仮面ライダー&ジャンプフォース 平成ジェネレーションズHeaven inきららファンタジア 作:玄武Σ
エターナル筆頭に強敵がひしめいていますが、果たしてどうなる?
P.S.きららさんの誕生日が七夕になりましたが、今年の七夕はあいにくの天気でしたね。遅れましたが、ひとまずおめでとう。
「さぁ、地獄を楽しみな!」
エターナルはディケイドや承太郎、クリエメイト達を転移させたのち、翔太郎達に向けてサムズダウンをしながらその言葉を告げ、突撃していく。
「翔太郎! 早速変身を…」
【サイクロン!】
「了解だ、相棒!」
【ジョーカー!】
エターナルの攻撃を避けながら、フィリップが呼びかける。それに合わせて翔太郎はガイアメモリを起動。そしてダブルドライバーを装着する。
「「変身!!」」
【サイクロンジョーカー!!】
フィリップの意識が翔太郎の体に乗り移り、翔太郎がダブルに変化すると同時にフィリップの肉体はそのまま倒れてしまう。するとすかさず、紅緒が懐から符を取り出す。
「きなこ…フィリップさんの、体を…」
「はいな!」
紅緒は符からきなこを実体化させ、フィリップの体を安全な場所に運ぶように命じる。きなこは小さな体ながら、フィリップの体を運ぼうとする。
「きなこ…それが終わったら、この子の保護を…」
「え!? 紅緒様、急に…かしこまりました!!」
ついでに暗黒冬将軍の保護もきなこに依頼する紅緒。急な追加任務で困惑するも、すぐに了承するきなこ。
しかし、それで止まるほど敵も親切ではない。
「さぁ、
「私も行かせてもらおうかな!!」
「ボクも雪辱晴らさせてもらうよ!!」
直後、エルクレスとミストルティンもそれぞれ動き出す。エルクレスは虚空から巨大な斧を呼び出し、暗黒冬将軍を真っ先に狙ってきたのだ。更にガロニュートまで迫りくる。
「ならば…迎え撃つのみ!」
『まさかウィザードと同じ決め台詞を言う敵がいたとはね』
「言ってる場合か、相棒! 来るぞ!!」
「俺も準備万端だ、行くぞ!」
フィリップが気になるのも尤もだが、既にダブルへと変身した二人とろくろの目の前には、聖丸が迫ってきていた。
「さぁて、先手必勝。血飛沫立てて愉快に死にやがれ!」
そして聖丸が真っ先に攻撃を発動しようと腕を振るうのだが……
「「おらぁ!!」」
「な……ぐぇええ!?」
ダブルとろくろは無傷のまま突撃していき、二人がかりで聖丸を殴り飛ばした。ろくろの攻撃分しかダメージは通らないが、仮面ライダーの人外級の膂力によってその体を大きく吹き飛ばすこととなる。
「お前の能力は割れている。そこから相棒が考えた結果、サイクロンジョーカーが一番相性がいいってわかったんだ」
「へ…俺の基本的な能力は知ってやがるか。情報ソースは双星どもか?」
『厳密には、化野紅緒の持っていた君たちのデータブックさ』
「そういうわけだから、お前には切り札さえ使わせなけりゃ確実に倒せるはずだ」
どうやらすでに、ダブルはろくろ達経由で聖丸についての情報を得ていたようだ。ノイトラと共にここへ現れた際に使った、見えない斬撃の正体を悟っているらしい。
~回想~
それは昨夜、実際に聖丸とオトヒメが交戦した場に居合わせていたウミから話を聞いた時であった。
「あの聖丸という男ですが、腕を振っただけで遠くのものを切り裂いたんです」
ウミからの証言、聖丸が見えない斬撃を放つということはこの時点で判明していた。
「それでリュウグウパレスに住む生き物達の命を次々と奪っていきました。オトヒメ様は何かに気づいて、上手く攻撃を防いでいたんですが……」
