仮面ライダー&ジャンプフォース 平成ジェネレーションズHeaven inきららファンタジア   作:玄武Σ

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ジオウの最新話、まさか士からディケイドの力が奪われるとは……予告からして、スウォルツ自らアナザーディケイドになるのか?
そして仮面ライダーアクアがまさかのTVシリーズ参戦も気になります。

サブタイが不穏なうえに、ラストでちょっとアンチっぽいシーンが入りますが、こちらはそのつもりないのでタグの変更はしません。
そしてラストで語ったゲストは文字数の都合で次回に回します。申し訳ありません。

P.S.シャーマンキングのキャラブック・原色魂図鑑を先日、手に入れました。
ダムコロロ、超かわいかったです。


第20話「侵食されるエトワリア」

現在、里にて九つの内五つの聖なる遺体の持ち主に選ばれたクリエメイト達と、彼女達の守護者に選ばれた仮面ライダーと異世界の戦士達が集っていた。

 

遺体の右腕を手に入れた”ゆの”、仮面ライダー電王こと野上良太郎と仲間のイマジン達、モンキー・D・ルフィ率いる麦わらの一味三名と同盟の海賊トラファルガー・ロー。

 

脊椎部を手に入れた涼風青葉、仮面ライダーエグゼイドこと宝生永夢、界境防衛機関ボーダーの玉狛支部。

 

頭部を手に入れた千矢、猛士関東支部の仮面ライダー響鬼、ハオの弟である麻倉葉とその許嫁の恐山アンナ。

 

両脚を手に入れた藤原夢路、仮面ライダーWこと左翔太郎&フィリップ、双星の陰陽師・焔魔堂ろくろと化野紅緒。

 

左腕を手に入れた保登心愛、仮面ライダービルドこと桐生戦兎、緑谷出久ら雄英高校ヒーロー科・1年A組の5人。

 

そして彼女らに洗脳を解かれた花京院とツェペリ男爵、未来から来た承太郎の娘・空条徐倫、そして聖なる遺体が元あった時代の住人ジョニィ・ジョースターである。

 

 

ひとまず集結し、各戦士達は互いに情報を公開し合う。

 

「しかし、仮面ライダーってのも意外と節操ねぇラインナップなんだな。タイムパトロールに医者兼ゲーマー、妖怪退治屋で鬼、探偵コンビが合体して変身、地球外テクノロジー使う物理学者……やれやれ、他にどんな奴がいるか想像つかねぇ」

「俺も同意だ。列車型のタイムマシンに地球の記憶なんて抽象的な物を内包したツール、一体どうやったらそんなものが作れるんだ?」

「それ言うなら、ライダー以外の戦士も節操なさすぎだろ。異能力持ちの海賊に異世界からの侵略者と戦う防衛機関、ハオの弟はともかく、陰陽師なんて霊能者もいるし、極め付けは異能の一般化による職業ヒーロー養成学校の生徒だぜ」

「ですね。仮面ライダーやスーパー戦隊と違い、変身せずに力を行使する人たちがこんなにいるとは思いませんでしたよ」

「私はクリエメイトの皆さんと接していろんな世界を知ってきましたけど、ここまでいろんな世界があるなんて……」

 

ここまでで集まった戦士達をざっくりと上げていき、そのラインナップに何も言えなくなるディケイド組とジョースター組であった。複数のシステムで変身する仮面ライダーがいる世界出身の永夢や翔太郎と違い、完全に独立した世界で仮面ライダーとなっていた戦兎も、承太郎に同意している。

一方で召喚士として目覚め、様々な異世界を知ってきたきららにとっても、仮面ライダーやそのほかの戦士たちの世界の存在は驚きであった。

 

「スッゲェな、異世界ってそんなにたくさんあんのか! 俺も行ってみてぇ!!」

「だな。俺ももっとカッコよく活躍できる場所があるかも知れねえしよ!」

「わ、私はいいかな。なんか、戦いの大きそうな世界ばっかりで怖いし……」

 

話を聞いていたルフィとモモタロスは興奮して様々な異世界に興味を示し、隣で聞いていたゆのは怯えているようだ。実際、何処の世界もそれなりに戦いの多い世界だから当然だろう。

