奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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今週もよろしくお願いします!
フロート関連の話が続いて申し訳ない。恐らく次回位で終わります

誤字修正。アンヘル☆様、244様、kuzuchi様有難うございます!


第百七十二話 ヤマギシ会議・フロート関連

 会議室は重苦しい空気に包まれていた。俺から渡された報告書に目を通した社長とシャーロットさんは険しい表情を浮かべ、一花は無表情。他の面々もそれぞれ程度の違いはあれど、歓迎的な話ではないのは確かだ。

 

「断れない話なんだな?」

「まず間違いなく」

「そうか……嫌な話が来たなぁ、おい」

 

 ため息をつくようにそう言って、社長は天を仰いだ。すみませんね、頑張りはしたんですが。

 

 ニールズ大佐との会談は思った以上に早く終わった。というのも大佐はあくまで現地窓口。そこそこの権限はあるが、大本はもっと上になるからここで大きな変更や断るといった事も難しい為だ。

 

 それに最初期のヤマギシを助けてくれたのは米軍であり、ニールズ大佐だった。彼からの話だと俺達も無下に出来ないからなぁ。

 

「問題は我々にどこまでの話を振ってくるか、ですね」

「現状フロートと魔力電池、それにエアコントロールはヤマギシが最も技術を蓄積してます。まぁ、当然の事ですね。米軍もこれらの研究は進めているのでしょうがまだ形になった物はないようです」

「魔力電池は、ヤマギシの物でもまだまだ改良の余地があるからなぁ」

 

 電力への変換って意味なら全く問題が無いのだが、いや、この場合はフレイムインフェルノとサンダーボルトの効率が凄すぎるだけかな。現行の魔力電池3本あればフレイムインフェルノだけで大型火力発電所を1日ぶん回せるんだから。

 

 しかも魔力電池はそれぞれ使い切ったら再充電可能な代物だ。そしてサンダーボルトなんかはエネルギーを保存する時のロスが無ければもっと効率が良いらしい。モノホンの電力の塊だしね。

 

 さて、それらの抜群に効率の良い魔法に対してフロートであるが。実はこいつを飛ばすだけならばそれほど魔力消費量は多くないんだ。物の重さによって消費魔力が増えるという特徴もあるが、これもまぁ許容範囲内だ。

 

 あんまり重いとOFFにした時に自重によって持ち上げていた物もダメージを受ける可能性はあるが、これは徐々に魔力を絞るという方式を模索中なので直に解決するだろう。

 

 問題はもう一つの方。エアコントロールにある。先輩氏の構想ではエアコントロールによる姿勢制御と恭二辺りに風力を使う魔法を新開発させて、魔法式のブースターを作成。後は推進力の確保。

 

 ブースターの向きを調節できるように加工してカーブなどにも対応させるつもりだったのだが、そこまで突っ込めば恐らくまずまともに飛ばす事も出来ないって位に魔力を食う。エアコントロールが。

 

 こいつは本当に盲点だったんだが、基本的にエアコントロールって魔法は周囲の空調、つまり調整のための魔法でその為に周囲の空気を操作しているんだが、そんな魔法が2重3重と重なっていればどうなるかというと。

 

「結論。互いに干渉しあって常時最高出力状態だね!」

「やっぱりかぁ……イケると思ったんだがなぁ」

 

 右手と左手で同時にエアコントロールを発動してみるという、割と凄まじい技を試した我が妹の言葉に先輩氏が首垂れる。方向を絞ってある奴はまだ大丈夫なんだが、普通のエアコントロールがまぁエネルギーを食うんだな。逆にフロートとエアコントロール1つだけならそれほど消費も無いんだが今度は安定感が無いのと速度が全然でないんで魔法の畳と同じ代物が出来てしまう。

 

「米国は、やはり」

「戦闘機に乗せたいみたいだね。後はヘリ、それに戦車。車両の踏破性を一気に引き上げちゃうからね。戦闘機はちょっと想像できないけど、ヘリはずっとフロートが発動できるなら、下手したら地球一周できる機種が出来るんじゃない?」

『ホバークラフトもだ。エンジンの出力を推進力に全て回せるから航続距離が段違いに伸びるだろうね』

 

 一花の言葉にそれまで黙って成り行きを見守っていたデビッドが答える。米国人である彼としては母国の邪魔になるような真似はしたくないんだろうが、ヤマギシの一員として言葉にするべきところは口にしてくれたんだろう。

