仮面ライダー&ジャンプフォース 平成ジェネレーションズHeaven inきららファンタジア 作:玄武Σ
アルシーヴと七賢者も本格的に絡んできたが、果たしてどうなる?
2020/9/22、後半のきららのセリフを一部変更しました。
まさかの七賢者とアルシーヴの出現。まさかの事態に、一同は動揺を隠せずにいた。
そして、そのタイミングでランプを救出したきらら達が戻ってきた。
「もう来てた……皆さん、気を付けてください! この人が…」
「大体わかった。あのキツそうなねーちゃんがアルシーヴってことだろ」
「ついでに言えば、後ろの女共が残りの七賢者ってことだな」
きららが説明しようとするも、ディケイドと承太郎はジョセフ同様すでに察していたようだ。少なくとも友好的には見えない相手の出現に、一同は警戒態勢に入る。
「おや? 誘拐したランプさん、勝手に助け出したようですね。見事に見つけ出したと褒めたいですが、正々堂々とした決闘の最中でしたのでやめておきましょう」
ランプを勝手に救出されたことにヘラクスは思うところあったようだが、それだけ言って今度はアルシーヴ達の方に目を向ける。
「それとそこのレディ。今は決闘の最中ですので、割り込むのはいささか紳士的ではありませんね。もう少しお待ちいただけ…」
「悪いね。私らも仕事なんだ、ちょっと引っ込んでいてくれ」
しかしそのまま、獅子の耳の生えた女性がヘラクスの体を片手で持ち上げる。全身にアーマーを纏い、総体重が普通の人間よりも重いはずなのだが、女性の細腕で軽々と持ち上げたのだ。
「おらよ!!」
そしてそのまま、ヘラクスをぶん投げてしまう。そしてあっという間に、ヘラクスはお星さまになってしまったのだ。
「………レオーネ?」
「誰だそれ? 私はジンジャーっていうんだけど」
そんな中、不意にユウスケが以前たまたま読んだ漫画のキャラクターに目の前の女性に似たやつがいたため、その名前で呼んでしまう。するとそのまま自ら名乗る女性。
その一方、ケタロスは変身を解除してローライズ・ロンリー・ロン毛に戻った。ディケイドもそれに合わせて、フォーゼへの変身を解除する。
「……うちの上司が飛んで行ったんで、助けに行っても大丈夫っすかね? 捕まえた子も、勝手に助かってるみたいだし」
「ああ。それにここからは俺たちの問題だ、下がってろ」
「どうもすみませんね。それじゃあ、俺はこれで」
そのままディケイドはロン毛を下がらせて、承太郎と共にアルシーヴと対峙する。
「話は聞いている。この世界を統治する女神の補佐をしていながら、その女神を封印したとか。つまり、諸悪の根源ってことだな?」
「こっちは今、戦力が整いつつある。そこに飛び込んでくるとは、いい度胸じゃねえか」
そのまま二人で言葉をぶつけながら、臨戦態勢に入る。するとその直後…
「お前が筆頭神官とやらか。こっちにはお前の部下二人がいる。返して欲しければ、こっちの言うことを聞くんだな」
「アルシーヴ様…」
「そういえば、ソルト達は捕虜扱いでした。不覚です…」
ローがシュガーとソルトを拘束し、その首に太刀を突き付けている。海賊だけあって、手段はとらないというのが見て取れた。
「……」
しかしアルシーヴは無言で右手をかざすと、その手がいきなり輝きだす。
「な!?」
直後、シュガーとソルトが一瞬にして消え、そのままアルシーヴの傍に現れた。せっかくの人質が、奪還されてしまったのだ。
(おれのシャンブルズと同じことを、一瞬でやりやがった……この世界特有の魔法とやらか!)