そんな中、ポルナレフはそんなゆの達に連れられた花京院に視線を向けることとなった。当然、彼もエトワリアで最初に相対したアヴドゥルとイギー同様に、戦死したはずだからだ。

 

「なぁ、お前って本当に花京院なんだよな? そんでもって、洗脳も溶けてるんだよな?」

「ええ。あそこにいるゆのさんが、聖なる遺体とやらで助けてくれたんです。そこのツェペリ男爵という方も、千矢という子に同様の手段で助けられたそうで」

 

帰ってきた花京院に疑いの目を向けるポルナレフだが、直接見てない以上は仕方のないことだった。

しかし、その疑惑はすぐに解決してしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「花京院、俺のことを覚えてるならこのハンドシグナル、わかるよな?」

 

目の前で両手をパンッと鳴らし、右手の指を二本立てる。次に親指と人差し指で丸を作り、最後に平にした右手のひらを額に当て、遠くを見渡す仕草をとる。

このハンドシグナルに対しての花京院の答えは

 

「パンツーまる見え」

YEAAAH

 

ポルナレフは歓喜の叫びをあげると花京院が水平にした両手にこちらも両手でタッチ。そこからは互いに無表情になりながら、ピシガシグッグッと拳をぶつけ合う。

そしてトドメに、ハイタッチ。

 

「なぁ、これ何なんだ?」

「さあな。知らねぇし、知りたくもねぇ」

「再会できて嬉しいのはわかるが、敵が本格的に動き出した非常事態にくだらんことするな!」

 

あまりのバカっぽさに士は疑問を浮かべ、承太郎は関わり合いになるのを拒み、ジョセフは二人を叱る。

 

「あんなバカっぽい大人が仏蘭西人なわけない……だって、仏蘭西はマリの故郷で、もっとお洒落で……」

 

一方、なつみ屋のメンバーである小梅はこの一部始終を見て、ショックを受けていた。彼女はフランスから来た魔女のマリという女性に憧れ、彼女に弟子入りするために国一番の魔女=一番占になるという約束をした。そのこともあり、フランスへの憧れは人一倍強いというわけだ。そのため、ポルナレフの出身と頭と下半身が分離してると比喩される性格は、かなりショッキングなわけだ。

 

「しかしヒーローが職業化している世界か……出久ってすげぇ世界から来たんだな」

「藤原君もスゴイよ、夢に寄生する夢魔と戦うなんて。夢に干渉する個性なんて、僕の世界でも聞いたことないしさ」

「夢路でいいって。俺もヒーロー好きだし、出久とは仲良くしてぇしさ」

「……わかった。じゃあ改めてよろしく、夢路君」

 

その一方で、出久と夢路はウマが合ったのか、そのまま仲良くなっていた。夢路は元々、フルヘルボーダー・グリッチョという特撮ヒーローのファンということもあり、ヒーローオタクな出久とは通じるものがあったのだろう。

しかしその一方、何故か勝己が不機嫌そうな表情をしている。

 

「……あのクソナード2号、なんか腹立つな」

「お前と声が似てるのに、性格が緑谷寄りだからじゃねえのか? つーか、クソナード2号って」

「あ!? おい半分野郎、俺があのクソナード2号と似てるダァア!?」

(確かに声だけ聴いてたら夢路そっくりだけど……)

(性格は別物ね)

 

そんな勝己を見ていて勇魚とメリーも内心で驚いていたりする。

 

「オイラの爺ちゃんも陰陽師なんだけどさ、仕組みも目的も全然違うんだな」

「葉も凄いんだけど、ろくろも凄いんだね! うららも神様の力を借りるんだけど、占いのためだけだからそんなに色々できるの少し羨ましいかも」

「サンキューな。でも俺、今は克服してるけどこの力を恨んで呪ったこともあって、頭ごなしに褒められても複雑なんだよな…俺からしたら、千矢みたいな戦いの関係ない、優しい力の方がうらやましいかな」

 

一方のうらら、シャーマン、陰陽師の面々も和気藹々と互いの力について話している。

するとそんな中に、ジョナサンとツェペリが近寄ってくる。

 

「千矢といったね。君がツェペリさんを…僕の師匠を救ってくれたそうだね」

「え? うん、ツェペリさんは確かに私が何とかしたけど…」

 

