ソードアート・オンライン Alter Heaven   作:留確惨
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戦後処理ー尋問、そして

戦争が終わったあとは戦後の処理というものがある。ランファルは結局アルファルドの預かりに。ボクと戦ったワーカントは村の地下牢に送られ、村人たちは正門と森火事の消火に当たっていた。

ランファルの尋問、正門の修繕、フィーネの追跡とやることは色々あるはずだったが、最初にユウキたちに待ち受けていたのは村長リカードのお説教だった。

内容は主にこの襲撃を未然に防げなかったことと、正門での爆破と森火事だ。

後半はほとんどアルファルドの所業と勘違いされているものだから村長の目は厳しかった。

 

「お前さんのせいで10年かけて育てたスギが全滅じゃろぅがい!どうしてくれるんじゃ!」

「だからあれは敵の魔術だって!」

「どちらにせよお前さんの爆破で吹っ飛ぶじゃろうが!」

「そこまでいかねぇよ!精々1/3くらい…」

「どちらにせよ被害甚大じゃろうが!報酬は払うがそこから被害補填と修繕費を引かせてもらう!ワシは『青』とて容赦せんぞ!」

「んなご無体な!俺一人のポケットマネーで払えるわけないだろ!」

「王都にいって騎士にでもなんにでもなって高給取ればいいじゃろ!」

「嫌だわ!あんな陰湿なとこ!」

「ええい!文句ばかり…」

 

口答えするアルファルドの隣でユウキは無言で正座する。

こんなに長引くのはアルファルドのせいなのではないだろうか?

そもそも正門で爆発を引き起こしたのはアルファルドでユウキは関係のない話だ。

しかし一応自分も戦っていたので連帯責任と割り切るしかない。少なくとも村長は連帯責任と思っているだろう。

もしかしてブラック企業なのでは?傭兵会社アルファルド(2名)は。

ちなみにイヴリースは怪我人のためお説教は後日。

死活問題がかかっているアルファルドはともかくユウキは早く終わんないかなぁと思っていたが、リカードのお怒りはユウキにも飛び火した。

 

「お前さん、何黙りこくっておるんじゃ!アルファルドの馬鹿のやらかしは側付きの責任でもあるのじゃぞ!」

「そんな!?」

「側付きの躾もなっとらんのか全く…お前さんにも連帯責任で賠償させてもらうからな。覚悟しておくんじゃぞ!」

 

この世界で目を覚まして3日目、ユウキ借金を負う。定職に就いたはいいもののお先は真っ暗だ。

その後とリカードとアルファルドの口論?は2時間も続き、ユウキの足は感覚が無くなっていた。

 

************************************************

 

 

 

「さて、これからランファルっていう敵の尋問に向う。付いてきてくれ。」

 

村長のお説教が終わり、痺れる足を引きずりながら帰宅して早々、アルファルドは切り出した。

確かに捕虜を捕らえたら情報を引き出すことは理解出来る。だが、何故ボクを同行させるのかが分からなかった。

 

「え?ボクもいくの?ボクあんまりそういうの好きじゃないんだけど…」

「好きじゃなくてもいつかやらなくちゃいけないことだから経験させておきたくてな。それと乱暴な手段はあんまり意味が無いみたいだから大丈夫だ。」

「え?」

「いや、なんでもない。」

 

アルファルドは物理的拷問を使わないではなく意味が無いと言っていた。

その違いが分からなかったが。

 

ランファルはアルファルド家の二階の部屋に両手両足を縛って拘束している。元々はユウキの部屋だ。

狭い廊下を通って件の敵兵と対面する。

ランファルの状態は酷いものだった。

まず、服がボロボロだ。胸のプレートは奪われその下のインナーは引き裂かれて豊かな乳房が露出している。

一応ユウキの服を貸して大事なところは隠してはいるものの男性であるアルファルドに対面させるにはいささか露出度が高い。

下半身を覆う革鎧は既に無く、露出を多くされた服装から覗く肌は青痣だらけ。

特にイヴリースに壊された右肩は赤く腫れあがり、放っておいたら壊死しそうだ。

 

「酷い・・・」

あまりの惨状に目を背ける。これはひどい。いくら敵兵といえどこんな残酷なことってあり得るのか?

