ソードアート・オンライン Alter Heaven   作:留確惨
<< 前の話 次の話 >>

5 / 43
アルファルドの仕事

「仕事?」

 

「ああ、俺の仕事が傭兵ってのは話したよな。」

それは最初に聞いてる。見るからに物騒で危険な匂いがプンプンする字面だ。

こういう世界観では『冒険者』みたいな名前で仕事を受けるみたいなアニメが乱立していたが彼の場合もそうなのだろうか」。

 

「うん。でもボクなんかが役に立つとは思えないけど…」

 

恐らくはチンピラか下っ端の人攫いにあれだけ苦戦するこの始末で戦力になるとは思えない。

昔はとあるVRゲームで『絶剣』なんて恥ずかしい二つ名で呼ばれたけどペインアブソーバーなし、身体能力も人間並なこの世界では前のように無双なんて夢のまた夢だろう。

 

「無論、最初から前線に立てなんて言わないさ。最初は予備戦力だ。そっから経験を積んで補給や偵察あたりをやってくれたらいい。」

 

「そう言ってもさ……」

 

「自信を持て。初陣でしかもあの装備でビーストとタイマンで勝つとか俺なら死んでる。っつーか今でもタイマンはゴメンだね。」

 

最初は誇張かと思ったけど相当嫌そうな顔を見るからに本気(マジ)なんだろう。

 

「君の話は分かったよ。でも決断する前にこの世界について教えて。ボクはまだこの世界のこと、なにも知らないからさ」

 

「……すまん、君は記憶喪失だったか。事情も知らぬ人間に性急に決断を迫るとは…どうか謝らせてほしい。」

 

アルファルドは頭を下げる。

 

「頭を上げて、別に謝ることじゃぁないよ。」

 

「分かった。じゃぁ説明させてもらう。」

 

「────ここはヒンノム、だれがそう呼び始めたかは知らないがそう呼ばれてる」

 

────────ヒンノム、それは現実世界でどういう意味の単語なのか、少なくとも今のボクはそれを知らなかった。

 

「ヒンノムは大雑把に3つの国に別れていてな、今俺達がいる南のカーラーン皇国、君を襲ったビーストが支配する北のダミス連合、一応国境と国土はあるんだが誰もその実態を知らないエルフが住む西の国の三国だ。」

「だが、この三国間関係は最悪でな、各国の基本方針の民族主義のせいで一触即発ってやつなんだよ。ちなみにここは三国間の国境に近い場所にある。」

 

思った以上にシビアな世界観のようだ。全面戦争を起こしてないけどいつ爆発してもおかしくない火薬庫みたいな世界だ。

 

「あれ?でもどうして全面戦争が起きないの?」

 

単純に疑問だった。そこまで関係が悪化しているのなら何故爆発しないのだろう。

 

「国境線を超えるのが厳しいんだよ。ダミスに行くには大山脈を山越えするか麓の洞窟を使うしかないんだがどちらも大部隊が通れるほど広くない。この辺は山が低いからよく行き来があるが、エルダー大森林があるから大部隊の行軍には向かない。エルフの国はアホみたいにデカくて早い蛇が国境線上を周回してて大抵は蛇に弾かれるか運が悪いと食われるんだ。」

 

「森の木を切り倒して道を作ることはしなかったの?」

 

「もちろんそういう試みが過去何度かあったが、木の1本1本がアホみたいに堅い。1日5時間斧を振り続けて1本あたり単純計算で1か月かかる。国家事業で切り倒そうなんていう試みもあったんだが失敗した。原因は木こりが拉致られたからだとかなんとか。」

 

うわぁひどい。

 

「拉致された人はどうなるの?」

 

「大抵は身代金目当てだな。拉致しては身代金を要求し、払えなかったら本国送り。そんときには奴隷やら慰み者やら。つかまってる間は傷つけられはしないだろうが向こうに行った場合ならまぁごめんなさいだ。お互いにおんなじことをしているんだが人手と資源力の関係で連合ののほうが必死になってやってる。」

 

最悪だ。無理やり連れ去られ、大切な人と離れ離れになった挙句、一人ぼっちで死ぬ。そんなことが当たり前にある世界なんだ、ここは。

ボクはとんでもない世界に迷い込んでしまったらしい。

 

「そこで、俺達傭兵の仕事という訳だ。拉致の防止、潜入した敵の迎撃、敵国に入り込んでの被害者の救出とかが仕事になる。国の代わりに戦闘を行うから傭兵とも呼ばれているが。」

 

「なるほど、民間人の味方ってこと?」

 

微かな希望を持って聞くが、答えはやはりNOだった。

 

「いや、被害者関係者がギルドに多額の金を積んで依頼する。だから払えない人は諦めるしかない。まぁ、最近は保険制度なんてのも検討されてるらしいが。」

 

「俺達は依頼を受け、被害者の状態、敵の討伐数、逮捕数に応じて報酬を受け取る。しかもこれがこっちが人攫いに行く時の護衛の仕事なんてのもある訳だから。」

 

思ったより酷い仕事だ。

 

「でも君達が戦えばそれだけ救われる人がいるんだよね?」

 

「否定はしない。」

 

「なら、戦うよ。キミと一緒に。」

 

 

 

 

 

 

────戦うと決めた。なにも成すことがなく、ただ生きてただけだったボクが得意の剣を誰かの為に使えること、そんな安っぽい自己犠牲が最初の決意だった。



※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。