 

 これらは全て民生品でも同じことが言える。現在公開されたこのフロートについての技術は各国ですでに研究が始まっているが、何せフロート自体がほぼ最新の魔法だ。使える人間が少ない為まだまだ取得者が少なく、机上の理論ばかり、という所も少なくない。

 

 ヤマギシにフロートの取得の為だけに訪れる冒険者も居る位だから、どれだけ期待されているのかが良く分かる技術でもあるんだがな。応用範囲が広すぎて正直コントロールし切れる気がしない画期的すぎる技術でもある。

 

 とはいえ、唯唯諾諾と現状に流されるのもそれはそれで不味いわけで。こういう時の為のオブザーバー的な立場の人物に俺達は連絡を取る事になった。

 

 

 

『という訳でそちらからも働きかけて貰えんかな』

『了解です。こちらを飛ばしてヤマギシへの要請とは……少し政府と話し合わなければいけないかもしれませんね』

『ジョンおじさん経由で来るのは初期の正規ルートだからな。そっちは咎める気はないんだがウチとしては非常に困った状態なんだ』

『そういった物も織り込んで行うのが外交ですよスパイディ』

 

 ふふっ、と微笑みかけるようなケイティの言葉に思わず苦笑を浮かべる。若干の皮肉も込めてきてる筈なんだが、まるで気にならないで苦笑させられてしまう。成程、これが話術か。

 

 普段のデスデス言ってる姿が印象的だが、英語で彼女と話すと本当に同年代とは思えない。スパイディモードも結構頭の切れは負けない筈なんだが、ここら辺の主導権が握り切れないのは単純に俺の経験不足が原因だろうな。

 

『ヤマギシ・ブラスコとしては兵器開発への協力と取られかねない案件は避けたい。良い判断です。あくまでもヤマギシは冒険者関連に関してを専門に扱う企業であるべきですからね。落とし所はどこを見ておられるんですか?』

『それなんだが……完全に無しってのは無理だな?』

『それは考慮にすら値しませんね。米国政府は敵に回すべきではない。回す意味もない相手です』

『だろうね』

 

 断言するケイティの言葉に頷きを返す。俺も一つ決断を下した。社長からはすでにOKを貰っている。流石にこれ以上引っ張るのは無理だろうしな。

 

 欲しいと言っている相手がいるのなら、それは商品になる。俺達ヤマギシは魔法を商品として扱って大きくなった会社だ。流石に兵器丸ごと作れと言われれば拒否しなければいけないが、全世界に対して平等に販売を行う、元となる部品を売る事はやぶさかではない。

 

 社長や出張中の真一さんとも話し合った事だ。手に余るなら手から離す事も必要であると。俺達のポッケにはデカすぎる代物ならそれでどれだけ利益を得る事が出来るかに注力するべきだろう。

 

『現状開発が終わったフロートを付与した魔鉄の板、商品名は【フローティングボード】かな。ON/OFFの装置とセットで販売を開始しようと思う』

『……それだけで米軍を納得させると?』

『米軍が期待してるのは恭二が開発するだろう今後の魔法を使用した関連技術だろう? それらも順次公開していくさ。この技術に関してうちは隠し立てするつもりはもうない。少なくともヤマギシはね』

 

 他所が自力で開発した技術に関しては流石に責任はとれんがな。販売したフローティングボードが何に使用されるかは販売した先によるだろうが、今まで開発した魔法も軍事転用の利くモノが多かったのだ。恐らく俺達が知らない所でまた何かしら関連する技術は出来てるだろうが、流石にそこまでは関知できない。

 

 それに、各国が無重力関連の開発に難航している最大の要因はこのフロート魔法の使い手が足らず、まるでフローティングボードが足りていないのが原因でもある。魔力電池も高いからな。だったらこっちからそれらの基盤を用意して、どんどん発展して貰った方が良い。ヤマギシはあくまでフローティングボード自体の改良に努めた方が効率的だ。

 

 まぁ、先輩さんが血の涙を流して渋ってたのでフロートバイクはそのまま開発を続けるつもりだが、あくまでもダンジョン内部用にチューンしていく予定である。元々そのつもりで作っていた物だしね。

 

 これで米国が納得してくれれば良いんだが。さて、どう出るかな?

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