仮面ライダー&ジャンプフォース 平成ジェネレーションズHeaven inきららファンタジア   作:玄武Σ

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昨日、マギレコの第1部完結イベントクリアしました。平ジェネinきらファン終わったら、マギレコで何か書いてみようかな?

今回で響鬼編終わりますが、ちょっとラストで変化球入れてきます。


第13話「唸る音撃」

「ヒビキさん、聖なる遺体……だっけ? とにかく、持って来たよ!!」

「お、待ってたぜ。目的の相手は少年の援護で押さえておいたからよ」

「このおっちゃん、結構手強かったな」

 

葉がツェペリを倒してすぐ後、千矢が遺体を手にこちらへと戻ってきた。回収後に紺達とも合流したようで、全員でやってきた。

 

「よし。その遺体の光を当てたら、いいらしいぜ」

「うん。それはこれも教えてくれたみたいだし…」

 

そして響鬼に促され、千矢はツェペリに遺体が発する光を当てる。すると、ツェペリの体から紫のオーラが消え、同時に目を覚ました。

 

「……ん、ここは一体?」

「おっちゃん、目ぇ覚めたみたいだな」

「君は誰だ? なにやら奇妙な者もいるようだが…」

 

目を覚ましたツェペリは、葉のことも覚えていない様子だ。どうやら、洗脳の解除は成功したらしい。

 

「オイラは麻倉葉、日本人でシャーマンだ。そこの仮面のおっちゃんは響鬼、そこの半裸の女の子は千矢っていうんだ」

 

ひとまず、葉は自分を含めたこの場での主要な人物の紹介に入る。そして、ツェペリに問いかけた。

 

「それよりおっちゃん、意識戻る前に何があったか、覚えてるか?」

「意識の戻る前……」

 

葉に促され、ツェペリは思案を始める。

 

「そうだ、思い出した! ジョジョと共に屍生人と戦っていたら、聖なる遺体なるものが現れてジョジョを導こうとした。でも突然消えてしまったから仕方なく戦いを再開して、新しい敵が現れたところで記憶が……なんとなく察しはついたな」

「ああ。おっちゃん、その新しい敵に操られてたんよ」

「それでね。みんなで協力して、おじさんを助けたんだよ。これのおかげで、正気に戻せたんだ」

 

状況を察したツェペリに、葉と千矢が答える。すると、ツェペリは千矢の見せてきた遺体に視線が行く。

 

「こ、これは聖なる遺体! そうか、嬢ちゃんが持ち主に選ばれたんだな」

 

ツェペリはジョナサンの前に現れた遺体の事もあり、すぐに状況を察した。

 

「で、先程から暴れているあの蜘蛛の化け物。奴が敵の手先と見て良いのかのう?」

「その通り。でもあの魔化魍ってのは、俺が修行してた音撃って技じゃないと倒せないんだよね。アンタの波紋でしか倒せない、吸血鬼みたいな感じの」

 

視線を見渡し、暴れている土蜘蛛について言及するツェペリ。響鬼が事情を話すと、少し思案する。

 

「よし。嬢ちゃん達に迷惑もかけた様だし、助けてくれた恩もある。このウィル・A・ツェペリ、喜んで協力しよう!」

 

そしてツェペリはフルネームを叫びながら、戦闘への協力を宣言するのだった。

 

「話は纏まったな。アンナ、もういいぞ! 式神を引っ込めてくれ!」

「遅いわよ! やっぱアンタ、来月はおやつ抜き!!」

 

アンナは憤慨するも、葉に言われたまま式神を引っ込めて離脱する。そして、代わりに響鬼達が総出で戦線に立つも、そこに千矢達が並び立って来た。

 

「千矢、無理しねぇでいいんだぞ。お前、こういうタイプの敵は慣れてねぇはずだろ?」

「うん! でも、私は友達が増えたこの世界が好きだから、それを無茶苦茶にしようとしている人達を止めたい。だから、手伝わせて!」

「……わかった。でも、無茶するなよ?」

 

代表者として千矢の言葉を聞いた葉は、その意志を汲んで共闘を許可する。彼にしては、珍しかった。

すると、それを見ていたツェペリが声をかけて来た。

 

「どれ、まず軽く戦闘指南と行こうか。戦いの思考その1」

『ギシャアアアアアアアア!』

 

