ソードアート・オンライン Alter Heaven   作:留確惨
<< 前の話 次の話 >>

19 / 43
一応の決着

イヴリースの渾身の踵落としが決まり、骨が砕ける感触とともにランファルは前のめりに倒れる。

それと同時にイヴリースも踵落としを叩き込んだ体勢から背中から落ちる。

二人が地に背中をつくと同時にどこかからこの世のものとは思えない轟音が響き渡った。

 

「今のは・・・」

「さあァねェ。大方ウチの大将がやったんじゃねェか?」

 

少なくともイヴリースの知る限りそんなことができそうなのはアルファルドだけだ。正門から聞こえたのでユウキの可能性もなくはないが。

 

「それでよォ、続き、やんのかィ」

「無論だ。敵に背中を見せるつもりは毛頭ない。」

 

倒れても闘志は萎えず、二人は第二ラウンドを始めようとする。

槍は深く刺さりすぎて抜けないし、今までに負ったダメージだって相当だ。特に初撃にもらった右脇腹と3発目の居合でやられた右肩が酷い。今までは無理してやってきたが、もはや戦う体力など残ってはいない。

対してあっちはまだ右肩を負傷しただけ。まだ余力を残している。

ランファルは立ち上がり、それに応じてイヴリースも立つ。勝利などありえないと分かっていながら。

 

「あれだけの爆音だ、今頃お前のお仲間は木端微塵だろうさ。今のうちに投降したほうがいいんじゃねーかァ?」

「愚問だな。降りたところでお前たちに殺される未来は変わらんだろう。それにあれをお前たちがやった証拠がない。」

「それこそ愚問だろ。だったらなんでお前らは正門を開けに行ったんだよ。いや、お前らはなんで()()()()()()()()()()()()()()()!!」

「答える義理など存在しない!!」

 

無傷の左手を握りしめて殴りかかるランファル。両者ともに戦闘続行は困難なはずなのに気力のみで戦う。はずだった。

 

「させるかよ獣畜生が!」

 

床の穴を塞ぎ終わった村人たちがトンカチやらノコギリやらを持って乱入してくる。

負傷したランファルを囲むように村人たちが迫りくる。その眼には憎悪と殺意。とてもではないが敵兵とはいえ怪我人に向けるものではなかった。

 

「これで、終わりだ!!」

村人たちが一斉に走ってくる。

ランファルも応戦するが既に戦う牙は抜かれてしまい、狩られるものと狩るものの立場が逆転し、数という力が一人の少女を飲み込む。

角材、槌、蹴り、拳。暴力の嵐は絶え間なく降り注ぐかに思われたがそれは思いのほか早く終わった。

ただ、凌辱の時間に変わっただけだが。

フードが引き剥がされ、付けた皮鎧が外される。

 

「止めろ・・・それだけは・・」

「へっ誰が止めるかよお馬鹿さん。テメェのお肉は欲しそうにしてるぜ。」

「イヤだ、助けて・・誰か・・・」

ランファルの必死の懇願もむなしく、欲望は満たされない限り続いていく。

麻のインナーが容易く引き裂かれ、押さえつけられていた豊かな乳房が外気に触れる。

 

「意外といい体してんじゃねぇか、やっぱり孕むのがお好きなタイプですかい?」

「この、外道がぁ!」

 

ランファルは渾身の力を振り絞って胸に手を伸ばす男を蹴りつける。

みぞおちにクリーンヒットするが、体勢の悪い状態から放つ蹴りなどただ相手を逆上させるだけだ。多少の抵抗はスパイスといわんばかりに男たちは罵声を上げその魔手を伸ばさんと迫りくる────────

 

が、その行為は一人の声によって中断された。

 

「もうやめて!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故────────」

「なぜだユウキ!なんでそいつをかばう!」

 

突如戦場に現れた第三の剣士の登場に二人の驚愕の声が重なり、続いてユウキへの糾弾が上がる。

 

「アルファルドの指示だよ。戦いは終わったから敵は生かして捕らえろだって。」

 

正直これだけの人数相手に説得できるほどユウキは口がうまくはない。だが、アルファルドの名前を出せば話くらいは聞いてくれるだろう。そう判断した結果だった。

村人たちはユウキの思惑どうり荒げていた声を静め、ユウキに問いかける。

 

「本当か?アルファルドがそんなことを言ったのか?」

「うん。それに、ボクだってそんなひどい目に合ってる人を放ってなんてできない。彼の命令がなくったって止めて見せる。」

 

アルファルドの名前を出されたことで村人たちは回答に詰まった。一人を除いて。

 

「ふっざけんな!!アルがそんななまっちょろいこと言うはずあるか!!!そいつはフィーネをさらったんだ!アイツがこいつらを許すはずねェ!!」

 

イヴリースはすさまじい剣幕で腹部の負傷も気にせずに怒鳴る。その迫力にユウキは思わず一歩後ずさるが、負けじと言い返す。

 

「アルファルドだったら情報を求めてこの人は生かすよ。『これは復讐じゃない。フィーネを取り戻す戦いなんだ』ってね。」

 

大嘘だ。アルファルドとはまだ3日ほどの付き合いだ。彼が言いそうなことなんてわかるはずがない。

それでもイヴリースは納得したのか引き下がる。なにせ一番付き合いが長いのはイヴリースなのだ。彼女なら誰よりもアルファルドのことを理解している。そう判断したい上での賭けだったがどうやら成功したらしい。

 

「ふざけるな私は敵に助けられてまで生きながらえるつもりはない!」

「違うよ。」

ランファルの必死の覚悟をユウキは即座に否定する。その言葉はユウキにとってのNGワードだった。

「生きてるんならちゃんと生きなきゃダメだよ。そんな簡単に自分の命を軽く見積もらないで。」

いままで物腰が柔らかかった見るからに実戦経験のなさそうな少女が発する迫力に教会が支配される。

ユウキは怒っていた。他種族を見下して人間扱いしないこの世界に。死への覚悟もできてないくせに口先だけで死を望むランファルに。そして何より何もこの世界を知らない自分自身に。その怒りが何よりの雄弁となって意志の力として空気を換えたのだ。

それに感化されてランファルは冷静さと観察力を取り戻す。

ユウキは肩口の傷を除いてほとんど無傷だ。

正門からこの少女が来たのならば幾人の仲間たちと戦ったはずだ。彼らを無傷で退けた相手とこの負傷で相手にはできない。

間違いない。この少女が『青』だ。とランファルは悟る。実際はアルファルドなのだが。

 

「私の完敗だ・・・好きにしろ。」

 

負け惜しみをつぶやく。

 

「うん。そうさせてもらうね。じゃあ行こっか。おねーさん。ボクとアルファルドの家に。あそこならなんか薬とかあるだろうから!その前に服貸すね。ボクのでよっかったらだけど」

 

半裸のランファルに服を貸し、手を差し伸べる。

その手に応えたのち、ランファルの意識は眠りの中へと落ちていった。

 

 

一方アルファルドは正門の物見やぐらを消火しながら敵を眺めていた。敵部隊は先の爆破で4割が壊滅。これ以上の進行は不可能だと撤退するが、自分たちがつけた火事に苦しみさらに勢力を減らすだろう。

村人たちは一人を除いて全員無事、この戦いはエルナ村の勝利に終わった。だがアルファルドは楽観しない。

その眼はフィーネを取り戻すための次なる戦いを見据えていた。

 

「それはそれとしてお説教タイムだろうなぁ、村長話なげーんだよなぁ。」

 

なんてぼやいていたが。

 

 




第1章の前半、襲撃編はこれにて終了です。
次に奪還編へ向かいます。


※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。