突然の言葉に千矢は困惑しつつも答えると、いきなりジョナサンが頭を下げ始めた。

 

「ありがとう! 君のおかげで、僕は師匠と殺し合わずに済んだ。本当に、君は恩人だ!!」

「私からも改めて礼を言わせてくれ。ありがとう」

「え!? あははは…」

 

突然のジョナサンのお礼の言葉とその誠意の籠った声に、思わず困惑しつつも照れてしまう千矢であった。ツェペリも続いて頭を下げてきたため、拍車をかけることとなった。

 

「で、この"くろう"ってのは、何なんだ?」

「スタンドに見えなくもねぇが、触れるってことは違うだろうな」

「物を依り代してに実体化するスタンドもありますが、これは明らかに違いますよね」

 

その一方、いつの間にかやってきた承太郎たちが、同じくいつの間にか現れていた”くろう”が何なのか?という事に注目してしまう一同。元々、霊能の専門家である葉やろくろも、その正体を測りかねていた。

 

「少なくとも、人間や動物の霊ではないよな。強いて言えば、精霊に近いっぽい雰囲気というか……」

「式神に見えなくもねぇけど、なんか違う気がすんだよな」

「ちょい待ち! そんなむっつり黒兎なんかとワイを一緒にしてもらったら、困るで!!」

 

直後に聞き覚えのない叫び声が聞こえたと思いきや、紅緒の懐から狐に似た小さな生き物が出現した。

 

「うぉ!? なんだ、こいつ?」

「ワイは紅緒様専属のお世話係、式神のきなこ。非戦闘型やからさっきは出てきそびれたけど、まあよろしゅう頼むわ仮面ライダーはん」

 

現れたその生き物に驚く翔太郎に、自己紹介を始める生き物改めきなこ。するときなこは、そのままろくろに飛び掛かってハリセンを叩きつけてきた。

 

「いてぇな! 何すんだよ!!」

「じゃかしぃ、ジャリガキ! こんなようわからんもんを、ワイ等誇り高い式神なんかと一緒にすんなや!!」

「こんなって! ”くろう”は友達の紺が見つけてくれた、私の得意な占いなんだよ! 馬鹿にしないでよ!!」

 

きなこの物言いに当然、千矢は反論して大声を出してしまう。当然、きなこもその言葉にハッとしてしまうのだった。すると、それを見ていた紅緒も当然…

 

「今のは…きなこが、悪い…引っ込んでいて」

「紅緒様!? ……その、すまんな。知らんとはいえ、一方的に文句言うてもうて…」

 

紅緒の怒気に充てられ、きなこは千矢に謝ると再び形代の紙に戻って紅緒の懐に帰っていった。

 

「きなこが…ごめんなさい。お詫びの…代わりに、おはぎ…食べる?」

「いいの!? ありがとう!!」

 

紅緒が謝罪の言葉と同時に重箱をどこからか取り出すと、ふたを開けて中にぎっっしりと詰まったおはぎを見せて問いかける。千矢はそれを見て目を輝かせ、おはぎを頬張りだした。

 

「まあ、あの”くろう”とやらは後回しだな。問題は…」

「そこの二人だな。未来から来た俺の娘と、聖なる遺体が元々あった時代の人間…」

「今回の問題に一番詳しそうな人と早く出会えたのは、幸運でしたね」

 

一旦、くろうについての話題は終わりにし、士と承太郎、そしてきららは徐倫とジョニィに視線を向けるのだった。遺体に導かれた戦士の中に、実際に遺体のあった時代の人間と、未来から来た承太郎自身の娘がいたのだ。気になるのも当然だろう。

 

「父さん……まあ、アタシから見たら父親なのは変わんないから、便宜上は父さんと呼ばせてもらうわ。でも、こんな形で無事なあなたに会うなんて…」

「その様子だと、俺は厄介なことに巻き込まれているようだな…まあ、聞かないでおいてやる」

「それよりも、ジョニィっていったか? 例の聖なる遺体やそれと身近な連中について、わかる範囲で教えてもらえないか?」

「ああ。僕も遺体を欲しているし、協力者が多いに越したことはないからね」

 

