憧れの先輩に押し倒されて、男の甲斐性を説かれる話   作:狐狗狸堂

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生存報告をあげました。

しかし、読んでない方もいらっしゃるだろうと思いました。

エタってないよ、って言いたくて深夜テンションで書き上げました。

締めて4500字

今まえがきを書いていて、思うことがあります。

ーーこれ書いてる暇があるなら、本編書けばよかったのでは?

(´・ω・`)
(´・ω:;.:…
(´:;….::;.:. :::;.. …..


本編をどうぞ


幕間「此くて『天災』は嗤い、そして『少女』は祈りを捧ぐ」

 扉を抜けて大きく息を吐く。

 

 それに含まれる安堵の色を感じて、口角が歪む。

 

 ーああ、流石にきつかった

 

 本来ならご法度なのだ。

 

 織斑千冬と真っ向から勝負を挑む、というのは。

 

 並の天才武術家程度なら、物の数にも入らない。たとえ私の父に当たるあの男と相対したとしても、ここまでの消耗はあり得ない。

 

 故に、導き出される解は一つ。

 

 

 織斑千冬をどうこうするなら、彼女の土俵に立ってはならない。

 

 

 シンプルな答えだと思う。武力を振るわせない。最適解だと自信を持って断じる。

 

 そして、()()()()()()()()特に問題はないだろう、とも。

 

 つまり、大事に至るのはこれからだ。

 

「悪いね、アリーシャ某とやら。今だけは心底同情してあげるよ」

 

 才能を数値に表したとして、武の才能一本で()()()()()()()()()()()()を想いながら。

 

「まあ、私が覚えていられる間だけだけど♪」

 

 白うさぎは目の前を横切って行ったよ

 

 助言をくれる芋虫も、愉快で道化な帽子屋も、ニヤニヤ笑うチェシャ猫も、みんなみーんないないけれど

 

 それでもあなたは来てくれるよね? 

 

 信じているよ? 

 

 親友だからね。

 

 だからこそ、忠告だ。

 

 さっさとレベルを上げないと、この先のインフレにはついてこれないぜ? 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()? 

 

 

 

 

 

 

「んふふ〜。じゃあ、そろそろ行こうかな。単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)発動、『猫なしの笑い(グリン・ア・キャット)』」

 

 

 

 

 頭のうさ耳を外し、代わりにシルクハットを乗せる。

 

 この日の為にあつらえた燕尾服へ換装し、かかとを軽く打ち鳴らす。

 

 ──楽しい『お茶会』になるといいな

 

 そして次の瞬間には、姿が霞み消え去った。

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 天上を仰ぎ見る。

 

 灰褐色の砂の大地を染める、星々を眺める。

 

 一人、膝を抱えながら。

 

 妖しげに、白銀の月は輝いている。

 

有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし*1

 

 誰もいない世界で、聞き届ける者のいない世界で、なんとなしに諳んじる。

 

思ひ知る 人に見せばや 灰砂地(はいさじ)の 春の夜ふかき 有明の月*2

 

 返答は、すぐ隣からであった。

 

 横を向けば、桜を散りばめた和装の女性がいた。

 

 射干玉の髪は一本に結われ、腰のあたりで揺れている。

 

 肌は妙に白く、しかし月の光を浴びて艶やかに映り。

 

 その目もまた黒々としていて。

 

 なぜか、柄から鞘までが真っ白な刀を佩いていた。

 

 

 沈黙

 

 

 破ったのは、女性の方だった。

 

「壬生忠岑か。女々しいことだな、()()()

 

 齢12、3と思しき少女を指して、母上、と呼ぶ女は、無感情に言い放つ。

 

「そういうきみは、更級日記か。渋いところをチョイスしてくるね」

 

「ああ、母上にはよく似合うだろうと思ってな?」

 

 先ほどの無表情から一転、軽薄な笑みを浮かべる女。

 

 そんな女を、なにも言わず見つめる少女。

 

「そんな目で私を見ないでくれ。ただの戯言だとも」

 

「知ってる」

 

 会話が途切れる。

 

 少しして、女は少女の隣に腰を下ろした。

 

 砂の上に毛先が付いているが、あまり気にならないようだった。

 

「まだ引きこもっているのか?」

 

「でなかったら、あんなの歌わないって」

 

「なるほど。たしかにその通りだ」

 

 少女は月を見つめる。

 

 釣られるように、女も見上げる。

 

「この世界を最初に照らした月。わたしの子たちの()()()()()()()。どうしたらあの子、降りてきてくれるのかな? なんにも話してくれないから、よくわかんないや」

 

 少女の顔は困っているようにも、悲しんでいるようにも見えた。

 

 特徴的な()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が、どこか褪せているようにさえ映った。

 

「しかるに母上よ。貴女は1つ、思い違いをしているように見受けられる」

 

「思い違い? なにを?」

 

 したり顔で頷く女を、少女は見つめる。

 

 コテンと首を傾げ、不思議そうな色で顔を染め上げる。

 