(アルシーヴさん、あんな魔法を一瞬で…しかも疲弊している様子がない)
ローがまさかの事態に苦虫を嚙み潰したような顔をしていると、見ていたきららもかつて対峙したアルシーヴと様子が違うことに、警戒心を強める。オーダーは行使者のクリエを膨大に消費するらしく、かつて戦った時はアルシーヴはかなり疲弊していた。しかし今は、その様子が見えなかったのだ。
しかしその一方、アルシーヴは奪還したシュガーとソルトに声をかける。
「シュガー、ソルト……お前たちは先に神殿へ帰還しろ。私達は成すべきことを成した後に戻る」
「え!? でも、アルシーヴ様…」
「お前たちは召喚士やあの謎の協力者達にと一晩過ごしたことで、情が移って判断が鈍ると見た。帰還しろ」
「……わかりました。シュガー、帰りましょう」
「うん…みんな、バイバイ」
そして、そのまま拘束を解除されたシュガーとソルトは、二人で転移していった。
「まず、率直に言う。私はお前達と敵対する気はない。探している物がある」
そして二人の帰還と同時に、アルシーヴはこちらに対して口をきき始めた。
「召喚士きらら。数か月前にお前達が神殿に入る直前に私が行使したオーダー、それが失敗したあの時にこの世界に紛れ込んだ何かを私達は探している。そして、それはどうやらクリエメイト達の何人かが持っているようだ」
クリエメイトが探し物を持っている、というこの言動に一同はアルシーヴの目的に察しがついてしまう。しかし、ひとまず話を聞くことに専念する。
「それはクリエに類する膨大なエネルギーを秘めているようで、私達はそれが欲しい。それを寄越すのなら、今後オーダーは行使しないと約束しよう」
「まさか、お前達も聖なる遺体を欲するのか!?」
しかしそれをはっきりと欲しいと口にしたことで、思わずジョニィが反応する。こちらが集めている聖なる遺体が狙いなことが、判明してしまった。
「聖なる遺体? つまり、その何かは人の亡骸だというのか?」
「ああ。僕たちの世界で奇跡を起こした聖人のミイラのパーツ、それにその奇跡のパワーが宿っているらしい」
アルシーヴの疑問に、隠しておく必要性がないと判断してジョナサンが説明する。そしてそれに続き、ディケイドが会話に参加した。
「そして、それを狙う奴等から守るために、俺達はこの世界にやって来た。それが俺達のこの世界での役割ってわけだ。そいつらの目的は所謂世界征服だが、あんたらはなんで遺体を欲する?」
しかしそもそも、遺体を狙うオーバーヘブンショッカーと同じことを企んでいる可能性があるため、まずは目的について言及して探りを入れようとする。
「貴様達の知る必要はない。一つでもいいから、渡してもらおう」
しかし、そのままバッサリと切り捨てられてしまい、聞きだすに至らなかった。
「答えられないなら、何かやましいことに使うとも取れるんだが?」
「アルシーヴ様がそんなことのために力を得ようとするはず、ありえませんわ!!」
ディケイドの言動の直後、緑の髪の女性がレイピアを構えて突撃してくる。しかしディケイドは、それをライドブッカーのソードモードでいなす。
「なかなかやりますわね。でも私はまだこの程度じゃ…」
「そろそろ俺も暴れさせろやぁああ!!」
女性がディケイド相手に身構えてると、モモタロスも剣を片手に飛び掛かってきた。しかしその剣は、女性に防がれてしまう。
「目的次第じゃ協力もしてやらなくもなかったが…交渉にすらなってねぇな。モモタロス、暴れてこい」
「言われるまでもねぇよ! そろそろ、俺も暴れてぇ頃だったからな」
ディケイドはそのままモモタロスを暴れさせようと声をかけると、ノリノリな様子のモモタロスだった。
「涼風さん、下がっててください。遺体を守ることに専念して」
「永夢さん……わかりました。みんな、ここは任せよう」
次に永夢が前に出て、青葉を下がらせる。そして青葉も他のクリエメイト達に呼びかけ、遺体を守ることに専念する。
「にしし。あいつらぶっ飛ばせばいいんだな」
「さて。そろそろ実力派エリートの腕前、見せてやるかな」
「僕も行きます。こういう時こそ、ヒーローの仕事ですから」
「モモタロスが行くなら、僕の出番ですね」
