屍動 ーWorld of the Deadー 作:小野田あさ
「ふぁあああ…」
我ながら、何とも間抜けな欠伸しながら体を起こす。
AM6:17
枕もとの時計にはそう表示されている。
「おはよ…」
「あら?早いじゃないの隆也」
「ん?ああ、2度寝するとろくなことになっちゃうからな」
「あれ?親父まだ寝てんの?」
「お父さんなら今日は休みよ」
「ふーん。平日に休みってご苦労なこった」
「こら!そんなこと言わないの。その代わりに年末年始も働いているでしょ」
親父はNR西日本という鉄道会社で運転士をやっている。
昔は国鉄と言っていたらしい…
いや、そんなことは正樹にでも聞いてくれ。
AM7:33
「行ってきまーす」
「いってきゃーす」
姉の晴香に続いて言う。
「いってらしゃい」
家を出ると、電車に乗るべく最寄り駅へ姉貴と移動する。
特に話すこともなく、もうすぐ駅に着く直前、後ろから声を掛けられる。
「お~いそこのカップルさんよ~」
「誰がカップルだ!」
晴香が即座に振り返り否定する。
続いて俺も振り返ると、そこには男2人組が居た。
「よっす」
180cmは超える短髪の30代と思しき男性が挨拶してくる。
「あ、おはようございます。赤坂さん!」
赤坂 裕紀(あかさか ゆうき)さん。年齢はたしか、30代前半と記憶している。
親父と同じNR西日本に勤めている運転士だ。しかし、職場が違うらしい。
「晴香と隆也おはよ~」
こっちは山崎 正樹(やまざき まさき)。俺と姉貴の幼馴染で鉄ちゃんでもある。
ちなみに赤坂さんの影響でもあるらしい。
「正樹。おはよう」
「赤坂さんは今から出勤ですか?」
「ああ。今日は泊りがけかな~」
「泊りがけってあるんですね」
「君らのお父さんもよくあるんじゃないの?」
「ああ。そういえば…」
思い返せば、帰ってこない日が月に何度もあるな…
そして、普段のように他愛もない話をしながら、駅に到着する。
「それじゃ、僕はこっちだから…」
と、正樹さんは反対方向のホームへと駆け足で去っていた。
「さてと、私たちも行きますか」
姉貴の掛け声と共に、下り方面のホームへと駆け上がる。
しかし、なんだ?いつも以上にホームに人が溢れかえっているな…
放送(本日も、NR西日本をご利用くださいましてありがとうございます。7:30分ごろに尼崎駅構内でおきました信号機故障のため、ただいま下り方面の電車の運転を見合わせております…)
朝っぱらから、信号機故障か…参ったなこれは…
「おー!信号機故障っすか!」
正樹は興奮気味にしゃべる。
放送(お客様に重ねてお詫び申し上げます。岡山駅で、起きました線路内人立ち入りの影響で…)
「岡山の影響がここまで出るのかよ…」
「まあ、接続待ちとかで遅れをどんどん引き延ばすやつですなー」
「あ!雫おはよ~!」
姉貴が友達を見つけたようだ。
「それじゃあ、マイナスオーラ全開のやつらとは一緒にいるの嫌だから、私は雫と学校行くから」
そそくさと俺たちから離れていく。
「晴香殿は手厳しいですなー」
少なくとも今の正樹からはマイナスオーラは感じられないけどな。
放送(お待たせをしております。間もなく運転再開いたします。)
おお、どうやら運転再開するみたいだ。
♪~
接近メロディーが流れる。
(まもなく。3番のりばに7:30発快速西明石行きが7両で参ります…)
「何が来ますかな~」
正樹は能天気にどんな車両が来るかと楽しみにしている様子だ。
「おお~!」
突然大声をあげ、周囲の人の目は一気に正樹へと集められる。
「113系じゃないっすか!」
や、やめてくれ…こっちが恥ずかしい…
「いや~、朝からこれに乗れるのはうれしいことですな!」
「知らねーよ」
「冷たいですなあ」
「恥ずかしいだろ」
ムスッと正樹が頬をふくらます。
全然可愛くないぞ。それに俺は男だ。
そして、オレンジと緑のツートンカラーのいかにも古そうな電車がホームへ滑り込んでくる。
しかし、俺たちが並んでいた位置とは少しずれて止まる。
「ああ。普段と車両が違うからなのか正樹?」
「普段は207系か321系だからね~。あっちは4ドアでこっちは3ドアだから必然的にずれますな」
そして、電車に乗り込むとドアが閉まり、動き出す。
「しかし、今日の体育はなんだっけか?」
「サッカーですぞ!」
「んで、英Ⅱが自習だっけか?」
「そうですな~」
「学校終わったら、カラオケ行かね?」
