奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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今回でフローティングボード関連の一連の流れが一先ず終わりました。
この技術放出がどうなるかはまた暫くしてからになると思います。デロげふんげふんも出るかもしれませんね。

誤字修正。アンヘル☆様、244様、kuzuchi様有難うございます!


第百七十三話 フローティングボード関連・決着

「生産が追い付かない」

「ですよね」

 

 工場長の三枝さんがそう零すと、出張から戻ってきた真一さんが相槌を打つ。ヤマギシは持てる余力と新しく出来た工場のレーンの半分をフローティングボードの生産に傾けたのだが、現状ではまるで需要を満たす事が出来そうにない。

 

 どのくらいの需要かというと、ヤマギシがフローティングボードの販売を決定してすぐ、ヤマギシと日本冒険者協会の電話回線は使用出来なくなった位だ。WEBサイトの方も2時間で万を超える問い合わせが来ており、正に魔力発電の悪夢再びといった状況である。

 

「まぁ、兵器作らされるよりはマシだがな」

「気持ち的にはそうですね」

 

 ボヤくように呟く三枝さんの言葉に頷きを返す。あのまま米軍の次期主力兵器開発なんかさせられてたら堪らんかったからな。間違いなく守秘義務やら何やらで雁字搦めにされる所だった。

 

「それで、向こうは納得したのか? あちらとしては出来れば独占したかったんだろ」

「優先販売と今後バージョンアップされるフローティングボードへの有償交換で納得させました」

 

 ブラスコが、とまでは声に出さない。ヤマギシが惜しげも無く自社の最新技術を放出したことで、歩調を合わせているブラスコもまぁそれなりに影響が出る事は避けられない。結構な強気で政府に抗議を行ったらしい。

 

 短期的には最新技術をばら蒔いたヤマギシの大損に思えるが、長期的にはフローティングボード関連の普及が促進されて、更に魔力電池の需要が増えて得になると踏んでるんだが……そこはそれ。損に見えるという点が肝心らしい。

 

 旧来のエネルギー関連に更に魔力エネルギー関連という新分野の開拓に成功し今や飛ぶ鳥を落とす勢いのブラスコからの『お問い合わせ』は、合衆国政府の閣僚たちにもそこそこの影響を与える事が出来たらしい。

 ヤマギシがフローティングボード自体の販売を始めると発表した次の日には大使経由で非公式に謝罪の連絡が入った。

 

 その際に、ジョンおじさんに飛び火しかねない状況なので「ニールズ大佐の顔を立てて大事にしたくない」と伝えておく。こちらが何を言いたいのかは大使さん位の人なら流石に分かるだろうし、ジョンおじさんがトカゲのしっぽにされたら流石に気まずいからな。じいちゃんにも釘刺されてるし。本当最後まで頭を悩ませてくれる案件だった。

 

 

 

 さて、ヤマギシを大騒ぎに陥れたフローティングボードの件が凡その決着を迎えたのは良いんだが、生産ラインを大急ぎで整えたせいで魔力電池の生産ラインが大幅に割を食う形になった。

 

 これで一番困るのが日本向けの魔力電池関連の販売をしているIHCなのだが、IHCはIHCで自社で進めているフロートや魔力発電を用いたロケットや航空機の素材開発を行っているから痛し痒しといった状態。まぁ向こうからは出来るだけ早くに魔力電池の生産ラインを増やしてほしいと要望があったがな。

 

「という訳で、忍野ダンジョン周辺にヤマギシの生産拠点をガンガン作る予定だ」

「あっちは奥多摩よりも広いからね! 奥多摩の周りは冒険者用の施設に固めて、生産拠点は向こうで統一するのも手だと思うよ?」

「金属リサイクルプラントも新設したい。低層のオークやオーガが落とす武器を分離すれば、純銅や貴金属に分離できるからな。正直純金の魔力電池は価格が高くなりすぎるから、純銅の魔力電池を試したいんだ」

 

 真一さん、一花の頭脳担当班に工場長の言葉もあり、今年の方針として工場の拡大移設と新規施設の追加、および奥多摩の土地の再整理が決定。現在使っている工場等は解体して宿泊施設を増設し、急な来訪者や今なお需要の衰えない臨時冒険者たちの宿として用いる予定だ。

 

 奥多摩は最も設備関連の整ったダンジョンであり、しかも日本の首都圏から通い易い場所にある。今後冒険者が増えれば増えるほど需要が増えるダンジョンと目されており、事実これまでも何とか近隣の宿泊施設に頼み込んでようやく研修生を受け入れてきていた。

 臨時冒険者から1級冒険者へと変わる人間も多い為冒険者は女性の方が数が多く、こういった住居関連は気を付けすぎる位が丁度いいのだ。

 

 それに、これから仲間も増えるしな。住める場所はどんどん増やしていく方が良い。

 

 

 

「お久しぶりです。今日からお世話になります」

「お世話になります」

「おお、おお! よく来てくれた、歓迎するよ」

 

 頭を下げる男女二人組に社長が頬を綻ばせて喜んでいる。岩田浩二さんと坂口美佐さん……いや、もう籍を入れたって事だから岩田美佐さんか。

 この二人はかつて、自衛隊から派遣されてヤマギシチームに所属していた旧ヤマギシチームメンバーで、最近まで自衛隊のダンジョン訓練の教官を務めていた人たちだ。

 

 彼等は自衛隊を3月付で退職し、二人は晴れてヤマギシに入社。正式にメンバーとして参加する事になった。心強い仲間の加入だ。

 まぁ、今は恭二と沙織ちゃんが日本各地をうろうろしている影響で深層への突入は自粛している為、二人には30層までの訓練と各部門への挨拶、それに新しく開発された魔法を覚えてもらう事から始まるんだがな。

 

「という訳でようこそ一花’sブートキャンプへ。ふふふふ。二人なら変な影響を与える心配も無いしビシバシ行くよ! ビシバシ!」

「お、お手柔らかに……」

「ビシバシ!」

 

 妹よ、それは返事じゃあないぞ?

 

 一難去った後ののんびりとした空気の中、ヤマギシ冒険者チームはダンジョンに潜ったり魔法の習熟訓練、それにいつの間にか増えていたレジェンドライダー関係者との胃の痛いお話をしながら4月は瞬く間に過ぎていき、GWが訪れて5月。

 

 欧州の地に俺は降り立った。

 

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