仮面ライダー&ジャンプフォース 平成ジェネレーションズHeaven inきららファンタジア   作:玄武Σ

35 / 49
戦兎「常軌を逸した戦闘力の破面とNEVER、そして(ヴィラン)の力に苦戦を強いられる俺達」
出久「まさか、ウォルフラムがここまで強くなっているなんて……どうすれば」
ジョニィ「ジャイロの回転パワーも、敵に回ってしまってかなり厄介だ。」
花名「確か、ジョニィさんの一番強いスタンドってお馬さんに乗りながらじゃないと使えないんですよね。これ、すごいピンチじゃ……」
シャロ「よね。隙とか大きそうだし……」
戦兎「仕方がない。"ギュインギュインのズドドドドな俺の切り札"を出すしかないな!」
龍我「俺の"メラメラビキビキな極熱筋肉"も活躍するぜ!!」
勝己「なんだそれ!? どっちも擬音ばっかで意味わかんねぇよ!!」
リゼ「爆豪、意味わからんのは私もだが落ち着け」
ココア「え? リゼちゃん、戦兎さんは"速くなって一気にやっつけちゃうパワーアップ"で、龍我さんは"熱い体と物凄い怪力"だよ」
リゼ「ココア、一瞬でわかったのか?」
チノ「ココアさん、そういえば甘兎の必殺技みたいなメニューも一回でわかりましたよね」
焦凍(感性が独特だから、か? まあ、おかげでだいぶわかりやすかったが)


第33話「信じる正義のために」

「そらよ!」

「うぉお!?」

 

ウォルフラムが地面に手を付くと、巨大な鉄塊がビルドの足元からせり上がってくる。

 

「嘗めてもらっちゃ、困るな!」

 

しかしビルドも多くの修羅場を潜り抜けており、咄嗟の判断でジャンプして一気にはるか上空へと飛翔する。そして手にした4コマ忍法刀のトリガーを2回引いた。

 

【火遁の術!!】

「手加減はするから、勘弁してくれ!!」

 

すると4コマ忍法刀の刀身に炎が纏わり、ビルドは落下の勢いに任せてウォルフラムに斬りかかる。しかしウォルフラムは仮面越しにもわかるようにほくそ笑み、手招きをするような仕草を取る。

 

「いやっほー!!」

「何!?」

「てめぇらは文字通りの人外としか戦っていない。なら、生身の人間にはどんな悪党相手でも手加減しちまうってわけだ」

 

なんとその直後にメタル・ドーパントが引き寄せられ、ビルドの炎の斬撃を防がれてしまう。

 

「そんでもって、こいつを食らいな!」

「ぐわぁあ!」

 

引き寄せられたメタル・ドーパントは、そのまま手にしたハンマーでビルドをぶっ叩く。筋肉質な体で繰り出す攻撃は、ビルドの体を装甲越しに大きなダメージを与えていく。

その一方でウォルフラムは近づきながら、個性で変形させた鉄塊を腕に纏わせる。見てみると、先ほど地面から生やした鉄塊が引き寄せられて変形したようだ。

 

「しかも、ラブ&ピースなんて実現不可な夢のために戦うのがてめぇらしいからな。付け込まねぇ理由はないだろ!!」

「がぁああ!?」

 

更にかつてオール・フォー・ワンから与えられた筋力強化の個性を同時発動、追撃といわんばかりにビルドを殴り飛ばす。それによって、大きく吹き飛んでしまうビルド。しかもそのダメージで、変身解除までしてしまう。

 

「しゃああ!!」

「くっ!?」

「ちっ」

 

一方、勝己とリゼはジオ相手に防戦一方となっていた。ジオは帰刃によって二刀流スタイルに変化、加えて自前のスピードも跳ね上がって攻撃はより激しくなってしまう。

 

「皆さんから離れてください!」

 

どうにか隙を突いてチノが追撃に入るのだが、今度はあっけなく回避されてしまう。しかも…

 

双射牙(ミシル・ディエンテ)

「うっ!」

 

ジオの頭部の仮面、そこから生える牙が射出される。それが命中したチノは、地面に拘束されてしまった。

 

「少し大人しくしていろ。ガキに手を上げる趣味はないが、場合によっては首を切り落としてやる」

「チノに何をするんだ!!」

 

ジオがチノに釘を刺している隙を突いて、リゼが追撃に入る。しかしジオはまたも響転でそれを回避してしまう。

 

「仕方ねぇ。助けてやっから、大人しくしてろチビウサ!!」

 

すると勝己が隙を突いてチノの救出に乗り出すのだが、ジオがその隙を逃すはずがなかった。

 

「虚閃!」

「「な!?」」

「爆豪さん! リゼさん!」

 

ジオの放つ破壊光線・虚閃が勝己とリゼに迫る。そしてチノの叫びも虚しく、二人の立っていた辺りは大爆発を起こしてしまう。

 

「ぶっ潰れちまいな!!」

 

そしてマスキュラーと交戦していたココアは、個性で強化された相手の剛腕が迫ろうとしていた。

 

「危ない……やぁああ!」

 

ギリギリで回避に成功し、そのまま剣で斬りつける。しかし、ここで誤算が生じた。

 

「おいおい。何で出来てるかしらねぇけど、そんなんで俺の体は切れないぜ」

「え?」

 

マスキュラーの頑強な筋肉の鎧、それがエトワリウム製の剣をさえぎってしまったのだ。ココア自身の筋力の問題もあるが、肉体強度は並の魔物を上回るレベルである。

 

「あんまり潰しがいないが、そのままミンチになっちまえ」

「ひぃっ!?」

 

マスキュラーはそのまま剛腕を再び振るい、ココアに狙いを定める。

 

「デラウェアスマッシュ・エアフォース!!」

 

しかし出久がサポートアイテムのガントレットを使った遠距離攻撃で隙を作る。"出久の強化された筋力指をはじき、それで生じた風圧に指向性を持たせて攻撃すると"いう代物である。

 

