序文~プロローグ
これは人に触れる事も、人から触れられる事も出来ない女騎士・アレクサンドラの物語。
これは失った愛を求めて旅をする女騎士・アレクサンドラの物語。
失った愛を求め旅する者、失われる事の無い愛を持ち旅する者、永遠に失われた愛を忘れず旅する者。三つの者達が時に交わり、時に離れ旅を続ける物語。
その旅の行き着く先が『約束の地』なのか、それとも全く違う場所であるのか。その答えは誰も知らない。
物語はアレクサンドラがヴァンパイアであった辺境伯婦人・エレオノーラを討ち倒し、エレオノーラの手によってヴァンパイアとなっていたアレクサンドラの妹、ノエルが目覚めた所から始まる。
〜プロローグ~
「私が、ヴァンパイア。あの伝説に出てくる吸血鬼?」
「そうだ。お前はエレオノーラの手でヴァンパイアにされたまま、ずっと眠っていたのだ。あの忌まわしき香の力によって」
「そうだったの。私は、人の血を吸う化け物なのね。そして、お父さまとお母さまをこの手で…」
「それは違う!ノエル、お前は断じて化け物などではない。お前は私の大切な妹だ。今までも、ずっとこれからも」
「お姉さま。でも…」
「私に真実を教えてくれたヴァンパイア達は約束してくれた、決して人の血は吸わないと。私はそれを信じようと思う。そんなヴァンパイアもいるのだ。だからノエル、お前にも誓ってほしい。決して人を襲わない、人の血は吸わないと。その代わりお前の事は私がきっと守ってみせる。だから、ずっと変わらないでくれ。私の愛するノエルのままでいてくれ」
「お姉さま……分かったわ、約束する。その代わり、私からもお願いがあるの」
「何だ?」
「ずっと、ずっと一緒にいてくれるって、お願いしてもいい?」
「…分かった。約束する、私はいつまでもずっと、お前と一緒だ」
「嬉しい。ありがとうお姉さま、大好きよ?」
「ああ、私もだノエル。いつまでも大切な、私の妹。お前の事は、必ず守ってやるからな…」
「お姉さま?泣かないで。大丈夫、私は大丈夫だから……」
こうして私の全てが始まった。私はこの時、自分がノエルに何を誓わせたのかも分からずただただノエルに課せられた運命を憐れんで、ひたすら涙を流すだけだった。
しかし私は後に思い知らされることになる。この誓いで自分が最愛の妹にどれほど重い荷を背負わせる事になったか。そしてそれが果てしなく長い旅を続けるきっかけになったという事を。
だがこの時の私はそのような不吉な影を感じる事など無く、ただノエルの手を握り泣くだけであった。後にその温もりを、果てしなく求める事になるとも知らず。