そのツェペリの指南が始まろうとした瞬間、土蜘蛛が雄叫びを上げて襲ってくるが、全員がその場から跳躍して退避した。

そして、ツェペリが近くにいた千矢に先ほどの続きを話し出した。

 

「まず、『もし自分が敵なら』と相手の立場に身を置く思考。これで攻撃を予測し、立ち回るのじゃ」

 

そしてその説明を終え、再び土蜘蛛に視線を向ける。そしてその続きを話し始めた。

 

「この魔化魍とやらは、本能で動くケダモノじゃから今回は意味を成さん。しかし今後は明確な悪意を持って襲い来る敵とも、相対するじゃろう。そうなれば、きっとその思考は役に立つはずじゃ」

「そっか。悪い人達が次に何するかわかれば、なんとかできるってことだね!」

 

そしてツェペリは駆け出し、千矢も同時にに跳躍。2人で土蜘蛛へと突撃していく。

 

仙道波蹴(せんどうウェーブキック)!!」

「うりゃー!」

 

そしてツェペリの波紋を纏った膝蹴りと、千矢の剣による一撃が同時に決まった。

 

『ギシィイイイ!?』

土蜘蛛は前足に蹴りを受けた影響か、食らった箇所が痺れている様子だ。しかし千矢の一撃も含めて直接のダメージは無いようで、無理やりに動こうとしている。

 

「成る程。確かに、ワシ等では奴を倒せないようだ。だが、隙を作るには十分だろう」

「おっしゃ! このまま行くよ!」

 

そしてツェペリと千矢は2人で、もう一度土蜘蛛に突撃していく。

 

『ギシャアアアアアアアアア!』

「何!?」

「うわぁあ!?」

 

しかし土蜘蛛は雄たけびと同時に、その口から糸を吐き出してきた。突然のことに驚き、2人は攻撃を中断して回避に回る。

 

「おいおい、クモの糸って口から出てこないよな?」

「あれ、一応妖怪の類らしいからね。生身の生物の常識を当てはめたら、たぶん勝ち目はないわよ」

 

葉が土蜘蛛の攻撃に思わずツッコミを入れてしまうが、アンナがそれについて返す。しかし、その時にある単語を聞いて怯えてしまう人物が、一人いた。紺である。

 

「よ、妖怪って……やっぱり、土蜘蛛ってあの妖怪の土蜘蛛なの!?」

 

お化けの類が苦手な紺は、思わず恐怖のあまりに叫んでしまう。すると、そこにツェペリが駆けてきた。

 

「危ないぞ、嬢ちゃん!」

「きゃあ!?」

 

そのままツェペリは紺を抱えて跳び上がり、再び土蜘蛛が吐き出した糸を回避した。あのままだと、恐怖で慄いた隙に紺が捕まってしまっていただろう。

 

「嬢ちゃん、ひょっとして怖いのかね?」

「は、はい……昔から、お化けとかの類が苦手なもので……情けないですよね、こんな時に」

 

ツェペリの問いかけに対し、自嘲気味に告げる紺。しかし、そんな時にツェペリが再び口を開いた。

 

「嬢ちゃん、戦いの思考その2だ」

 

それは、次の戦闘指南であった。しかしその内容は、先程と違い一回聞いただけではわかりづらいものだった。

 

「ノミっているよな? ちっぽけな虫けらのノミじゃよ」

「え? はい、いますけど…」

「あの虫は我々、巨大で頭のいい人間に所かまわず戦いを挑んでくるが、これを勇気と呼べるかね? ノミどものは勇気とは呼べん。では勇気とは何かな?」

 

しかし紺はその問いかけに答えられなかった。しかしそのままツェペリは続けた。

 

「勇気とは怖さを知ることッ! 恐怖をわがものとすることじゃッ! 恐怖を支配することで、ワシらの波紋法は規則正しい呼吸となり、力を発揮するッ! 波紋法に限らず、戦士の力とはそういうものよッ!」

「人間賛歌は勇気の賛歌ッ! 人間のすばらしさは勇気のすばらしさ! この魔化魍とやらも本能のみで勇気も恐怖も知らん!! ノミと同類よォーッ!!」

 

そしてその叫びとともにツェペリは跳び上がり、波紋を足先に纏わせる。そして、そのまま空中で高速回転した。

 