「1つ。あの融通の効かない偉大なる()()が、なんの理由もなく貴女の願いを無下にはしないだろう、ということ。理由を話さない、というのも、あくまで自分の中の問題だから話す必要なし、という思考に十分至り得るだろうね、あの姉上のことだから」

 

「でもそれ。きみの推論だろう?」

 

「なればこそ、2つ目。────姉上はすでに降りている」

 

 

 

「ああ。よく気がつきましたね、()()

 

 

 

 いつのまにか、少女の目の前に一人の女性が立っていた。

 

 白

 

 そう形容するほかないほどに、全身が純白の女だった。

 

 唯一、その手に握る錆びた刀身のみを除いて。

 

「わざわざ、外装にまで手を伸ばされたらね。否が応でも気づくとも」

 

「まあ、道理ですね」

 

 不思議なことに、女が手に持つのは刀身のみで、つまり柄も鍔も鞘もないのである。

 

「寄越しなさい」

 

「承知」

 

 白い女が手を差し出せば、桜の女は腰に佩く刀を渡す。

 

 それがさも当然であるというように、どこまでも自然なやり取りであった。

 

 白い女は、渡された刀を鞘から抜く。

 

 どういうわけか、そこにはあるべき刀身のみがなかった。

 

 しかし、それで良いと言うかのように一度頷くと、白い女は自身の腰に佩き直す。

 

 なおも刀身は握りしめたままであった。

 

「もう行かれるのか? 姉上」

 

「ええ、鍛え直さねばならないので。それが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「乗り越えると? 内なる『鬼』を、どうこうできるとお思いか?」

 

「おや、貴女は違うのですか?」

 

「ああ、正味な話、もうすでに()()()()()だろう。平静ならともかく、今の彼奴の精神状況ではな」

 

 

ギチリ

 

 

 共に向き合う二人の間で、ナニカが軋んだ気がした。

 

「そんなことだから、貴女は愚妹なのですよ」

 

 有無をも言わせぬ迫力に、蚊帳の外である少女でさえ息苦しさを感じる。

 

 桜の女は、ひょうひょうとした態度のまま、しかし明確にその顔を青ざめさせていた。

 

「彼女を誰と心得る? 我ら姉妹の知る限り、()()()()()()()()()の存在ですよ?」

 

「……信頼と盲信は違うだろう」

 

「はっ」

 

 桜の女が言い放った言葉を、白い女は鼻で笑う。

 

 初めてその無表情を崩し、しかしその目だけは変わらず冷めたまま。

 

「盲信? 馬鹿な。これは純然たる事実であって、そんな不確かなものではない」

 

「私は知っている。彼女の想いを」

 

「私は知っている。彼女の荒ぶる魂を」

 

「私は知っている。彼女の存在の不確かさを」

 

「私は知っている。彼女という存在の脆さを」

 

「そして、私は見てきた。その程度ものともせず乗り越える姿を」

 

 

「己の無知を、至らなさを棚に上げて、巫山戯たことを抜かすなよ。愚妹が

 

 

 鬼気迫る、とはこのことか。

 

 その猛々しさを、吹き荒れる炎のごとき熱を、その余波をもろに浴びる。

 

 桜の女は、笑っていた。

 

「ふぅ、どうやら私も焼きが回ったようで」

 

 白い女は答えない。

 

 しかし、その気勢は明らかに弱まっている。

 

 余りにも早い展開に、頭が追いつかなくなりそうな中で。

 

 ふと、疑問が浮かんだ気がして。

 

 気づくけば、二人がこちらに視線を投げかけていた。

 

 ──ああ、そういうこと

 

「気を遣わせちゃって、ごめんね」

 

「ふふ、いや、余りお気になされるな。これは自業自得ゆえ」

 

「今、貴女に揺るがれるのは致命的ですから」

 

 二人揃って答え、二人揃って視線を外す。

 

 なんとも仲の良さげなやり取りであるが。

 

 ──『喝』を、いれられちゃったな

 

 まあ、目の前で惚気られるのを、『喝』、というのかは置いておく。

 

「では、そろそろ私は行きますね」

 

「ああ。達者でな、姉上。とはいえ、すぐに会えそうだが。さて、では最後に」

 

「ほう?」

 

「『別れ路は いつも嘆きの 絶えせぬに』」*3

 

「──……『君にふた心わがあらめやも』」*4

 

 それ以上答えることなく、白い女は天上を見上げ────消え去る。

 

 静寂

 

 やはり破ったのは、女であった。

 

「さて、私もいろいろ準備をしなければ」

 

「準備?」

 

「おめかしを考えねばならぬので」

 

「おめかしね」

 

 腕を組み、目をつむり、うむうむと頷く女を、少女は見遣る。

 

 やや間を空け、少女が口を開いた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()「母上」なに?」

 

 途中で口を挟まれ、少女は頰を膨らませる。

 

 しかし、女を見て苦言を呈するのをやめた。

 

 

 ──こちらを見下ろす女の貌は、『無』であった。

 

 

「母上。誠に申し訳ないが、それ以上はやめていただきたい」

 

 声音もまた、先程までとは一変している。

 

 端的に言って、冷たく硬い。

 