 

「ユウキ、頼みがある。」

「何?これ以上あの人に酷いことをするならボクは止めるよ。」

「これからやることは村の皆、特にイヴリースには言わないでくれ。」

「う、うん。」

 

返事を聞くより先にアルファルドは歩き出し、式句を唱える。

 

「システムコール・ウォーターエレメントジェネレート・コード・ヒーリング」

 

アルファルドの手の中に2つの青い輝く球体が現れる。

球体は溶けだすように光の霧となって手のひらに拡散する。

そのまま光る手のひらでランファルの右肩に触れていくと光が収まりだんだん弱くなった後に消えていく。

 

「アルファルド、何をしたの?」

「回復魔術だ。ちっ、やっぱり俺じゃあへなちょこ効果しか出ないか・・・」

「なぁんだ!やっぱり治してくれるんだね!」

 

暗い地下牢の中、ランプを近づけてアルファルドが触れた部分を見ると心なしか内出血の痣が小さくなっているような感じがした。

アルファルドはランファルの傷の治療の意思はあるものの立場上、それを公にはできない。それゆえユウキに口止めした。だから彼女を助けられると思ったのだが────────

 

「いや、無理。」

 

予想外の返答に閉口する。アルファルドは確かにランファルの治療を試みた。

恐らく村の住人たちは彼女を害すれど治療などしないだろう。ならば治療しようとしたアルファルドが唯一の希望なはず────────

 

「ユウキ、魔術についてはどれだけ知識がある?」

「全然何にも知らないよ。最初に君に教えてもらったくらい。確か地水火風の属性とそれに対応した適正があるんだったっけ?」

 

初日にアルファルドに少し教えてもらったことだ。確か適正によってできる魔術の規模が違ってくるとか。

 

「基本的に治療術式の属性は水なんだが、あいにく俺は壊すのは得意でも治すのは下手糞でな。適性があったお前にやってほしい。」

 

確かアルファルドの水適正はD+、最低にかなり近い適正だった。対してボクはA、適正で言えばボクがやるのは当然だけど

 

「でもボクは魔術なんて使ったことないし呪文だって何も知らない。いったいどうやって治すのかさえ分かんないんだよ!?」

「ああ。だから練習すんぞ。」

 

そう言ってアルファルドは踵を返す。だがそれはすぐに背後から呼び止められた。

 

「待て・・・貴様らは何故敵を助ける・・・?」

 

アルファルドの魔術が効いたのかそれともただの気力か、ランファルは目を覚まし二人を見据える。

 

「こいつはどうだか知らんが俺には思惑はあってお前には利用価値がある。お前から情報を引き出すまでは殺したくはない。」

 

「それは殺さない理由であって助ける理由ではないだろう!!答えろ!!」

 

一度はランファルを治療する意思を見せたアルファルドだが、捕虜の激昂を流すほど甘くはなかった。

ナイフを取り出しながら反転し、一瞬のうちに接近したかと思えば空いている方の手でのどを掴んでベッドに叩きつける。

振り上げられるナイフ。

「アルファルド!」

ユウキの静止も聞かず、迷いなく振り下ろされる金属片が左胸に落ち────────

少女の柔肌を傷つけることなく止まった。

 

「な、何を・・・」

思いもよらないアルファルドの行動に二人とも閉口する。

10秒ほど続いた静寂を破ったのはアルファルドだった。

 

「お前、素人だな?」

「な、何を言って」

「覚悟ができてねーっつってんだよ。殺さないっていう敵の言葉信じるわ、この程度の拘束解けないわ。情報を渡さないかといってといて自決すらしてない。やってることが一々ヌル過ぎる。」

 

「挙句の果てに殺そうとしたとき目をつむりやがった。とてもじゃないが戦場に出ていい奴じゃない。故郷に帰ってママのミルクでも飲んでろよガキンチョ。テメーみてーなのが戦場にいるのが一番腹立つんだよ。負けたやつは名誉の戦士すら許されず利用されるだけ利用されて死ぬ。そんなことも分かんねぇのかよお前は。」

 