そしてそれに続き、ルフィと迅、出久と良太郎の四名が前に出てくる。いつオーバーヘブンショッカーが来るかわからないため、このまま1対1で対応したほうが賢明だろう。
「皆さん、彼らは姿を変えて戦闘能力を跳ね上げます。警戒を」
「そうでない者も、得意な力や武器を有している。油断大敵」
するとセサミとハッカも仮面ライダー達の戦いを目の当たりにしたことから、他の七賢者達に警戒を呼び掛ける。
「クリエメイト以外の異世界人、私は興味がそそられるな」
「まあ、どっちにしても勝つのは私らだ」
「例え相手が何者だろうと、アルシーヴ様のために力を尽くすだけですわ」
それに対して闘志を燃やすジンジャーと、残り二人の七賢者も奮起する。民族衣装風の少女はコルク同様に好奇心が強いようで、ディケイドに切りかかった騎士風の女性はアルシーヴの崇拝者らしい。
そしてそれぞれから戦う者達が前に出る形となった。
「まさか、あなた方とこんな形で再び相まみえるとは思いませんでしたよ」
「はい。根っからの悪人じゃないらしいですから、僕も対立はしたくありませんでしたが」
セサミと対峙する永夢。永夢が戦うことへの抵抗を口にする中、セサミ自身も部下の命の恩人である永夢と戦うことに抵抗はあったようだ。
「でも、僕には彼女達を守る義務があります。だから、手を抜く気はありません」
【マイティアクションX!!】
「そうですか。なら、私も遠慮なく戦わせてもらいます」
しかし永夢は決意を口にしながらゲーマドライバーを腰に巻き、ガシャットを起動した。セサミもその様子に、杖を構えて臨戦態勢に入る。
「変身!」
【マイティジャンプ! マイティキック! マイティ!マイティアクション!!】
そしてがシャットをドライバーに差し込み、そのままいきなりレベル2に変身して、ガシャコンブレイカー片手にセサミへと突撃していくエグゼイド。
「ノーコンティニューで、クリアしてやるぜ!!」
「七賢者セサミ、お相手いたしましょう!」
そしてセサミは、そのまま突撃してきたエグゼイドに水の弾丸を乱射していく。しかしエグゼイドは、剣に変形したガシャコンブレイカーで捌きながら立ち向かっていった。
「悪いけど、負けてもらうよ」
今度は民族衣装の少女が両手にナイフを持ち、一気に駆け出す。しかし彼女が向かっていったのは、実力派エリート迅であった。
「エスクード」
「な!?」
そして地面から盾を生やすトリガーで、少女の進行を阻止。迅自身は少女が動揺している隙に一気に懐まで飛び込み、スコーピオンで切りかかる。
「く!?」
しかし少女はそのままナイフで、迅の攻撃を防いで一気に背後へと飛びのいた。
「やるね。速さには自信があったんだけど」
「そこは、たたき上げの実力派エリートだからな。そして一言言っておくが、お嬢ちゃんはおれに勝てねぇ。おれのサイドエフェクトがそう言っている」
少女は迅を純粋に称賛する様子だが、直後の迅の言葉に少し可笑しそうな様子で笑う。
「そのサイドエフェクトが何かわからないけど…お兄さん、面白いね。私は自分が面白いと思ったことが正義だって思ってるから、お兄さんに興味が湧いたよ」
「おいおい、ナンパか? もう少し胸か尻が大きくなってから、出直してくれって」
少女の言動に迅が冗談交じりで返事を返すと、そのまま少女は今度は愉快そうに笑う。
「ふふっ。その軽口、ますます気に入った。七賢者の一人にして調停官のカルダモン、お兄さんに敬意を表して手加減抜きで行かせてもらうよ」
「おれはボーダー玉狛支部の実力派エリート・迅悠一だ。お眼鏡にかなったようで、光栄だ」
そして少女改めカルダモンと迅は対峙し、それぞれの得物で切りかかった。
「どりゃぁあああ!!」
「ゴムゴムの…」
ジンジャーは迫ってきたルフィを迎え撃とうと鉄拳を放つも、ルフィは武装色の覇気を纏って黒くなった拳を自身の背後に伸ばす。
「
そして縮んだ勢いを利用したパンチを放ち、ジンジャーの鉄拳と激突した。その衝撃により、二人の周囲の空気が激しい振動を起こす。
「へぇ、なかなか重いパンチだな。それに今の異様に伸びる腕、異様に硬い黒い拳、出鱈目につえぇよ」
「悪魔の実喰って力を手に入れたし、覇気って力の修行もしたからな。おめぇこそ、女にしちゃパワーすげぇぜ」