「まさか、符のような物を取り出してから戦況が一変したのかい?」
そこでフィリップが思い当たったことを、ウミに問いかけてみる。一瞬驚いたような表情を浮かべたことから、どうやらそのようだ。
「その聖丸の仲間と思しき男が似たような物を持っていてね。その時は使う前に阻止されたんだが、恐らく強化アイテムの類だろう」
「そうなんですか……その通りです。それを使った直後に、男の腕に巨大な黒い刃が装備されて……」
オトヒメの体に刻まれた裂傷、それはその刃による攻撃なのだろう。
「それはともかく、見えない斬撃ってなんなのよ?」
「無難なところでカマイタチ、風の斬撃だろうけどそれじゃあ水中で使えるはずはないし……」
「となると、空間断裂でも起こしたのかな?」
「フィリップ、もしそうだったらとんでもない化け物だろ……でも、熱で焼き切ってたら水中で気づかないわけがねぇし」
「あれかな? ジェット水流で金属を切る、ウォーターカッターみたいな…」
「奴の能力…わかり、ます…」
勇魚も交えて一同は、聖丸の能力の考察を行っている。そんな中、紅緒が部屋に入ってきた。その後に続いて、ろくろときなこも入ってくる。
「化野紅緒、何か知っているのかい?」
「はい。陰陽連の…データベースには、婆娑羅の戦闘データも…記録されて…います。それに、聖丸の…データもあります」
そして紅緒から聖丸に関する情報が開示されるのだが、そこで判明した聖丸の属性は驚くべきものだった。
「婆娑羅の属性は…
「ちょっと待ってくれ! なんで土で見えない斬撃なんだ?」
当然、疑問をぶつける翔太郎。土属性なら砂や泥や岩、大地に由来する攻撃を想定するのが定石だ。場合によっては植物がらみの攻撃も土属性に分類されるかもしれない。
しかし、ここでその理由が判明するため納得となる。
「聖丸の武器は、大気中の塵や…埃です。それを呪力で繋いで…極細のワイヤーを生成し、敵を切り裂きます」
「たぶん、水中だと舞っている泥とか砂を繋いだんじゃねぇかな?」
「なるほど……つまり刃じゃなくて糸で切る攻撃だったということか」
推理物の小説や漫画でも、ワイヤーを使ったトリックでの殺人シーンは稀に見られるので、探偵である翔太郎とフィリップの二人も納得だ。余談だが、ルフィ達がこれから倒しに行くところだった七武海の一人ドンキホーテ・ドフラミンゴも、体から糸を生成して切断や拘束に用いる、イトイトの実という悪魔の実の能力者だったりする。なので、糸も立派な武器というわけだ。
その後、紅緒とろくろから、残りの婆娑羅たちに関する情報が提供される。
「残りの二体、
「でもって、さっき話してた符を使って発動するのが婆娑羅専用の呪装"
「あの時、銀鏡ってやつが使おうとした奴か……相当やべぇことになるんだろうな」
「直接ダメージを与えることは出来ないが、それさえ使わせないよう対処などは出来るんじゃないかな?」
そしていくつか作戦を考えた結果、聖丸の攻撃に対する対策は立てることに成功した。
~回想了~
『というわけで、周囲の塵や埃をサイクロンメモリの風の力で巻き上げて、君に使わせないようにしたというわけだ』
「あとは俺と紅緒ならダメージを与えられるし、地道に削り倒しゃ何とかなるだろ」
そしてそのことを告げながら、再び聖丸に立ち向かっていく。
「夢魔なら、アタシに任せなさい!」
「ちっ!」
すかさずメリーがハンマーを手に、迎撃に乗り出す。ミストルティンはすぐに攻撃を中断して回避してしまうが、そこから追撃が始まった。
「白道鬼百合の舞!」
「な…がぁああ!?」