「んぁあ!?」

「ココアさん!」

 

頭部に攻撃を受けたマスキュラーは怯み、その隙を突いて出久はココアを救出しようとする。

 

「まあ救出を優先するわな、ヒーローよぉお!!」

「やば!?」

 

しかしココアの体を抱きかかえた直後、マスキュラーが持ち直して再び拳を振り上げる。咄嗟に蹴りを放ち、先ほどの緊急回避と同じく蹴りの反動で離脱しようとした。

しかし…

 

「ぶっ飛びな!!」

「うわぁあ!?」

「きゃああ!?」

 

しかし先ほどよりも強い力で拳が振るわれ、出久はココアを抱き抱えたまま大きく吹き飛ばされてしまう。

 

「どれどれ。パワーアップしているなら、あの小僧も肉体強度が上がってるかな? どれぐらいのパワーでミンチになるかテストしてやるか…」

 

そして吹っ飛んだ二人の方に視線を向け、嬉々とした様子で更に個性を発動。頭部以外の全身が、皮下からはみ出した筋繊維に覆われていく。そして駆け出そうとした直後、それは起こった。

 

ゴンッ

「ん?」

「やめて……ください…」

 

マスキュラーは頭に何かがぶつかる感触を感じたため、振り返る。そこに居たのは、涙目で何かを投げつけてきた花名の姿であった。ふと足元を見ると、どうやら彼女の杖が投げつけられたらしい。

 

「なんで、こんなことするんですか? 私達、ただ友達と笑っていたいだけなのに…誰かを傷つけたいわけでもないのに…なんでみんなを、傷つけるんですか? 私達、あなたに何かしました? 恨まれるようなことなんて、何も…」

 

そのまま涙目で問いかける花名。

姉という立場に憧れる余りにシスコンを拗らせているが、コミュ力の化身とでも言わんほど人と仲良くなるのが得意なココア。気弱でたまに暴走するオタク気質だが、純粋にヒーローに憧れていて率先して自分たちを助けようとする出久。そんな二人を目の前の男は、凶悪さと無邪気さが同居する狂気的な笑顔で嬲っている。それが理解できずに、純粋に疑問を問いかける。

 

「お嬢ちゃん、俺は別に誰かが憎いわけでも恨んでいるわけでもねぇぜ」

 

するとマスキュラーは、以外にもその質問に答えてきたのだ。そしてそのまま花名に近づいていく。

 

「俺はただ自分の力で人を殺す、それをやりたいからやっている。その為に、オーバーヘブンショッカーに参加した。そしてコイツらは、それを止めたいから俺を倒そうとする。つまりだ、お互いやりたいことやってるだけだ、恨む恨まないはお門違いなんだよ」

「え?」

 

しかしらその口から出た答えは、自己解釈を抉られた犯罪者の理論そのままなのである。その為、答えを聞いた花名は顔を青ざめることとなった。

 

「ただ悪い奴は決まっている。それは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出来もしねぇことをやろうとするお前らだよ!!

 

そして嬉々とした様子で花名を殴殺しようとするマスキュラー。しかし…

 

「悪いのはお前だろ!!」

「花名ちゃんから離れて!!」

「お?(小娘共々、さっきより速ぇな)」

 

出久とココアが同時に飛び掛かり、マスキュラーの攻撃を阻止する。今度はココアの一撃が上手く決まり、マスキュラーの腕に剣が刺さった。

 

「出久君!」

「はい!」

 

そしてココアの呼びかけに応じて、出久は彼女の剣を思いっきり蹴る。それによってマスキュラーの剛腕に、剣は深く突き刺さった。

 

「へぇ、ちっとはやるみてぇだ。だが、この程度じゃ腕一本潰すことも敵わねぇぜ」

 

しかしマスキュラーは余り堪えた様子がなく、むしろ倒しがいのある獲物がいると嬉しそうな様子だ。だが、ここで事態は好転することとなる。

 

「やらせるかっての!!」

「ぐえぇ!?」

 

なんと何処からか戦兎がバイクに乗って登場、マスキュラーの頭部に体当たりを仕掛けたのだ。ウォルフラム達を振り切ることができたようだ。

 

「ぐわぁああ!?」

「あ? お前、なにやってんだ?」

 

直後、マスキュラーの胸にジオが吹き飛んできた。さらにその直後、原因となった人物が攻撃を仕掛ける。

 

榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)!!」

「「ぐわぁああああああ!?」」

 

勝己が高速回転しながらマスキュラー、正確には彼に投げつけられたと思しきジオに突撃した。錐揉み回転を伴った高速タックルと爆撃の合わせ技、その威力は頑強な体の二人にもダメージを与えることに成功したようだ。

 

「流石にまだ倒しきれねぇだろうが、ちったぁダメージいったろ」

「じゃなきゃ、こっちも困るけどな…」

「すみません、私がもっとうまく動ければ少しは楽に…」

 

爆撃を放った勝己は一気に距離を取り、自信ありげに告げる。すると、リゼがチノを背負って駆け付けてきた。二人とも虚閃から逃げ切り、チノの救出に成功したようだ。

 

「みんな無事だった。良かった……ところで戦兎さん、そのバイクは?」

 

花名が他のメンバーの無事を知って安心すると、いつの間にか戦兎が乗っていたバイク"マシンビルダー"に気づく。

 

「あ、これね」

 

なんと戦兎がバイクから降りた直後、バイクが折りたたまれてスマートフォンになってしまったのだ。当然、その場にいた全員が口をあんぐりと開ける結果となる。

 

「これとか変身後に使う武器も、俺の発明ね。で、気を取り直してあいつらがどう動くかが問題だな」

「……え? あ、はい!」

「確かに、今ので倒せちゃいねぇだろうな……」

 

不意に戦兎が振った話題で我に返る、出久と勝己。そんな中、策を思いついたのは何とリゼだった。

 