そしてジョニィは、自らの身の上に起きたことを話し始める。

 

かつてジョニィは天才ジョッキーとして名を馳せていたのだが、そのせいで高慢になっていたために罰が当たり、行列の取り合いというくだらない喧嘩が原因で足を撃たれた。その傷が元で下半身不随になってしまう。

しかしある時、ジャイロ・ツェペリという男が持つ”黄金の回転”と呼ばれる秘術の影響で足が一時的に治ったことからジャイロに会うため、彼が参加していたアメリカ大陸横断の乗馬レース大会”スティール・ボール・ラン”に参加を決意する。

その大会で聖なる遺体を知り、その一部(ココアの手に入れた左腕)を手にしたことでスタンド能力を手に入れた。そして後に宿敵となるアメリカ大統領のファニー・ヴァレンタインが九つに分断されたこの遺体を回収するのが、レースの真の目的だと察してジャイロと共に戦っていた。全て揃うと所有国家は千年は繁栄する、というほどのパワーを宿した聖なる遺体。傭兵やテロリストを雇ってまでそれを手に入れようとするヴァレンタインを止めるべく、ジョニィとジャイロは戦った。

しかしここに来る直前の戦いでジャイロが戦死し、進化したスタンドの力でヴァレンタインを追い詰めるも、いきなり意識を失ってエトワリアに来ていたという。

 

「ヴァレンタインのスタンド・D4Cの能力は平行世界の行き来をするというものだ。奴が無限の回転を込めた爪弾から逃げる際に平行世界へ行って、例のオーバーヘブンショッカーとやらに関わりを持つことになったんだろう」

「成る程。そこに例のアルシーヴとやらが禁術を行使したのが重なって、今回の事件が起こっちまったわけだ」

「……やれやれ。平行世界を行き来するスタンドってだけでもとんでもねぇが、そこにファンタジー丸出しな異世界が絡んで、どんどんややこしくなってやがる」

「特殊能力で平行世界を自在に行き来、か……最上魁星(もがみかいせい)もビックリだな。しかも使い手が国家元首って……」

 

ヴァレンタインのスタンドの力が何気なく判明し、それに合わせて今回の事件のそもそもの元凶と言うべき戦いに、頭が痛くなりそうな士と承太郎だった。戦兎もかつて戦った敵が平行世界の融合を目論み、その為に平行世界を行き来する装置を開発していた為に、ヴァレンタインと照らし合わせて

 

しかし、承太郎は徐倫のある一言でそれら全てが頭の中から霧散することもなる。

 

「早くこの一件を片付けて、元の世界に帰らないといけない。エンポリオにアナスイ、エルメェスにウェザー。仲間たちを向こうに置いてきているし……」

 

仲間達の名を呟き、徐倫は決意を新たにするのだが、その際に口にしたある単語に承太郎は覚えがあった。

 

「このままじゃ、プッチの奴が天国に到達を……」

「!? (まさか、徐倫が関わっている戦いは、アレが絡んでいるのか?)」

 

不意に聞こえた"天国"という単語に目を見開く承太郎。彼はDIOを倒した直後、ある物を彼の屋敷で発見したのだが、それに天国にまつわることが記録されていた。DIO自身が研究したらしいその記録を危険視し、承太郎は燃やしたはずだったのだが……

 

「……」

「あれ? ランプちゃん、どうしたの?」

 

その一方、ランプが珍しく険しい表情でいたので気づいた青葉が問いかける。そこに、永夢とボーダー組も駆け寄ってくる。

 

「どうしたの? やっぱり、これから起こる戦いが怖いのかな?」

「心配しないでいいぜ、お嬢ちゃん。この実力派エリートが来たからには、この里の住民は誰も傷つけさせないぜ」

「あなた達が…」

 

そしてそんな二人に対してランプが何かを言おうとした矢先、それが起こった。

 

「みんな、大変だよ!!」

「急患や! 怪我した人達連れてきたから、保護したって!!」

 

現れたのはピンクのロングヘアの少女に関西弁でしゃべるスタイルのいい少女。そして後ろに小柄でクールな雰囲気の少女と、黒髪に眼鏡の少女だ。

 

