「……久しぶりだな、タケ」
「あの。初代様。一郎ですけど」
「おお、すまん。余りに雰囲気が似ていてなぁ」
会議室に入るなり「ライダーマンを見せてくれ」と言われたので変身。そしてしげしげと俺の顔を見つめて、放たれた第一声がこれである。と、ヤバいなんかライダーマンが過剰反応しとる。
ミギーに咄嗟に変身をすると初代様が残念そうな顔になったが、事情を説明すると今度は難しそうな顔になる。まぁ長時間の変身ができなくなってるからな。撮影や何かしらでライダーマンが必要な時はあるし、初代様も困ってしまうか。早めに慣れようとはしてるんだが。
「いや。すまん、こちらの話だ。それよりも、本当に悪い影響は他に無いんだな?」
「はい。勉強好きになった位ですかね」
「そいつは良い。全国の子供達に広めたいな。はっはっはっ」
安堵したようにそう言って初代様は笑った。どうも、都心の仕事中にどこかしらから変身による影響の話を伝え聞いて、慌てて奥多摩に戻ってきたらしい。そう言えばあれ、ちょっと前までヤマギシ社員以外へは緘口令が敷かれてるんだった。完全に知ってる物だと思ってたけど、初代様一応外部の人だもんな。
「焦ったぞ。もしも致命的な変化が起きていたなら、親御さんに何と謝ればいいのか分からなかったからな」
「いや、この変身はあくまでも俺の魔法ですから」
「それは違う。俺がお前に頼んでかなりの回数変身をさせたんだ。それに映画の撮影の際に、お前の両親にはくれぐれも息子を頼むと頼まれていたからな」
「初耳なんですが」
「……オフレコで頼む」
口元に指をあててそう言う初代様にしょうがないなぁと笑う。何だかんだで気を遣ってくれていたように感じたのだが、まさか両親と初代様が密かに相談をしていたとは思わなかった。聞けば昭夫君の両親とも一度会って話をしたらしい。
「お前たちには俺の我儘に付き合わせた形になるからな。せめてこれ位はしなければ親御さんに顔向けできん。だが、お前たちのお陰で俺の理想以上の作品が作れた。本当に、ありがとう」
ギュッと初代様は俺の手を握り、深々と頭を下げた。慌てて俺も「いやいやこちらこそ」と頭を下げ、数分後に様子を見に来た一花が現れるまで、その場で両手を握り合ったまま男二人が頭を下げ合うという変な絵面が続くことになった。
「二人とも何をしているのかな? かな?」
「面目ない」
「はっはっは」
初代様。笑っても誤魔化せないと思いますよ。
会議室の椅子に初代様と向かい合うようにして座った俺は一花の持ってきてくれたお茶を啜りながらさて、と居住まいを正す。初代様の要件は恐らくまだ終わっていないと直感が告げているからだ。そんな俺の様子に重要な話になると思ったのか、お盆をテーブルに置いて隣に一花が座る。一人で考えるのはまだまだ一花やケイティさんには及ばないから、正直居てくれるのは助かる。
「それで、他にもお話があるようですがどうされました?」
「う、む。そう見えたかな?」
「勘、という程度ですが。何かあったんですね」
俺の問いかけに観念したように初代様がそう尋ねてくる。その様子に厄介事だろうなぁと思いながら俺が再度確認すると、初代様は難しい顔をしたまま頷いて口を開いた。
「実はな。私の助手として人を使わせて欲しいのだ。勿論、彼らの報酬については」
「良いですよ。ちょっと真一さんに伝えておきます。一花、頼む」
「私の分から……うん?」
初代様が言い終わる前に俺は携帯を手に取って一花に渡した。俺の意図を汲んでくれたのか、一花は「はーい」とにっこりと笑ってから席を立ち、そのまま部屋から出て行った。その様子を驚愕の表情で眺めている初代様に向き直り俺は深くうなずいた。
「……すまん」
「必要な人員なんでしょう? 元々初代様の教室の人事権は初代様にありますから気にしないで下さい。一花が上手く伝えてくれます」
俺の言葉に再度初代様が頭を下げた。頭を下げられることでは決してないのだ。ただ、態々社長や真一さんを通さずに俺に言ったという事は何かしら突っ込まれたくない事情があるのだろうと勝手に予測して勝手に俺が気を回しただけなんだから。
俺の意図を酌んでくれたのか、初代様は再度頭を下げた後に準備が出来次第、すぐに連れてくると言って会議室を後にした。決まったら即行動、相変わらずバイタリティに溢れた人だ。しかし、初代様が頭を下げてまで頼み込んでくる人か。どんな人だろうか。綺麗な女性とかだと嬉しいんだがなぁ。
「やぁ、一郎君。噂は聞いているよ」
「年齢は私達が大分上だが、ここでは君が先輩だ。冒険者として一刻も早く一人立ちできるよう指導してほしい」
「この前はありがとう。今日からよろしく!」
「撮影の時みたいな無様はもう見せないからな」
「……ア、ハイ」
後日。初代様から以前頼んでいた件でと連絡があり、ヤマギシビルの前で待つ事十分弱。ワゴン車に乗って表れた彼らは口々にそう言って頭をペコリと下げていく。
後ろの二人は、あれだ。ちょっと前に一緒に仕事をした現行ライダーの二人だ。芝居というかアクションに磨きをかけたいとツブヤイターで言っていたが、まさか冒険者になりに来るとは思わなかった。だが、気心の知れた人物なのでこちらはまだいい。問題は前の二人である。
「一郎、二人とも一応お前の先輩にあたるライダーだが、ここではお前が先輩だ。俺も手伝うから、まずは彼らのレベルアップを手伝ってくれないか」
「ア、ハイ」
「ファイブハンドを使ってくれていると聞いて、居てもたっても居られなかったんだ。実際に扱える訳ではないが赤心少林拳の構えや魅せ方なら指導できる。任せてくれ」
「ア、ハイ」
同じ返事を繰り返す俺の様子に初代様が苦笑している。S1さんとアマゾンさん同時に連れて来るんですか。流石に不意打ちってもんじゃないですよ初代様。