「みんな、少なくとも生身の体で戦っているヴィランだったら、すぐにでも倒せる手を思いついたんだ」

「え? リゼちゃん、本当?」

「ああ。爆豪の攻撃と私のとっておきがあれば、おそらく……」

「だが、そのためには全員を一まとめにしないとダメだ。何か、手はあるか?」

 

リゼの案に対して、戦兎が問題を指摘する。すると……

 

「かっちゃん、僕のアレを明かそう」

「な!? デク、てめぇ…」

「轟君達には黙っていてもらうから。というわけで、隙を作る技があるにはあるんで恐らく…」

「何かあるんだな?」

「はい。ですが、エトワリアに来ているメンバーじゃかっちゃんしか知らない秘密で、皆さんにも黙っていてほしいことなんですが…」

 

意を決して、勝己を含んだ一部の人間にだけ共有している、自身の個性についての秘密を打ち明けることを決めた出久。

 

「オッケー。仲間だからな、そういうのは守るさ」

「うん。私もいいよ」

「何があるのかは知らないが、私もだ」

「私も異存はないです」

「わ、私も」

「皆さん……ありがとうございます」

 

戦兎も、ココア達ラビットハウス組も、花名も了解してくれた。そこにお礼を言うと、再びフルカウルを発動して敵たちの隙を突く準備に入る。

 

「それじゃあ、俺も協力しますかね」

【ラビットタンクスパークリング!!】

 

そして戦兎も、再びラビットタンクスパークリングに変身する準備をする。

 

「行きますよ、戦兎さん!」

「了解だ、出久。変身!!」

【ラビットタンクスパークリング! イェイイェーイ!!】

 

そして勝己の攻撃から立ち直ったマスキュラーとジオに立ち向かっていくビルドと出久。

 

「おいおい、戦闘中に逃げるのはどうなんだ!?」

「しょうがねぇから、そこのチビも潰してやる!!」

 

さらにウォルフラムとメタル・ドーパントまで駆け付け、そのまま乱戦に突入する。

 

「よし、いったん距離を置くぞ。花名、回復の方を頼む」

「う、うん」

 

そしてそのまま離脱する一同。花名はこの時、魔法を使うために杖を回収しようとするのだが……

 

「俺が取ってくる。お前じゃ、トロいから巻き添えを食らいかねねぇ」

「え、ごめんなさい…」

 

また勝己に止められ、そのまま彼に回収を任せることとなった花名。しかし、ここで勝己から意外なことを聞かされる。

 

「俺はオールマイトを、伝説のヒーローを超えるヒーロー目指してんだ。だから不要に(ヴィラン)に人を傷つけさせるわけにいかねぇんだ。大人しくしてろ」

「え? あ、ありがとう」

 

まさかの勝己からの言動に、花名は思わずお礼を言ってしまう。キレ気味に自分を非難していたあの声も、実は彼なりの気遣いだったようだ。キレ気味なのは、完全に勝己自身の性分によるのだろう。

 

「往生際が悪いヒーローどもは、さっさと潰れちまいな!」

 

一方、ウォルフラムは地面からどんどん鉄塊を生やしていき、それをビルドと出久にぶつけようと躍起になる。

 

「うぉ!? おい、ちょっとは気をつけろ!!」

「全くだ。動きにくい……」

 

しかしもともと我が強い上に協調性の低い者同士で組んでいたためか、ウォルフラムの攻撃が他の敵対者たちの動きまで阻害することとなっている。メタル・ドーパントとジオが、揃って文句を言うあたりが顕著だ。

 

「おいおい、ちょこまかしてんじゃねぇよ!!」

 

そんな中でマスキュラーだけは意に介さないで、鉄塊を粉砕しながらビルド達を狙う。しかし二人そろって俊敏なこともあり、ウォルフラムの生やした鉄塊を利用しつつマスキュラーをかく乱している。

そしてタイミングを見極めた出久は、すかさず行動を起こした。

 

「いけ! 黒鞭!!」

 

直後、出久の両腕から黒い紐状のエネルギーを放出。それが敵を纏めて拘束した。そして一気に距離を取る。

 

「このまま、引き込む!」

「「「ぐわぁあ!?」」」

「ああ?」

 

そして一気に引っ張り、まとめて引き寄せる。マスキュラーは体重の関係で微動だにしなかったが、残りの三人は引き寄せられてそのマスキュラーの体に衝突。全員が一纏まりになるタイミングがあった。

 

「今のは……あとでいいか。次は、私の番だ!」

 

出久が説明したはずの能力と異なる力を振るったことにリゼは動揺するが、気を取り直して攻撃態勢に入る。なんと虚空から巨大な銃を出現させたのだ。そしてそれで狙いを定める。

 

「うぉ!? すげぇ、流石軍人の娘だな…」

「実際は水鉄砲だが、威力はちょっとしたものだ。というわけで……食らえ!!」

 

ビルドに詳細を説明し、その水鉄砲を一気に発射する。それがマスキュラーの巨体を、一気にずぶ濡れにしてしまった。ただし、残りの面々はそのマスキュラーの体に遮られて、水は食らっていない。

 

「むぐ!? 思ったより、スゲェ水圧だな……だが、この程度じゃ…」

 

マスキュラーに多少ながらダメージを与えられたが、まだ余裕そうな雰囲気である。しかしここでとどめとなる勝己の攻撃が放たれた。

 

「そういうことか! 徹甲弾機関銃(A・Pショット・オートカノン)!!