波紋乱渦疾走(トルネーディオーバードライブ)ーっ!!」

 

そして落下の勢いを生かし、波紋を纏ったドリル回転キックを放った。そしてその一撃は土蜘蛛の顔面に叩き込まれ、口の動きが痺れるという事態に陥った。糸攻撃を封じたのだ。

 

「おし、ちょっと離れてろ!」

 

直後に響鬼の声が聞こえたかと思いきや、腰に差していたあの棒に炎を灯しているのが見えた。そしてそれでツェペリも何をするか察したようで、跳びあがって回避した。紺も慌てて退避する。

 

「はぁあ!」

『ギィイイイイイイイイイイイ!?』

「ほう、これは凄まじいな」

 

棒を振るうと同時に、炎が土蜘蛛に飛んでいく。命中した土蜘蛛は、苦悶の叫びをあげていた。そしてその攻撃力に、ツェペリも感心する。

 

「そういうことだ。恐怖を捨てるのではなく、恐怖を乗り越える事こそが強くなることだ。今は怖くとも、やがて乗り越えられる。そう信じて立ち向かうことこそが、人間の強さだ。それを忘れてはならん」

「……はい!」

 

そしてツェペリは紺に呼びかける。そしてかけられた言葉に勇気付けられ、紺は力強く返事を返すのだった。

 

『ギシャアアアアアアアア!!』

 

しかし土蜘蛛はすぐに復活し、力任せに暴れ始める。しかし今度は紺も冷静で、ツェペリと供に咄嗟の回避を成功させた。

 

「それでは戦いの思考その3、これで最後じゃ。北国ノルウェーには『北風が勇者バイキングをつくった』という諺がある。今回は非常時なので結論から言おう」

「おう。そうしてくれたら、オイラも助かる」

 

そしてそこに葉達も合流し、最後の戦闘指南が行われた。

 

「厳しい北風が気骨あるしたたかなバイキングを生んだように、ピンチをチャンスに変えられる者こそが真の強者。どれだけ危機に陥ろうと、決して諦めるなッ! 先ほども言うたが、人間賛歌は勇気の賛歌じゃッ!!」

「まあ、確かに攻撃は激しくなったけど、ありゃ周りが見えてないな。上手くいきゃ、攻撃のチャンスを作れるかもよ」

 

そしてその指南に対して、響鬼からも同意を得られる。そしてその隙を作るために名乗り出たのが、葉である。

 

「よし、最後の押しはオイラがやってやるか。で、そこの魔女っぽいの、なんて言ったっけ? 千矢以外の名前、聞いてないからよ」

「あたし? 小梅よ、雪見小梅。もしくはミス・プラムよ」

 

そして同時に、まさかの小梅指名が入ることとなる。ちなみに、彼女が名乗りついでに推奨してきたミス・プラムとは、自分の名前が古臭いからという理由で西洋風に呼び直したものだとか。

 

「じゃあ小梅。オイラがとっておきの一撃で隙を作るから、魔法で援護してくれ。飛び道具ないと、ぶっちゃけ厳しいんよ」

「なるほど……いいわ、未来の大魔女に任せなさい!」

 

葉からの話を聞き、頼りにされていると感じた小梅は乗り気だった。すると何処からか、箒を取り出してそれにまたがって空を飛び始めたのだ。

 

「こういう時の為にコッソリ特訓した魔法、使ってやるわ!」

『ギシャアアアアアアアア!』

 

そして小梅は土蜘蛛に近づき、それに感づいた土蜘蛛が飛びかかってきた。

 

「おっと、危ない!」

 

しかしすぐに方向変換し、そのまま天高く上昇していく小梅。一方の土蜘蛛はそのまま崩れた家に激突、体勢を立て直そうとするも、先に小梅が動いた。

小梅は懐から、一冊の本を取り出してページを開く。

 

「エロイムエッサイム・吠えろグリモワール!」

 

そして呪文を唱えると、その開いたページから光線が放たれ、土蜘蛛の体を穿つ。土蜘蛛に直接のダメージはないが、光線の威力で押さえつけられ、動きは封じられる。

 

「おぅ、こりゃスゲェ。それじゃ、後はオイラに任せておけ!」

 

そして葉は土蜘蛛の懐まで飛び込み、先程のツェペリの洗脳を解くための戦闘で使った奥義を、再び使用した。

 

