奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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今週もよろしくお願いします。

誤字修正。244様、kuzuchi様ありがとうございます!




第百四十三話 撮影開始

『やっぱりズルいよ』

『やぶから棒に何すか』

 

 撮影陣が本揃いしようやく始まったとある映画の撮影所にて、開口一番にスタンさんに文句を言われた。いや、まぁ色々言いたい事もあるんだろうけどアレはどちらかというと一花発案なんでそっちに言ってもらえるとありがたいんですがね。

 スタンさんが文句を言っているのは先日行われた一花の学校での学園祭の事だ。エージェントっぽい恰好をしたヤマギシ英語組(+α)による警備活動とまぁやっぱりやらされた舞台劇について、スタンさんとしてはとても納得のいかない状況らしい。前々から付き合いのあるウチではなく何故ワーニーブランドをモデルにするのかというね。

 

『皆同じ人に見える個人が特定されにくいキャラクターで一番知名度があって、目に見えて抑止力があるものから選んだからね。日本での知名度的なものも加味してるから次点はショッカー戦闘員だったんだけど』

『そっちだったら昭夫君が敵役にならなくても良かったんだけど逆に通報されそうだからなぁ』

 

 因みに劇の内容は一列に並んだエージェントの前で俺扮するスミスっぽい人と昭夫君扮するヘルメットを付けた暴漢っぽい人の一騎打ちだったりする。途中途中でフロートを使って空中戦とかをスローモーションっぽくしてみたりストップモーションを混ぜてみたりと現在魔法で使える演出をフル活用したから結構好評だった。

 ヘルメットにドクロマークを付けてなかったのになぜか途中から「瀧ライダーだ!」ってバレてたのはちょっとビックリしたけどさ。

 

『彼の演技は分かりやすいからね。何というか味があるというかさ』

『演技経験1年の素人なんですがね』

『才能があるんだろうね。それに華もある。もし魔法に出会って居なくても彼は暫くしたら役者になってたかもしれないなぁ……』

 

 その昭夫君はあちらで今回の映画の師匠役を務める初代様から色々注意というか、この間の寸劇の論評をされているみたいだ。もう完全に師弟関係になっているけど、昭夫君はあくまで冒険者としての立場を優先させるって言っているんだよね。それでも良いならって初代様は言われたらしいがむしろ大喜びだったらしい。少なくとも完全に冒険者主体で、というよりもスタンスを寄せてくれたことが嬉しいらしい。

 因みに昭夫君が東京に来ている理由は、日本側から派遣された教官訓練の教官に選ばれたからだ。日本側の教官代表は御神苗さんだが、その補佐という形になるらしい。他国は3名ずつ教官を派遣しているのに対して日本は2名だけになるが、これは最終的な判定をヤマギシチームが行うためらしい。

 

 昭夫君の学校は大丈夫なのかを聞くと、最近福岡市にあるとある私立学校に編入したそうだ。そちらの学校側では彼の事情についても詳しく把握しており、可能な限り協力してくれているらしい。出席日数が足りない分は休みの日に出席をしたり課題を出したりと言った一花の学校のようなシステムを用い始めているらしく、同じように学業と仕事の板挟みに苦しむ九州にいる芸能関係者が注目しているそうだ。

 

 昭夫君も完全に芸能関係の括りになってしまったと苦笑していたが、ファンクラブが数万人規模で居る人物はもう芸能人と言っても良いんじゃないかな、と思う。

 

「それはそう、なんですがね」

「お。大分標準語も安定してきたね」

 

 東京での仕事が増えた為、訛りを矯正しようとよく昭夫君は人と話をするようになったそうだ。一番最初にあった頃のあの引っ込み思案気味だった彼を知る身としてはその成長が誇らしい。実を言うとこの成長を一番喜んでるのは初代様だったりする。初代様、昭夫君が訓練生だった頃から何かと目をかけてたからなぁ。

 

 今回の撮影では昭夫君にも同級生役で少し出演をお願いしている。後、スタントマンとしても手伝ってくれるらしい。日本部分の撮影は派手な物でも対応できそうだからスタンさんも大張り切りだ。一花が演出を手伝ってくれる事もあるしね。

 さて、そろそろ撮影開始か。教室の中で授業を受けるのは2、3年ぶりだから少し新鮮な気分がする。久しぶりの学生気分を満喫するとしようかね。

 

 

 

「お兄ちゃん、カプコムの広報の人から連絡が来たんだけど」

「え。遂に『ロックマンシリーズのOPを実写でやってみた』シリーズがお叱りを受けたのか?」

「いつでも証拠隠滅の用意は出来てるよお兄ちゃん!」

「んな訳ないだろうが馬鹿ども。ほら、電話」

 

 俺と一花の寸劇を叩き切って恭二がコードレスの電話機を持って歩いてくる。あ、内線か。ほいほいっと。

 

『どうもどうも鈴木さん、ご無沙汰しております』

「あの、出来心だったんです」

『はい?』

 

 一花にローキックされた。いや、すまんついノリが切り替え出来なくてさ。

 

「それでどのようなご用件になりますかね。動画の件です?」

『ああ、いえいえ。動画に関してはもう全てお任せして。我々も広告を打たせてもらっているお陰で海外での売り上げが大幅に上がっていて本当に鈴木さんにはお世話になっています』

「いえいえ」

 

 元々ロックマン自体は海外での認知度が高いコンテンツだったが、最近は俺の最初期からの変身パターンという事と俺が上げているロックマンネタを題材にした動画の影響で結構売れ行きが良いらしく、新作の開発や過去作をまとめたコレクションシリーズなんかも発売が決定しているらしい。

 その分動画の方で広告費用は貰っているから互いにWIN・WINの関係だと思うんだが、どうやら今回はこれらとはまた別の話になるようだ。

 

『実はですね、鈴木さん。マーブルさんから次のマーブルVSカプコムで、マジックスパイダーをマーブル側で参戦させたいと要請があったんです』

 

 言い出した人が誰かが良く分かるお話ですね。カプコムさんが良いなら構いませんけど……あ、PVとCMに出て欲しい。

 その辺りはヤマギシを通して貰えますかねぇ(震え声)

 




あ、ツイッターで更新報告始めました @patipati321 (機能活用の為)

初めて呟いたら奥多摩在住の方からイイネが飛んできてめちゃめちゃ焦りました。
作品の更新に関してはそちらで報告あげようと思います。

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