憧れの先輩に押し倒されて、男の甲斐性を説かれる話 作:狐狗狸堂
一応断言しますが、今話からの束さんは「純白の束さん」です。真っ白です。
事情釈明などは、前話の前書きやあとがきに載せてあります。
今後とも至らない身でありますが、よろしくお願いします。
それでは本編をどうぞ
ps.イチャラブ成分補充用に、短編をあげました。評価も赤いので、十分読めるものだと思います。
──ああ、やっぱり動き出したか。
宙空に浮かぶ画面には、緊急事態を知らせる警告が踊っている。
それは一瞬でかき消え、その後には地図と動き続ける赤点が現れる。
──手駒がないっていうのは、本当に不便だなぁ。
憂鬱だ。絶対怒るに決まってる。
激怒する親友の姿を幻視しながら、タップする手を止めることはしない。
──さて、目的地は割り出した。私自身が出向くことも出来るっちゃ出来る、けど……
さすがにちょっと距離がある。無論、それくらいどうにでもなるのだが、ちーちゃんが結婚をした際に政府が口を挟めないよう、
──私がもう1人いれば万事解決なのに
1人が救出役で〜、もう1人はこっちに残って工作を仕掛けつつ、ちーちゃんに怒られる、みたいな〜、ね? だめ? そんなぁ〜……
◇ ◇ ◇ ◇
「それで? 試合前にわざわざ呼び出されてやったわけだが、一体なんのようだ?」
「ええっと〜、その〜、用と言うか〜、報告と言うか〜、ね?」
「ね? とか言われても困るんだが?」
──ごもっとも過ぎてなにも言い返せないね、ほんと
出来るだけ自然に、この部屋で唯一の出入り口を背負うように位置取る。正直、いやだ。この後ちーちゃんがどう動くかにもよるが、下手すると即死させられる可能性が……
別世界の私を幻視した気がしたが、だからこそ余計に不安になる。いや、あの私は全会一致で、もとい全界一致でヤベーやつ、ってなってるからしょうがないんだけど。
──さて、腹くくるか
「ちーちゃん、落ち着いて話を聞いてね?」
「……ああ」
「いっくんと後輩くんが攫われた」
「────ほう?」
──あれ? 意外と大丈夫っぽ、いやだめだ、これだめなやつだ
表面上は落ち着いているように見える。しかし、目の前でゆらりと立ち上がったちーちゃんの目を見て、即座にその思考を否定した。
身構える。ことここに至ってちーちゃんが望むことは、一つしかないから。
──ちょっとでいいから、耳を貸してくれるといいんだけど
が、しかし。それは無意味だと知る。
顔が引き攣る。彼我の実力差くらい把握しているつもりでいたが、軽く想定の上を行かれる。
──目を離していなかったのになぁ。なんならハイパーセンサーも併用してたんだけどなぁ……
対人用に絞ったハイパーセンサーまで、事もなげに抜けられるという事実にいますぐ白旗を上げたくなる。でもそれは駄目だ。
絶対、強請られる。後輩くんとの仲に口を挟まれるくらいで済めばいいけど、護衛と称した監視、保護と称した軟禁・人質化くらいは平気でやってくるだろう。
女権団に情報をリークして襲撃させ、それを政府が護り恩着せがましく要求してくる。世間にも大々的に報道させ、外堀を埋める。それくらいのマッチポンプはお手の物だろう。
なんせ現在進行形で家族が似たような目に遭っているのだ。私だから分かる、私にしか分からない、というやつだ。
「束、そこを退け」
「悪いねちーちゃん、そいつぁ、無理な相談ってやつだぜ」
「二度も言わせるな」
そこを、退け
肩に手が置かれる。それだけだ。特別声が大きいわけでも、そして力が込められているわけでもない。それなのに跪きそうになるほど、身体が重かった。
まるで、巨大な掌が頭に置かれているようだった
──ああもう、とんだ貧乏くじだ。こういうシリアスっぽいの柄じゃないってのにぃ〜
勤めていつも通りに心を保ち、深く深く息を吸う。散々バカにしてた精神修養がこんなところで役に立つとは、人生って不思議である。
「ちーちゃんもさ、そういう訳にはいかないって私の言葉、聞こえなかった?」
「知ったことか。退け」
「このことを、後輩くんも私も想定済みだった、って言っても話を聞く気は湧かない?」
「────なに?」
──いよっし釣れたぁっ!
