがあの時に青年も況してやレミリアも誰も見ていなかった。
つまりは青年たちの見た事とは違う事実の書かれた捏造であり、レミリアはその事について青年に話を聞いてみたいと言う事であるらしい。
「貴方が解決したはずよね。私がいなくなった後はどうしていたの?」
レミリアは確かに永琳と青年との試合の勝敗を見届けた後で帰路についていた。青年と異変を起こした主とは接触していると思ったがあまりそうでもないらしい。
「俺は解決していない。あの後に幽々子が来てくれなかったらなんともならなかった。異変を起こした理由として月の使者を来させない為に箱庭結界を作り出したわけだが博麗大結界と呼ばれるものがあるらしく来れないというのを説明してくれた。その後で蓬莱山 輝夜が時を一瞬で飛ばして日の出を見ていた。」
淡々と状況を説明していく青年にはレミリアも失笑するしかなかった。犯人が解決する異変となったらしいがどうにも上手く話が転がり過ぎている気もした。
「今回の異変は柔らかいものだったのね。どうしてそんな風になったのかしら?」
「輝夜に気に入られて幽々子に痛いところを突かれて向こうが降参したわけだ。しばらく泊めてもらって久しく此処に戻ってきた。それだけの話だ。」
青年の説明には人に伝えようとしている事がなく、そして虚偽の情報が出回った現状でも気にする事はなかった。
「それで貴方は何もしようとはしないの?」
「無理に説明しても誰にも伝わらない。やるなら大体の証拠を集めてから反論されないように準備しておく。だが、面倒なのでやるつもりはない。」
青年はその異変について書かれている紙を机上に投げ捨てるとまるで他人事かのようにその場を立ち去った。