奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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第四十三話 鈴木家、ヤマギシ入り

第四十三話 鈴木家、ヤマギシ入り

 

 

浩二さんとジュリアさんは都合のため一度原隊復帰してから再度こちらに来るらしい。

 

 

「次に来る時は岩田浩二一等陸曹であります!」

 

「え、あ。つ、次に来る時もジュリア・ドナッティ少尉であります!」

 

「ジュリアさん変わってないじゃん」

 

「勤務年数も関係するんで・・・でも、新しい勲章を貰えるんですよ!」

 

 

ジュリアさんが受勲されるものは今回、新設されたダンジョンに関する勲章らしく、米国初の受勲者として表彰されたらしい。

昇進よりなお大きい栄誉って奴かな。まぁジュリアさんなら直ぐに出世しそうな気がするけどね。

 

 

「お二人ともありがとうございました。ちょっとのお別れですが、来週からよろしくお願いします」

 

「こちらこそ」

 

「お世話になりました。また来週からもよろしくお願いします」

 

 

二人と握手を交わして暫しの別れを告げる。次に会うときには2人とも、ウチのダンジョンを使った魔法教育の教官だ。

 

 

 

 

さて、受け入れの準備も一段落し、後は人員が到着するのを待つだけになった俺達は暇になった。

というとそうでもなかったりする。

 

 

「ちょっと取りたい特許があるんだ」

 

 

真一さんがそう言って、藤島さんに預けていたあるライオットシールドを取り出す。

 

 

「真一さん、それは?」

 

「刀を魔鉄で打ったら魔法を乗せることが出来た。なら、他の装備もマジックアイテムに出来ないかと思ってな、見ててくれ。アンチマジック!」

 

 

真一さんが魔法を唱えると、シールドが光り輝いた。

 

 

「おお!え、それ何で作ったんですか?」

 

「ライオットシールドにエレクトラムをメッキ代わりに使ったんだ。これは、凄いぞ。一郎、ちょっとバスターでこのシールドを撃ってみてくれ」

 

「りょうかいでっす」

 

 

自信満々に言い切った真一さんの言葉に頷いて、俺はバスターモードの右手をシールドにむけファイアバスターを放つ。

バスターがシールドに当たる瞬間、俺達が度々目にする魔法をかき消す青い光が一瞬走ると、シールドは先ほどと変わらぬ輝きを放っていた。焦げ跡もないし、間違いなく魔法をかき消している。

 

 

「このエンチャントメッキは誰もまだ気づいていない。今これを抑えておく必要がある」

 

「素晴らしい発明だと思います。それで、特許はどのように?」

 

「そこなんだよなぁ。出来ればあまり使えなかったときの損切りに外部に委託しようかと思ったんだけど」

 

 

そう言って、真一さんは言葉を濁してこちらを見る。

 

 

「一郎の右腕みたいに、特定の魔法が別の変化をするかもしれなかったりするし、今後の件も含めて確実に抑えときたい技術なんだよな」

 

「でしたら、社内に弁理士と弁護士を複数雇うべきです。これからもこのように迷宮産の技術を特許申請するにしてもノウハウを積んだ弁護士が身内に居るのと居ないのとでは大きく動きやすさが違いますから」

 

「・・・・・・・・・ちょっと親父と相談するけど、そうですね。その方向で行きましょうか」

 

「あ、それなら私いい人しってる」

 

 

真一さんとシャーロットさんの話がある程度固まった段階で、様子見をしていた一花が手を上げた。

 

 

「うちのかーさん元弁護士だよ!」

 

 

 

 

 

「お父さんが今の事業を立ち上げる時に一緒にお仕事をして、ね。懐かしいわぁ」

 

 

おっとりとした口調で話す母さんだが、これで俺が生まれるまではバリバリ一線で働く敏腕弁護士だったらしい。自己申告だが。

 

 

