正直めちゃめちゃ嬉しいです。
BJ(偽)とアイマス(詐欺)が10万UA行った時の数倍くらい嬉しいです。
一人祝勝会と称して近くの焼肉屋に(ry
誤字修正。kuzuchi様ありがとうございました!
『どうですか、教官』
「あ、はい。似合ってると、思います」
『本当ですか!?』
ぽりぽりと頬を掻きながらそう言うと、アイリーンさんは花が開いたようにぱぁ、と満面の笑みを浮かべる。少し気恥ずかしいが別にお世辞ではない。お洒落な服を着てお兄さんと同じ綺麗な金髪をショートボブにしたアイリーンさんは凄く可愛かった。普段ダンジョンに入る時は英国用の白地に赤が入ったボディアーマーを付けており、ダンジョン外でも制服代わりの作業服に身を包んでいるため余り意識する事は無かったが、普段美人を見慣れていると思う俺でもつい見惚れてしまう位に彼女は可愛かった。
「ありがとうございましたー!」
『教官、あの、お金』
「いや、良いですよ。今日は付き合ってもらってますし」
随分と気合の入った店員の声を背に、慌てた様な表情を浮かべるアイリーンさんと連れ立って店を出る。似合っていると思ったのでどれを選ぼうかと迷っている彼女の手を引いて全部レジに渡す。流石に現金では足りなかったのでカード払いだが、特に問題なく使う事が出来る店で良かった。
ヤマギシの社員全員に渡されている冒険者免許替わりのカードはそのまま銀行からの引き落としが出来るデビットカードの機能が付いており、装備品なんかを追加して購入するときもこちらから引き落として貰っているのだが……正直幾ら入ってるか分からないんだよな。ドロップ品を清算したお金もこっちに入るから。
しかしちょっと買いすぎてしまったか。流石に両手が完全にふさがっているのは困る。
『あの、教官……私も』
「あ、いえ大丈夫ですよ。重いんじゃなくてちょっと持ちにくいだけで」
一度車に戻って荷物を置いてきた方が良いかもしれないな。何をしているのかって? もちろん買い出しだよ。もうすぐアメリカに行くしあんまりダサい服装で行くのもな、と思い立って……嘘だ。一花に「お願いだから「絶対に働かないTシャツ」で歩くのは止めてよ? 振りじゃねーぞ」って本気で脅されちまったからな。ただ、俺は正直自分のセンスには自身が無い。その為誰かに見立てて貰おうと思って食堂で人を探していたらたまたま食事に来ていたアイリーンさんが付き合ってくれたのだ。
うん、正直女性と買い物に出るなんて母さんと一花以外は殆どないから緊張してる。これって完全に傍から見たらデートだよなぁ。アイリーンさんみたいに可愛い人の手とかさっき握っちゃったし大丈夫かな。嫌われてないといいんだが。見栄張ってアイリーンさんの分も買ってあげたけどこれで少し位は付き合ってくれた恩を返せていればいいんだが。
『あの、それで教官、次は……』
「あ、はい、ええと。コートが欲しくて」
『ああ、ならあちらのブランドに寄りましょう。男性物の……』
そう言ってアイリーンさんが指さす方を見ると、TVのCMで見た事の有るブランドの看板が見えた。確かにここなら良い物が手に入るだろうな、とそちらへ歩こうとする時、そっと右腕の裾をアイリーンさんの手が掴んでいた。
いかんな、つい一人で買い物をしている癖が抜けない。アイリーンさんの歩幅に合わせるように足を動かし、二人で店の中へと入る。アイリーンさんはこれから寒くなるからと、黒いトレンチコートのような物を選んでくれた。かなり頑丈な造りのようでこれなら色々な所で扱えそうだ。
それから俺とアイリーンさんは余り会話は弾まなかったが特に問題なく買い物を終えて、『この後も、予定空いてます!』というアイリーンさんをお気に入りの食事処に案内して昼食を楽しみ、そのまま映画を見に行ったり後半は遊び倒す形で休日を満喫。奥多摩に帰った時には日が沈み始めていた。
「アイリーンさんありがとうございました。俺、正直センスに自信が無いんで……助かりました」
『いえ、私も、その。楽しかった、です!』
「またお願いするかもしれませんが、その時はよろしくお願いします」
車で各国の教官陣が寝泊まりする寮の前につけ、アイリーンさんに今日のお礼を告げると目をキョロキョロと動かしながらアイリーンさんが返事をしてくれた。まだ男性恐怖症気味な所はあるが以前の様に男と手を握っただけで倒れそうになるなんて事は無かったし、皆やっぱり成長しているんだな、と時間の流れを感じる。
またお願いします、と告げてその場を離れる。バックミラーを見ると寮から出てきた人たちにアイリーンさんが囲まれているのが見えた。アイリーンさん、可愛いし人気者なのは知っていたが……折角の休日を潰してしまって申し訳ない事をしてしまったかな。
「で、ちゃんとしっぽりいって来たの?」
「ちょっと頭出しなさい」
「えちょあだだだだ」
有無を言わさずに一花の頭を捕まえてグリグリと制裁を加える。体が大きくなってもオツムは変わっていないようだな。ちょっと修正しなければいけない。
「いや、でもデートだろ? 手を繋いだりとかキスとか」
「あだだだだだ!」
「そうだよイチロー君。アイリーンちゃんも結構気合入ってたし」
「いや、朝方に捕まえて買い物の手伝いお願いしただけだし……でも、ちょっと手を繋いだ時はあった。柔らかかった」
なんとなく感触が残っているような気がして右手に目をやる。少し気恥ずかしい気がしたが、まぁ。悪くない気分だった。アメリカに渡る前にまた休日が合えばお誘いしてみようか……アイリーンさんが嫌でなければ良いんだが。
『もしもしジェイ?』
『イヴかい? 不味い事になったよ』
その二人を呼んだらお前らビルから叩き出すからな、と伝えたところ二人とも笑顔で電話を切ってくれた。もうすぐアメリカに渡るから、向こうで会おうとその二人とは約束しているんだ………それだけでも心が重いんだからさ。余計な重圧までかけないでくれよ。