奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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やっと書きあがりました。GW中は書きあがり次第投稿する形でやります

明日も更新出来るか分かりません(白目)



第百五十四話 懐かしい人たち

『今回の奴は自信作なんだ! きっと君の奥の奥まで測定してくれるよ』

『言い方怖いんですがそれは……おい、これはタダの測定機だよな? なぁ、兄ちゃん!』

 

 世界冒険者協会の本部に顔を出してくれと言われていたので所要のついでに顔を出すと、いきなり変人兄ちゃんに絡まれた。久しぶりに会ったので挨拶をしたのが運の尽きというか、いきなり研究室に連れ込まれ、やたらと仰々しい形の台座の前に立たさる羽目になる。

 

 俺の抗議の声を無視するように変人兄ちゃんはヘヘヘ、と笑いながら俺の右手を手の形に窪んだ台座の上に乗せて固定するように専用のベルトを巻きつける。

 

 観念して大人しく右腕の力を抜くと、程なくやたらとごてごて色々ついたパソコンっぽい何かが動き始め、設置されたディスプレイに数字が現れ始めた。

 

『………来た。来たぞ、来た!』

『おお、凄い勢いでカウンターが』

『理論上は判定出来ない数字はない筈なんだ! ブラス家の長男と次女二人を併せた魔力量でも問題なかった!』

 

 自信満々に変人兄ちゃんが叫ぶ。自信満々にもなるだけあるな、あの二人を纏めてってのは凄い。二人共教官免許持ちの一線級の冒険者だぞ。

 因みにあの二人のそれぞれの魔力量は忙しくて余り潜れていないジョシュさんが2万で、最近はライバルに勝つ為に鍛え直しているらしいジェイが6万だそうだ。

 

 となるとほぼ毎日ダンジョンに入っていた俺は10万位は超えてるのかな、とのんびりカウンターの数字を眺めていたらあっさりと10万を突破。

 

 おお? と兄ちゃんと二人でカウンターを見ているとそのまま桁をもう一つ突破し、150万を超えた所で計算が止まる。

 

『………』

『……………流石は僕の機械。今までの10倍以上の数字でも対応出来た』

『いや、そこから?』

 

 うんうんと頷く兄ちゃんに思わずそう声をかけると、すっと目をそらされた。あ、その対応はちょっと心に来るものがある。そうか、150万か……これ他のヤマギシチームどうなってるんだろうな。

 

『一度、向こうに跳んで調べてみるのも良いかな……そうだ。出来れば君の左手でも測定させてもらえないかな』

『あ、はい』

 

 そう言えば俺の右手は純粋な魔力の塊だし、差が出るかもしれない。比べて見るのも必要だろう。

 先程と同じようにごてごてとした機械がついたパソコンっぽい何かが動き出し、バチバチと何かを算出していく。ディスプレイの数字は先程と同じような速さで加算されていき、最終的には80万近くで止まった。

 

『………非常に興味深いね。このデータは使わせてもらっても良いかな』

 

 目を爛々と輝かせた変人兄ちゃんの言葉にどうぞ、と答えを返す。勿論日本にも、というか世界中の冒険者協会にはこの結果を通知するという事だったので特に否やはない。

 このデータが魔法技術の発展に役立つなら是非そうして欲しい。

 

 

 

「やぁ、鈴木君久しぶりだね!」

「ども、お久しぶりです」

 

 世界冒険者協会に顔を出した際に日本冒険者協会の支部にも顔を出す。支部の人は以前日本で冒険者協会の立ち上げに尽力していた人で、世界冒険者協会が発足した際に米国にも担当が必要だという事で駐在員的な扱いでこちらに来た人だ。

 

「一人身だとこういうの押し付けられちゃうからね……鈴木君も早めに身を固めた方が良いよ?」

「自分の場合はまた色々あるんで……」

「ああ……」

 

 そう言葉にすると苦笑されてしまう。というのもジェイやイヴの暴走とそれに巻き込まれたヤマギシ本社の話は結構噂になっているらしい。どちらもアメリカでは有数の冒険者の為、米国冒険者協会と同じ建物に入っている世界冒険者協会ではあっという間に話が広まったそうだ。

 

「まぁジェイちゃんは前々から君にアピールしてたのは知ってたから古参の協会員としてはジェイちゃんを応援してるんだけどね。モテる男は辛いね?」

「この後ブラス家に行くんで……その辺りは触れないでください……」

「……ごめんね?」

 

 この、この、と肘でつつかれるが死んだ声でしか返事が返せない。俺の様子に流石に不憫だと思ったのか支部の人は苦笑を浮かべておやつ代わりに買っていたというビーフジャーキーをくれた。許す。

 

 日本の協会から渡してほしいと言われていた書類を彼に渡して別れ、今度は米国冒険者協会の部屋へと向かう。今日はケイティと合流し、その後にブラス家に向かう予定なのだ。

 

「おっす、ケイティ」

「イチロー! おっす!」

 

 案内された部屋に入るとやたらと豪勢な椅子に座ったケイティとその前で青い顔でソファに座る白人のオジさんが居る。邪魔かな? と一瞬ドアの辺りで躊躇するが、ケイティも表情が明るいしオジさんなんか天の助けみたいな顔で俺を見て来たのでついそのまま中に入り込んでしまった。

 

 状況が分からずにキョロキョロしてるとケイティがテーブルの反対側の椅子を勧めて来たのでそちらに座る。

 

『それで、どうした?』

『実は、少し困ったことがありまして……イチロー、この後の予定はウチの家に行くだけで終わりですか?』

 

 念のために翻訳を使ってケイティに尋ねると、気まずそうな表情を浮かべてケイティが予定を確認してくる。大体知ってるパターンだ。この後は厄介事なんだよな。

 

 眉を寄せて小さく頷くと、こちらが思っていることを予測したのだろう。ケイティが非常に申し訳なさそうな顔を浮かべて頼みごとを口にした。

 

『その……このお礼はいずれ必ず行いますので、一緒にダンジョンに潜って貰えませんか?』

『……いや、それ位なら問題ないけど……メンバーは?』

『私と今すぐにジョシュとジェイ、それにウィルも呼びます。後は………プレジデントです』

『この話は無かったという事で』

『待って! お願いですから!』

 

 すっと椅子から立ち上がった俺を誰が責められるというのだろうか。勿論参加は断り切れませんでしたがね(白目)


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