奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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今週も宜しくお願いします。
前回大分引っ張ってたので今日だけ早めの時間に更新。明日は通常通り予定です。

誤字修正。アンヘル☆様、いぬーぴー様ありがとうございました!


第百三十八話 一花の進退

「お兄ちゃん」

「ん?」

 

 無言のまま少し時が流れて、そして意を決したように一花は俺を見る。

 

「私、教師になりたい」

「……そっか。勉強頑張ってたもんな」

「冒険者だって嫌いじゃないし辞めるつもりもないよ。でも、一番やりたい事はそれ」

「うん」

 

 少しづつ声が震えてくる妹の頭を右手で撫でる。最初はビクリと震えた一花は、少しづつされるがままに力を抜いていき、俺に抱きついてきた。

 

「一度、皆で話をしよう」

「……うん」

「皆、喜んでくれるよきっと。お前が進むべき道を見つけたんだから」

「……ん」

 

 鼻をすすりあげる妹をギュッと右腕で抱き寄せて、あやすように落ち着かせる。飛行機の時間ギリギリまで俺は一花と静かに話をした。

 

 

 

「そうか。うん、確かに一花なら良い先生になれると思う」

「うん、きっと良い先生になるよ!」

 

 ヤマギシ本社に戻った後、チームメンバーを集めて会議室に入り、俺は一花の将来について相談したいと切り出した。まず話を始めてすぐに、沙織ちゃんは兎も角として意外にも恭二が賛成の声を上げた。ダンジョンダンジョン言ってるこいつが最初に手を上げるのは予想外だったが、よく考えたら恭二にとっても一花は妹分だ。そんな一花が自分の道を決めたのを素直に喜んでくれたのだろう。

 

「良い事だと思います。マスターの成績なら問題なく大体の学校に受かるでしょうし」

「一花ちゃんの進みたい道に進むのが一番だと俺も思う。応援するよ」

 

 続いて御神苗さんと真一さんが賛成の声を上げた。特に真一さんの応援するよ、という声に一花の顔が輝くのが見えて兄としては嬉しい限りだ。思い人からの援護ってのはやっぱり嬉しいもんなんだろう。

 ただ、残りのメンバーの顔は少し暗い。特にシャーロットさんとケイティは……ケイティはうん。一花の育成能力を当てにしてる節があるからな、まぁしょうがないだろう。しかし妹が自分のやりたい事について勇気を振り絞ってくれたのだ。俺は一花を応援するし、仲間であるケイティにも納得してほしい所なのだが。

 

「いえ。イチカの道、邪魔するつもりアリません。冒険者から別の道行く人、当然居る筈。ソレがヤマギシチームのメンバーなら良いモデルケースなります。それに、イチカはきっと良い先生ナレる」

「ええ。一花ちゃんの適正は高いと思う。そこについては私達も心配していないし、冒険者を引退するって訳でもないんでしょう?」

「うん。奥多摩から通える大学にいくつもり。第一志望は御神苗さんの学校だけど、流石に厳しそうだから私学になるかなって思ってる」

 

 二人からの言葉に一花は笑顔を浮かべて答えた。御神苗さんの大学って日本一の……学校ではトップって言ってたけどそこに挑戦できるレベルだったのは知らなかった。御神苗さんも何かうんうん頷いてるし。一花が後輩になるかもって喜んでくれてるんだろうが、この人もマスターイチカの弟子の一人だからひいき目に見てるのかもしれない。話半分に聞いておこう。

 しかし、それだとなんでケイティは暗い顔をしているんだろうか。確かに付きっ切りという事は出来なくなるかもしれないが、一花の講習は短期集中型。人材が豊富になってきている現状なら、どうしても通常の人じゃ教えきれないような相手に一花が対処してくれれば後は他の教官で補えると思うのだが。

 

「問題は他にあります。冒険者の増加に伴って魔石を使って魔力を持つ人はこれからどんどん増えていきます。そんな状況だと一花ちゃんの場合は……例の体質が問題です」

「今の学校、イチカはクイーンビーなってマス。これは魔力持ちが多い学校だから当然デス。そして大学でも同じ状況なる、思いマス。その次ハ……恐らく勤務先デス」

「……うん、私もそう思う」

 

 言いづらそうにシャーロットさんとケイティが切り出した言葉に、一花は小さく頷いた。周りの人間もあっ、という表情を浮かべている。

 

『ある程度以上の魔力持ちなら問題ないって言うのは本当にある程度以上だからね。初めて接した1週間は本物の大スターが目の前にいるみたいな感覚だったから、未成年の先生をするのは不味いかもね。相手が一切魔力を持ってないなら別かもしれないけど……ソースは僕だ』

 

 デビッドはそう言って腕を組んだまま空を見上げる。マスター信者のデビッドにとっては、イチカに否定的なコメントを言うのが辛いのだろう。そしてこの姿こそが周囲が危惧している物だという事だ。下手な恩師なんか目じゃないくらいに子供に大きな影響を与えてしまう。それを危惧している。恐らく、一花自身も。

 

『……例えばの話なんだけど』

 

 場の空気が暗くなりかけた時。今までジッと黙り込んでいたウィルが唐突に口を開けた。周囲の視線を集めたウィルはポリポリと頬をかきながら言葉をつづける。

 

『魔法を専門に教える学科、というよりは、学校を作ることは出来ないかな。事前にある程度以上の魔力を持った相手を限定対象にした』

『魔法を?』

 

 ケイティがつい英語でウィルに尋ねた。以前から彼女が構想していた魔法を研究する大学、その大学の話にリンクしているように感じた為だろう。

 

『ああ。勿論時間のかかる話だけどさ。冒険者専門学校、しかも若いころからの……言ってみれば。ホグワーツっぽいもの、僕たちで作れないかな?』

 

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