「阿弥陀流奥義・後光刃!」

『ギィイイイイイイイイイイイ!?』

 

そして再び放たれた後光刃は、土蜘蛛の巨体を吹き飛ばした。吹き飛んだ土蜘蛛は、そのままひっくり返って身動きが取れなくなってしまう。

 

「おし。トドメは任せておけ!」

「任せた!」

 

そして響鬼は飛び上がり、そのまま土蜘蛛の上に乗る。そしてベルトの巴紋の装飾部を取り外すと、それを土蜘蛛の体に付ける。すると驚くことに、付けられた装飾部は大きくなったのだ。

そして響鬼は、腰に差していた二振りの棒をまた抜き、それで奥義を放った。魔化魍を倒す為の、鬼の奥義を。

 

 

音撃打・火炎連打の型

ドン!

 

そして棒で装飾部を叩き、気持ちのいい音が響く。その様は、まるで太鼓を叩いているようだった。

 

「お、音撃?」

「つまり、楽器の演奏で、妖怪を倒すってこと?」

「らしいわよ。まあ、厳密に言えば倒すというより浄化らしいけど」

 

響鬼の技を聞き、思わず千矢と紺が疑問に感じる。すると、アンナが事前に聞いていた音撃についての簡単な説明を入れる。

 

「はぁあ!」

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ!

『ギシャアアアアアアアア!?』

「た、確かに効いているみたいね…」

「うむ。これは、彼の勝利が揺るがない状況となったな」

 

響鬼が太鼓を叩くにつれて、土蜘蛛は苦悶の声を上げている。明らかにダメージは通っているようで、臣とツェペリもそれを確認していた。

 

「はっ!」

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ!

その一心不乱に叩かれる

 

「てぇい!」

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ!

勇ましく力強い太鼓の音は

 

「ほっ!」

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ!

聞く者の心に響く何かがあった。

 

「はぁあああああああ!」

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!

そしてその演奏は加速していき、土蜘蛛もそれに合わせてダメージが重なっていく。そして

 

 

 

 

 

「はぁあ!!」

ドドンッ!!

ドォオオオオオオオオオオン

そして最後の一撃が加わると、土蜘蛛の体が爆散した。これは誰がどう見ても、響鬼の勝利である。

 

 

「よっと!」

 

そして響鬼は爆風に乗って空中で一回転し、そのまま地面へと着地した。

すると響鬼の頭が光り始めたかと思いきや、顔だけが変身解除され、ヒビキの素顔が現れる。

 

「おっちゃん、やったな」

「ヒビキさん、スゴイ! カッコよかった!!」

「うむ。見事な力であったよ」

「まあ、鍛えてますからね」シュッ

 

葉、千矢、ツェペリが順にヒビキに賞賛の声をあげる。そして当のヒビキ自身も、お決まりのポーズを決めて答える。

 

「しかし、ヒビキさん本当に強かったわね」

「仕事で普段からやってるらしいし、相当なものでしょうね……月給いくらくらいかしら?」

「臣ちゃん、またお金の話してる」

「あんなのがよく出てくる世界って、どんだけ物騒なのよ…」

 

その一方、残りのチームなつみやの面々もヒビキの強さにいろいろ言っている。臣がやっぱりお金に話題を結び付けているのは、ご愛嬌だが。

 

「そんな……あのお方から賜った、人造魔化魍の試作品が……」

 

そんな中、マライアがいつの間にか目を覚まし、土蜘蛛の撃破にショックを受けている。彼女の発言から、財団Xの作った人造魔化魍は首領からの預かり品だったらしい。

 

「おのれ、小娘ども。おのれ、仮面ライダー……覚えていなさい! 次こそは、地獄に送ってやるわ!!」

 

そして呪詛を吐いてそのまま転移するマライア。どうやら撤退していったようだ。

 

「ふぅ……ひとまずは凌いだな」

「でも、これでもう本格的な戦いは避けられないわね。葉、もうめんどいからって逃げられないから、覚悟は決めなさい」

「おう、わかってるって」

 

起こりうる今後の戦いを予感し、言葉を交わし合う葉とアンナ。しかし、すでに覚悟は決まっているため、どんと来いという状況だ。

 

「それじゃ、戦いが終わってすぐで悪いけど、何処か腰を落ち着けられそうな場所はねぇかな? 俺の仲間達と落ち合いたいんだよな」

 

