奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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第百六十四話 魔眼騒動と真一さん()

『イマすぐそっち行きマス!』

「お、おう」

 

 真一さんのカムバックも無事に終わり、ダンジョンから脱出した俺達は早速今回取れたデータを開発班にフィードバックした。開発班は今回の冒険で得たデータと新事実として判明した恭二の能力……鑑定がどこまで使える物なのかを確認する作業に入る。

 

 忙しそうにしている真一さん達に代わって、こういう場合連絡を入れないと拗ねそうなケイティへの連絡を入れておく。あの娘は恭二関連で何か動きがあったら全部知らないと気がすまない質だからな。アメリカ人ってのは皆そうなんだろうか。

 

 多少時差があったが真一さんのカムバックを知っているケイティも詳細な連絡が欲しかったらしく、早めに起きていたので今日の冒険の結果を伝える。

 最初の方は真一さんのデータ取りの話に「流石はシンイチデス」とうんうんと頷いていたのだが、途中で恭二の目の話をした瞬間に「what?」といきなり英語に切り替わり、少し説明をしたらこの言葉が飛んできた。

 

 終わりの挨拶もそこそこにブツンと切れた電話に予想以上の食い付きだなと頷き、そのまま電話を操作して日本冒険者協会の広報担当へと連絡を入れる。ヤマギシの方針としては公表する方向に向いたのでこれは全く問題のない行為であり、社内の意思に沿った行為だと言えるだろう。

 

「あ、もしもし」

『おお、これは一郎君。どうしたんだい急に』

「実はちょっとサイトの情報の更新が必要でして。はい。ほら、特性のコーナーの。はい。いえ二人目というか恭二の奴が……」

 

 間違った情報を公表するわけにはいかないからな。当然の行動だろう。

 まぁ次の日には冒険者系の情報サイトで瞬く間に拡散されることになったんだけどな。

 

 

 

『えー、我が日本冒険者協会に所属する冒険者、山岸恭二氏が新たに特性を発現したことを報告いたします。氏は冒険者の先駆け的存在であり現在一般的に使われている魔法の発明者である事でも有名ですが~』

 

 パソコンの画面では日本冒険者協会の広報担当さんがビシッとスーツを着て会見を行っている映像が映し出されている。この映像は一部の衛星放送やネット動画サイトで生放送されており、現在の冒険者の成り立ちと魔法の発明の経緯が簡単に説明され、そして本題の「一部冒険者が持つ特異性について」の説明を彼は行い始めた。

 

 まぁこの説明の際に例に出されたのが俺の右腕だったから俺までクローズアップされちゃったのは痛し痒しだが。

 

「全国ネットで名前が出るなんて久しぶりじゃないか?」

「お前、ころちゅ」

「俺は会社の方針に従っただけだから! 何にも意図してないから!」

 

 ふるふると震えながらそう呟く恭二に、ここ最近の鬱憤を全て笑顔に込めてぶつける。二人で仲良く罵り合っていると一花がケイティを伴ってやってきた。伴って、というより必死に抑えながら、という感じだが。

 

「おっすケイテ」

『恭二! 目、目を見せてさぁ、早く!』

「oh……」

「ちょ、ケイティマジストッ、ああ!」

 

 ケイティは完全に俺をスルーして恭二に詰め寄った。余りの速さにストレングスでも使ってるのかと思ったら一花がマジックキャンセルを全力で発動させてるみたいだからそれも無さそうだし……というかうちの妹が腰に張り付いたままなんだけど、そろそろ助けに入るべきだろうか。

 

 

 

「おい、バカ。おい」

「ほへ? はふぁはふぃほい」

「うるさい、お前は馬鹿で十分だこのバカ! 何だこの店は!」

「サソリ料理を出してくれる店ですよ」

 

 至極当然の事を言い放つ真一さんに首を傾げながらサソリの唐揚げを飲み下す。最初はどうかと思ったが非常にサクサクして美味しい。

 

「ほら真一さんも。冷めちゃいますよ?」

「おま、お前、お前なぁ……」

「いや、見た目は確かにサソリですけど普通に美味しいですから。ほらこっちの茹でサソリなんか中身本当にエビみたいですよ」

 

 綺麗に殻を割られて出された少し大きな茹でたサソリに箸を伸ばす。身の部分が少し少ないのは確かに難点だが、プリプリした食感で美味しい。

 

 俺に促されたからか、真一さんは顔を顰めながらも小さなサソリの揚げ物に手を出し、目を瞑ってそれを口に放り込んだ。

 

「……美味い」

「でしょ?」

 

 スナック感覚でバリバリ食べれるしこの香ばしい匂いも良い。こうなると地下の大サソリがどんな味かも試してみたくなるが……まぁ流石に生は無理だろうし毒付きの尻尾を食べたいとも思わん。

 

 ヤケのようにガツガツとサソリを口に放り込む真一さんにちょっと他の料理にも手を出す俺。男二人の小さな宴は一時間程続き、周りの客の異様な物を見るような目を背に受けながら俺達は店を後にする。

 

 

「シャアオラァ!」

 

 そして次の日。そこには今までの苦手意識が完全に消えた真一さんの姿があった。やはり食ってやるという強い意志が働いた結果だろう。昨日迄の及び腰は鳴りを潜め、獣のような眼光でサソリを見る真一さんの姿は控えめに言って最高にイカしてる。

 

 これぞ俺達の兄貴だぜ! なぁ、恭二!

 

「引くわー」

「酷い奴だな。実のお兄さんに」

「お前にだよ! 昨日帰ってきてから兄貴が別人みたいになってて、オヤジがどれだけ心配したか!」

 

 いやいや、あれもまた真一さんの一部だろ。あの人普段は理性と外面でにこやかなイメージだけど、ガキの頃は俺と恭二の悪戯にマジ切れしてはボッコボコにしてきた人だからな。

 

 普段は抑圧されてる真一さんの内なる野生、ビーストモードが解放されたわけだ。あ、サソリが煙に変わった。

 

「ちっ、煮込んで喰ってやりたかったんだがな」

「……ワイルドな真一さんも素敵。ぽっ」

「一花、戻ってこい一花さん」 

「そっちは駄目だよいっちゃん!」

 

 ビーストモードが継続している真一さんはボソリとそう呟いて槍を担ぐ。その姿に頬を赤くする一花と、その一花に慌てたように声を掛けている恭二と沙織ちゃん。そして、そんな一同を苦笑しながらシャーロットさんが眺めている。

 

 懐かしいと感じる風景だった。

 

 さて、次はいよいよ前人未到の33層だ。気合いを入れ直して行かないとな。

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