もっと良いの用意できたのに!!(嘆)
今週もありがとうございました!
また来週もよろしくお願いします!
誤字修正。244様、アンヘル☆様、kuzuchi様ありがとうございます!
「どったの兄ちゃん」
「現実逃避してた」
怪訝そうな顔でこちらを見るマイシスターの声にそう返すと、ハンッ、と鼻で笑う音と共に一花が隣に座る。最近妹の兄に対する扱いが酷いんだ。どこに訴えれば良いんだろうか。
「いやぁ、ケイティも手が早いよね、ほんと。あんだけ恭二兄ちゃん相手にまごまごしてる割に、仕事の方は早い早い」
画面内でギラギラと目を光らせながら発言するケイティの姿を見ながら、一連の流れをけらけらと笑いながら一花はそう評した。
手が早い、確かにその通りだろう。俺が前に話した格付けの話を、本当にこの短期間で。冒険者内の実績に応じて振り分ける案を形にして、公表まで持っていったんだから。
『今後冒険者の数は増える事はあれど減る事はありません。それこそ老人から子供まで魔法という力を求める者は数多く、そして一度冒険者となった人物はその魔力によって長く現役でいる事が考えられます。それに対してダンジョンの数はあの事件から増えるという事はありませんでした。いつか必ずダンジョンが足りなくなる時が来る、これはその時の為の方策です』
質問に対して淀みなく答えるケイティはその有り余るエネルギーをぶつけるように今後起こりえる将来像、そしてそれに対しての備えとしていくつかの対策。それらを行う上での判断基準としての冒険者の実力と実績による区別を声高に唱えている。俺が提案した物よりも洗練されたそれは、流石としか言いようのない出来栄えのものだった。
『この区別分けの基準は一体?』
『勿論、現状の区分である国際免許制度が大本になります。最下級のEは一般冒険者のクラスで、これは一種冒険者免許持ち、レベルで言えば5までの人間に付与される最初の区分です。そしてC~Dは二種冒険者。ここからは一人前の冒険者としてのクラスで、教官免許への受験資格もC以上からとなります。いわばこのDからCへ上がるまでが実務訓練期間という訳ですね。B以上は当然教官免許を取得した人物が対象です』
質問をした記者はケイティの言葉にふむふむと頷き、何かしらのメモを取り始める。これに関しては成程、と思った。確かに、現在の教官免許はある程度の実力と他者へ魔法を教える能力があるかってのが大きなポイントになっている。その二つがしっかりしていればダンジョンに潜り始めて数か月って奴でもサクッと取れちまう資格でもあるから、ジョシュさんやジェイみたいに教官免許を短期集中で取ってる人も居たりするわけだ。
まぁあの二人は割と例外って位にセンスがあったから何とかなってたんだが、それでも教官訓練を受けていた時は経験不足だったってのは否定できない。それを解消するためにも、ちゃんとした実績を積まないと上がれない期間があるってのは良い事だと思う。
『それで、B以上の区別はどのように……?』
『そうですね。その質問の前に、まず』
次の記者の質問に対してケイティは少し言葉を切り、すっと横に視線を向ける。その視線に合わせるようにカメラが動き、画面が横にずれ……舞台脇から出てきた見知った顔の登場に、会場内が少しの間どよめき声を上げる。
『ウィラード……』
『ウィリアムだ。何故……』
『後ろの二人は?』
『あれはブラスの次女とジャクソンの長女だ。確か冒険者で……』
ざわざわと騒めく記者陣の前でいつものニヤついた面を少し引き締めたままウィルがペコリとお辞儀をすると、後ろの続いたジェイとイヴもにこやかに微笑んで一礼する。3名が舞台に上がった事を確認したケイティは、再びマイクに向き直って口を開く。
『B以上の区分は大分難航しました。教官免許保持者は誰もが指導者としての実力を持った実力者です。当然このレベルになると実績で判断するのも難しい。そこで、それらを区別する明確な指標となるとまずどこまでの階層に潜れるかの指標となるレベル、そして次に魔力量』