「この束さんが、凡人どもに裏をかかれると思う? なんの備えもしていないとでも?」
「……詳しく教えろ」
「もち」
結局のところ、不確定要素が高すぎて打てる手立てはそこまででもなかったのだが、それについては伏せておくとして。
それ以外の全てを語った。
後輩くんに発信機を付けさせてもらったことも、現在の大まかな位置も、目的地であろう場所も、ちーちゃんが今動くことは避けた方がいいということも、そして私自身は動けないことも含め、全て。
話を聞き終えたちーちゃんは、目に見えて動揺している様子だった。話を聞くうちに頭が冷え、どんな状況かを理解しているようだった。
「なぜ、お前は動けない? 教えてくれ……」
「ちーちゃんのためだよ」
「2人の安全は? どうなっている?」
「緊急用にドーム状のシールドバリアーが張れる装置と、医療用のナノマシンを待機状態で体内に仕込んである。いっくんには知らせてないけど」
「なぜ、彼を巻き込むような真似を……」
「『一夏くんを1人にするような真似、できませんよ』」
「っ……馬鹿者め」
そうだ。後輩くんには、そもそも来ないという選択肢だって取れたのだ。いっくんは無理だったけど。
なにはともあれ、一安心である。いやほんとマジで。生まれてこの方、少なからず命の危険にさらされたこともあったが、今回のはとびっきりのぶっちぎりである。
──さあ、ラストスパートといこうか!
「さて、ちーちゃん。君はこれからどうしたい?」
「……どうする、だと?」
「そそ」
「助けたいに決まっている……。だが、動けないと言ったのはお前だろうが」
「うん、
「なんだと?」
──もう一押しかな?
すでに下を向いていた顔は、こちらへ向き直っている。眼光には鋭さが戻り、声にも力が入り始めていた。
「奴さんの情報源は、ラジオとかテレビとかそんなところだろうね。それくらいなら、この場に私が残ってもダミーを流すくらいはなんてことはない」
「……」
「とはいえ、相手だって相当危険な橋を渡っている自覚はあるだろう。会場に人員を配置して、常に情報を流す担当が居ても不思議じゃない。まあ、そっちも回線が混雑している風を装って断つけど。そっちは流石に不自然だからね。あまり時間はかけられない」
「……無線や衛星電話を使われたら?」
「私がどうとでも出来るよ? ダミーの音声を作成して流せばいいから、むしろそっちに期待してるくらい。まあ、すでにあらかた浚ったんだけど、見つかんなかったんだよねー。だから望み薄かな」
「私は、どうすればいい」
「勝って。それも、なるべく早く」
「早期決着か。アリーシャ相手に? 加速・最高速共に暮桜以上の、テンペスタ乗りに? ドッグファイトは向こうも望むところだろう、逃げに徹されたらキツいどころの話じゃないぞ」
「できないの?」
浮かぶ表情に不安の色はなく
「やるさ。闘いこそ私の領分。そこで遅れを取るわけにもいかんだろう」
吐き出される言葉は淀みなく
「不安か?」
言われて気づく。ここまで散々煽っておきながら、私自身がちーちゃんを信じきれていないことに。アリーシャという女の実力は、普段のちーちゃんなら正しく鎧袖一触と言ったところだろう。
しかし今はどうか。この状況なら
それは、アリーシャ某の乗機「テンペスタ」から自慢話を聞かされていたからかもしれない。
それを、ちーちゃんは不敵に笑い飛ばす。いつのまにか、立場が逆転していた。
「私を誰だと思っている? 言ってみろ」
「──世界最強にしてこの
なんだ、よく分かっているじゃないか、と笑うちーちゃんを見つめる。さっきまでの弱々ちーちゃんは何処へやら。でもうん、こっちの方が
『織斑選手、お時間です。ピットにいらっしゃってください。繰り返します──』
「さて、時間か」
「ん、いってらっしゃい。勝ってね、
「無論、勝つとも。だから他のことは任せたぞ、
「合点承知♪」
2人一緒に部屋を出て、互いに背を向け歩き出す。
ちーちゃんは勝つ。2人も救う。さながら物語の主人公のような役回り。それなら私の役は────?
──決まってる。どんな悲劇もひっくり返して、慌てる様を笑って見下ろす
ちろりと唇を舐める。軽く首を回して、前を、もっと先を見据える。
──ああ、負ける気がしないな
──狸だろうが亡霊だろうが知ったこっちゃない
それが、天災としての矜持。分かっていながら未然に防げなかった後悔。そして、
──私がハッピーエンドにしてみせる!!
アンケートちゃんとできてるのかな? よくわからない。
だから後書きでも聞きますけど、ぶっちゃけイチャラブが読みたい、モンドグロッソ編はいらない、って人はいますかね?
その時は、時系列がモンドグロッソ編後に飛ぶくらいで、特に支障はないかと。今回のノリで大体お察しですしね。
また、そうなってもモンドグロッソ編は番外扱いなだけで、消すとかは考えてないです。
むしろ【ボツ】った方をどうするかですね。消すか、残すか。残すにしてもあのままか、ボツ集みたいな感じでまとめて置いておくか。
それもアンケートすればいいのでは? ただ使えてるのかが不安すぎますね。プレビューに出ないんですけど、大丈夫ですかね...?
【ボツ】モンドグロッソ編について、教えてください。
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読む気はあるし、設定にも興味がある
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読む気はないが、設定には興味がある
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読む気はあるが、ネタバレはなし
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読む気はないし、設定にも興味はない
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モンドグロッソ編よりイチャラブがいい