パワーで張り合えるジンジャーに、称賛の声を上げるルフィ。
「へぇ。中々に激しい修行積んだみてぇだな。お前、さしずめクリエメイト達の危機に駆け付けたヒーローってところだな。その力も納得だ」
「おれは海賊だ! ヒーローは好きだがなりたくねぇ! そこ間違えんなよ!!」
しかしジンジャーからの称賛の言葉に対して、特にヒーローの下りで強い否定の声を上げるルフィ。その様子にキョトンとしてしまったジンジャーは、そのまま問い尋ねる。
「なんでだ? ヒーロー好きなのに何でなりたがらねぇんだ?」
「例えば、ここに肉があるとする。海賊はそれで宴会するけど、ヒーローは人にやる。おれは肉が喰いてぇ、人にやりたくねぇ!!」
謎の理屈で説明するルフィに、ジンジャーはまたフリーズ。しかし、賢者と呼ばれるだけあって頭はそれなりに優秀だったようで、そのまま自分なりに理解しようとする。
「(要するに、無償の精神は嫌いってか? まあ、それだけ我が強いから、目的のために強くなろうってなったんだろうけど)どっちにしてもクリエメイトを守るなら、私の敵ってことでいいんだな」
そしてジンジャーは考えをまとめ終えると、どこからか釘バットを取り出して構えだす。武器がどう見ても不良のそれで、番長っぽい服装と相まってなぜか様になっていた。
「私はジンジャー、ご存じのとおり七賢者だ。相手になってやるよ」
「おれはルフィ。海賊王になる男だ、よろしくな!」
そしてそのままルフィとジンジャーは戦闘を開始した。
「どうあっても、引く気はないんですね?」
「ええ。正直、私は世界の危機とかそういったものにあまり実感がありません。ただ、私はアルシーヴ様を敬愛しておりますから、そのために例の聖なる遺体とやらを頂戴したいのですよ」
一方、騎士風の賢者の女性と対峙した良太郎とモモタロス。しかし世界に危機が迫ろうとする中でも、アルシーヴを第一に考えて行動するつもりらしい。
しかし良太郎も譲れないものがあるため、そのままライダーパスとベルトを準備する。
「悪いけど、遺体は渡さない。モモタロス」
「おっし、待ってました!!」
そして意思表示の後、モモタロスを憑依させてベルトをセット。そして赤いボタンを押して変身準備に入った。
「変身」
【Sword Form】
そしてそのまま電王へと変身し、肉体の主導権をモモタロスに明け渡す良太郎。
そしておなじみの決め台詞を口にするが…
「俺、参上!!」
「何ですか、そのセリフ?」
真っ先に疑問を持たれることとなる。しかし電王は気にした様子もなく、デンガッシャーを組みながらこれまたいつものセリフを口にしたのだった。
「まず言っとくが、俺は最初から最後までクライマックスだ。覚悟決めろよ」
「覚悟を決めるのはそちらです。この七賢者フェンネルが、貴方を畳んでしまいましょう」
そして騎士風の賢者フェンネルはレイピアを構え、電王とにらみ合いになる。そして…
「行くぜ行くぜ行くぜぇえええええ!!」
「それでは、参りますわ!!」
同時に二人の戦士は、突撃していった。
「たしか君、ハッカっていったっけ?」
「肯定。我、本来はアルシーヴ様の懐刀故に、表立っての活動は厳禁。しかし、アルシーヴ様の悲願のために総力でぶつかる必要があった」
一方、出久はハッカと対峙して構えを取る。突然の戦闘のためサポートアイテムは持たなかったが、相手が
しかしここで出久は一つ気になり、ハッカに問いかける。
「一つすみません。アルシーヴさんはなんで目的について話したがらないんですか? 内容が私利私欲とかじゃないなら、僕達にも手伝えるかもしれないのに」
「無駄。貴公らに手伝えることは、皆無」
「なんで決めつけるんですか!? 少なくとも、関係のない誰かを利用するよりずっといいんじゃ…」
「綺麗ごとをほざくな。アルシーヴ様の方が正しいし、時間もない」
しかしハッカはアルシーヴ同様、取り付く島もない様子だ。しかも、出久のことも罵倒すらしていた。しかし、それでも出久は折れない。何故なら……
「綺麗ごと上等ですよ! ヒーローは命を賭して、綺麗ごとを遂行するお仕事ですから!!」