紅緒が吹っ飛んだミストルティンに急接近し、剣撃を加えて打ち上げる。更にミストルティンが飛んで行った上空に先回りして叩き落し、更に先回りして打ち上げ、これの連続でミストルティンに一切の隙を与えず確実に手傷を負わせていく。
「おっと、この餓鬼を忘れてんじゃねぇか!」
「今度こそあの世に送ってあげるよ!」
「ひっ!?」
しかしその一方、エルクレスとガロニュートは一人で行動できずにいた暗黒冬将軍を狙って攻撃を仕掛ける。恐怖で顔を青ざめた暗黒冬将軍に、炎を纏った斧と巨大な拳が迫ろうとした。
「
「「な……ぎゃああ!?」
しかしそれを許さない者がいた。ろくろの攻撃がこの二人を目掛けて放たれ、一気にダメージを与える。
「おし。これなら聖丸を抑えながらでも…」
「油断大敵だな」
「な…ぐわぁあ!?」
そんな時、ろくろにエターナルが鋭い蹴りを叩き込んで吹っ飛んでしまう。ろくろは
「さあ。次は仮面ライダーダブル、お前の番だ」
しかもエターナルはメモリの差込口を備えたコンバットナイフ形の専用武器"エターナルエッジ"を構え、ダブルに突撃していく。
「うぉお!? ここで二対一ってか!?」
『翔太郎、文句を言っている場合じゃないよ!』
「アタシも手伝う!」
対するダブルは、エターナルのナイフによる攻撃をいなしながら聖丸へのけん制に専念しようとすると、メリーがそのままエターナルに突撃していく。しかしいつの間にかハンマーを捨て取り、徒手空拳でエターナルに挑んでいた。
「らぁあ!」
「ふん!」
メリーとエターナル、互いに放った蹴りが激突。夢魔である彼女は人間の膂力を凌駕しているのだが、それでもエターナルのパワーは彼女を凌駕しており…
「きゃああ!? ……なんの!」
その体を大きく吹き飛ばす。しかしすぐに体勢を整えてエターナルに再度駆け寄り…
「そういえば決め台詞、まだ言ってなかったわね?」
「あ?」
「ここから先は通行止めよ!」
「ぐぉお!?」
決め台詞とともにメリーは、エターナルを殴り飛ばす。装甲で体を覆われているエターナルだが、顔面に鋭い一撃を喰らい、大きく吹っ飛んだ。メリー自身も、元の世界にいた頃から戦っていたため、戦闘経験は他のクリエメイトよりも高いわけだ。
「ショウタロー達はそっちを抑えるのに専念して! こいつはアタシが食い止めるから!!」
「すまねぇメリー! 早い所こいつをぶっ倒しちまうから、それまで耐えてくれ!」
そしてメリーがエターナルに突撃していくのを見守り、再び聖丸に立ち向かう。しかし、聖丸がいきなり声をかけてくる。
「お前、俺の技と纏死穢を使わせなけりゃ勝てると思ってるんだろ? 思ってるよな、思ってるんだよなぁあ!」
「あ? 思ってるわけない、つーか俺の攻撃じゃダメージ通らねぇのはわかってるからな」
『あくまで僕らは、隙を与えないための牽制に徹する。加えて、焔魔堂ろくろ達の方が攻撃力が高いからね』
聖丸のこちらの希望を折ろうとしているような言動に、すでに割り切っている事実を告げる翔太郎とフィリップ。するとその時、声が響いた。
いつの間にか戻ってきたろくろが一言呟いた直後、紅緒がすかさずろくろに接近して手を繋ぐ。
そしてそれによって、双星のみが使える術を増幅する力"
そして強化された攻撃は、一斉に聖丸へと放たれた。聖丸の婆娑羅としては上位となる頑強な肉体にも、大きなダメージを与えていく。
「ナイスだぜ、ろくろに紅緒」
「おうよ、翔太郎さん! でもって次は…」
ダブルのサムズアップにろくろも返し、次なる攻撃へと入る。
「食らえや、聖丸!