「今でも新しい法律のチェックとかはしてるけど、流石にブランクもあるから・・・昔の弁護士仲間を紹介しても良いけれど」

 

「紹介も有り難いんですが、出来れば鈴木さんにも所属して欲しいです。身内の人間が法律部門に居るのは、やっぱり安心感が違います」

 

「母さん、受けたらええよ」

 

 

真一さんの言葉に母さんは眉を寄せて考え込むが、そこに父さんが横から口を出した。

 

 

「ヤマギシさんにはこれからお世話になるし、一郎も一花ももう手がかからん。復帰してもええ頃合いやろ」

 

「でも、家の仕事が・・・」

 

「あぁ、うん、それなんだが。実はヤマギシさんからな。誘われとるんだわ。事業の規模がどんどん大きくなるのに人手が無さすぎる、とな。一郎もお世話になっとるし受けようかと思うんだが。母さんに相談しようと思ったら先に母さんに話が来るとはな」

 

「じゃあ、今の仕事はどうするの?贔屓にしてくれる人も居るじゃない」

 

「ああ。今、事務所で働いとる・・・」

 

 

両親が話し込んでしまったのでこちらは手持ち無沙汰になってしまった。

長くなりそうだし今すぐ決めるとかでなくても良いので、と伝えて俺達は一度ヤマギシのビルに戻ることにした。

 

後日、母さんは正式にヤマギシに入社し、法律部門を任される事になる。父さんも事業の引き継ぎを終わり次第ヤマギシの事務関係を引き受けてくれるそうだ。

今は社長とシャーロットさん、後は真一さんがちょこちょこ見ていた実務関係に一気に増員が入る形になるため、最近悪化の一途を辿っていた社長達の顔色も明るくなっている。

 

そして現在の仕事に関して母さんがシャーロットさんから引き継ぎを受けたのだが、

 

 

「よく今までシャーロットちゃんだけで回してたわねぇ」

 

「あはは・・・とても助かります」

 

 

法律関係、政府関係、事務手続きと殆どの仕事をしていたシャーロットさんのあまりの業務の多さに母さんはまず社長の部屋に殴り込み、別の意味で顔色を悪くした社長から人事権を強奪。

 

下原のおばさんやご近所の知り合いをパートで雇って事務処理の速度を一気に改善。昔の仕事仲間で現在はフリーだったり、母さんと同じく産休やら何やらの理由で離職していた元弁護士や税理士を士会への復帰資金の用立て等で囲い込み法律部門も形作り、母さんが入社して父さんが入社するまでのたった数週間でヤマギシの内部を個人経営の商店から企業に変貌させた。

 

で、父さんが入社する前日に人事権を社長に返して法律部門に引っ込んだ。

たった数週間で実務のボスみたいな扱いになった人物のいきなりの行動に周りが目を白黒する中、同僚ではなく家族の視点で見ていた俺と一花は呆れながら一連のやり取りを見ていた。

 

 

 

 

 

「いやぁ、長らくお待たせしました。今日からよろしくお願いします」

 

「こちらこそ、待ち望んでいました・・・本当によろしくお願いします」

 

「ははは、やはり人手不足が酷いようですね。うちの家内が迷惑をかけていませんですかな?ちとおっとりとし過ぎる所がありますから」

 

「は、ははは。いえいえ大変助かりましたよ」

 

 

ようやく合流した父さんと社長が談笑している。が、社長の方は父さんの背後に立つ母さんの目を気にして引き攣った笑顔を浮かべている。

父さんの前だと母さん凄い猫を被るんだよなぁ。

 

 

「あれだけぼろぼろの猫の皮なのに何で父さん気付かないかなぁ」

 

「いやぁ。気付いてても気にしてないんじゃないか?父さん母さんにベタぼれだし」

 

 

冷や汗を流す社長と朗らかに笑う父さんを見ながら俺と一花は部屋を離れる。母さんの矛先がこちらに来たら堪らないからな。

 

 

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