 

何かに納得したように勝己は、連続攻撃でずぶ濡れのマスキュラーを火あぶりにしていく。

 

「リゼちゃん、濡れている物は燃えないんだよ! それじゃあんまり効かない……」

「ココア、お前理系だったよな? ここで質問だけど、水の主成分って何だったかわかるか?」

 

ココアが不意に築いた疑問をぶつけるのだが、ここでリゼがこんな質問を返してくる。

 

「え? えっと…」

「H2O、水素と酸素ですね……」

「ああ。なるほど、そういうことか」

「緑谷、正解。そして流石は物理学者ですね、戦兎さん」

 

突然だったため、ココアは困惑して答えられなかったので出久が回答する。すると一緒に聞いていたビルドも何か納得がいった。

 

「お前ら、水に火の攻撃って何考え…」

「バカか、てめぇ!? このままじゃ……」

 

マスキュラーは勝ち誇った様子だったが、直後にウォルフラムが状況を理解して慌てふためく。そしてそれは起こった。

 

 

 

 

 

ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ

「「ぎゃあああああああああああああああああああ!?」」

 

突如として大爆発が発生、生身むき出しのマスキュラーとウォルフラムが断末魔を上げる。人外のジオとメタル・ドーパントはわからないが、叫ぶ二人はそのまま戦闘不能になるのは明白だった。

 

「え? リゼさん、これは一体?」

「なんか、いきなり爆発したんだけど…」

 

突然の事態に困惑するココアとチノに、リゼが解説を始める。

 

「さっき緑谷が答えたように、水は酸素と水素で構成されている。しかもこの二つは可燃性、つまり燃えやすい気体だから火を消せる水と真逆の特性を持っている。それが一気に蒸発して気化したら、後はどうなる?」

「あ、水素爆発だ!」

「理科の実験でも見る奴ですね」

 

リゼの解説を聞いていると、ココア達が納得した様子で今の攻撃の手段を察した。

 

「ちなみに豆知識だが、この特性もあって大火災が起こっていると水で消火しても逆効果になることがあるらしいぞ」

「半々野郎の技を彷彿とさせるのが気に入らんが、まあやるじゃねぇか」

「かっちゃん、轟君の"膨冷熱波(ぼうれいねっぱ)"は熱膨張を活かした爆発だから、また別物なんだけど……」

 

 

 

 

「死ねヤァあああああああああああ!!」

「「がぁああ!?」」

 

そんな中、メタル・ドーパントが超高速で飛んできてビルドと出久に激突する。

 

「戦兎さん! 出久君!!」

 

いきなりの事態に驚き、ビルド達に呼びかけるココア。しかしこれだけで攻撃はこれだけにとどまらなかった。

 

「虚閃!!」

 

ジオが放つ虚閃が、一同目掛けて放たれたのだ。

 

「まずい…うわぁああ!!」

「うぉおおお!!」

「きゃああああ!!」

「チノちゃん危な…きゃあ!?」

「ココアさん!?」

 

直撃こそ免れたが、虚閃の勢いによって生じたソニックブームが残りの面々を大きく吹き飛ばす。無傷で済んだは、ココアが突き飛ばしたチノ一人であった。

 

「ワン・フォー・オールの小僧と、仮面ライダーは…抑えた。後は……なんとか、しやがれ…」ドサッ

「ああ。ひとまず、礼は言っておこう」

 

爆発が晴れた先には、ズタボロのウォルフラムが手を構えた態勢でいたが、すぐにジオに後を託して気絶してしまう。どうやら最後の力で、メタル・ドーパントを高速で撃ち出したらしい。残るマスキュラーも息はあるが、黒焦げで倒れ伏しているため戦闘不能状態だ。

 

「さて。せめてものハンデだ、この剣は返してやるよ」

 

するとジオは何を思ってか、気絶したマスキュラーの腕に刺さっていた、ココアの剣を引き抜く。そしてそのまま、投げ返してきた。

 

「おいおい。本気の状態で、しかも人手が半減してるんだ。むしろハンデはそっちが必要じゃねぇか?」

 

勝己はそのまま、ジオに挑発するように告げるのだが……

 

 

 

 

 

 

 

「お前ら、俺が真の姿=本気なんていつ言った?」

「は?」

『え?』

 

突然のジオの発言に一同は思わずきょとんとしてしまうが、ジオが信じられないことを起こす。

 

「見せてやるよ。お前ら脆弱な人間と破面の、力の差って奴をな!」

 

叫んだ直後、ジオは自身の右腕を天へと掲げ、それと同時に全身を赤い光が包み込む。

 

「え?」

「う、嘘だろ…」

「で、でっかくなっちゃった……」

「ちぃ、クソが」

 

ジオは身長が二回りほど大きくなったうえに、全身の筋肉が膨張。顔は先ほどの少年のままだが、それ以外は先ほどまでとは原形を留めないほどに変異していたのだ。

 

「これが、虎牙迅風(ティグレストーク)の実戦形態……

 

虎牙迅風(ティグレストーク)大剣(エルサーブル)だ!」

 

そして新たに変化した姿を名乗り、ジオはそのまま一同に迫っていく。そして巨大な腕を振るい、負傷して動きが取れそうにない一同を狙う。

 

【Ready Go! スパークリングフィニッシュ! イェーイ!!】

「「でやぁあああああああああ!!」」

 

しかし直後、ビルドと出久が二人で必殺技を叩き込む。二人の重たい蹴りはジオの頭部に命中。そのまま二人は地面に着地して距離を取るが…

 

「そんな攻撃、いまさら効くか」

 

ジオは堪えた様子がない。巨大化したことでパワーやタフネスは一気に増強されたようだ。

 

「以前は暗殺特化タイプの死神に、この姿を開放した直後に倒されたんでな。陛下の忠臣たる俺の力を発揮できなかった……その鬱憤をお前らで晴らしてやるよ!!」

 

ジオは宣言と同時に響転で一瞬で背後に回る。

 

「らぁあああ!!」

「させるか……ぎゃああああ!?」

 

ジオの剛腕から放たれる一撃に、ココア達をかばおうとして身を乗り出すビルド。受け身はとれたので変身解除されるほどのダメージではないが、かなりの痛手を食らうこととなる。

 

「戦兎さん、そんな……」

「あの巨体で、まだ速く動けるのか?」

 

ジオにまともな攻撃が効かず、ココアも出久も深い絶望に飲まれる。そんな中、ジオは気にも留めずに倒れ伏しているビルドに向かって告げる。

 