「な、ぐぅう!?」
一気に懐へと飛び込み、更に炎を纏った拳をぶつける。腹部に諸に食らった一撃は、聖丸に手痛い傷を負わせた。
「無刀・朧蓮華
一方の紅緒は、ガロニュートとエルクレスに次なる攻撃を加えようとする。ケガレの力で変異した白い両脚で、脱兎の如き超スピードを繰り出した。
「がぁ!?」
「ぐぅう!?」
結果、ガロニュートは紅緒の膝蹴りを顔面に叩き込まれ、吹っ飛ぶと同時に真後ろにいたエルクレスも巻き添えを食らうこととなった
「その足の一撃で、またボクらの邪魔する気だね!」
「ガロニュート、先にどけ! 重いんだよ!!」
エルクレスを下敷きにしたまま激昂するガロニュート。いつの間にかミストルティンへの攻撃をやめていた紅緒は、ガロニュート達の妨害をしていたようだ。
紅緒の方はそんな二人を無視して、更に追撃をかける。
「だだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ!!」
「あが、が、ぎぃいい!?(ぐ、
「重い上に、こっちにまで衝撃が……」
紅緒の繰り出した連続蹴りは凄まじいスピードの上に、一撃一撃が重たい。それがガロニュートは顔面を連続で攻撃され、反撃の隙を一切与えなかった。しかし、それも時間の問題である。
「七つ星魔人を……なめるなぁあああああああああああああ!!」
遂にぶちギレたガロニュートは、無理やりに紅緒の蹴りを耐えて一気に殴り飛ばそうとする。
「はっ!」
「うそでしょ!?」
なんと紅緒は、ガロニュートのパンチの勢いと自身の蹴りの威力を利用して一気に天高く舞い上がったのだ。
「せいやぁあああああああああああああああ!!」
「あぎゃああああああああああ!!」
そして落下の勢いを利用した蹴りで、ガロニュートの胴に命中。纏っていた石のブロックを粉砕して、大きなダメージを与える。そして紅緒はいったん態勢を立て直そうと、距離を取る。
「へへ……手痛い攻撃は食らったけど、やっちゃったね」
「? なに、アレ!?」
不意にガロニュートが不敵な笑みを浮かべたと思いきや、突如どこからか巨大なカメが出現する。それも背中に大砲を背負った現実離れした外観で、敵意もむき出しだ。ガロニュートは紅緒が驚いている隙に、体勢を立て直す。
「ボクの纏うブロックには、配下のモンスターを格納する機能があってね。こいつは軍艦トータスっていって、ボクが
「
ガロニュートのまさかの隠し玉に、エルクレスも上機嫌な様子だった。すると軍艦トータスは、紅緒を無視して別の方が喰い砲身を向ける。
「まさか!?」
「そう。君の子分と、そいつが逃がしたあのチビガキを狙うのさ」
そう。きなこと、彼に逃がされた暗黒冬将軍がいる方に攻撃を仕掛けようとしているのだ。
一方、当の二人はというと。
「アカン! なんか、デカいのがこっち狙っとるで!」
「……もういい。もういいよ」
なんと、いきなり暗黒冬将軍は諦めたような言動をする。その様子に、フィリップの体を背負ったまま驚愕するきなこであった。
「ちょ、アンタ何言うとんねん! 諦めんと逃げたら、何とかなるはずや!」
「その必要ないから。だって、私はあなた達を陥れようとしてたんだから」
「え?」
説得するきなこにそう返す暗黒冬将軍の目には、何やら目に暗いものが見えた。そしてその間にも軍艦トータスの砲身がこちらに迫ろうとしている。
「させるか!」
だが軍艦トータスの巨体は、聖丸と相対していたろくろの目にも映っていたため、そのまま流星拳を叩き込んで攻撃を阻止する。
そして一気にとどめを刺そうと、再び共振を使用して技を強化しようと乗り出す。
そしてそれによって今度は、紅緒が呪力を込めた剣が巨大化した。そしてそれを二人で持ち、一気に軍艦トータスを目掛けて振り下ろした。
そしてそれによって、軍艦トータスは一刀両断された。そのまま爆散し、軍艦トータスは跡形もなく消し飛んだ。