アルファルドは吐き捨てるだけ吐き捨ててナイフをしまって背を向ける。

確かにランファルはボクに助けられた時もやけに素直に投降した。

それは思惑があってのことではなく死ぬ覚悟ができていなかったから。アルファルドはその弱さをいともたやすく看破していた。

彼は敵に対して憎悪するのではなく覚悟ができていない者を戦場にいることに怒り、悲しんでいた。

ほかの村人とは違ってアルファルドは種族関係なしに人々を平等に見ている。

歴史的にこの世界の住人たちに焼きつけられている意識からアルファルドだけがその影響を受けていなかった。

 

「それにお前が敵情報を持っているかも怪しい。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんだろ?」

 

「「────────────────ッ」」

 

驚愕の声がアルファルドを挟んで共鳴する。

 

「貴様、なぜそれを・・・」

「ちょっとそれどういうこと!この人たちは村を襲撃するために来たんじゃなかったの!?」

 

ランファルたちはアルファルドや村人に気付かれずに地下道を作り、教会から侵入、そこでフィーネに見つかり、何らかの形で口封じ、その後村の正門を解放し、すんでのところでボクたちに阻まれた。

正門の部隊と彼らは共犯でなければならないはず。

なのにアルファルドは全く逆の言葉を発し、ランファルそれが事実のようなリアクションをしている。

 

「気付いたのは戦いが終わった後のことだ。確信を持ったのはお前らのお仲間の遺体の体毛が獣人にしては薄かったこと。それに退路にわざわざ教会に戻ろうとしていたことが理由だ。」

 

「え?それだけ?」

アルファルドの推理の種は意外なところにあった。

体毛に関しては確かに不思議に思っていた。

暗くてわかりにくかったこともあったが初日の二人と今日のワーカントやランファルでは確かに後者のほうが人間よりな見た目をしていた。

ランファルについては女性だからとか獣人も個人差があるのではないのかと思っていたが、そうではないらしい。

だが、教会のほうの理由については解らない。

なぜそんな少ない情報からランファルたちの事情が把握できたんだろう?

 

「お前たちは門を開けたあと教会に戻ろうとした。わざわざ教会の前に見張りまで残してな。これがどうにも引っかかっていた。本隊に突入させたら本隊と合流すればいいはずなのにわざわざこいつらは教会に戻っていた。教会に拘ったのは一体何のためか?とずっと疑問に思っていた。」

「なるほど。確かに。妙な話だよね。」

 

アルファルドの疑問は当然のものだった。生きと帰りを同じルートにしなければならないなんて奇妙な話だ。

 

「それに一度は開門に成功しているにもかかわらず本隊の突入タイミングがずれていた。最初はただのミスだと思ったが、さすがに杜撰すぎる。さて、ユウキ。なぜこいつらの連携はこんなにグダグダだったと思う?」

 

質問を投げかけられるが、当然わからない。着眼した違和感はたしかにユウキも納得のいくものだったが何分この世界に来たばかりの身ゆえ考えがまとまらない。

ただ他に疑問の余地があるとすれば────

 

「ランファルたちが獣人じゃないから?」

 

アルファルドは体毛が薄いと言っていた。最初にあった獣人はいかにもファンタジー作品に出てくるような風体をしていたが、目の前のランファルは側頭部でなく頭頂部に耳がついているだけだ。

戦闘時は暗くて観察する余裕がなかったからわからなかったが、今思い返すとワーカントもそこまで獣っぽい風体をしていなかったように感じる。

 

「そうだ。こいつらは獣人の仲間ではないが何らかの形で利用されていた。と考えるのが妥当だろう。それに地下道なんて作業どうやったって村人たちに見咎められる。穴の長さから察するに土の魔術を使ったところで時間はかなりかかる作戦になる。それに獣人は魔術があまり得意ではない。あんなトンネル掘ることさえできないはずだ。」

 

そう言ってアルファルドは肩をすくめる。

この人、この状況下でそこまで見抜いていたのか。

年に似合わない白髪、真実を射抜く鷹のように鋭い目、淡々とした口調が推理小説の主人公のようだ。

 

「俺の推理は話した。これからはお前が答える番だ。一体お前たちは何者なんだ?」

 

核心に迫る。この一連の襲撃事件の真実に。その問いが今投げかけられた。

 



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