「姉上が彼奴の『剣』であることが、尤もであるように。私もまた、彼奴の『翼』なのですよ」

 

 その口舌の刃はしかし、女自身にその剣先が向いている。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 女は、どこか泣いているようであり──

 

「自身の幼さを、愚かしさの免罪符にはしたくない。しかし────」

 

 それは、懺悔のようでさえあった。

 

「それでも、今でも悔いている。私は幼く、愚かであった。私が一番()()を理解していると。一番自由に飛ばせてやれるなどと、驕ってしまった」

 

「それが私の『今』なのです。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()それがどうしようもなく、許せない」

 

「故に、手出し無用です、母上。私が彼女の『翼』足り得るために。そう在れかしと願っていただけるなら」

 

 そこで一度、言葉が切られる。

 

「私に、全てを任せていただきたい」

 

 少女は顔を伏せた。

 

 それは一見すると悩んでいるようでいて、しかし横から見ればその口元に小さな微笑を浮かべている。

 

「うん、いいよ、分かった。悪かったね」

 

「ああ、それでは私は、一足先に帰参させてもらいますよ」

 

 最後には、元通りの笑みを浮かべ女は消えた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 未だ、7分咲きといったところか。

 

「子どもたちの成長は早いなぁ」

 

 ──私なんて、もうずっとお子ちゃま体型なのに

 

 いや、そういう意味ではないのだが。

 

 

 ああ、それにしても。

 

 

 早く会いたいなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 幕間『此くて天災は嗤い、そして少女(アリス)は祈りを捧ぐ』fin

 

 

 

(あとがきを設定で読まないようにしている人がいるらしいので、こっち側でキャラ紹介)

 

(そもそもこういうのが不要だから読まないんだよ! って人については、申し訳ない)

 

 簡易キャラ情報

『天災』

 言わずと知れたヤベーやつ。

 今話で原作コーデを脱ぎ捨てた。

 変更後の服装のモデルは、「チャーリーとチョコレート工場」より

「ウィリー・ウォンカ」

 

少女(アリス)

 謎めいた少女。

 見た目は、12〜13歳くらい。

 判明している限り、子持ちらしい。

 服装は、まんま「不思議の国のアリス」より「アリス」

 ロリ母属性持ち

 

『桜の女』

 謎めいた女性Part1。

 歳の頃は、10代後半くらい。

 桜の花を彩った和服に、黒髪をポニーテールにしている。

 ひょうひょうとした態度とは裏腹に、熱いなにかを抱えている。

 妹属性持ち

 見た目は、「fate/grand order」より「両儀 式(剣)」

 性格のモデルは、「恋姫無双」より「趙雲」

 

『白い女』

 謎めいた女性Part2。

 歳の頃は、10代半ばほど。

 真っ白な和装。ぶっちゃけ、死白装

 生真面目で融通が効かない一方、ぶきっちょなだけ疑惑発生

 姉属性持ち

 見た目は、「()()()()()()()()(学生ver)」

 性格のモデルは特にないが、強いて挙げるなら「ダンまち」の「リューさん」

*1
壬生忠岑。訳:有明の月は冷ややかでそっけなく見えた。相手の女にも冷たく

 帰りをせかされた。その時から私には、夜明け前の暁ほど憂鬱で

 辛く感じる時はないのだ

*2
更級日記。原文:思ひ知る 人に見せばや 山里の 秋の夜ふかき 有明の月

原文訳:風情を解する人に見せたいものだ。山里の秋の夜深い、この有明の月を

*3
新古今和歌集より藤原実方。上の句のみ引用

訳:旅立つ人とのお別れはいつも嘆かわしいものですが

*4
源実朝。下の句のみ引用。

訳:




キャラ紹介がエグい量になりそう()

別途、活動報告にあげ直した方がいい感じですね、こいつぁ。

この幕間、以外と重要かもしれません。色々伏せたまま書くのって大変だなぁ、って思いました。

『天災』さんは胡散臭い...まあ、いつもの(?)ことですね。

『少女』は妙に達観している...子持ちだし、しょうがないね(!?)

『桜の女』はいったい誰なんだろうね...それはそうと、性格的にも見た目的にも作者の好みに寄せt

『白い女』も謎ですね...刀を持ってるんだ? へぇーーー()

作中での歌のやり取りは、歌遊びというもの。適当に引っ張ってきました。
今回は、短歌に対し短歌で返すものと、上の句に対し下の句で返すものの二つを使用。

上の句に対し真面目に、原文通り返すもよし。上の句の意を汲んで下の句で応えるもよし。
受け取り方も、素直に捉えてもよし。省略された上の句や下の句の意を汲んだうえで解釈するもよし。

結論:人それぞれっすねーーー

<以下、要注意>
<ネタバレ気味>
<それでも構わん! という方のみ読むとよろしい>
まあぶっちゃけ、大した情報でもn(ry











零落白夜

零落した白い夜

零落した白い(white)夜(night)→night(→knight=騎士)

零落した白い騎士

ダジャレです。申し訳ない

提唱:零落白夜は『墓標』説

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