「おし。それじゃあ、もういっちょ聖丸を…」
そしてろくろはもう一度、聖丸に攻撃を仕掛けようとしたのだが、ここで不測の事態が発生する。
「『うわぁあああああああああ!?』」
「きゃあああああああ!?」
突然、ダブルとメリーが大きく吹き飛ばされてきたのだ。ろくろ達は思わず、二人が吹き飛ばされた先に視線を向けると…
「まったく、こんな程度で夢魔の世界の門番を名乗るなんて烏滸がましいな」
「仮面ライダーとやらも、まさかあんな不意打ちにあっさり引っかかるなんてね」
その先には、エターナルとミストルティンが歩いてくる姿があったのだ。エターナルは純粋にメリーを圧倒したのだろうが、ミストルティンがダブルを吹っ飛ばせた理由が謎である。
「あなた…確かに、私が気絶…させたはず。なぜ、もう…起きているの?」
紅緒が信じられないといった様子で、ミストルティンに疑問を投げかける。するとミストルティンは、こちらを嘲笑いながら律義に詳細を語りだす。
「きゃははは! アタシね、こういう能力があるのよ。それでダメージを受け流して、適当に気絶したふりしてただけなわけ」
言いながらミストルティンは、体を部分的に木の葉へと霧散させてみせた。これがダブルへの不意打ちを成功させた要因なのだろう。
「……は。驚きこそしてるけど、ショックは小さそうね。こいつらの絶望している顔が見たかったのに」
「まあ、そこは俺の圧倒的な攻撃力を見せてからのお楽しみってな」
「早くしろ、聖丸。俺は仮面ライダーどもを抹殺出来りゃ、何でもいい」
するとミストルティンが勝手に不機嫌な様子を見せたと思いきや、そこに聖丸まで近寄ってきた。そして、遂にそれを発動してしまう。
「行くぜ、纏死穢……
「しまった!」
遂に聖丸の切り札が発動してしまった。そしてそれにより…
「というわけで…
この世界の綺麗な青空によぉお! 綺麗な花火を咲かせてやるぜぇえええええ!!
てめぇらの血!! 肉!! 骨!! 皮!!
真っ赤な血の花火をよぉおおおおおおおおおお!!」
両腕の五指と肘、肩には無数の黒い刃が装着され、それを構えながらハイテンションで悍ましい言動をする聖丸。
「というわけで、早速くたばれ双星よぉおおおおお!!」
「! きなこと…あの子が!」
そして嬉々として叫びながら、聖丸は両腕を勢いよく振るう。そして咄嗟に、紅緒はきなこと暗黒冬将軍の安否に気づいて咄嗟に駆け出す。
「死ぃあああああああああああああああああああああ!!」
「全員、しゃがめ!!」
そして振るわれた両腕の攻撃を警戒し、翔太郎は周りに回避を促す。咄嗟に全員をしゃがませ…
「危ない!」
「きゃああ!?」
「紅緒様、何を…」
紅緒もギリギリできなこと暗黒冬将軍を伏せさせることに成功。しかし、一同は戦慄することとなった。
「な…ウソだろ?」
一撃にして、周囲の木々や岩が丸ごと切り裂かれることなる。
「あが!?」
「聖丸、てめぇ!?」
ガロニュートとエルクレスまで巻き添えを食らうが、これが逆に聖丸の力の強大さに拍車をかけることとなる。
「なんつー威力と範囲だ……鎧包業羅超しでも、食らったらひとたまりもねぇな」
余りにも高い攻撃力に、ろくろも戦慄してしまう。あまりにも高威力のため、残りの面々も驚愕することとなった。
「さて、エルクレスは再生能力持ちだからな。回復終わったらまた動くんだな」
「ガロニュートは…まあいいか。俺らで楽しませてもらおうか!」
「ちょ…何でボクだけ……」
「だからって…やっていいこととそうじゃないことは、あるだろ!」
一人だけ深手を負ったガロニュートを放っておいて、エターナルも聖丸もこちらへと追撃に入る。敵側の反撃が始まってしまった。
「なんで? なんで、こんなことに?」
一人、この状況を疑問に思う暗黒冬将軍を残して…
