憧れの先輩に押し倒されて、男の甲斐性を説かれる話   作:狐狗狸堂

9 / 10
色々考えた結果、書き直すことにしました。正直迷走している感がすごくてですね...。

当初の今作の気風から、随分とかけ離れてしまったのは、ひとえに作者自身の不徳の致すところでございます。申し訳ございませんでした。
言い訳にもなりませんが、凝り性な性分と他所様の作品などに刺激された厨二心、加えて深夜テンションがよくわからない方向へと連れ去ってしまいました。

伏線の張り方とか、そもそもシリアスが重すぎるなど、様々なご指摘やそれを踏まえた反省点を、これからの作品作りに活かしていければな、と思います。

今後とも、よろしくしていただければ幸いです。

それでは本編をどうぞ

と言っても、最後くらいしか今話は変わっていないので、既読の方はそこだけ見れば良いかもしれません。

ps.イチャラブ成分補充用に短編をあげています。興味があったら、ご覧ください。評価が赤いので、十分読めるものだと思います。


【番外】第二回モンドグロッソ編 『幕開け』

 目の前で繰り広げられる宙空の乱舞

 

 

 乙女たちの奏でる鉄と火薬の戦歌

 

 

 それを取り巻き眺める人々の、雷鳴の如き歓声と炎の如き熱狂の渦

 

 

 ある者は憧憬を、ある者は感嘆を、またある者は嫉妬などを視線に詰めて

 

 

 より俗な欲求に従い眺める者もいれば、したり顔で周囲へ語る者もいる

 

 

 何はともあれ間違いなく、その日その場所が世界の中心だった

 

 

 戦乙女が舞い、その先に坐す女神が睥睨するヴァルハラ

 

 

 

 

 

 故にこの日、僕たちの身に降りかかることとなる厄災を敢えて名付けるというならば、『試練』の二文字がふさわしいだろう。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

「準決勝が終わったな、義兄さん」

 

「ああ、うん。そうだね」

 

「……なんか、こう」

 

「それ以上はいけない。言っちゃダメだよ、一夏くん」

 

「はい……」

 

 心無しか、じとっとした視線を向けられているのを意識して流す。遠慮がなくなってきたのは良いことだろうけど、少なくともじと目で実感したいことでもないのは確かだ。

 

 現在は休憩時間である。モンドグロッソの最終日、残すは決勝戦のみとなっていた。ここで問題なのは、その時間である。本来のカリキュラム通りなら、現在はちょうど昼食を摂る時間であるはずなのに、時計を見れば11時前。さすがに少し早い。

 

 それもこれも、全て千冬さんが悪いのだ。やる気を出してくれたのは純粋に一ファンとしても、無論恋人としても嬉しいのだが、その結果全ての試合でワンサイドゲームを繰り広げてしまったのだ。

 

 30秒

 

 これが何を示すのか? 一試合に千冬さんがかけた時間である。なんとあの人は、やる気を出し過ぎたあまり全試合を30秒以内で終わらせてきたのだ。色々やり過ぎである。実況席などあまりの惨状に、

 

「ブリュンヒルデは今日も実に、チフユしてますねー」

 

「ええ全く。私もチフユする日が来ると嬉しいのですがね」

 

 などと茶化しては空笑いしている始末である。チフユが動詞として認知される日も、そう遠くはないかもしれない。

 

「義兄さんが変な発破をかけるから」

 

「いや〜ははは……。でも、負けるよりは良いんじゃないかな、なんて」

 

「千冬姉がやる気がないからって、負けると思う?」

 

「……うん、ちょっと散策でもする?」

 

「むむ……千冬姉に連絡するから待ってて」

 

 言うが早いか携帯を取り出す姿を横目に、僕はというと、一夏くんとスタジアムの外に出る旨を部屋の外の黒服の男性に伝える。

 

 僕たちが今居るのは、代表選手の身内などに用意されるVIP専用の個室である。食事からマッサージなどの各種サービスを無料で享受できる、という特典に加え、個室自体も僕の部屋の壁を全て取っ払ったものより広いという、至れりつくせりの空間。内装も当然のように、凝った作りとなっている。

 ドアの外には、厳つい黒服の方々が廊下にまで配置されており、素人目にも分かるほど厳重な警備がなされていた。その重要性を鑑みるに、順当と言わざるを得ないが。恐らくは、VIP専用フロアに居る職員の中にも、その手の人が潜んでいることだろう。映画の見過ぎだろうか。

 

「今終わったよ、義兄さん」

 

「こっちも話はついたよ、一夏くん。なんか、護衛の人が付くってさ」

 

