ソードアート・オンライン Alter Heaven   作:留確惨
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その名は

————————熾天使(セラフィム)智天使(ケルビム)主天使(ドミニオン)座天使(スローン)権天使(アルケー)力天使(ヴァーチェ)能天使(エクスシア)大天使(アークアンゲロイ)天使(アンゲロイ)

それは現実世界において偽ディオニシウス・アレオパギタの『天上位階論』に書かれたキリスト教の天使の位階を表すものだ。神に仕える権能を持つ9つの位階に分けられた天使。そらがこの世界では固体名として9柱の天使として語り継がれている。

クリスチャンの母を持つユウキはそれがすぐに理解できた。

————————この世界が何者かが作り上げた仮想世界、否()()()であることは疑いようがない。

だが何のために世界を運営する天使の名を現実世界の天使の位階にちなんで名付けたのかがわからなかった。

もしかしてこの世界は過去に現実世界の人間の干渉を受けたか()()()()()()()()()()()()()()()()()なのではないのか。そんな仮説が頭をよぎる。

 

「どうしましたか?ユウキさん?お体がすぐれないようでしたら薬、お出ししますが。」

 

「え?あ、全然大丈夫だよ、気にしないで。」

 

「そうですか。でも無理はしないでくださいね。傭兵の皆さんって結構意地っ張りな人が多いですから。」

 

シスターが回復役(ヒーラー)なのはどこも同じなのだろうか。フィーネの優しさは混乱したユウキにとって最高の清涼剤だった。

————————そういえばフィーネ、どことなくシウネーに似てるなぁ。

落ち着きを取り戻した最初の感想はそんな暢気なものだった。

 

「そういえばアルファルドが人を誘って戦うって珍しいって聞いたけど彼、ずっと一人で戦ってきたの?」

 

天使のことはわからないことが増えただけなので話題を切り替える。天使も分からないがなかなかどうして彼も謎が多いのだ。

 

「ええ。そうなんです。大規模な作戦でもあの人は単身で危険な陽動とかをすることが多くて・・・だからあの人が傍付きを持ったと聞いたときはすっごい驚いたんですよ。やっぱり大切な人ができると無理とかしなくなるんですよね!」

 

「いやいやいやいや!!何言ってんの!!ボクたちまだあって1日もたってないんだよ!」

 

なにかすごい誤解をされてなかったかボク!アルファルドがって・・・

 

「だってそれくらいすごいことなんですよ!姉さんなんて『所帯持つと男は変わるねェ』とか『あの様子じゃあ弱みでも握らんてんじゃァねェか。惚れた弱みって奴をよォ!』って言ってましたし!」

 

惚れた弱み!?所帯!?いくらボクが物理的箱入り娘でもさすがに単語の意味ぐらいはわかる。ってか何勘違いしてんのこの子!!

 

「あのぉ、お聞きしますけどフィーネさんのお姉さんて・・・」

 

「あ、はい。イヴリースといいます。今はギルドの受付をしているみたいですけど・・・」

 

あ、察し。

あの人が姉ならこんな純粋そうな人にあることないこと吹き込みそうだ。

 

「いやそれお姉さんの嘘だよ・・・会って一日で結婚ってありえないでしょ・・・」

 

「そうですよね・・・あははは・・・ごめんなさい、興奮しちゃて。お恥ずかしい。」

 

フィーネは照れたように頬を掻く。

 

「でも本当に珍しいことなんですよ。こんな辺鄙な村に常駐してくれる青等級の人なんてあの人くらいですし。ユウキさんもあの人を気にかけてあげてください。」

 

「うん。わかったよ。アルファルドはボクが責任をもって監視するよ。」

 

そう答えて手を差し出す。それに応える右手は細かったけれど頼りなさは感じなかった。

 

 

 

「ねーユーキねーちゃーん」

 

帰宅の道中、幼い声に呼び止められ振り返る。

先ほどアルファルドが遊んでいたテツだ。

 

「何かな。いいよ。ボクに答えられるんなら何でも聞いて。」

 

「ねーちゃんってーどーしてアルの弟子になれたのー?」

 

2時間の質問攻めの中でも聞かれてなかった問だ。

 

「えっとそれは・・・」

 

答えられない。アルファルドが弟子をあまりとらないのは周知の事実らしいがなぜ自分がその例外なのかは等のユウキが一番わからないのだ。

なぜだろう?その問いに答えを出すべく頭をひねりまくるユウキであったが────────

 

「ひゃうん!」

 

背後からおしりを触られた。振り向くと後ろにも子供名前は確か、ニーだったか。

 

「ちょっとぉ!なにすんのさ!」

 

お怒りモードのユウキであったが子供たちはどこ吹く風。

 

「イエーイ!よーどー作戦大成功!!」

「ナイスだニー!」

 

なんて言ってはしゃぎながらハイタッチしている。見た目にはほほえましい光景だが被害者としては素直に笑えない。

さっきはアルファルドはいいお兄ちゃんと思ったが前言撤回する。アルファルドはいいお兄ちゃんじゃない。いい悪いお兄ちゃんなのだ。



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