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「サナ、大丈夫か?」
「うん、なんとか」
一方、夢路は自分と同じ場所に転移させられた勇魚を心配していた。同じく勝手について来た花名は勝己に責められていたが、こちらは見知った顔である夢路相手のためそんなこともなかった。
「ごめん、夢路。なんか敵の狙っている物を夢路が持っていると、夢路が危ないんじゃないかって…」
「まあ、危険なら元の世界でもそれなりに経験してるしさ。それこそ、昨日の奴等みたいなのでも来ない限りは……」
「ふむ。まさか先日の小僧が、聖なる遺体の所有者になって俺の所に送られるとはな。聖丸と大道克己、揃ってぞんざいな仕事を……」
不意に聞こえた声の方に振り返ると、そこには白い軍服を纏い、左目を閉じた婆娑羅の青年がいた。先日に遭遇した、氷鉋である。
「聖丸にクリエメイトの呪力と聖なる遺体の力を吸収させねばいかんというのに。いや、そもそもマトモに作戦立案をしなかった俺の落ち度でもあったか? だが、克己の転送技がランダムなら具体的に誰と誰を戦わせるかを決めても無意味かもしれんな。いやまず無意味の定義から……」
いきなり勝手に一人で考察を始める氷鉋。この性格のおかげで、夢路は勇魚に作戦を伝えることに成功する。
(サナ、俺達にはこいつを直接倒せる手段がない。隙を作って、なんとか逃げるぞ)
(え!? そもそも逃げられるの? 確か、電撃使いで動きも速いとか……)
(聖なる遺体のおかげで、こっちでも武装明晰夢が使えるんだ。なら、動きを封じてしまえば)
そして勇魚に伝え終えたところで、夢路は武装明晰夢を発動する。
「借りるぜ、
発動したのは、かつてエルクレスの配下だった女の夢魔ノワールの鎖を操る力だ。それによって、氷鉋は一瞬で拘束されてしまう。
「ほう、これは……」
「サナ。逃げるぞ!!」
氷鉋の体に鎖が巻き付いたのを確認した夢路は、勇魚の手を引いてその場から離れる。
「俺に直接ダメージを与えられないと悟って、拘束しての撤退か。理にはかなっているが……」
夢路に対して感心した様子で述べる氷鉋だったが、自身を拘束した鎖を一瞬で引きちぎってしまう。そして駆け出した直後……
「な!?」
「あの程度で動きを封じられる程、俺はひ弱ではない」
「夢路!」
一瞬で夢路の正面に回ってしまい、フルパワーの蹴りを叩き込む。勇魚は吹き飛んだ夢路に呼びかけるが、氷鉋はその悲痛な叫びを無視して追撃しようと構えを取る。そして駆け出した瞬間…
「
「む?」
更に武装明晰夢で生成した無数の拳を撃ちだす。呪力が伴っていないためダメージは与えられないが、牽制するには充分であった。
「もういっちょ借りるぜ。
更に上空から巨大なこけしを落下させて氷鉋の動きを阻害する夢路。
どちらも、メリーと会って間もない頃に戦った夢魔"クリス・エヴァーグリーン"と"イチマ"の能力をコピーしたものである。
「サナ、逃げろ! 俺もどうにか隙を突いて…」
「妨害や牽制なら、もう少し上手いやり方があると思うが?」
勇魚に一人で逃げるよう呼びかける夢路であったが、それを遮って氷鉋が語りかけてきた。今の猛攻を、もう掻い潜ってしまったのである。
「え…ぐぇええ!?」
そして驚く夢路の鳩尾に、鋭いパンチを叩き込む。その重たい一撃に、夢路はその場で崩れ落ちる。意識こそ残ってはいたが、痛みで悶絶して動きが取れずにいる。
すると、氷鉋は身動きの取れない夢路に対して告げる。
「貴様、能力を使うたびに『借りる』としきりに言っているが……そもそも『借りる』というのは他者から物などを一時的に譲り受けることを指すはず。借りる相手もいない、しかも能力という形の無い物を借りるというのは些か理解できんな」
「この能力さ…俺が戦った奴等の技を、コピーして使ってんだよ。だから…俺が勝手に、礼儀だと思って…借りるっつってんだよ」