「護衛……。やっぱり居るよな、そういうの」

 

「まあまあ、一応私服で陰ながらって話だし」

 

「まあ、そうなんだろうけどさ.」

 

 げんなりとした一夏くんの姿に、思わず苦笑が浮かぶ。分からないでもない。安全のためにとはいえ、監視されるのが気になるのだろう。その目的が、守るためとは言えども。

 

 

 

 そんなこんなで街に繰り出した僕たちだが、当然どこもかしこも人でごった返している。それでも、あちこちの屋台や店舗を巡るのは目新しさも手伝って、なかなか楽しめた。一夏くんも、スタジアムを出た当初は、何処かそわそわした様子だったが、途中からは吹っ切れたのか随分とはしゃいでいる様に見えた。

 

 合間に写真を撮っては、千冬さんへ送る。色々な写真を撮った。例えばそれは、大口を開けてホットドッグを頬張る一夏くんであったり、そこらの街の風景であったり、はたまた有名な建物を背にして2人で撮ったものであったりした。

 千冬さんの方は、そんな僕たちの写真を見ては、終始羨ましがっているようだった。理由は様々だろうが、やはりあのことも関係しているのだろう。

 

 

 僕たちは、世間一般で言うところの恋人という関係であるのに、デートをしたことがない。

 

 

 ブリュンヒルデに恋人ができた。そんな話がすっぱ抜かれた日には、比喩抜きで日本が揺れる。世界からも注目されるだろう。それほどまでに、ブリュンヒルデとは、織斑 千冬の名声とは大きいのである。

 無論、もみ消すことも誤魔化すことも十分に可能だろう。僕のことを、単なる学生時代の後輩であり、家を空けがちな自分に代わって一夏くんの面倒を見て貰っているので、今でも親交はあるがそれだけの関係であり、それ以上を求めるのは下衆な勘繰りに過ぎない、と説明してしまえば、あとは適当に終息するだろうことは、想像に難くない。

 

 ただ、そのようなことは言いたくないと彼女は言った。

 

 

 解決はするだろう。

 

 解消してしまえば、それまでだろう。

 

 だからと言って、僕との関係を偽ってしまうのは違うだろう。

 

 偽るくらいなら、そんな煩わしい思いをしなければならないというなら、

 

 

 

 国家代表など辞めてやる。

 

 

 

 僕をまっすぐ見つめて、そう言い切る千冬さんを思い出す。融通が利かなくて、頑固で生真面目で誠実で、義務感の塊のような人だ。だというのに、僕との為なら全てを捨てるという。

 一夏を大学に行かせるだけの金ならある、もしそうなったら2人で田舎にでも越すか、などと何処か楽し気に話しているのを聞きながら、僕はどんな顔をしていただろうか。

 

 嬉しくはある。この上なく。

 

 でも、怖くもあったのだ。僕が、千冬さんの枷になり得るということの証左だから。

 

 あの人は、あまりに情が深い。僕に限らず、例えば一夏くんにもしものことがあったら、天秤に掛けるまでもなく、そちらを取るだろう。その結果、自分が苦しめられることになろうとだ。

 

 

 だから、僕は恐れている。そして、願っている。そんなもしもが訪れないように、と。縛りたくない、鎖にも枷にもなりたくはない。そして、それ以上に────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

「一体どこに行ったんだ、一夏くん……」

 

 飲み物を買いに行くとメッセージが送られたきり、音沙汰がないまま、すでに20分近い。人混みに紛れて、するすると移動していく一夏くんを追いかけるのは困難であり、動くに動けない状況だ。

 スマホを握りしめ、周囲に気を配りつつ、画面に視線を落とすのを繰り返す。

 

 

 心配し過ぎだろう

 

 あの子はまだ子供なんだ

 

 どこかで寄り道しているだけかもしれない

 

 それに護衛だって付いてるんだ

 

 そうそう滅多なことが起きる訳がない────

 

 

 

 

 

本当に? 