「なでしこさん、どうしたんですか?」

「だから、葵ちゃんが言ったみたいに怪我した女の子を保護したから助けてって!!」

 

なでしこと呼ばれた、クリエメイトと思しき少女が負ぶって来たのは、フリル付きの衣装に杖を携え、頭に王冠をつけた幼い少女だ。それが傷だらけで息も荒い為、ただ事じゃないのは察しがついた。

そしてクールな少女に連れられているのは、亀の甲羅を模した装飾を身に着けた少女である。

 

「えっと、ひょっとして君達もクリエメイトなのかな?」

「誰? 日本人っぽいけど…私は志摩リンでそっちの眼鏡は大垣千秋、察しの通りクリエメイトって呼ばれている。ただ、この子はこの世界の人だから違うかな」

 

良太郎が話しかけると、少女は自ら自己紹介を始める。そしてその少女、リンに連れられていたエトワリアの住民だという少女が、必死な様子でこちらに訴えかけてきた。

 

「私はウミガメのウミといいます。そちらのなでしこさんが負ぶっているお方を…オトヒメ様を助けてください!!」

 

そして自らを海亀だという少女は、そのままなでしこが背負っている少女をオトヒメと呼んだ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

~里の居住区~

「ひとまず、傷の手当は済んだな。裂傷が多かったんでおれとタヌキ屋で縫っておいたぞ」

「そこにゆのとなずなの魔法が合わさったから、上手く治癒してくれたぞ。後は体力さえ回復すれば、なんとかなりそうだな。で、おれはトナカイだって何度言わすんだ」

 

連れてこられた少女、オトヒメはローとチョッパーに手当てされた。そこに回復魔法が加わり、傷はもうほとんど回復している。しかしまだ意識は戻ってないため、後はチョッパーの診察通り、体力の回復を待つのみだ。

ちなみに、ローからタヌキ呼びされて不機嫌そうだ。

 

「チョッパー君、船医って言ってたけど本当にお医者さんなんだね」

「うん、本当すごかったよ。ローさん共々、手際もよかったし」

「な!? そ、そんな褒められたってうれしかねーぞ! コンチクショー!!」

 

なずなと乃莉に褒められ、露骨な照れ隠しをしてしまうチョッパー。その一方で、士達はリンやウミから事情徴収をしていた。

 

「で、何があったんだ? 俺達が戦っている敵が、そっちに来たかもしれねえし、話してくれ」

「はい。私達、シーズンオフ時にキャンプするのが趣味で、海水浴場にキャンプまで行ったんですけど…」

 

そして、承太郎の問いかけにリンは話し始めた。

 

~回想~

「アキ、設営できたで」

「お、イヌ子よくやった。じゃあ、昼飯の準備するぞ」

「よし、じゃあおいしいの付くから、みんな待ってて!」

 

リンが話した通り、海でキャンプをしていた一同。千秋にイヌ子と呼ばれた犬山葵が設営、なでしこが食事といった具合に役割分担してキャンプを楽しんでいる。

 

「そういえば、なんか今日は人が多いよね?」

「出る前にコルクに聞いたんだけど、ここにはこの時期にしか連れない珍味の魚が釣れるんだって。で、それが下手な魔物より凶暴だから、冒険者的な人たちが主に狙っているとか」

 

なでしこが海水浴シーズンから外れているのに、人が多いことに疑問を感じていた。そこにリンが説明していると、直後にそれは起こった。

 

バシャアアアアアンッ

「うひゃ!? 何!?」

「まさか、今リンの言ってた魚が出てきたのか!?」

 

突然上がった水しぶきに驚く一同。千秋がリンの話していた魚の件を思い出して口に出す。しかし、それは見当違いだった。

 

「た、助けて…ください!」

「え? 女の子?」

 

現れたのは、助けを求めてきた少女ウミであった。傷だらけのオトヒメを連れているため、どうやらこの時すでに彼女は危機に陥っていたらしい。

 

「地上の方、ですか? 私達は海の底の、リュウグウパレスに住んでいましたが、そこにとんでもない奴等が襲ってきて…」

「と、とんでもない奴等?」

 

ウミの言葉に、尋常じゃない何かを感じたリンだったが、その時再び水しぶきが上がる。

 

