奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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今週もよろしくお願いします!

焦り過ぎて普通に投稿してしまった申し訳ない。
文章を幾らか微調整(白目)

誤字修正。kuzuchi様ありがとうございました!


第百四十八話 日本での撮影、終了

『……わかりました』

 

 黒いスーツを着た男の言葉にハジメは頷いた。彼がハジメに対して行った提案……ゲートの研究と周辺の警護はハジメにとって魅力的であったし、何よりも彼が語る力の重要性……ただ無秩序に力を持つ存在がゲートから現れるモンスターと被ったのも一つの理由だった。

 

『ハジメ……』

『師匠、決めました。俺、行ってきます』

 

 そんなハジメの決意に満ちた表情に師である老師は小さく頷き、彼の決断を受け入れた。彼に武を授けて1年。常人とは異なるハジメに常人である老師が教えられる事はもうほとんど残っていない。

 その決断がどういった結果を招くかはまだ分からない。だが、若人の確実な成長を感じた老師は小さく頷いた。

 

『なら、俺も付き合うよ』

『ウィラード』

 

 二人の会話をいつから聞いていたのか。道着を着たウィラードの姿に腰を浮かしたハジメに、ウィラードはゆっくりと首を横に振った。置いて行かれるのはごめんだという彼の視線に、浮かした腰をしずかにソファに沈める。

 そんな師弟3名の様子を、黒いスーツを着た男はにこやかに眺めていた。

 

 

 

「こいつが黒幕だね」

「違いない。黒いしな」

『そこが判断基準なのかい』

 

 上がってきた撮影済の映像を見ながら俺達はうんうんと唸りながらあーでもない、こーでもないと今度の映画について話し始める。日本での撮影は殆ど終わっているので、スタンさんはもうアメリカに渡ってしまっている。

 

 修行シーンとゲートからの町の防衛のシーンはほぼ撮影が終わり、現在の俺達は次の部分、アメリカへ渡る為の導入のシーンを撮影している。といっても初代様の役割である老師はここからラストまで出番がないので、暫くは教官免許の指導員に専念する事になっており現場の方へはもう来ていない。

 クランクアップ前に渡米してくるとの事なので、その辺りで他のキャストへ紹介しラストの辺りでひと暴れしてもらう予定になっている。

 

 それに、初代様は他のお歴々(仮面ライダー)の教習を殆ど一手に引き受けてるからな……最近聞いた話だとアマゾンさん達はすでに15層へと到達しているらしく、今は魔力アップに専念する為にゴーレムを狩り続けているらしい。

 特に貴金属のインゴットはそのままでも十分価値がある上に今では魔力電池の大本に使っている貴重な素材の一つだからな。マニーさん達と一緒にゴーレムをガンガン狩ってくれるチームが出たのはありがたいことだ。

 

 ただ、幽霊君とお化け君がヤマギシから振り込まれた報酬を見て何度か転職をとか言い始めたのは全力で止める必要があったが。その時に初代様が言った「金なんかの為にヒーローを辞めてどうする」という言葉に、二人がうなだれていたのは印象的だった。

 あと何故かS1さんもダメージを受けていて、その様子をポンポンと肩を叩いて慰めるアマゾンさんという謎の構図があったのは、うん。見なかったことにしてあげよう。

 

 

 

 さて、この4名が一人前と言えるレベルになった事により、初代様は温めていた計画を話してくれた。

 

「俳優、特にアクション俳優を冒険者に、ですか?」

 

 社長の問いかけに初代様は真剣な表情でこくり、と頷いた。彼が言うのはまぁ、平たく言えば現在様々な分野の映像で登場するアクション俳優、スタントマンと言った業種の人間を冒険者としたいという要望だ。

 その内容に社長が顔をしかめるがこれは仕方のない事だろう。現状ですら奥多摩ダンジョンは飽和状態。夜以外は常に1~5層に人がおり、それ以降の階層もどこかしらの研修が行われており、10層以降になると今度は実力的な問題で難しくなってくる。

 

「勿論、その点は分かっています。これは何も直ぐという話ではなく、例の学校の話と絡み合わせたいのです」

「……成程?」

 

 初代様の話に社長は興味を惹かれたらしく、組んでいた腕を外して少し前のめりな姿勢になる。魔法学校関連はヤマギシにとっても重要な長期的戦略の一つで、そこに話が飛ぶのなら対応も変わってくる。

 

 経営者としての顔になった社長が目配せしてきたので、俺は頷いて部屋を出る。これ以上は話の邪魔になると判断されたみたいだな。

 

 まぁ、大体の予想は付くんだが……初代様が何処まで考えているかは分からないが、現状のまま行けば恐らくアクション俳優やスタントマン、それにスーツアクターという職業が無くなる可能性が高いからな。

 

 何故かと言うと、まぁはっきり言えば冒険者の身体能力が問題だ。俺や昭夫君を見れば分かるように一線級の冒険者の身体能力は、凄まじい物になる……それこそ今までは必死に鍛錬をしなければ出来ないような動きも簡単にできてしまうほど。

 

 それにバリアというどんな危険なスタントをしても生き延びる事の出来る魔法がある。極めつけは変身魔法だ。スーツを着る必要すら無くなったこの魔法により、初代様は身軽な格好のままなのに周囲からは変身しているように見えている。

 

 この変身魔法を俳優が覚えてしまえば、もう現場でスーツを着ることなく撮影を行う事が出来るのだ。現在は冒険者の数も冒険者になった俳優も少なく、それ程目立った問題は起きていないように見える。しかし近い将来にスーツアクターという業種自体が無くなる可能性は非常に高いだろう。勿論、バリアで危険を回避できるならスタントマンもだ。

 

 初代様はこの流れに気付いているのだろうな。他ならぬ自身が最初に魔法を覚えた俳優なのだから。その利便性と、この後の流れまで頭に浮かんだ筈だ。

 

 そして、そんな流れを座して見過ごす人でもない。どういったプランかまでは流石に分からないが何かしら行動を起こすとは思っていた。それが今だったのだろう。あの場で呼び止められなかった以上は俺に出来る事はまだないんだろうな。

 

 変身をミギーに切り替えて頭をトントンと叩きながら俺はビルを出る。まぁ何かしら決まったら連絡が来るだろうし、今はそれよりも研修寮のランチに意識を切り替えよう。

 

 今日は世界のパスタバイキングだ。この時の為に朝は軽めに済ませておいたし先程から空腹で腹がキリキリしている。全メニュー制覇のためにも早く行かないとな!

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