奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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今週もよろしくお願いします!

今回は前回の影響のお話。

誤字修正。アンヘル☆様、kuzuchi様ありがとうございました!


第百九十一話 ランク騒動・前

『助けてくれ、身動きが取れない』

「ざまぁ。どしたよ?」

『なんかケイティのアレが終わってから周りにいっつも人が来る。変身してないと町が歩けない』

「俺の気持ち、分かってくれたか」

『有名人凄いな。一般市民の俺には分からんからどんどん大事件起して話題をかっさらってくれ』

 

 いつもの押し付け合いを行った後、互いにヘラヘラと笑いながら近況を報告する。現在は中国地方に居るらしい。古い神社ってのは怖いんだと震えながら話す恭二に笑えねぇよと返し、こちらは正直暫く帰ってこない方が良いと連絡を入れる。

 

『ああ、やっぱり忙しいのか? 離れてるこっちでもこれだからなぁ』

「それもあるんだけどさ……ちょっと一花とケイティがな」

『……何があったんだ?』

 

 可愛い妹分と米国の妹なのか姉なのか良く分からない仲間二人の名前に、考えがまとまらないのか恭二は声を落として尋ねてくる。片方ずつなら偶に何かやらかしてもおかしくないが、この二人の名前が同時に上がるってのは確かにあまりない事だ。

 

 一花もケイティも頭の良い娘達だ。互いに自分に出来る事、自分がやれる事。やってはいけない事を理解してその振る舞いを行えるため、この二人が何か問題を起こすとしたら大概はその人生経験では想像も出来ない……例えばケイティが若さに対する判断を誤った時や、マスター組なる存在が出て来た時の一花の様に明らかに彼女たちの思考を大幅に上回る事が無ければ問題になるような事はほぼない。

 

 良く言えば安定していて、悪く言えば過ぎた冒険をする事が無い。するとしても勝算のない事は起こさない。必ずメリットとデメリットを考えて行動を起こす……それが彼女たちに対する家族や友人からの主な評価だった。

 

 そんな彼女たちが……というよりは一花がブチ切れるなんて事が起こったんだから、世の中何が起こるかわからんなぁ。

 

 

 

 始まりは、記者会見が終わった後だった。ソファに座って会見を見ていた、正にそのすぐ後。TVを設置している居間は、やけに重苦しい雰囲気に包まれていた。

 というのも、最高ランクに評されたはずの一人。冒険者としては最高の名誉を受けた一人である一花が、眉間に皺を寄せて不機嫌そうに何かを考えているからだ。

 

 周囲の面々は完全に触らぬ神状態でこちらを見てる。基本的に一花がここまで不機嫌な様子を人に見せる事は少ないから、戸惑ってるんだろう。中学の頃はたまに非常に不機嫌な時があったが、最近は鳴りを潜めていたしな。

 

 こういう時は大体沙織ちゃんが上手い事宥めてくれてたんだが、彼女は現在恭二と日本行脚中でこの場には居ない。後の頼みの綱は真一さんなんだが、マスコミからの問い合わせが連続で入ってきていて手が離せないらしい。

 

 これはしょうがない。今こそ兄としての威厳を見せるしかないだろう、と拝むような視線を向けてくる御神苗さん達に深く頷きを返して、俺は一花の隣に座った。

 

「どうした、一花」

「……」

 

 声をかけても視線が動くだけで返答はない。あ、これヤバい奴かも知らん。スパイディに変身してる訳でもないのに加速度的に嫌な予感がするのを感じながら、俺は努めて笑顔を浮かべたまま一花の反応を待つ。

 

「……気に食わない」

「マイ・マスターは信者の」

「お兄ちゃんは黙ってて。そういうのじゃないから」

「あ、はい……」

 

 低い声で呟くようにそう口にした妹の言葉に従い、俺はすごすごと席を立つ。御神苗さん、デビッド。そのやっぱりなって顔はやめてくれ。地味に傷つくから。

 

 言外に感じる役立たずという視線から目をそらし、俺はその場にいるもう一人、沈黙を保つシャーロットさんに目を向ける。同性であるシャーロットさんなら一花の懐に入り込みやすいし、何よりこの場では俺に次ぐ長さの付き合いだ。何とかなるかもしれん。

 

 俺の視線に苦笑を浮かべたシャーロットさんは一つ頷いて一花の座るソファーまで歩き、一言声をかけてから横に座る。声は小さくてよく聞こえないが、やはり同性である事が良いのだろう。軽く何事かをぼそぼそと話しているように見える。これは解決の糸口が見えたか、と御神苗さんやデビッドと顔を合わせて喜びの表情を上げると、唐突に。

 

「やっぱりそうだよねぇ! シャーロットさんも、そう感じたよねっ!?」

「はい……間違いないかと……」

 

 唐突に声を荒らげた一花と、それに賛同するように低い声で相槌を打つシャーロットさん。二人は固い握手を交わし、唐突な事態に固まった俺達3名にギンッと鋭い視線を向ける。ビクッと震える男三人を睨みつけながら、一花はゆっくりと口を開いた。

 

「お兄ちゃん、恭二兄ちゃんとマジで戦った事、ある?」

「あ。お、おお。たまにな。互いにレールガンとかファイブハンドのレーダーハンドとかは封印してやってる」

「……なんでそこでレーダーハンド?」

「あれ、ゴーレムにぶっ放したらその周辺がデカいクレーターになって跡形もなく吹き飛ぶんだよ……」

 

 半分ミサイルのつもりで使ってたら本当に洒落にならない威力になって、二人で「これは対人戦に使わない」って紳士協定を結ぶ羽目になったからな。因みにファイアーボールに魔力を継ぎ足した偽カイザーフェニックスとか色々遊びで魔法を作っているが、やっぱり基本の魔法が一番使い勝手が良いからって結構お蔵入りになっている魔法はあったりする。ロックバスターにネットの魔法を詰めて撃つとかね。普通にスパイディでやった方が早いんだよあれ。

 

「色々衝撃の事実が分かったけど、まぁ、ともかく。大体勝率はどの位?」

「今なら3から4割。近づけなかったら負けるけど近づけたら優勢取れる。ミギーのおかげで中距離戦でも撃ち負けなくなったし、5割の確率で近づけて、後は接近戦で仕留めきれない時に負けるかな」

「……そう。大体それくらいか……」

 

 今度は一転。難しそうな顔で一花は宙を眺める。

 沈黙した一花に、もしかして俺たちの方が難しく考えていただけで、それほど深い悩みではないのでは、という淡い期待が浮かび上がってくる。

 

 

 その期待も帰ってきたケイティと一花の一触即発の空気で霧散する事になったがな。矢面に立たされた俺は冷や汗をかきながら一花を後ろから押さえつける羽目になった。

 

 こ、こういう時頼りになる沙織ちゃんが居ないのが痛すぎる……シャーロットさんもなんか変だし……沙織ちゃんマジ帰ってきてくれ……

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