「見ぃ~~~~~付けた!」

「おいおい、随分と手間取らせやがったな」

 

現れたのは褐色肌に銀髪ツインテールの男と、剣とも斧とも覚束ない巨大な刃物を携えた長身の男だった。後者の男は他にも眼帯や、常に歯を見せている口など、目の立つ特徴が見られた。

一同は知る由もなかったが、褐色肌の男は聖丸である。

 

「な、なんだこいつら?」

「見た目は人間っぽいけど…なんか?」

「あ? おいおい、破面(アランカル)を人間と勘違いなんざおめでたすぎじゃねえか?」

「俺も同感だな。婆娑羅を知らねえっつっても、人間なんぞに間違えられるのは癪だ」

 

破面、婆娑羅と種族名をそれぞれ口にする二人組。当然、いきなり現れた二人組に、海辺に集まっていた人々が騒ぎ立てる。

 

「おいおい、そんなカスみてぇな呪力しか持ってねえ人間ばっか集まっても仕方ねえんだが…」

「だったら、俺の食事にさせてもらうぜ。あんまり味には期待できねえが、量はそれなりに多いしよ」

 

そして破面を名乗る男が聖丸に言うと、空を見上げると同時に口を大きく開け、息を思いきり吸い込んだ。直後、それは起こった。

 

「あがぁ!?」

「ひぎぃ!?」

「がっ!?」

 

いきなり海辺に集まっている人々が一斉に倒れたのだ。結果、なでしこ一行を含めた数名だけが無事だったが、残りは全員が倒れ伏した。

 

「ぷはぁ~。思いのほか美味かったが、それでも現世の人間に毛が生えた程度か」

「しかし、魂を直接食わねえといけねえのは、不便なもんだな。ノイトラさんよぉ」

「直接殺さねえと呪力とかいうエネルギーを取り込めねえ、お前さんほどじゃねえが」

 

聖丸の言葉からして、彼にノイトラと呼ばれた長身の破面は周囲の人間達の魂を今ので吸い込んでしまったようだ。

 

「魂? 食べた? まさか!?」

「倒れた人たち、みんな死んじまったのか!?」

「おうよ。俺達、破面が周辺の魂を一斉に食らうための技”魂吸(ごんすい)”だ。今ので死んでねえ辺り、てめぇらは少しは骨がありそうだ」

 

なでしこと千秋が怯える様に、ノイトラは丁寧に説明してやる。すると生き残っていた一人の男が、それを聞いて憎悪に塗れた表情を撃兼ねてノイトラ達を見る。

 

「てめぇら、おやっさんも兄貴も、かわいい後輩もみんな殺しやがったのか!?」

「あ? てめぇら人間だって、他の生き物を食うだろ。それと同じで俺もお前ら人間を食ってるだけだよ」

 

悪びれた様子もなく、冒険者の男に告げる聖丸。しかし、それが男の怒りに火をつけることとなった。

 

「てめぇえええええええええええええええええ!!」

 

そして手にした剣で男は聖丸に切りかかるが……

 

バキッ

「!?」

「うん、いい絶望顔(かお)だ」

 

剣が折れ、男の表情が憎悪と怒りから恐怖と絶望へと変わる。そしてそれに満足気な聖丸が上で振るうと、男の体が縦から両断される。間違いなく即死だ。

そしてそのまま血の雨を降らせ、リン達にもそれが降りかかる。

 

「うん。呪力の方も、俺らの世界の雑魚人間に毛が生えた程度だな」

「だろ。そこの小娘どもはさっきの抵抗の様子から、まだマシだと思うが…」

 

しかもそんな惨劇を起こした張本人達は、本当に人間が食事の感想を告げる感覚であった。

 

「り、リンちゃん…まさか?」

「そのまさか、だと思う。私らも殺して、魂を食べるんだと思う」

「アカン、みんな逃げるで!!」

 

最悪の想像が一同の脳裏をよぎり、葵も焦った様子で逃げるように勧める。

 

「「そうはいかせねぇよ!!」」

 

しかし聖丸もノイトラも攻撃モーションに入り、一同の息の根を止めようとする。

 

「ウミちゃん…今だよ!」

 

しかし直後、オトヒメが目を覚まし、持っていた杖を振りかざすと海水がノイトラと聖丸に襲い来る。

 

「「な!?」」

 

そしてそのまま二人は驚き、海水に飲まれてしまった。

 

「今です! 逃げましょう!!」

「そうだ、今のうちに!!