 

 

 

 

 

「失礼します、少々よろしいでしょうか?」

 

「っは、え」

 

 気がつくと、目の前に男が立っていた。一見すると一般人のような装いだが、服越しであっても分かるほどの屈強な肉体と、何よりもその鋭い眼差しが男の異常性を訴えかけてくる。

 護衛の方、だろう。大会前に千冬さんが入手した、身辺警護の人員リストに載っていた顔で間違いなかった。

 

「驚かせてしまい申し訳ありません。少々込み入った事情がありまして」

 

「ああ、いえ。ところで事情というのは」

 

「織斑 一夏くんが、少々気分が優れない様子でして」

 

「一夏くんが!?」

 

 道理でいつまでも帰ってこない筈だ、と得心がいくと共に後悔の念が脳裏をよぎる。

 

 

 やはり、無理にでも追いかけるべきだった

 

 千冬さんに何と言ったら

 

 いや、それより一刻も早く一夏くんの元へ──

 

 思わず、腰を浮かせていた。僕の様子に気づいたのだろう。男は、僕に気をつかってか笑みを浮かべた。

 

「ご安心を、ミスタ。本人も言ってはいましたが、人混みに酔ったようです。加えて、今日は日差しも幾分強いので。とにかく、大事はありませんよ」

 

「そう、ですか。よかった……」

 

「はは……んんっ、すみません。どうぞ、こちらへ。ひとまず、近くの車に寝かせています。救急車両もこの混み具合では、すぐには来れませんし、ホテルなども何処も一杯なので」

 

「分かりました。ご丁寧にどうもありがとうございます」

 

「いえいえ、職務ですから」

 

 そう言うと男は、先ほどまでの人好きのする笑みを引っ込め歩き始めた。切り替えの早さが、そのまま男への安心感に繋がっているような気さえする。

 

 さほど歩く事もなく、目的の車両が見えてきた。どこにでもあるような、ごく普通の一般車両に見える。

 

「あちらです」

 

「そうですか」

 

 周りに人が多く、思うように前へ進めない。その苛立ちからか、男への返答も素っ気ないものになってしまう。出来るなら周りの人を押し退け強引に進んでしまいたい、とさえ考えてしまう。

 

 それでも着実に歩みを進め、ようやく車までたどり着く。男もほぼ同時に着いたようで、そのまま車両のドアまで行く。

 

「どうぞ。この中です」

 

「はい、本当にありがとうございます」

 

 言うが早いか、ドアを開け────

 

 

 

 

 そこには、猿ぐつわを噛まされ寝かされている一夏くんがいた。

 

 

 

 

「なんっ────!?」

 

 咄嗟にポケットへ手を伸ばし、そこで背中に当たる硬い感触に気づく。

 

「いい反応だな、お前さん。一般人にしてはだが。そのポケットの中のもん、こっちに寄越しな」

 

「あんた、一体なにを! 「ああそれと、言い忘れていたことがある。質問は一切受け付けないし、そこの少年の生殺与奪はこっちが握ってる。言いたいこと、分かるな?」──クソっ……」

 

 元より選択の余地はなく、男に携帯を手渡す。そして回収した携帯を、運転席の何某かに渡しているのを横目に、逆の手でベルトを弄りスイッチを押す。

 

「あ? 今なにかやってたか?」

 

「なにも……」

 

「ほぉーん? まあ、いいか」

 

 なんとか、バレずにやり過ごせたようだった。しかしあの人の言うことが現実になるなんて。相当、切羽詰まっているのだろうか。危ない橋を渡るにもほどがある。そう考えていた。

 そんな僕のことなど、男は眼中にも無いようだった。先ほどの発言にしたって、こちらを見さえしていない。

 

 

 しかし状況は、端的に言って詰んでいた。この場で僕にできることは、もうない。

 

 

「よう、全員揃ってるみたいだな」

 

「あん? っと、オータムの姐さん。向こうで待ってるはずだろうに。どうしてここに?」

 

「そらお前、決まってるだろう。かのブリュンヒルデの心を射止めた色男と、お話しするために決まってるじゃねえか。事前の計画だと眠らせんだろ? その前にな」

 

「なるほど」

 

 雑踏の中から現れたのは、亜麻色の髪の美女だった。男との会話から、少なくとも男と同等、ないし上位の人間だということくらいは推し量れる。

 その女性は男との会話を切り上げると、こちらへ歩み寄ってくる。その目は好機の色をたたえ、いっそ凶悪と言って差し支えない笑みを浮かべていた。

 

「へぇ、なるほどね。ブリュンヒルデの男ってんだからどんなもんかと思えば。まあ、この状況で取り乱さない胆力は認めてやれる、か」

 

 そこで言葉を切ると、一度車の中の一夏くんに目を向ける。僕もそれに釣られるように、様子を伺う。

 猿ぐつわを噛まされ、手足も拘束されているようだった。それ以上にグッタリとしたまま、身じろぎもしない姿が最悪を想像させてしまう。

 

 

「(いや、それはない。それなら、あの男が生殺与奪なんて言葉を選ぶはずがない)」

 

 

 ない、筈だ。それよりも今考えなければならないことは、他にある。

 

 そんな僕の思考を知ってか知らずか、女はこちらへ呼びかける。

 