「お前は愛と平和なんてくだらん理想を語ってるみたいだが……力こそがすべてである俺達破面からしたら、馬鹿げているな。人間どもはいつもくだらん争いをしているし、人間じゃない俺たちもそうなんだ。どうあがいてもお前ひとりなんぞに実現できるはずないだろ」

 

ジオに理想をバカにされるビルドだったが、彼はそれに屈することなく返答する。

 

「ラブ&ピースがどれだけ弱くて脆い言葉かなんて重々承知だ。だからこそ、俺はそれを謳い続けているんだよ」

「あ?」

「愛と平和は俺がもたらすものじゃない。どれだけ大きな理想も、たった一人の人間でしかない俺だけじゃ実現なんてできない。だから、1人1人がその想いを胸に生きていける世界を作る。そのために俺は戦う!」

 

そしてジオに対して、力のこもった声で告げた。

 

「それが桐生戦兎の、仮面ライダービルドの戦う理由だ!」

【ハザード・オン!】

 

懐から取り出した装置を起動し、ビルドドライバーに装着するビルド。ハザード=危険を意味する不穏な装置だが、ビルド自らその概要を語り始める。

 

「ハザードトリガー。本来はビルドドライバー装着者の戦闘力を上げる代わりに、自我を抹消した兵器へと変えてしまう禁断の装置。だけど、俺はそれを制御する術を開発している」

 

そう言い、ビルドは一本のスティック状のツール”フルフルラビットタンクボトル”を振る。そしてボトルのキャップを回す。

 

「本当は後まで取っておきたかったが、それでこの子達を危険にさらしたら元も子もないからな」

【ラビット!】

 

それを中央の接続部で折り、ビルドドライバーにセットした。しかし、その時に流れた音声が、ココアと出久が困惑の表情を見せることとなった。

 

【ラビット&ラビット】

「兎と兎……あれ? 何かおかしくない?」

「はい。確かフルボトルって、生物と無機物の組み合わせなんじゃ…」

 

それだけでない。ドライバーの接続部に2つの異なる成分でなく、全く同じ成分が組み込まれたのだ。しかしビルドは気にした様子もなく、新たな変身に取り掛かる。

 

「ビルドアップ」

【ガタガタゴットン! ズッタンズタン! ガタガタゴットン! ズッタンズタン!】

【Are You Leady!?】

 

そして生成されたのはいつものスナップライドビルダーでなく、鋳型のような”ハザードライドビルダー”だ。そしてそれにプレスされたのは、複眼以外のすべてが真っ黒なラビットタンクフォームであった。

 

「ひっ」

「な、なんだあれ?」

「まさか、失敗した?」

 

ココアが短く悲鳴を上げ、リゼと出久も冷や汗を流しながら様子をうかがう。暴走形態・ハザードフォームの姿が、この黒いビルドなのだ。

 

【オーバーフロー!】

 

しかしそれだけでなかった。どこからともなく、赤いウサギを模したロボットのようなものが現れたのだ。

 

「ふざけてんのか、おい?」

「でも、かわいいです」

 

その様子に勝己があからさまな不快感を見せる。その一方で、チノが目を輝かせて首を振るそのロボットを見ていた。

しかし直後、そのロボットがバラバラになって宙を舞う。

 

「はっ!」

 

そしてビルドも飛び上がり、ばらけた兎ロボットを、アーマーとして纏っていく。右腕、左腕、右脚、左脚、胴体と身体の五か所に装着。最後に複眼部が変化し、左右ともに兎を模した赤い物へと変化したのだ。

 

【紅のスピーディージャンパー!ラビットラビット!】

【ヤベーイ!ハエーイ!】

 

肩書からもわかるようなスピード特化。全身赤のビルドを見た一同は、口を揃えて言ったのだった。

 

 

『あれが、ギュインギュインのズドドドド……』

「今更姿を変えたくらいで、どうにかなると思ってんじゃねえよ!!」

 

ジオがすかさず、ビルドへと飛び掛かってくる。先程出久達を追い詰めた圧倒的質量の肉体から繰り出される斬撃が、ビルドへと迫る。

 

「ふっ」

「な、がはぁ!?」

 

しかしビルドは紙一重で回避し、一気にジオの背後を取った。そしてストレートパンチを叩き込む。

 

「な、なんだこの攻撃…てめぇ何をしやがった!!」

 

ジオは予想以上にダメージを食らったらしく、ビルドへと再び拳をふるった。しかしそれも避けられ、肩に強烈な蹴りを叩き込まれる。

 

「あ、がぁあああああ!?」

「嘘…効いている?」

 

ココアは苦悶の声を上げるジオを、信じられないような目で見ていた。彼の増量した筋繊維はラビットタンクスパークリングと出久の蹴りを食らっても、微動だにしなかった。しかし、今のビルドの打撃は確かに大きなダメージを与えている。

 

「なんだよ、情けねぇな!」

 

しかし敵は彼だけではない。いつの間にか戻ってきたメタル・ドーパントが、愛用の棍を振りまわしながら突進してきたのだ。

 

「死人兵士……なら、遠慮はいらないな!」

「おりゃ……ぐはぁあ!?」

 

しかしビルドはNEVERの詳細を聞いていたため、メタル・ドーパントから先手を奪う。鳩尾に叩き込まれた拳が凄まじい衝撃を受け、大きな隙を作る。

 

「はっ! ふっ、せい! はぁああ!!」

「が、ぎぃ、ぐぁああ!?」

 

そしてジャブの連打を叩き込み、メタル・ドーパントに隙を与えない。一気にダメージを通していく。

 

 

「強いけど、何かおかしい。ラビットはスピードと跳躍力に焦点を当てているって、戦兎さんも言っていた。とてもじゃないけど、パワーとタフネス特化のあの二人にダメージを与えられるタイプじゃない。飯田君のレシプロバースト並みの加速と、一転集中攻撃なら出来なくもないけど……一転集中、まさかこれに何かあるのか?」

 

出久がまた独り言で考察するのだが、それによって図らずもラビットラビットの攻撃の秘密に気づくこととなる。

 