舞台裏にあるプロジェクターらしきものに映像がともり、そこに顔写真と共に3名のレベルと魔力量が映し出される。ウィルは当然のようにレベル32.そして魔力量はなんと50万オーバーである。隣に立つジェイがレベル30で15万、イヴがレベル30で12万であるのに対して数倍の差をつけているわけだ。
以前見た時よりも大分魔力量が上がっている。それに、前はあれだけ敵意剥きだしでいがみ合っていた二人が今はそんな様子を欠片も見せずに隣に立って笑いあっている。以前の騒動を知る身としてはちょっとした青天の霹靂だな。
「あの二人も危機感があるんだろうねぇ。英国にすっごいライバルが出て来たし」
「……ライバル? オリバーさん達は確かに凄い冒険者に育ってるが」
「あー……いや、いいや」
からかうような口調だった一花は、俺の言葉を聞くと途端に渋い顔をして口を閉じる。……アイリーンさんはそういうんじゃないんだよなぁ。
『一般的に教官免許を保持できる程度の実力の持ち主は、魔力量にして1万MPもあれば十分と言われています。このように同じ教官免許保持者でも数字という明確な違いが出せる事から、まずレベル。次に魔力量から算出して区別を分ける事になります。Bランクはレベル30未満で魔力量10万以下。この魔力量10万レベルという数字は、一人で複数都市の電力を賄える規模の魔力保持者で世界中を探しても2桁しか存在しません。全員が当然のように教官免許保持者です』
『成程。では、Aランクが最高位という事ですね』
『……ええ。米国では、そうなりますね』
記者の言葉に頷きを返して、ケイティは後ろの画面を向く。彼女が手で操作すると画面には今度はケイティ自身の顔が出てくる。その魔力量は80万オーバーとウィルよりも更に多い数字が出てくる。と言っても恭二の次に魔法使いとしてのセンスに溢れている、と言われている彼女にしては若干少なく感じるが……俺の左手側と同値くらいだしなぁ。
いや、暇さえあればダンジョンに入ってる俺や恭二みたいな連中と違って彼女は多忙な中からダンジョンに潜る時間を作ってるんだから、むしろあれだけ魔力を持っているのは凄い事なんだろう。
『米国では、というと』
『この日本では、全員が私やウィルに匹敵し、かつ一部は明らかに上回るチームが存在します。彼らは全ての冒険者の師であり先達であり目標です。当然、彼ら最先端のチームを表する際に我々はAランクをつけようとしたのですが……明らかに頭二つは抜けた存在を同じランクに押し込めることは出来ないという、選考したメンバーの満場一致の意見により我々は特例を定める事にしました』
言葉をそこで切り、ケイティは静かに息を吐く。嫌な予感に思わず椅子から立ち上がって画面を見つめる俺の前で、画面の中のケイティはマイクを手に取ると静かに後ろを振り向き、画面を切り替える。
その画面に現れた“3名”の顔写真に、隣に座る妹から「は?」と間の抜けた声が漏れる。いや、むしろ何で自分は関係ないと思ってたんだよ。選考するのどう考えてもお前の弟子たちだろうが。
『【
その言葉と共にケイティはペコリ、と頭を下げる。伝えたい事は伝えたと、言う事なんだろうが。隣に座ったまま口をパクパクと開いたり閉じたりしている妹の頭に手を置いて、「どうしたもんかねぇ」と呟きながら画面を見つめる。
ケイティが去った後も、画面には俺達の顔写真が映されていた。その写真の下、燦然と輝くSの文字と……一花で150万。俺が何故か300万/200万で、恭二は……
「どうなってんだあいつ」
思わず呟きが漏れるが、それを気にする人間はこの場には居ない。口々にランクがどうだこうだ凄いだなんだという声で語り合う中。恭二の顔写真の下。中心に描かれた1000万の文字に、呆れを超えて戦慄すら覚えながら俺は深くソファに腰を下ろした。魔力量だけとはいえ、大分水をあけられていた事が……何故だか無性に悔しい。
ライバルのつもり……だったんだがなぁ。トリプルスコアはちょっと凹むぜ。