誤字修正。ハクオロ様、244様ありがとうございます!
「本当は、役者に復帰するつもりはなかったんだ。実を言うと今もね。ただ、彼から『もう一度、君のアマゾンが見たい』と熱心に口説かれてね。つい、ここに来てしまった」
「その割には女性ファンへの対応がお上手ですね」
臨時冒険者の女性から黄色い声を浴びて、アマゾンさんははにかむ様に笑いながらそう言った。その割には随分と手慣れた様子だと突っ込めば意味深な微笑みだけが返ってくる。かっけぇ、こういう人をダンディって言うんだろうなぁ。
一先ず研修という形で各自の装備を整えて、基本的なダンジョン内部での注意を行い、初代様が先導、俺が後衛としてダンジョン内部に突入。浅い階層では臨時冒険者のお姉様方の邪魔になってしまう為にさっさと5層まで降りようと動いていたのだが、行く先々でこの新旧ライダーズは女性陣に囲まれてしまい、満足に動く事が出来なくなった。しまったな。最初に10層へ降りておくべきだった。
「やっぱ凄い人気ですね」
「君も結構声を掛けられていたみたいだがね、っと、これがモンスターか」
S1さんがピシッとオオコウモリを叩き落とす。流石は元レンジャー部隊というか、慣れている訳でもないのに薄暗いダンジョンの中でも違和感なく動けているらしい。
モンスターがリポップしだすと臨時冒険者のお姉様方もそちらにかかり始めたのでさっさと移動する事にして奥へ奥へと進み、都合数回のファンによる足止めの後に無事6層へと到着。今日はここを主な狩場にするつもりだ。
ゴブリンとオーガ、それにオークの混成で低層の主要な敵の経験が積める上に、ゴブリンメイジが居るから対魔法の経験まで詰めてしまう。ある程度動ける人間ならここからスタートした方が効率が良いのだ。
そして、今日のメンバーはある程度魔力の吸収も行ってアクションも出来る若手俳優と、加齢による衰えこそあるがかつてのアクション俳優。そして万が一が起きないようにすでに変身までして気合十分な初代様と、S1さんたっての希望でファイブハンドを使用する俺。この階層なら万に一つもない編成だろう。
「ライダァ、キィィック!」
「ライダァパンチ!」
「トゥ! 電光ォ、ライダーキィィック!」
「初代様。初代様。他の人の分を残してください」
気合が入りすぎて初代様が若干暴走気味だったが、狩りは順調に進んだ。一度注意してからは初代様も大人しく? 指導の方に精を出してくれたしな。流石に俺が大先輩に何かを指導するのはやり辛いので基本はアマゾンさんとS1さんを初代様が、俺は他の二人を指導する形で役割を分担する。
「オークは俺が最初に片づけます。チェーンジッ! エレキハンド! エレキ光線、発射!」
「おお!」
オークみたいな大物は流石にいきなり相手させられないから初手でエレキハンドで蒸発させておき、残りのオーガやゴブリンたちは半々という形で処理。エレキハンドを使う時にS1さんが非常に嬉しそうだったので次は冷熱ハンドを使うとしよう。
「基本は長物で間合いを取りながら。相手の手が届かない場所からの攻撃を意識してください」
「OK!」
「あ、待て」
幽霊くんが貸し出した刀を持ってオーガと相対。その後ろからお化けくんが槍で援護か。うん、良いコンビネーションだ。さて、向こうの方は大丈夫かと見てみると、こちらもS1さんが刀、アマゾンさんが槍を持って前衛・後衛の役割を全うしていた。初代様もうんうん頷いているし問題は無さそうだな。いきなり素手で挑みかからせそうで怖かったんだ。
数回ほど同じように戦ってもらってから魔石を吸収してもらい、体力の違いを確認して貰ったら全員にリザレクションをかけて再度モンスターと戦う。今度はゴブリンとオーガは俺と初代様が、残りの4名でオークと戦ってもらう。
「うぅむ。やはりこのサイズの相手は緊張するなぁ」
「そうですかね。随分と美味しそうな外見じゃないですか」
「……先輩方の余裕が理解できないんだが」
「しっかりしろ。お前も主役ライダーだ、負けるんじゃない」
「そんなの関係あるか!」
幽霊くんの叫びに反応したのか、オークたちが叫び声をあげてこちらに駆け寄ってくる。冷熱ハンドで厄介なメイジとオーガを氷漬けにし、残ったゴブリンの中に初代様が飛び込む。オークまでの道は開けた。
「え、ええい! 同年代に負けられるか!」
「うむ。その意気だ! よし、我々も負けられんな」
「ああ、左右から挟むぞ」
「了解です!」
やけくそ気味に幽霊くんが叫んで刀を持ってオークに突撃し、その動きに合わせる様にアマゾンさんとS1さんが左右に分かれる。お化けくんは槍をオークの顔辺りに突き入れ、幽霊くんへと攻撃をしようとしていたオークの動きをけん制している。苛立ったオークが棍棒を振り回して周囲を攻撃しようとすると、その動きをさっと後ろに飛び退いて避けアマゾンさんがオークの膝に槍を突き入れた。
「ブギィ!」
「隙あり! トォウ!」
「こっちもだ! イヤァ!」
S1さんが刀でオークの逆の足を切りつけ、倒れ込もうとしたオークへ最上段に刀を構えた幽霊くんの一撃が袈裟懸けに決まる。魔石で上昇した筋力を全て乗せた一撃は綺麗にオークを両断し、オークは煙の様に消え去った。
「……やった、か」
「何がブランクだ。全然衰えを感じなかったぞ」
「ああ、ビックリするほど体がよく動く。これが魔力か……凄いものだ」
呼吸を整えるアマゾンさんにS1さんが話しかけると、その言葉にアマゾンさんは満足げに頷いた。今回がダンジョン初潜りの筈なんだがすでに歴戦の風格を感じてちょっと感動する。
「ところかわって若い君たちは」
「いや、あっちと比べられると困るんだが」
お化けくんに冷静に言われてそれもそうか、と頷く。あれ、幽霊くんはどうしたのか、と視線を向けると先ほどオークを袈裟懸けに斬り倒した姿勢のまま固まっている。その手元には根元からポッキリと折れた刀の姿があった。
ああ。本当に全力で叩き切ってしまったのか。大丈夫、君の運動能力ならこのまま冒険者として一暴れすればそれ位すぐに稼ぎ出せるって。初代様の補助につく以上は二種冒険者免許は最低取ってもらうから。ゴーレムを中心に狩ってればあっという間に年収が稼げちゃうぞ?