「おい、キャンプ道具とかどうすんだ!?」

「置いていき!! 命あっての物種や!!」

 

オトヒメのおかげで出来た隙をついて、どうにか逃げ出した。千秋は持ち物を置いていくことに困惑するも、葵に論されて逃げることを優先するのだった。

 

「くそ! 雑魚の分際で…」

「お前ら、よくも仲間を!」

「ちっ…しゃらくせぇ!!」

 

そして他の冒険者達が、聖丸とノイトラに一斉に襲い掛かってくる。結果、彼らは図らずもなでしこやオトヒメ達を救うこととなった。

~回想了~

「聖丸……もう動き出していやがったか」

「あの婆娑羅とかいう奴等の、一派のリーダーだね」

「しかし破面か……今まで統合した情報に無い敵だな」

「連中、怪人以外にも遺体の数と同じだけ、別世界の悪意を持ち込んできている可能性もあるな」

 

聖丸の名に反応する、ろくろとフィリ

ップ。実際に婆娑羅と相対しただけあって、翔太郎や夢路共々、彼らの脅威については良く理解していた。その一方で、新たな敵の存在に警戒心を強めることとなる士と承太郎であった。

しかし、一人的外れながら一つの疑問を感じてしまうユウスケの姿があった。

 

「なあ、この子ってオトヒメって名乗ってたけど……例のリュウグウパレスといい、マジモンの竜宮城があんのか?」

「はい。この世界の海には人の姿を取る生物がいくらか存在していて、そのリュウグウパレスで生活しているそうです」

「ふ~ん……って、誰?」

 

ユウスケの疑問に答えたのは、いつの間にか部屋に入ってきたソルトだった。見覚えのない少女に、ユウスケは驚いてしまう。

 

「どうもはじめまして、七賢者のソルトといいます。今回、クリエメイトのゆのやそこの電王、あとルフィという方々に保護されてこちらに保護されました。別室で同じく七賢者で双子のシュガーもいますので、見知り置きを」

「保護じゃなくて捕虜だ。一応、こいつらの敵のアルシーヴとやらの部下らしいからな」

 

ソルトの自己紹介と簡潔な事情の説明に、ローが付け加える。

 

「こんな人畜無害そうなのがお前らの敵か。いろんな意味でこの世界、大丈夫か?」

「ソルトは高度な変身魔法が使えて、それでクリエメイトの偽物を用意したりして結構厄介でしたよ?」

 

士が相変わらず遠慮のない物言いに、きららがフォローを入れる。しかし当のソルトは一瞬ムッとするも、すぐに険しい表情を浮かべた。

 

「まさか、この世界がこんなことになるなんて……」

「そこは同意ですね。アルシーヴ様の御身も心配ですし…」

「クレア、心配しないで。仮面ライダーの皆さんや、承太郎さんのような異世界の戦士の人達もいるし…私も手伝って勝ってみせるから。出来れば、ソルトやシュガーにも手伝ってほしいけど…」

 

 

そして聞き手に回っていて不安な様子だったクレアに、きららは安心させるように告げる。そしてソルトにも協力を持ちかけようとするのだが…

 

「きららさん、私は信用ができません」

 

ランプが突然、異議を唱えだしたのだ。

 

「え? 確かにソルトは敵対している七賢者だけど、今は非常事態なんだし…」

「違います、ソルト達じゃありません」

 

きららが論そうとするも、いきなりそれを否定するランプ。

 

「百歩譲って、アルシーヴ先生や七賢者たちと協力しようとしても……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その仮面ライダーとやらやほかの異世界の戦士達を信用ができないんです。特に、そこの士さんは”世界の破壊者”だなんて呼ばれているそうじゃないですか」

 

そして疑惑の目を持って、士の方を見るのだった。




ノイトラ先行登場。破面の他にも、後半から出てくるジャンプキャラは敵だけ先行登場する奴がそれなりに出てくるので、お楽しみに。
そしてランプの疑惑とその真意は、果たして?

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