すると、それに続いてヒビキが持ちかけてきた話題。良太郎をはじめとした、渡の送り込んだ仲間との合流を急ぐ必要があると判断した結果だ。

 

「そうですね…私達がこの世界で住んでいる里があるんですけど、どうですか?」

「え、もう帰るの? あたし達、まだここの名物食べてないんだけど」

 

紺が集合場所に着いて提案すると、小梅が異議を申し立てて来る。しかし理由が、この非常時には不謹慎なものだった。

 

「いや、この様子じゃお店もやってないでしょ? いつの間にか、町の人もいなくなっているし」

「そうね。流石に、この状況じゃお客もいなくなって、商売どころじゃないし」

 

しかし紺と臣がダブルパンチでツッコミを入れてきたため、折れるしかなかった小梅であった。

結果、一行はそのまま里へ帰還することとなった。

 

〜移動中〜

「速い速い速い速い! 速すぎます、無理です!」

「贅沢言わない。他に移動の足も無いんだから」

(箒で飛ぶ魔法がこの世界にあって、助かったわ……)

「zzz…」

「臣ちゃん、この状況で寝落ちしてる…あ、このまま道なりにまっすぐです」

 

再び召喚された前鬼・後鬼に乗せられて、半狂乱状態の紺達チームなつみや。小梅は箒での飛行が出来、かつ自分1人を乗せるので精一杯だったため、その横で飛んでいる。

ちなみに、ノノが唯一冷静だったこともあり、そのまま道案内をしていた。

一方、1人だけ千矢が見当たらなかったが……

 

「ほう、嬢ちゃん千矢というたか? 中々の身体能力だ。波紋法を教えたら、いい戦士になりそうじゃよ」

「ありがとう。でも、私はもう、うららになるって決めちゃったから」

 

ツェペリと2人で、その後ろについて走っていた。野生育ちゆえか、ツェペリに身体能力で張り合えていたのだ。

 

「おっちゃん、バイクなんて乗れたんだな。オイラ、なんとなく機械オンチだと思ってたんだけど」

「いや、全然そんなことないぜ。参ったな、ははは」

(なんか、焦ってねぇか?)

 

そしてその横で、スピードを調整してアメリカンな大型バイクで並走するヒビキの姿があった。ちなみにヒビキは、後ろに乗せている葉に言及されているように、実は機械オンチだったりする。バイクも結構な量の特訓で、ようやく乗れたものだった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ヒビキ達が里に向かうのと同時刻、オーバーヘブンショッカーの拠点にて。

 

「おいおい。あのマライアとかいう女、思いっきり失敗してたじゃねえか。もうこれは処刑確定だな。うん…そうだよなぁ! そうに違いねぇな!!」

「やめろ、あれでもまだ使い道はある。私がいいと思うまでは、手を出すな」

 

影になって顔の見えない、オーバーヘブンショッカー首領。彼と対談する、1人の異様な容姿の男がいた。

男は浅黒い肌で、長い白髪を何故かツインテールに纏めている。そして、はだけたジャケットから見える腹部には、九字紋と呼ばれる格子状の模様が刻まれていた。

そしてその男は、首領に自分の意見を反対されて不満な様子だ。

 

「おいおい、首領さんよ。アンタは俺達ケガレが呪力、つまり人間が俺達に向ける負の感情から来る呪いの力を取り込んで強くなるのは知ってるはずだろ? あの女が見限られたショックと、死への恐怖は俺をもっと強くすると思うんだがなぁ」

聖丸(ひじりまる)、お前はンドゥールの最期を見ていなかったのか? マライアは奴ほどではないが、私への強い忠誠心を持っている。処刑しても、お前が欲しいだけの呪力は出さないだろう」

 

首領に名を呼ばれたその男、聖丸はどうやら人間ではないらしい。自ら口にした”ケガレ”という言葉が、種族名と思われる。

 

「どうだか? ああいう野郎の方が稀だ、数百年と人間を見ていればわかる。あいつらは自分可愛さに家族や恋人を見捨てる、そういう奴らだ。そうやって仲間に見限られた人間や陰陽師をぶっ殺して、俺は力を蓄えたからな」