「可能性があるとすりゃ、その一転集中だろうな。あの形態だと攻撃時の衝撃を収束する機能があんだろう。そうでねぇと鋼鉄の塊と筋肉の鎧にまともなダメージなんて通せねぇだろう」

「素人の私達でもわかるのは、あの形態はスピード特化じゃなくって攻撃力も段違いに高いってことなんだろうな」

「まだ、あんなパワーがあったんですね……」

 

皆がビルドの新たな力に驚き、その戦いをじっと見続けている。そんな会話が続く中でも、メタル・ドーパントにラッシュを叩き込み続けるビルド。

 

「これが正義の……桐生戦兎の力だ!」

「グァア!?」

 

そしてメタル・ドーパントの超重量ボディを、必殺の拳激で大きく吹き飛ばすビルド。そしてまたジオに視線を向けて新たな武装を発動する。

 

「来い! フルボトルバスター!!

 

叫ぶと同時に、ビルドの手に大振りな剣が握られる。柄に引き金があることから、銃に変形する仕様のようだ。そしてビルドはその剣"フルボトルバスター”の柄を開き、フルボトルを装填する。

 

【ラビット!】

 

ボトルを装填した直後、早速銃形態にしたフルボトルバスターをジオに向ける。

 

「てめぇ、やらせるか…」

 

ジオはダメージをこらえて立ち上がろうとするも、隙をついてフルボトルバスターを発射する。

 

【フルボトルブレイク!!】

「ぐわぁああああ!?」

 

ジオは体勢を立て直す前に命中、大きなダメージを食らうこととなる。

 

【ラビット! パンダ! ジャストマッチデース!!】

 

ビルドはその隙にフルボトルを更に追加で装填する。すると銃口に大きなエネルギーが収束されていく。

 

「ふざけるな、てめぇ!!」

【ジャストマッチブレイク!!】

 

ジオは立ち上がって腕の刃を振るうと、同時にビルドが発射したフルボトルのエネルギーが衝突する。

 

「ぎゃあああ!!」

 

しかしジオは力負けし、そのまま大きく吹き飛ばされる。

 

「追撃行くぞ!」

【ラビット! パンダ! タカ! ミラクルマッチデース!!】

 

今度は3本のフルボトルを装填、一気に威力を上げていく。

 

「今度こそ、食らってたまるかぁあ!!」

 

ジオはそれでも負けじと、両腕に霊圧を収束して虚閃を発射する準備に入る。しかし…

 

【ミラクルマッチブレイク!!】

「ぐわ…あああああああああああああ!!」

 

溜めが完了する前にビルドの攻撃が放たれた。大技のための大きな隙を突かれたことで、ここまでで一番大きなダメージを負うこととなった。

 

「よし。このままいくぞ!!」

【ラビット! パンダ! タカ! サメ! アルティメットマッチデース!!】

 

そして4本のフルボトルを同時に装填、より大きなエネルギーが銃口に収束されていく。

 

「俺を忘れんじゃねぇえええ!!」

「そうだ、お前を忘れてた」

 

すると先ほどまで伸びていたはずのメタル・ドーパントがこちらに迫ってきた。大声で叫んでいたこともあり、ビルドはすぐに気づいて攻撃対象をメタル・ドーパントに切り替えた。

 

「命を弄ばれた屍人兵士……あばよ」

【アルティメットマッチブレイク!!】

 

仮面越しに哀愁に満ちた目をメタル・ドーパントに向けたビルドは、ジオに向けた銃口をメタル・ドーパントに向けなおして発射した。

 

「ぎゃああああああああああああああ!?」

 

メタル・ドーパントは爆散、剛三の姿に一瞬だけ戻ってそのまま消滅してしまう。するとジオが立ち上がって、そのままビルドに向き合う。そして勝ち誇った笑みを浮かべるのだが…

 

「へっ。せっかくの特大の一撃を、使っちまったようだな。俺を倒す術が……」

「それが、あるんだな」

【ガタガタゴットン! ズッタンズタン! Ready Go!!】

 

するとビルドはドライバーのハンドルを勢いよく回し、一気に飛び上がる。ライダーキックがまだ未使用であった。

 

【ハザードフィニッシュ!!】

 

直後、なんとビルドの右脚が勢い良く伸びてジオの目の前で制止した。

 

「てめぇ、ふざけんじゃねぇ!!」

 

いきなり止まった攻撃にジオは怒り、腕の刃でビルドを叩き落そうとするが……

 

【ラビットラビットフィニッシュ!!】

「ぐわぁああ!?」

 

足が縮み、その反動でビルドはライダーキックを叩き込んだのだ。それによりジオはその巨体を宙に浮かせ、完全にノックダウン。ビルドの勝利は確実である。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「まさか、例のDIOと同じで時間を止められるのか?」

「ほう? 察しはいいらしいな」

 

その頃、どうにかディエゴの投擲したナイフを氷の障壁で防いだ焦凍とジョニィは、THE WORLDの能力の正体に気づいたようだ。事前にスタープラチナとザ・ワールドの能力は聞いていたため、今の攻撃から察しがついたらしい。ちなみに投げたナイフはあの後、焦凍が咄嗟に氷のドームを生成して全て防ぎきれた。その氷のドームはそのまま、ディエゴのTHE WORLDに直接粉砕されることとなる。

 

「ちなみにこのTHE WORLDの時間停止は5秒という制限がある。上手くその隙を突けるといいな」

「ああ、やらせてもらう。ジョニィ、少し危険だから離れてくれ」

「(まさか、話に聞いた技から例の……)わかった、君も気を付けてくれ」

 

焦凍からの忠告を聞いたジョニィは、スローダンサーを駆って一気に距離を離す。そのついでにタスクの爪弾でもう一人のディエゴを追撃する。

 

「チッ、小賢しい!」

「複数人での戦い、有効利用させてもらうぞ!!」

 

そしてその隙を突いて天哉がディエゴの懐に飛び込んで蹴りを放つ。そしてそのまま、焦凍は更なる攻撃を放つ。

 

「膨冷熱波」

 

そして同時刻に出久が話していた熱膨張を利用した爆発を起こし、一気にディエゴを倒そうとする。

 

「THE WORLD!」

 

しかしディエゴは負けじと、THE WORLDの時間停止で回避しようとする。そしてディエゴは5秒の間に、一気に焦凍の背後へと回る。そこが安全圏で、且つ奇襲ができると判断してだ。

 

「さて、このままとどめを……ぎゃああああ!?

