奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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誤字修正。244様、kuzuchi様ありがとうございます!


第百八十八話 大宰府再び

「恭二に脅されたせいで由緒ある神社とかに参拝しづらくなった」

「残念でもなく当然ですね。またタタリ神されても困りますから」

「……最近、標準語上手くなったね」

「ありがとうございます」

 

 精一杯の皮肉を込めるもまるで通用せず、俺は大宰府ダンジョンの前に体育座りで座り込んだ。昭夫君、最近強くなったね……へへ、免許皆伝だぜ。等とボケを行うも「はいはい」の一言で片づけられ、ぐいっと首根っこを掴まれて引きずられる。いや、まぁ、昭夫くんの反応が正しいんだけどね。あのタタリ神のせいで、結局室内の改装をする羽目になったらしいから。

 

「あの時は本当に申し訳なかった……」

「……いえ、しょうがないですからね。俺も、同じ立場なら冷静さを失うと思います」

 

 ため息をついて手を離した昭夫君に再度ごめんね、と告げて立ち上がる。例の件は一応その後にちゃんと謝罪をしてあるんだが、この大宰府に来ると申し訳なさが頭に来るんだよな。

 

 四国土佐ダンジョンでの話し合いも終わり、ついでにコラボ企画って事で一条一家とダブルライダーアクションショーを行った後、俺達は当初の予定通り九州へと渡った。俺も一度滞在した事の有る大宰府ダンジョンが最終目的地だからだ。

 

「大宰府ダンジョンのオーナーは地元の名士の一人で、本人はダンジョン運営に熱心という訳ではありません」

 

 シャーロットさんが事前に調べていた情報を教えてくれる。何でも持山の麓にいきなり表れたその黒い穴に対して、オーナーさんは最初周りを固めて塞ごうとしていたらしい。危険だと判断したわけだな。当初は警察やらもその判断に賛成していたのだが、ヤマギシの件がドンドンニュースで流れて行って事態は一転した。

 

 むしろ有効活用しようとする地元の人と、あくまでも危険では、と封印を主張するオーナーとの間で話がこじれて居た時に、どこからかダンジョンの噂を聞きつけてきた昭夫君がダンジョンに勝手に入り込んだのが事の始まりだった。

 

「最初はしこたま怒られました。爺……森さんにはこってりしぼられて」

「まぁ、そらそうでしょうね。恭二兄ちゃんなんて自宅のダンジョンに入っただけで警官に袋叩きにされてたし」

「ああ、ありましたねぇそういう事」

 

 ダンジョンに入った理由は、当時生活に苦しんでいた家族を助ける為に魔法を身に着ける為だったという。病院にかかることにすら難儀する状況で、熱を出した弟さんの為に昭夫君は一縷の望みをかけてダンジョンに走り、侵入し、魔物と戦った。

 

 そして、幸いにもセンスがあったからだろう。魔法の力を手に入れ。それをオーナーの森さんの前で見せて土下座をしたそうだ。弟を治療する為に家まで帰りたいと。その姿に心を打たれた森さんは彼を車で博多まで送り、それ以降の付き合いになるらしい。

 

「精が出ますな」

「爺ちゃん」

「あ、どうも。その節は本当に……」

「やぁ、お久しぶりです。その節は……妹さんが無事で良かった」

 

 久しぶりの挨拶代わりに軽くダンジョンに潜った後、改装したというダンジョン前の休憩所で話をしていると、このダンジョンと周辺施設のオーナーである森さんに声を掛けられた。

 

 森さんは上品そうな顔立ちの年配の男性で、先祖代々この周辺に根付いた地主さんらしい。まぁ奥多摩を除いたダンジョンは大体辺鄙な所に出たりするから、その土地の主ってのは大体昔からそこを持ってる人だったりするんだけどな。辺鄙な場所……最近はともかく奥多摩も大概……いや、止めとこう。少し悲しくなってきた。

 

「よっこらしょ、と」

「爺ちゃん、腰大丈夫?」

「ああ……前のヒールってのが効いたよ、ありがとう……ああ、鈴木くん。出来れば他には」

「言いませんよ」

 

 苦笑を浮かべて森さんに向き直る。昔から体が弱いらしく、森さんはこまめに体調を崩すらしい。そんな彼の為に昭夫くんは魔法を使って治療を行ったり、何回も魔石を彼に渡したそうだが、森さんはそれを使うつもりがないそうだ。

 

 魔力を持たず、自然のままに老いる事を選択する。以前こちらにお邪魔した時にそう森さんは言っていた。恐らくそれは今も続けているのだろう。

 

「魔法をね、否定するつもりはないんです。あれば勿論便利だと思うし、最初の頃の拒否感みたいな物はもうありません」

 

 備え付けのポットと急須を使ってお茶を淹れてくれた森さんは、ぽつり、とそう呟いた。

 

「図らずもダンジョンオーナーという物になってから色々学ばせて貰いましてね。新しい情報を得れば得る程これは大したものだと思ってはおるんです。実際に女房や子供達はみぃんな昭夫くんが持って来てくれる魔石のお陰で若返ってまして、今じゃあ並んで歩くと女房の爺様だと勘違いされとります」

「婆ちゃんは気持ちが若いから」

「それを本人に言っとくれ。三日は機嫌が良くなるからなぁ」

 

 おどけたように話す森さんの言葉に、俺と昭夫くんはけらけらと笑い声を上げる。森さんは決して気難しい人ではない。ただ、選択しただけなんだ。自分は魔力を持たないと。

 

「この歳ですからね。色々ありました。その色々も含めて、自分の人生ですからね。そのまま終わりたいとね。思えとります」

 

 そう言って森さんは皺のよった顔に微笑みを浮かべる。彼と同じ選択をする人は決して少なくないらしい。中には強烈な拒否反応を見せる人もいるそうだ。

 

 これからヤマギシが規模を拡大する上で、こういった魔力に対して拒否感を感じる人への応対はしっかりしないといけないんだろうな。

 

 和やかな雰囲気で話してくれる森さんに内心感謝しながら、俺達はのんびりとお茶を楽しんだ。

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