ただ純粋に、最高のヒーローになりたいから。
「……平行線。話も無駄、畳みかけさせてもらう」
「なら、僕は全力で君を止めさせてもらう!!」
そして、二人は戦うことを決める。しかしハッカはすでに仕込みをしていたようで先に動き出す。
「我が真骨頂、夢幻魔法の力! 受けてみよ!!」
「しまった!(きららさんから聞いてたのに、油断した!!)」
ハッカが懐刀とされている理由、それは相手を夢の世界に捕らえる夢幻魔法が使えるためである。きららは例の数か月前、神殿のある言の葉の木の頂上にある町でこの魔法の餌食に会い、そのまま夢の世界でランプ共々クリエメイト達と同級生だと信じ込まされていたという。
「対象者を一人に縛り結界に我共々閉じ込める。さすれば魔法の短時間発動も可能、我の意識がない間でも攻撃を受ける心配は皆無。このまま夢の世界に沈むがよい」
「なら、僕はその夢も…乗り越える…甘い幻想なんかに…おぼれ…」
しかし抵抗も虚しく、出久は眠りに落ちてしまう。そしてハッカも出久共々結界に閉じ込められたのを皮切りに、夢の世界へと堕ちていった。
「どうやら、他の七賢者達も戦闘を始めたらしいな。なら、私も貴様らの相手をしよう」
アルシーヴも、周囲の戦闘状況を目の当たりにして臨戦態勢に入る。手をかざすと同時に虚空から杖と薔薇の花の形をした水晶が現れる。そして右手には杖を手にし、水晶は彼女の周囲を浮いてビット兵器のように構えている。
しかし、ここでディケイドはあることに気づき、それに関してきららに言及する。
「おい、きらら。確か、アルシーヴはオーダーの副作用で異常に消耗してるって話だったよな?」
「はい。でもこの里に来る数か月前の話ですし、ひょっとしたらさっき話していた、聖なる遺体がオーダーで引き寄せられた時に…」
「なるほど、回復した可能性があるってわけか……やれやれだぜ」
アルシーヴが全快状態というまさかの事態に、警戒心を強めるディケイド。そして承太郎ときららに呼びかけるのだが…
「これは全力でやらないと骨が折れそうだ。承太郎、きらら。全力で行くぞ」
「はい。私もいざとなったら、コールで援軍を呼びます。いくらか魔法も使えるので、サポートも…」
「おい、ちょっと待ってくれ」
きららからコールに関する新事実が明らかになる中、承太郎がいきなり待ったをかけてくる。直後に彼の口から出たのは、信じられない言葉だった。
「こいつの相手は、俺一人でやる。てめぇらは下がってろ」
「え!? 承太郎さん、いきなり何を…」
「消耗を避けてぇってのもあるが、仮面ライダーが生身の人間、それも女とやり合うこと。そして年頃の生娘が強大な相手に身を削って立ち向かうところ。全てがおれ自身の心に後味の悪いものを残す。前者はすでにやってるやつがいるが、まあこの際は目を瞑ろう。すでに起こってるんじゃ、仕方ねぇ。取り合えず、汚れ役はおれに任せろと言ってるんだ」
まさかの宣言に今まで黙っていたランプが口を開いた。だが
「そんな!? アルシーヴは強いです! 一対一で戦うなんて…」
「やかましい! うっとおしいぞ!」
またこの言葉に、当然ながら一同は困惑する。しかしそれを無視して、承太郎はポルナレフ達に指示を送る。
「まあ、というわけでポルナレフと万丈、葉はそのまま小娘どもを守って下がっててくれ。士にきらら、もし俺がやられた時は代わりに頼むぞ」
「あいよ。さて譲ちゃん達、この場は任せていくぞ」
「え? でも…」
「千矢も聞いたろ、あいつの狙いが聖なる遺体だって。じゃあ、このまま下がっているほうがいいと思う」
「葉……うん、わかった」
千矢は承太郎を見捨てているようであまり気乗りしなかったが、葉に論されてそのまま下がることとなる。
そして、そのまま承太郎も身構えてアルシーヴに目線を合わせる。そしてその直後…
「え!? 士さん、なんで元の姿に…」
なんとディケイドが変身を解いて士に戻ってしまったのだ。つまり、承太郎の指示に従い、彼を一人で戦わせるということだ。
「あいつなら、まあ心配ないだろう。それに、あいつの言う通り仮面ライダーのモラルってのもあるしな」
それだけ伝えると、そのまま静観を決め込む士。その際、きららの傍について一人残っていたランプに声をかける。