 

だが、ここでディエゴに誤算が生じた。時間停止が解けた直後、ディエゴは爆発を食らってしまう。焦凍は自分自身も巻き添えを食らう範囲の爆破を起こしたのだ。

 

「ヒーローは人助けに命を懸ける仕事だ……なら、俺自身も体を張って戦うまでだ」

「ちっ……ガキだからって油断してたか」

 

ディエゴも焦凍も手傷を負い、互いにまともに動けずにいる。そんな中、もう一人のディエゴが動き出した。

 

「やはり平行世界の俺は時間停止にかまけているようだ。なら、俺も一気に決めさせてもらうぞ!」

「なに!?」

 

直後、ディエゴはスケアリー・モンスターズを発動するのだが、今までと違う所があった。

 

「ぐぎゃぉおおおおおおおおおお!!」

「なに!?」

 

ディエゴは、なんと全身を恐竜に変貌したのだ。その姿は、人間サイズのティラノサウルスとでも言わんような姿である。

 

「ディエゴは民間人や野生動物を完全な恐竜に変えて、手ごまにする。しかも己の野心のためなら、己の体まで恐竜に変えることも厭わない奴だ」

「そこまで凶悪な男だったのか……」

 

ディエゴの果てしない野心と、その為にならどんなことも厭わない屈強な精神に天哉もたじろぐ。ディエゴとそのまま対峙し、警戒を強めることとなる。

 

「テロリストの小娘どもめ、遠慮なく潰させてもらうぞ」

「く……」

「麗日さん、大丈夫?」

 

一方、ジャイロの回転パワーに追いつめられるお茶子とシャロ、そして千夜の三人。千夜が回復魔法を使えたおかげでどうにか持ち直しているが、自然の法則を利用する黄金の回転の前に、防戦一方となってしまう。しかも、ここでテスラまでがこちらに向かって来る。

 

「中途半端に力を手に入れたから、そんなに諦めが悪いわけか……なら、明確な力の差を見せるまでだ」

 

そしてそのままテスラは刀を抜き、ついに帰刃を発動する。

 

「打ち伏せろ、牙鎧士(ベルーガ)

 

そして変貌したテスラの姿に、三人は思わず慄いてしまう。

 

「う、ウソやん……」

「い、猪のお化け……」

「しかも、でっかいわね」

 

現れたテスラは、ジオの実践形態と同じような巨大な筋肉の化け物で、頭部は猪の頭骨のような仮面で覆われる。

 

「単純な質量攻撃から来る破壊力、もっとも原始的だが同時にもっとも生物に死の恐怖を与える力だ」

「おいおい、野蛮だねぇ……譲ちゃん達、大人しく死ぬか聖なる遺体を持っている他の連中をおびき出すのに協力するか、選びな。後者を選べば、テロリストだが特別に生かしてやる」

 

そして、そのままジャイロと共に脅しを振って迫って来るテスラ。その巨大な拳から来るパワーを、三人の前で披露しようとするのだが……

 

【ギギャアアアアア!!】

「なんだ?」

 

直後、龍我の持っていたはずのクローズドラゴンが現れる。そしてそのまま、テスラとジャイロを妨害し始めたのだ。

 

「おらぁああ!!」

「ぐっ!?」

 

その直後、龍我がテスラの腹部に思いっきり殴りかかる。しかも、生身であるにもかかわらず、その拳はテスラを怯ませる威力を出したのだ。

 

「すまねぇ。怖い思いさせちまったな……」

 

現れた龍我は、三人を安心させるように告げる。見てみると、彼の手には拳を模したオレンジのナックルダスターが装備されている。これがあの攻撃力を叩きだしたようだ。

 

「仮面ライダーの鎧が虚閃のダメージを抑えたか……だが、今更戻って来た所で戦況が覆るとは思えんな」

「うるせぇ!!」

 

テスラの言葉を無視し、そのまま今度はジャイロの所に飛び込む。

 

「無駄だ、回転のパワーで肉体硬度を……ぐっ!?」

 

しかも驚くことに、ジャイロは回転の力で跳ね上げた肉体硬度を上回るパワーで殴られたのだ。しかもそれを無視して、龍我は標的を二人のディエゴに変更する。

 

「おらぁあ!!」

「ギギャアアアアア!?」

 

そして恐竜化した基本世界のディエゴを殴り飛ばし、平行世界のディエゴに突撃していく。だが……

 

「THE WORLD!!」

 

そしてそのまま5秒の時間停止を発動、一気に龍我の背後を取ってスタンドのパンチを叩き込む。

 

「ぐぇええ!?」

「ようやく止まったか……まさか、変身前からここまでの力を発揮するとは」

 

余りの事態にディエゴも驚愕。そのまま、その場にいた全員が龍我を警戒してそちらに戦闘の意思を向けることとなる。

 

「上等だ、全員纏めて相手になってやる」

「な!? 万丈さん、何を……」

 

そして龍我は天哉の問いかけに答える間もなく、新たにオレンジの”ドラゴンマグマフルボトル”を取り出してそれを振り始める。

 

「お前らの所はヒーローが仕事になってるから忘れてるかもしれねぇな。でも仮面ライダーは、ヒーローは愛と平和と正義のために戦っている。報酬が無くたって、誰にも知られなくたって、それで誰かの笑顔を守れるなら安いもんだよ!!」

 

そして決意を語った直後、ドラゴンマグマフルボトルを先ほど使用したナックルダスター”クローズマグマナックル”に差し込む。

 