「ほら、乗れよ色男。楽しい楽しいドライブと洒落込もうぜ? 生憎、むさ苦しい野郎どもも同乗するが」

 

 そう言うなりさっさと乗り込む女に続く。車内には、僕案内した男と後から来た女を含め5人ほど。そんな彼らの視線を受け止めながらも、考えることはただ一つ。

 

 

 

 

 あとは任せました。信じてますよ────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 篠ノ之先輩

 

 

 

 

 

 

 ピコン、と。どこかで音が鳴った気がした。

 

 

 

 

 

 




なにかご不明な点はありましたかね(汗

一通り精査したつもりではありますが、正直言われなければ問題を問題と認識できないもので...。

ぶっちゃけるとモンドグロッソ編のコンセプト自体が、
「千冬さん超tueee!!」
とかいう、なろうみたいな感じなので、本当はそこまで話をこねくり回す必要がないんですよ。

次話も書きあがっています。そっちでは、今後の更新などについてのアンケートを実施するつもりです。協力お願いします。


【以下、設定語りにつき】


じゃあなんで、あんな大惨事が起きたの? って言われるとですね、単純に束さんがいて攫われるってところに違和感がマシマシでして。
勝手に完璧超人だと思っていたのもあるのですが、それも踏まえるとそもそも束さんが攫わせた、って言うのが自然だと思ったんですよね。

実際に原作でも普通に胡散臭いポジションだし、あり得るかな、と。

なんかよくわからなくなった根本的な原因は、間違いなく千冬さんへのテコ入れなんですけどね。又の名を強化フラグ。

2Pカラーのもう1人の自分をぶっ倒す→覚醒

とかいうジャンプ漫画みたいな展開が頭に湧いてきまして。どちらかといえば、自分の頭が沸いてたわけですが()

なんか『鬼』とか言ってたのは、千冬さんの本能です。究極の人類が云々が織斑計画らしいのですが、それならその能力をフルに発揮するために、精神の方にもなにか仕込むんじゃないかな、と。

それを千冬さんが押さえつけてるうちに、傷つきながら肥大化し、それを柳韻さんが暗示をかけてどうにかしたと。
篠ノ之流自体が、「舞(ぶ)」から「武(ぶ)」に派生したもので、本業としてはありがちな、荒ぶる神を鎮めるために「舞」を捧げることみたいな感じでした。そこから時代が移り変わるとともに、「剣舞」から「剣術」へ移り変わっていった、というところです。

幕間についてはIS2次創作の鉄板、「コア同士の会合」です。少女の方は「もう1人の束さん」です。

千冬さんと束さんを対称に書こうと思った結果です。

「少女」なのは、幼い頃の純粋な、世のため人のために能力を振るうんだ、と目をキラキラさせてた時期の自分を電子化し、コアネットワークに放流したからです。

じゃあ「天災」は? って話ですが、あっちは元は束さんの精神的な防衛本能(防波堤?)が、肉体を乗っ取ってるだけです。

あの子は常に誰かのために生きてきたのに、なぜそれが報われないのか。なぜ誰よりも傷つき、そして誰にもそれが理解されないのか。

そうした鬱屈とした想いが爆発したので、ISの発表。ISが誰にも認められず、そればかりか有用な技術だけが、当初想定していたこととはかけ離れたものに転用されたのを機に、「天災」は「少女」を守るために、自分の子どもたちの世界に追いやった、みたいな感じです。

前々から言われているように、ミサイルぶっ破したのは、千冬さんのため。千冬さんの才能は、現代社会だとだいぶ限られたものだし、大金を稼ごうと思ったら時間がかかります。スポーツの分野でプロになってお金稼いでが、最短でどれくらいなのかは知りませんけど。

だからISを軍事転用させました。

女だけが乗れるようにしました。

男も乗れるとなると、単純に枠が半分になるとか考えた結果です。

そして一夏くんを攫ったのは、「遠回りな自殺」が理由だったりします。世界をぶっ壊したい、でももう1人は認めない、でもやめたくない、どうせやめさせられるなら千冬さんがいい、みたいな感じです。

また、千冬さんの行動が「英雄的」だと大衆に誤認させるための、全世界同時多発テロとかSNSで拡散する気満々でした。
そうすれば、政府などが千冬さんに口出しがし辛くなり、結婚もスムーズに行くだろう、と考えた結果です。


割と大半はブチ撒けました。意味わからんくなったのは、風呂敷を広げすぎたからですね。

次話も書きあがっています。そっちでは、今後の更新などについてのアンケートを実施するつもりです。協力お願いします。

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