薀蓄を勝手に語りながら解せない様子で語りかけてきたので、理由を説明してやる夢路。だが…
「そうか……だが、礼儀云々をどれだけ大切にしようと、実戦の場では役立つとは思えんがな……」
「ぐわぁあ!?」
一切の容赦もない言動と攻撃を繰り返す氷鉋。また鋭い蹴りを食らい、夢路は再度大きく吹き飛ぶこととなった。
「はぁ…はぁ…借りるぜ…
更に別の夢魔の攻撃をコピーして、氷鉋に音符を飛ばす攻撃を繰り出す夢路。ダメージが無いのは承知だが、隙を作るために攻撃の手は止められない。
「攻撃の規模と種類だけは大したものだ。だが、俺も近接戦闘だけが取り柄というわけではない……」
氷鉋は怯む様子がなく、更に今まで使おうとしなかった雷撃をついに発動させようといた。右掌から稲光が放たれ、それを夢路へとむける。
「俺は実は、あまり雷撃が好きではない。近接戦が好みとかそういう話ではなく……」
「な、なんだ?」
突然の独白に、困惑して夢路は一瞬だが攻撃の手を止めてしまう。そしてその一瞬を突き…
「人間の消し炭が臭くて好かんからだ」
冷酷に告げて夢路に雷撃を放とうとする。
「夢路、逃げて!!」
「サナ!?」
なんと、勇魚が氷鉋に飛びついてきたのだ。それにより、氷鉋は攻撃を中断してしまう。当の勇魚はそのまま、夢路の方へと駆け寄って治癒魔法を発動し始めた。
「サナ、なんで逃げなかった!?」
「相手は夢路が狙いなんだよ? それだったら、むしろ私が隙を突いて夢路を逃がさないと…」
「そうは言っても、お前は直接戦闘向きじゃないんだから…」
「呆れたものだ。まだ逃げ切れるつもりでいるのか?」
そんな時、不意に氷鉋が二人の問答に割って入ってくる。攻撃の妨害をされたためか、怒りが彼の表情に浮かんでいるのが見える。
「聖丸やあのミストルティンとやらみたく、絶望を味わせる趣味はないのだが……
そこまで理解力が低いのも腹が立つ」
そして氷鉋は業を煮やした、と言わんばかりに黒い札を取り出す。そう、聖丸がダブルやろくろ達との戦いで使用したものと同じものである。
「
直後に氷鉋の体に落雷が生じる。そしてそれを浴びた氷鉋は体中から稲光を発し、それに伴って全身が白く光っている。纏った稲妻は一部が尻尾のようにしなり、閉じていた左目も開かれている。
「つ、遂に使いやがった……」
「流石に聞き及んでいたか。これが婆娑羅専用の呪装・纏死穢だ。婆娑羅の一人一人が手にする異なる能力の専用呪装、俺の紫電弧虐は自らの体に稲妻を纏って自慢のスピードを跳ね上げる力がある」
そしてそのまま自身の能力について説明した後……
「「え?」」
「こんな風にな」
一瞬で氷鉋は夢路と勇魚の背後に回る。そして、二人纏めて凄まじいパワーの蹴りを叩き込んで吹き飛ばしたのだ。
「がぁ! な、なんだこれ……」
「蹴られた痛みだけじゃなくて……痺れまで…」
蹴られた痛みで悶絶する一方、雷撃を纏った蹴りはその体を痺れさせ、まともに動ける様子は見えなかった。そこに、氷鉋は近寄ってきて告げる。
「貴様らの回復力が追い付かないパワーも、逃げる隙を与えないスピードも、仮に逃げられても離れた相手を攻撃する術も、俺は兼ね備えている。俺を傷つけうる力を持たない時点で、戦うことも逃げることも考える自体、烏滸がましいというものだ」
告げられた内容は、初めから且つどころか逃げ切ることは出来ないと断言する無慈悲な答えである。そして氷鉋は、更に
「故に貴様らが助かる方法は一つ、聖なる遺体を俺に差し出すだけだ。さっさと諦めて俺に遺体を渡せ。それが嫌なら遺体を守り切って死ね。お前が死んだ頃には双星どもが増援に来て、俺も倒されるかもな」
「あ、諦められるか…」
「何?」
「人間ってのは……ついつい夢を見ちまうもんなんだよ。ユメもキボーもあるから、諦めるわけにいかねぇんだよ! そしてそれをメリーに、過去の記憶が無くてユメもキボーも無いなんて言うあいつに伝えた、俺が折れるわけにいかねぇんだ!!」