「いいですな!ぜひともお供させていただきますぞ!」
車掌(次は…。)
「あ、つきましたな。MT54ともお別れですぞ」
「ん?MT54?」
あ、しまった…
「おや?MT54をご存じでない?ふふ。ならばお教えいたしますぞ!」
「いや、あの学校が…」
「MT54とは国鉄最高傑作とも言われた…」
そして、ドアが開く。
主要駅ともあり大勢の旅客が吐き出せれるように、自分も流れに身を任せて降りる。
正樹…
正樹もどうやら、押し出されて降りてくる。
そこから、学校までの約15分間、正樹はMTなんちゃらについて熱く語っていた。
もう、頭に何も入ってこねぇーよ。
AM8:30
教室へとたどり着く。
自分の席に座り、辺りを見回すが始業10分前とはいえ、まだまばらだ。
正樹が隣に座る。そう、残念ながら正樹は隣の席なのだ。
「隆也、正樹おはよう!」
後ろから声を掛けられる。
振り替えると、そこには160cmに満たないくらいの女子生徒が声を掛けてきた。
三石 夏奈(みついし かな)さん。おさげの女の子で俺の後ろの席だ。
1年生の時から密かに好きな娘だ。
「ああ。三石さんおはよう」
「おはようございますですぞ」
「もう。夏奈でいいって言ってんでしょう!」
三石さんはプーと頬を膨らませるが…
うん…生まれてこの方彼女がねぇ…
名前で呼ぶなんて抵抗しかないですよ。
「あ、そうだ。学校終わりに正樹とカラオケ行くんだけど、押本さんもくる?」
「え!マジ!行く~!」
お、どうやらノリノリのようだ。良かった。
キーンコーンカーンコーン~
おっと、始業のタイムが鳴り間髪入れずに、現国担当の大井先生が入ってくる。
「出席取るぞ。ん?やけに今日は少ないな」
出席簿を開き、右手で白髪交じりの頭を掻く。
そうだ、10人以上はまだ来ていない。
「ん。まあ国電が遅れているらしいからな。出席をとる…」
「こ、国電ですと!」
「ん?どうした?山崎」
「い、いえなにもありません」
「そうか…授業中は静かに頼むぞ」
「「「わははは」」」
クラス中に笑い声が響く。
大井先生はまたかと言わんばかりの顔だ。
「いったい、正樹は何に反応したんだ」
まあ、俺にとってはどうでもいい事だ。
「荒金」
「はい」
「井上」
「は~い」
「猪田」
「…」
「えー、猪田は欠席と…」
「臼井」
「はーい」
・・・・
やがて、出席を取り終わり授業が始まる。
はあ、早く学校終わらないかな…
と、放課後のカラオケを心待ちにしながらぼんやりと授業を受ける。
そう。このとき俺は放課後までいつも通りの時間が流れると思っていた。
いや、まさかあんなことが起きるのなんて、すでにそれは始まっていたのである。
隆也たちの学校にも着実に迫ってきているのであった…
2話をご覧くださいまして、ありがとうございます。
おそらく次も日常パートが続きそうです(^^;
鉄道ネタを入れてみました(-_-;)
学園黙示録関係なくね?と、思われる方もおられるかもしれません。
はい。関係ありません(笑)
すまんな。
日常パートになんか入れたかっただけなんです。
もう少し、文才のない日常パートをご覧ください(ゲス顔)
と、ここで少し解説を入れます。
作中に出てきました113系とは、国鉄時代の1963年から1982年までの19年間で約2900両が製造され国鉄近郊形の最高傑作とも言われました。
現実世界でいうと、現在はJR西日本管内の京都周辺や岡山・広島・下関地区でもみられます。
作中ではJR神戸線(東海道線)に相当する路線に登場させましたが、現実世界では2004年に撤退しています(作者が好きなので登場させただけ(笑))
一応、関西地区で重宝されている新快速の初代車両で、後継(といっても113系より古い)の153系にバトンタッチし、以後は主に京阪神地区の快速電車で運用されていました。
過去にはJR東日本や東海にもいましたが、そちらは全て廃車となっております。
また、JR四国にも在籍していますが、元JR東日本車です。
そして、MT54は113系にも使用されている、国鉄最高傑作と言われた主電動機で、113系のみならず様々な形式で歯車比を変えて使用されています。
と、しょうもない解説をしてみましたが、いかかがだったでしょうか?(もちろん小説の話ですよ)
次回はペンネームの由来でも話しましょうかね~(笑)
長々と後書きを書いてしまいましたが…
それでは、次回もお付き合い下さいm(_ _)m