奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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今回は説明回みたいなものになります。

誤字修正。MARDER様、244様、アンヘル☆様、都庵様、kuzuchi様ありがとうございました!


第百六十八話 会社の編成状況。あと巣窟

 ヤマギシ社内は社長を筆頭に8つの部門に分かれて運営されている。ああ、勿論ブラスコとの合弁会社のヤマギシ・ブラスコは別にして、だ。

 大まかに分けると法務部、営業部、経理部、広報部に冒険者部。それに再編した際に追加された知財管理部、研究部、資材部の8部門だな。

 

 それぞれの部門を説明すると長くなるのだが、代表者は大体ヤマギシ発足時のメンバーで、法務部長はうちの母ちゃん、営業部は沙織ちゃんの小父さんとうちの父ちゃんのダブルヘッド。冒険者部は一応恭二が部長だ。

 

 経理部は沙織ちゃんの小母さんが最初は見ていたが後に小母さんの広報部への移動に伴ってシャーロットさんが兼任部長となり、広報部はシャーロットさんが筆頭で移動してきた沙織ちゃんの小母さんが事務兼広報の顔みたいな感じで回している。

 

 そして新しい部門である知財管理部は母ちゃんの元部下の弁護士さんが部長として魔法関係の管理を一手に担っており、研究部は真一さんの先輩が。資材部は工場関連を一括に引き受けているから吸収合併した三成精密が丸々ここに含まれており、ある種独特の組織になっている。代表者は元三成精密社長の三枝さんで、三枝さんは取締役工場長という肩書の為厳密にはここは部門というよりは工場という括りになる。

 

 さて、長々と話をしたのは、だ。この上の組織図を見てなにかおかしな役職があると思う。何故か2部門、しかも割と経営の根幹に近い部分で兼任部長等という何の為の部門分けなのかが分からない所があるのだ。

 

 シャーロットさんという圧倒的な人材の力で何とかしているが、普通そこはちゃんと分けた方が良い。その為最近では御神苗さんがシャーロットさんの補佐として手伝っているのだが、シャーロットさんが凄すぎて彼女の補助を抜くのはまだ難しいらしい。

 

 経理部の人員をガンガン増員しているので近いうちに何とかなるとは思うんだが……まぁ、そこは兎も角だ。

 実はこのシャーロットさんが部長を務める2部門、特に広報部の方は実は社内でもかなり特異な部門になっている。仕事の内容が、ではない。人材の内容がだ。

 

 沙織ちゃんの小母さんという前に立つフロント担当以外の広報部の人は、基本的にヤマギシのPRやメディアへの応対などを行う人たちで構成されているのだが……この人達は殆どがシャーロットさんが見出した、社内外の人材である。繰り返すが彼ら彼女ら(圧倒的に女性が多い部署だが)はシャーロットさんが社内や社外からスカウトしてきた人材である。どうなっているかはまぁ、言わなくても分かるだろう。

 

 

 で、なぜ急にこんな社内の話を長々としたのかというと、だ。

 

「オタの巣窟がお兄ちゃんに用があるって」

「勘弁してください」

「だが残念。現実! これが、現実!」

 

 朝起きてすぐ。愛しいマイシスターの無慈悲な一言で爽やかな朝は脆くも崩れ去った。シャーロットさんに確認してもらっていた例の誤情報が何処からどんな意図で流れているのか。そしてそれがヤマギシに影響があるのかの精査が終わったんだろうが。物凄く行きたくないので電話じゃ駄目なんだろうか。

 

「駄目です。同じ建物の中じゃん行って来なよ」

「いや、あの階層との間にはめっちゃ分厚いバリアがあってだな」

「行け♪」

「はい」

 

 妹の目が据わった瞬間に踵を返し俺はエレベーターへと向かう。2階下とは言え歩いていきたくないんだ、あの階層。階段まで変なレイアウトされてるから。

 

 憂鬱な気分でエレベーターに乗り、目的の階層を押し……このまま1階まで下りたい誘惑に駆られるが一花からドチャクソ怒られる未来が目に見えているので大人しくエレベーターから降り……

 

「oh……」

 

 いきなりドーンッと置かれたMSとライダーマンの等身大パネルに心を折られそうになった。後、周りの壁。所々にMAGIC SPIDERとかライダーマンの変身シーンとかのポスターが張られてて胸が痛い。恭二の左目が赤くなってるポスターは見てて心が和んだけど。

 

 歩くだけでダメージを受ける廊下を出来る限り天井を眺めながら歩き、目的の部屋……広報部の事務室前にやってきた俺は一つ深呼吸をしてミギーへと右腕を変身させた。

 

『うん? ああ、またか。わかった』

「すまん、頼む……」

 

 周囲を見渡して事態を察してくれたミギーにドアを開けるのを任せて俺は壁際まで後退する。ミギーは慣れた様子でトントンとドアを叩き、返事が聞こえたらそのままドアノブを回して扉を開く。

 

 瞬間、視界が真っ白になるんではないかというレベルのフラッシュがミギーを襲った。

 

『むっ眩しいな』

「あ、またミギーちゃんだ! クソッでも可愛いなこっち向いて!」

「最近一郎君が賢くなって辛いでもミギーちゃん尊い!」

 

 ミギーがノックをして返事を待ち、ドアを開けるまでの時間は5秒くらいだろう。その間にカメラを構えドア前に待機していたという事実に戦慄を禁じえない。確かにヤマギシの社員は皆2種冒険者ばかりだけどさ。早すぎるだろ。

 

「ああ、一郎さん。ようこそいらっしゃいました……ほら、貴方達も邪魔しない」

「はーい、ぶちょーごめんなさい!」

「ごめんなさい、うちの子達が……一郎さん?」

「いえぇ、なんでもないです……」

 

 奥の方から何時もの笑顔でやってきたシャーロットさんがにこやかにカメコを追い散らし、俺を手招きして中へといざなう。

 その手招きが地獄への手招きの様に見えて仕方がないんですが。気のせい? あ、はい。


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