「ランプ、とりあえず見守ってろ。あいつは見せるだろうぜ」
「え?」
「人間の強さってやつをよ」
ランプに承太郎のことを見守らせようと告げ、そのまま言葉を続ける士。
「お前にも言いたいことはあるだろうが、まずはそれを見てからでも遅くねぇだろ」
「……わかりました。私も頭は冷えたし、お二人のことを受け入れるにしてもちゃんと見ていないと」
「わかったらしいな。だったら、見ていろ」
ランプ自身も承諾した。昨晩マッチに論され、先ほどアンナにひっぱたかれ、完全に頭は冷えたようだ。
「一人で挑むとは、勇気と無謀をはき違えるのは感心せんが……」
そんな時、アルシーヴの方から忠告の声が聞こえた。しかしそれに対して返事をしなかった承太郎。
その代わり、間を置いてあることを告げた。
「この空条承太郎はいわゆる不良のレッテルを貼られている」
「「え?」」
「は?」
承太郎のその一言にきらら達だけでなく、士までキョトンとしてしまう。しかしアルシーヴだけは静観を決めていた。
「ケンカの相手を必要以上にブチのめし、いまだ病院から出てこれねえヤツもいる…イバルだけで能なしなんで、気合を入れてやった教師はもう2度と学校へ来ねえ。料金以下のマズイめしを食わせるレストランには、代金を払わねーなんてのはしょっちゅうよ」
「じ、承太郎さん……それは…」
「不良じゃすまねぇだろ、極悪人じゃねぇか」
(あれ? 私、答えだすの早まっちゃった??)
承太郎の独白があまりにも衝撃すぎて、きららは唖然とし、士もツッコミを入れてしまう。ランプも、つい己の判断を疑ってしまう。
しかし、彼の言いたいことはここから先が本題であった。
「だがこんなおれにも吐き気のする「悪」はわかる!!「悪」とはてめー自身のためだけに弱者を利用しふみつけるやつのことだ!!」
そして承太郎は、かつて対峙した悪人と呼べる者達の所業を脳裏に浮かべ、はっきりと告げる。しかし、すぐにアルシーヴと向き合って再び口を開くのだが、それは驚くべき内容だった。
「だがアルシーヴ、テメェの眼には何か信念のようなものを感じる。俺の勘でしかねえが、テメェは吐き気のする悪とは違うのだろう……」
「!?……」
「やっぱりか」
(え? 二人とも、まさかあの人の胸の内に何かあるの、気づいて…)
まさかの指摘に、アルシーヴも一瞬は動揺する。士はそれを聞いて何やら納得しており、きららも最初に説明した際に伏せていたことを二人が察していたことに驚く。
しかしアルシーヴはすぐに平静を装い、再び承太郎と向き合った。そして、承太郎はそのままアルシーヴに聞かせるように告げた。
「だが、どんな目的があろうと、テメェが何も知らねぇクリエメイト達を大勢、無理やり呼び出して利用しようとした以上、それはそのクリエメイト達にとっては紛れも無い悪だ」
そしてそのうえではっきりと断じたのだ。被害者が出る以上、アルシーヴが悪だと見られる存在なのだと。
「テメェはクリエメイト達の世界の法の管轄外で、この世界で法の管理者だから法では決っして裁けねぇ……」
そして帽子の鍔に右手の指をやり…
「だから、俺が裁く!!」
鍔を指でなぞってハッキリと宣言した。
「……お前も、自分の成すべきことのために戦う者か」
するとここにきて、ようやくアルシーヴが口を開く。その様子は、承太郎への敬意のような物を感じている様子だった。しかしその状態のまま、自身の周囲に魔力の塊を生成する。
「なら、ここからは互いの成すべきことのため、全力で潰し合うとしよう! 空条承太郎!!」
そして叫ぶと同時に、承太郎を目掛けて生成した魔力弾を発射した。
「スタープラチナ!」
『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!』
しかしスタープラチナのラッシュでそれはあっという間に相殺されてしまう。戦いは、まだ始まったばかりだった。
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同時刻、里からいくらか離れた林にて。
「黒雪だるま、そろそろ行動を始めようと思うの」
「よいのですか? まだクリスマスまで日がありますが…」