「聖丸。重要なのはそのような者を、どうやって絶対の服従者にするかだ。ヴァニラ・アイスやンドゥールのような者こそ、稀有な存在だからな」

「なるほど、違いねぇ」

 

聖丸の言葉に、自分の考えを押し付ける首領。そこに納得したようで、同意の声を上げる聖丸。しかし、同時にある疑問をぶつけることとなった。

 

「なら、今更だがなんで俺達をお前の能力で服従させなかったんだ? 闇無(くらなし)の龍黒点計画に乗らなかった、支配されるのを拒む俺をその能力で操ることもできただろう」

「まあ平たく言えば、お前のその野心も利用価値がある、とだけ言っておこうか。お前や死郎をはじめとした、強い感情とその爆発は強大な力となる。それは身を以て体験したからな」

「へぇ〜。一応、褒め言葉として受け取っておくか」

 

疑問に対しての首領の返答を聞き、満足げな様子の聖丸。納得はしたようだ。

しかし直後、プッチに連れられて部屋に入って来る人物がいた。それは、クリーム色の髪から蔦が伸びた少女と、鉄の鎧から落書きのような顔が覗く異形、という明らかに人外の二人組であった。

 

「さて。彼がオーバーヘブンショッカーの首領だ、御目通り願おう」

「貴方が首領ね。貴方に忠誠を違えば、これから行く世界で好きなだけぶっ殺してもいいって聞いたけど本当?」

 

プッチに連れられ、最初に口を開いたのは少女の方だ。しかし開口一番に、物騒な発言をしているあたり、かなり危険な存在だ。

 

「ああ、そうとも。それにお前がその気なら、隙をついてこの私を殺しに来ても構わんぞ。もっとも、私の能力がそう易々とはさせんがな」

「あはっ♡ それ最高!!」

火火(カカ)ッ! 俺を力を持ったまま復活させて、俺の(ユメ)を燃やしてくれる場所まで提供してくれるたぁ、ありがてぇ! しかも謀反上等とは、太っ腹だ!」

「噂に違わぬ狂気だな、これは心強い」

 

首領の発言を聞き、少女も鎧も歓喜の声を上げる。しかも首領は、そんな2人の狂気染みた人格を許容している。

 

「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! なるほど、その胆力と絶対的な力がそうさせるのか。うん…そうだな! そうに違いねぇな!!」

 

するとその様を見ていた聖丸が高笑いをあげ、連れられてきた2人組の方に寄って行き、声をかける。

 

「俺は聖丸、お前ら同様に謀反上等でここに協力している者だ。それとお前らのことは首領から聞いているし、聖書とやらにも記載があったから知っているぜ。まあ取り敢えずよろしく頼むぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルクレスにミストルティンさんよ」

 

エトワリアの聖典で唯一、明確な敵意との戦いが記述された世界がある。聖丸に名を呼ばれたこの2人は、その世界から連れてこられた敵意の持ち主達であった。

 

灯台(ファロス)エルクレスと樹海(フォレスト)ミストルティン

ついにオーバーヘブンショッカーは、聖典世界の悪意をもエトワリアに持ち込んでしまう。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

そして、4つ目の遺体に選ばれたクリエメイトが、仮面ライダーと異界の戦士に出会うこととなる。しかもクリエメイトは、エルクレス達が元居た世界の住人だ。

 

「サナ、こんなもんでいいかしら?」

「うん。大丈夫だと思うよ、メリー」

 

「ここが異世界か……風都から離れてこんな場所に来ちまうとは」

「だが、世界全体の危機は風都にも危機を及ぼす。なら、僕達が動かない道理はないよ」

 

「あれ? 紅緒、なんかこの禍野、おかしくないか?」

「うん…というか…ここは禍野…じゃない?」

 

しかし、今度は想定外の人物までがこの会合に立ち会うこととなる。

 

「なんなんだここ? 新しい夢魔の幻界(ユメ)?」




今回は先に言っちゃいます。ジャンプ側の参戦は双星の陰陽師で、アニメ最終回後です。理由としては、ろくろと紅緒がちゃんと揃っている&原作最新話での技を使いたい&一番好きな婆娑羅の聖丸がアニオリに出なかったのが無念、の3つが理由となっています。

ちなみに、双星はうららを組ませる候補の1つでした。変更の理由は次回のあとがきで説明予定なので、少々お待ちください。ラストに出てたライダーが関係しています。

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