川辺には花が無数に咲いていた。
その数は異様というものである。春、夏、秋、冬、全ての季節に別々に咲くはずの花たちが一斉に咲き始めたのだ。
色とりどりに彩られた幻想郷では全ての人たちがその花を見に、様々場所へと訪れた。或いは見知った仲間と酒を飲み交わす。
皆が笑い騒いでいる中で一人どうしても落ち着かない様子でその惨状を考えている者がいる。深い森の先にある小高い丘の上に素朴な石の階段を登った先にある博麗神社と人から呼ばれるところがあった。
其処を守っているのは博麗 霊夢、赤いリボンを頭につけた黒髪の巫女。そして脇を見せている独立した袖が特徴的である。
「何よ、丸見えの異変なんて解決するしかないじゃない!」
巫女、としてこの分かりやすい異変を解決しなければ信用を失うと考えている霊夢には目の前の事は流石に目を瞑ることはできなかった。桜が満開に咲いていて小さな草を生い茂っている。
「その内元通りにはならないのか。」
騒ぎ立てている家主よりも招かれざる客の方が落ち着いて現状を見つめていた。
肌を見せないためなのか黒装束を全身に纏いフードを被って霊夢から出された茶を優雅に飲んでいた。こちらの方が家主らしい風格がある。
「アンタは呑気過ぎるのよ。少しは危機感を持ちなさい。」
「晩春の時に宴会が続いた異変も貴方は犯人を見つけていないだろう。」
毒を吐いてから洗うように茶を啜る青年に霊夢はつい声を荒げる。別に怒っているわけではないが不満という方が正しいように感じる。
何かあった訳でもないし別に騒ぎ立てるようなこともないというのは青年の見解である。
「今回は異変とするなら貴方はどうする?花を踏み潰して木を切り倒すのか。それこそ人から見てどう思うか?」
青年は小さく静かに言葉を続けた。まるで霊夢の言葉など耳に入らないかのように何かを話していることだけを伝えた。
「そうね、アンタの意見が正しいと思うわ。それでも私は動く必要があるのよ。アンタは私についてくるの?」
霊夢はズカズカと青年の元へと近づいていく。
誰にも付いてくるようには言わない霊夢だが青年の実力を買ってこのように言っている。常人ならきっと嬉しそうに答えるだろう。しかし、青年は違った。
「興味があれば付き合うこともあるだろう。」
簡素にそして自分とは関係ないかのように答える青年には流石に霊夢でも気を落としてしまった。いつもならそう、とだけ言って異変を解決しに向かうのだろう。
「アンタ、生きている証を見せなさいよ。」
あまりにも気の抜けた返事に霊夢としては色々と考えるところや満足でない事もあったのだろう。
「それは中々難しい事だろう。その内魔理沙と一緒にいるかも知れない。」
茶を再度啜りこの空気を味わう青年には最早霊夢という存在は今の空間からは消し去っていた。邪魔だからではなく一人の時間を過ごしたいと感じたからそうするのである。】