「うん。なんだか、この先の人里が急ににぎやかになって、鬱陶しいから」
その林の中で、黒い和装に銀髪の少女が真っ黒な雪だるまと会話をしている。何か企んでいるようだが、今回の事態を察知して便乗するつもりらしい。
「う~ん……復活して早速のリハビリ、と思ったんだけど碌な獲物がいないなぁ。こんなんじゃ、八輝星なんて夢のまた夢だよ」
そんな中、ぶつぶつと独り言を呟く一人の巨漢の姿があった。全身を岩のブロックで出来た鎧に覆われている、かなり屈強そうな男だ。その男が意味深な単語を口にし、悩ましそうな様子であった。
「黒雪だるま、あの男で力の実験をやろう」
「暗黒冬将軍様、かしこまりました。では手始めに、あの男を黒歴史に沈めてやりましょう」
そして暗黒冬将軍と呼ばれた少女は、そのまま巨漢を力の実験に使おうとするのだが……
それが悪夢の始まりだとは知る由はなかった。
その頃・エトワリアの上空を飛ぶ一隻の飛行船があった。どこかトリオン兵を思わせる、口のような意匠が先端にあるのが特徴的な船だ。
そしてその傍に、羽付帽子をかぶった一羽の隼が飛んでいる。
「さて。ガロプラの諸君、君達の船を勝手に改造してしまった件、財団の者に変わって謝罪する」
「気にしないでくれ。船が大きければ人員やトリオン兵の卵も多く運搬可能だ、むしろ感謝したい」
「そっちの事情は知らねぇが、おかげでおれも麦わらのリターンマッチに早く挑めるんだ。感謝しかねぇぜ」
船の中で三人の壮年の男が会話をしている。神に奇妙な剃り込みの入った神父服の男、額に傷のある屈強な男だ、そして割れたような奇怪な髪形の狐っぽい男だ。神父服の男の言葉によれば、男はガロプラの軍人らしく、割れ頭の男はルフィと因縁があるらしい。
そして神父服の男こそ、徐倫の宿敵”エンリコ・プッチ”であった。
「でよぉ、そろそろ目的の場所に到着するんだろうな?」
「ああ。俺らもそろそろ、本格的に暴れてぇし、例の仮面ライダーとやらにも会いてえんだがな」
「安心したまえ。君たちの力があれば、確実にライダー達もジョースターも抹殺できるだろう」
するとその会話に割って入る二人の男、聖丸とノイトラの姿があった。ここまでくればオーバーヘブンショッカーの傘下の者が、本格的に動き出したのは明白だった。
「仮面ライダーと戦いたいなら、俺が相手になってやるが?」
「だな。こっちも暴れたくて仕方ねぇんだ、だったらおめぇらでも構わねぇだろ」
そこに現れる、新たな人物。赤と黒を基調にしたジャケットの男と腰に音叉を刺した野武士風の青年だ。言動から、彼らも仮面ライダーに変身する気らしい。
「落ち着きたまえ、大道克己に歌舞鬼。君達も本格的に暴れる時はもうすぐだ。特に克己には部下がいるのだから、彼らにも準備の方を促しておいてほしい」
「ああ」
それにぶっきらぼうな様子で返事をする黒いジャケットの男”大道克己”。そして彼と歌舞鬼という男が去っていくと、入れ替わりにエルクレスとミストルティン、そして右腕が巨大な盾と一体化した大男の姿があった。
「ねぇ、私達もようやく暴れてきていいのよね? このエトワリアとかいう世界を、悪夢と絶望に沈めてやりたくてウズウズシしているんだけど」
「ああ。それも君達夢魔や魔人を含めたすべての生命が、次のステージに進化するために必要だからな。存分に力を奮って、研鑽してくれたまえ」
「天国の時っていったか? よくわからんが、更なる高みとやらには興味あるな」
「そのステージとやらが無くとも、この私”鉄壁鎧将レイガルド”の理論”防御は最大の攻撃”で七ツ星、ひいては八輝星へと至れる自信はあるのだがね」
この男がアジトでカイの話していた、レイガルドのようだ。”攻撃は最大の防御”はよく聞くが、その逆を彼はモットーとしているらしい。
そして一通りの主力が揃ったところで、プッチが作戦開始の宣言をした。
「さて。では、聖なる遺体奪取作戦を開始しよう。真の天国への道……
アイズオブヘブンのためにっ!」
ウィルバーとロン毛はいったんフェードアウトしますが、また出ます。近いうちに。
連休明けるので、また更新ペースが落ちます。
お付き合いいただければ、幸いです。