【Bottle Burn!】

 

野太い叫び声がナックルから鳴り響き、万丈はそのままナックルを、ビルドドライバーにセットした。

 

【クロォォォズマグマ!!】

 

そして再び鳴り響くその叫びに続き、万丈はレバーを回し始める。しかしいつもアーマーを生成するスナップビルダーが現れず、代わりに炉のような形の”マグマライドビルダー”という装置が万丈の背後に生成された。

 

【Are You Leady!?】

 

そしていつものビルドドライバーの音声で、「覚悟はいいか?」と問いかける音声が流れた。だが万丈はいつものように、すでに決まった覚悟をその意思表示として、あの言葉を叫ぶ。

 

 

「変身!!」

 

するとマグマライドビルダーが傾き、中に貯まっていたマグマが万丈にぶちまけられた。

 

「え!? 万丈さん!!」

「万丈さん、何やってるんですか!?」

「あんた、マジで死ぬぞ!!」

 

焦凍も慌てて、自身の個性で冷却しようとする。

だが冷気の方が力負けして、それを止めることはかなわなかった。

 

「あの人、いくら勝ちたいからって何をや…って…え?」

 

しかし直後、起こったその現象に思わず、見惚れて言葉を止めてしまう

 

「な、なにこれ?」

「り、竜、か?」

「か、かっこいい…」

 

そのマグマがだんだんと形を変えていき、八岐大蛇を思わせる八つの東洋竜の首を形作った。その荒々しくも美しい造形に、一同は魅入られることとなった。

 

 

そしてすぐにそのマグマの竜が冷えて固まると、マグマライドビルダーがそれを砕いた。

 

【極熱筋肉! クロォォォズマグマぁああああ! アーチャチャチャチャチャチャチャチャチャアチャー!】

 

その中から現れたのは、いつものクローズと違った。

 

「力が漲る…」

 

造形こそ似ているが、カラーリングはマグマを彷彿とさせるオレンジと、焼けた鉄のような煤けた黒。

 

魂が燃える…

 

翼が追加され、頭部以外の装甲、左右の手足と肩にも竜の意匠が見られる。

 

俺のマグマが迸る!!

 

その名は、仮面ライダークローズマグマ。

 

「新しい変身のようだが、そんなもんで回転の力を止められるはずないだろ!」

 

まず、敵のジャイロが真っ先に動く。回転パワーを伴った鉄球を投擲し、一気にクローズマグマを撃破しようとする。

 

「しゃぁああああ!!」

「なに!?」

 

しかしクローズマグマの体が発光し、凄まじい高温となった。その熱によって、ジャイロの投擲した鉄球が溶解してしまう。

 

「こいつ、俺の鉄球を高熱で溶かして無理やり回転を……」

「んな理屈知るかぁあああああああああ!!」

「ぐへぇ!?」

 

そして驚くジャイロを殴り飛ばし、その意識を奪うクローズマグマ。更に、ディエゴ二人に狙いを定めて翼を展開した。

 

「な、飛べるのか!?」

「ああ、驚いたか!!」

 

そして動揺したディエゴの一瞬の隙を突き、空中からマグマを放った拳を叩き込む。空中から勢いをつけた拳撃は、衝撃と熱でディエゴ達に大きなダメージを与えた。

 

「熱い! 熱いぃいいいいい!!」

「くそ、やはり時間停止は当てにならんか……覚えていろ!!」

 

そのまま攻撃による熱で悶絶する平行世界のディエゴを担ぎ、ディエゴは転移した。撤退したのは明白である。

 

「熱と飛行能力か……だが、素のパワーで私を倒せるはずがない!!」

 

そんな中、一人残されたテスラは巨腕でクローズマグマを撃滅しようと迫ってきた。のだが…

 

「なに!?」

 

なんとクローズマグマは、テスラの放った拳を受け止めてしまったのだ。そしてそのまま掴んだ腕を持ち上げ……

 

「おらぁああ!!」

「ぐわぁああ!!」

 

思いっきりぶん投げてしまう。

 

 

「もう誰にも…止められねぇえええええええええ!!」

 

そしてテスラが立ち上がる前に、クローズマグマは炎を纏ったままテスラに突撃していく。そしてマグマを纏った拳を叩き込んでいく。

 

「ぐわぁああ!!(す、隙が無い……)」

 

クローズマグマの激しい攻撃に、今度はテスラが防戦一方となってしまった。しかしそこに、意外な弊害が生じる。

 

「ん? って、熱い!」

「桐間くんの服に火が!!」

「どんな熱さしてるんだ、あの姿!?」

「ちょ、なんで私だけ!?」

 

まさかのシャロの服が燃えるというトラブル発生。慌てて焦凍が消火する中、シャロは己の災難を嘆くのだった。

そんな中でも、クローズマグマの攻撃は止まらない。

 

「今の俺は、負ける気がしねぇぜえええええええええ!!」

【Ready Go!!】

 

そして一瞬の隙を突いて、ビルドドライバーのハンドルを回して必殺技の準備に入る。そしてマグマの竜数体を伴って天高く飛翔した。

 

ボルケニック・アタァアアアアアアアアアアアアアアアック!!

おらぁあああああああああ!!

 

はるか上空から放たれる、極熱のライダーキックがテスラに命中した。

 

「ぐわぁああああああああああああああああああああああああああああ!?」

 

そしてすさまじい衝撃と、莫大な熱量の合わせ技でテスラは大ダメージを負い、そのまま爆散した。完全勝利は明白だ。

 

「ふぅうう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

熱い! なんか、いつもよりアッツイんですけど!!」

「あれ? 万丈さんも熱いんだ?」

 

まさかの事態にちょっと安心する一同。微妙に閉まらないのも、クローズこと万丈龍我のお約束である。




先にビルド編持っていきましたが、W編はエターナルと直接対決するためトリとしてとっておいた次第です。ようやく先に進めそうです。
失礼しました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。