メリーは幻界と現世の狭間を監視する門番だが、突如記憶を失って10年も現世を彷徨っていた。かつてのメリーはその所為でネガティブ思考となっていて、口癖の「ユメもキボーもありゃしない」はその時の名残である。
そんなメリーを夢路は助けたいと思った。幼い時の"誰かとの約束を守れなかった"後悔をもう二度としないため。
「まだ理解できんか?」
「あ゛あ゛あ゛ぁぁ…!」
しかし氷鉋は、冷酷に夢路の体を踏みつけにした。
「その理想論が、甘さが、今貴様自身の命も仲間の命も脅かそうとしている。加えて、聖なる遺体も奪われようとしている。まだ理解できんのか?」
「夢路!? ちょっと、やめてください!!」
勇魚が氷鉋を止めようと、必死にしがみついて妨害する。しかし、婆娑羅の膂力を生身の人間でしかない勇魚が止めることは叶わない。
「それでも、俺は……」
「何?」
しかしそんな中、夢路の方から氷鉋へと言葉が放たれる。
「俺はもう二度と後悔したくねぇ! サナもメリーも、お前みたいな奴等に嫌な思いをさせたくねぇんだよ!!」
その言葉はすでに満身創痍とは思えないほどの力強い声で放たれる。だが、それでも氷鉋には届かない。そればかりか……
「先ほども思ったが、ここまで理解力がないと哀れみを通り越して腹が立つばかりだ」
「きゃあ!?」
いきなり夢路の体から足をどかしたと思いきや、勇魚の首を掴み始めた。
「ならば、貴様の近しい人間の命が先に脅かされれば、少しは考えが改まるか?」
「あ…ぁぁ……」
「サナ!」
そして、氷鉋は一切の慈悲もなく夢路に問いかける。
「1分だけ時間をやるから、それまでに遺体を渡すか否かの返事を出せ。遺体を渡さなかった場合、このままこの娘には黒コゲの死骸となってもらう。まあ、その前に首の骨がへし折られるか窒息死するかもしれんが」
「やめろぉおおおおおおおおおおお!!」
氷鉋との圧倒的戦力差と己の無力さに夢路が叫び、空にとどろく。それに応える者はいない……
「勘弁しろし。見てらんねぇ」
「グワァア!?」
かと思われた直後、聞き覚えのない声が響いたと思いきや、氷鉋の体が大きく吹き飛んだ。勇魚も解放され、どうにか
「え?」
「けほっけほっ……ありが、え?」
そしてその氷鉋を攻撃したと思しき人物を見た夢路は呆け、勇魚もお礼を途中で止めてしまう。
「だが、目は死んでねぇようだ。そんなお前に、ある提案がある」
そしてそいつは、夢路に対して声をかけるのだがまずその容姿が問題であった。
「お前……婆娑羅か?」
そう。その人物は夢路達と同年代の少年の身なりだが、褐色肌に黒い片目、ウェーブのかかった銀髪に腹部の九字紋、まさに婆娑羅の特徴を備えていたのだ。
「俺は神威。お察しの通り婆娑羅だが、ぶっちゃけお前らと敵対するつもりはねぇ。そして、お前に奴を倒すための提案を一つ、出してやる」
そして神威はある提案を夢路に出すのだが……
「俺の力、借りる気はないか? 答えろし。10数える間待ってやる」
次回、仮面ライダーW
「呪いをその身に宿してでも戦う力が欲しいか? 答えろし」
神威からの提案! そして夢路の選択は?
「私なんかが! 黒い雪しか振らせられない私なんかが、あんな奴らに勝てるわけないわよ!! ましてや、貴方達の心の傷を上がろうとした私が、助けられていいわけ…」
「微かな願望や希望が…穢れた欲望だとしても、人は…前に進める」
自責の念に囚われる暗黒冬将軍と、彼女に寄り添おうとする紅緒。
「生憎だけど、俺はお前らなんか怖くねぇからな! 紅緒の怒った顔の方が百倍怖えよ!!」
絶望的な戦力差の中で己を奮い立たせるろくろ。
そして、ついに解禁される……
「神威、借りるぜ!」
「黒玉雪華」
「焔魔焰撃」
「「急急如律令!!」」
新たなる力!
「Bな雪の華/愛と友情の式神呪装」
これで決まりだ!